0:00:06.395,0:00:09.796 糖尿病は先進国の[br]人々を苦しめてきました 0:00:09.796,0:00:14.876 全世界で4億の人が[br]この病気で苦しんでいるとされ 0:00:14.876,0:00:17.975 20年内に更に50%増えると[br]予想されているのです 0:00:17.975,0:00:22.312 その初期症状は喉の渇きや多尿で 0:00:22.312,0:00:26.738 これは紀元前1500年のエジプトで[br]既に確認されていました 0:00:26.738,0:00:29.493 糖尿病とは「(飲んだ水が)通過する」[br]という意味で 0:00:29.493,0:00:35.025 紀元前250年 ギリシャの医師[br]メンフィスのアポロニウスが名付けました 0:00:35.025,0:00:37.534 1型糖尿病と2型糖尿病は 0:00:37.534,0:00:40.634 それぞれ若者と肥満に[br]結びついていますが 0:00:40.634,0:00:42.587 これらは別の状態であると 0:00:42.587,0:00:46.450 5世紀にインドの医師によって[br]確認されていました 0:00:46.450,0:00:50.980 このようによく知られた病気でしたが[br]ヒトが糖尿病と診断されると 0:00:50.980,0:00:55.044 20世紀初頭までは[br]死刑宣告に等しく 0:00:55.044,0:00:56.946 病気の原因はわからないままでした 0:00:56.946,0:01:01.457 その状況を打開したのは[br]長年の人間の友でした: 0:01:01.457,0:01:07.266 つまりイヌです 何千年も前に[br]ハイイロオオカミから飼いならされたのです 0:01:07.266,0:01:11.119 1890年にドイツの科学者の[br]フォン・メーリングとミンコフスキーは 0:01:11.119,0:01:13.384 イヌの膵臓を切除すると 0:01:13.384,0:01:16.345 糖尿病の兆候を示す事を[br]実証しました 0:01:16.345,0:01:19.979 これで膵臓が糖尿病の中心的な[br]存在だとわかったのです 0:01:19.979,0:01:24.570 しかし1920年まで[br]その仕組みは謎のままでした 0:01:24.570,0:01:27.525 カナダの若き外科医[br]フレデリック・バンティングと 0:01:27.525,0:01:31.564 教え子のチャールズ・ベストが[br]ドイツでの発見を推し進めたのです 0:01:31.564,0:01:34.910 トロント大学のマクラウド教授の下で[br]研究を行い 0:01:34.910,0:01:39.238 膵臓が血糖値を調整していることを[br]確かめたのです 0:01:39.238,0:01:42.999 膵臓組織からの[br]抽出物を注射する事で 0:01:42.999,0:01:45.784 糖尿病のイヌの治療に成功しました 0:01:45.784,0:01:49.554 1922年までに[br]生化学者のジェームズ・コリップと研究者が 0:01:49.554,0:01:52.701 同様の抽出物を[br]ウシの膵臓から得て 0:01:52.701,0:01:55.606 14歳の糖尿病の少年を皮切りに 0:01:55.606,0:01:57.917 さらに6人の糖尿病患者を[br]治療したのです 0:01:57.917,0:02:01.602 現在インスリンとして知られる[br]この抽出物の製造過程は 0:02:01.602,0:02:04.550 医薬品会社に引き継がれて 0:02:04.550,0:02:07.945 様々な種類の注射用インスリンとして[br]実を結びました 0:02:07.945,0:02:09.503 バンティングとマクラウドは[br]その発見で 0:02:09.503,0:02:13.363 ノーベル生理学・医学賞を[br]1923年に受賞しました 0:02:13.363,0:02:15.287 しかしバンティングはチャールズ・ベストの[br]イヌの初期研究の助力に対して 0:02:16.331,0:02:19.137 栄誉を分かち合うことを選びました 0:02:19.137,0:02:23.577 動物に対する医学実験は[br]賛否両論ですが 0:02:23.577,0:02:27.987 少なくともこのケースではヒトのためだけに[br]イヌを犠牲にしたわけではありません 0:02:27.987,0:02:32.530 千頭あたり2頭のイヌが[br]糖尿病を患っており 0:02:32.530,0:02:35.350 これは20歳未満のヒトと同じ割合です 0:02:35.350,0:02:38.335 多く場合 イヌは1型糖尿病ですが 0:02:38.335,0:02:40.485 これは免疫システムが[br]膵臓を破壊することにより 0:02:40.485,0:02:43.491 子供達に発症するタイプに似ています 0:02:43.491,0:02:45.088 また 遺伝学のおかげで 0:02:45.088,0:02:48.759 イヌの病気はヒトの病気と[br]多くの共通点が見つかりました 0:02:48.759,0:02:51.837 それで獣医は今度は逆に 0:02:51.837,0:02:56.867 インスリンを使用して人の最良の友を[br]60年以上治療することに成功しました 0:02:56.867,0:03:00.157 イヌの飼い主は[br]糖尿病の対処法として 0:03:00.157,0:03:03.344 日に2度のインスリン注射と[br]食事療法 0:03:03.344,0:03:04.901 定期的な血液検査 0:03:04.901,0:03:09.039 これはヒトと同じくブドウ糖を[br]家庭でモニターする方法です 0:03:09.039,0:03:12.347 通常は精製されたブタのインスリンが[br]イヌに使われてきましたが 0:03:12.347,0:03:14.768 効き目のないイヌもいたため 0:03:14.768,0:03:17.859 獣医はヒトインスリンを用いて 0:03:17.859,0:03:20.382 イヌにも人からの恩恵を与えたのです 0:03:20.382,0:03:23.132 いつの時代もイヌは[br]人の役に立ってきました 0:03:23.132,0:03:25.911 イヌの貢献による医学的発見は[br]数えきれない程の人命を救ってきましたが 0:03:25.911,0:03:28.690 人に関する医学知識が[br] 0:03:28.690,0:03:31.469 イヌを救うのにも役立つことは[br]せめてもの償いです