1
00:00:00,380 --> 00:00:02,787
皮膚科の医者になる前

2
00:00:02,787 --> 00:00:05,339
他の多くのイギリスの皮膚科医と同じように

3
00:00:05,339 --> 00:00:07,555
私は内科医として仕事を始めました

4
00:00:07,555 --> 00:00:09,603
内科医として働いていた時期の最後に

5
00:00:09,603 --> 00:00:11,499
オーストラリアにいきました
20年ほど前です

6
00:00:11,499 --> 00:00:13,620
オーストラリアで感じるのは

7
00:00:13,620 --> 00:00:16,346
オーストラリア人は
とても競争心が強く

8
00:00:16,346 --> 00:00:18,403
負けず嫌いである
ということです

9
00:00:18,403 --> 00:00:20,467
そう感じることが よく起きました
例えば

10
00:00:20,467 --> 00:00:22,899
「君たちイギリス人はクリケットもラグビーもできない」
という感じです

11
00:00:22,899 --> 00:00:25,017
まあ これはその通りですが

12
00:00:25,017 --> 00:00:27,347
しかし仕事のこととなると・・・

13
00:00:27,347 --> 00:00:29,885
そのころ毎週 論文の輪講をしていました

14
00:00:29,885 --> 00:00:32,343
他の医者と共に

15
00:00:32,343 --> 00:00:34,463
医学関係の論文を読んで

16
00:00:34,463 --> 00:00:36,304
勉強する集まりです

17
00:00:36,304 --> 00:00:39,053
ある週の話題は
心臓疾患に関連した死亡率 でした

18
00:00:39,053 --> 00:00:42,733
データに基づいた
心臓病でどのくらいの人が亡くなるか

19
00:00:42,733 --> 00:00:44,117
その比率はどのくらいか
という話題でした

20
00:00:44,117 --> 00:00:46,093
彼らはこの話題でも競争心をもっていました

21
00:00:46,093 --> 00:00:49,189
「君たちイギリス人の
心臓疾患の比率は驚くほど高い」

22
00:00:49,189 --> 00:00:51,085
そして彼らは正しかったのです

23
00:00:51,085 --> 00:00:55,066
オーストラリア人の心臓疾患の
比率は我々の３分の１です

24
00:00:55,066 --> 00:00:58,857
心臓発作 心臓麻痺で
死亡する可能性は低く

25
00:00:58,857 --> 00:01:00,917
一般的に我々より健康的です

26
00:01:00,917 --> 00:01:02,608
彼らはもちろん その理由として

27
00:01:02,608 --> 00:01:04,672
道徳性が高い 運動をよくする

28
00:01:04,672 --> 00:01:08,740
彼らはオーストラリア人で
我々はイギリス人だから
といったことを挙げました

29
00:01:08,740 --> 00:01:13,771
しかし我々より健康なのは
オーストラリア人に限りません

30
00:01:13,771 --> 00:01:17,299
また イギリス国内でも
健康の度合いには違いがあります

31
00:01:17,299 --> 00:01:19,235
これは 標準化死亡率
と呼ばれるもので

32
00:01:19,235 --> 00:01:21,323
基本的には あなたが死亡する確率です

33
00:01:21,323 --> 00:01:24,667
これは20年前の論文のデータですが

34
00:01:24,667 --> 00:01:26,142
今日でも正しいものです

35
00:01:26,142 --> 00:01:29,232
北緯50度の地域の死亡率

36
00:01:29,232 --> 00:01:31,499
これは ロンドンなどイギリス南部です

37
00:01:31,499 --> 00:01:34,851
これが北緯55度

38
00:01:34,851 --> 00:01:37,235
残念ながら これは我々のいる
グラスゴーです

39
00:01:37,235 --> 00:01:40,083
私はエジンバラ出身です
これまた残念なことに 状況は同じです

40
00:01:40,083 --> 00:01:44,207
（笑）

41
00:01:44,207 --> 00:01:47,513
スコットランド南部と

42
00:01:47,513 --> 00:01:49,717
イギリス南部との間の

43
00:01:49,717 --> 00:01:50,727
この極端な違いの
原因はなんでしょうか

44
00:01:50,727 --> 00:01:52,145
我々は 喫煙や

45
00:01:52,145 --> 00:01:54,847
揚げ菓子 フライドポテトといった
グラスゴーの食習慣

46
00:01:54,847 --> 00:01:56,175
についてはわかっています

47
00:01:56,175 --> 00:01:58,967
しかしこのグラフは それらのリスク要因を

48
00:01:58,967 --> 00:02:01,031
考慮した結果です

49
00:02:01,031 --> 00:02:04,800
これは喫煙 社会階級 ダイエット
といったリスク要因を

50
00:02:04,800 --> 00:02:06,543
考慮した上での結果です

51
00:02:06,543 --> 00:02:08,767
我々は 北に行くほど死亡率が高くなる

52
00:02:08,767 --> 00:02:12,627
この失われた空間に取り残されています

53
00:02:12,627 --> 00:02:15,264
ここで 太陽光が絡んでくるのです

54
00:02:15,264 --> 00:02:17,584
ビタミンDは非常に注目されていて

55
00:02:17,584 --> 00:02:19,586
多くの人がビタミンDを気にしています

56
00:02:19,586 --> 00:02:23,578
ビタミンDは必要なものです
子供達は ビタミンDをとることを義務づけられています

57
00:02:23,578 --> 00:02:25,810
私の祖母はグラスゴーで育ちました

58
00:02:25,810 --> 00:02:29,396
くる病が大きな問題だった
1920年代 1930年代に

59
00:02:29,396 --> 00:02:31,594
肝油が使われ始めました

60
00:02:31,594 --> 00:02:35,538
この街でごく普通に見られた
くる病の予防に 肝油は効果的でした

61
00:02:35,538 --> 00:02:39,458
祖母は 子供だった私に
肝油を飲ませました

62
00:02:39,458 --> 00:02:42,482
その味をはっきり覚えています
誰も忘れられないと思いますが

63
00:02:42,482 --> 00:02:47,264
血液中にビタミンDが多く含まれるほど

64
00:02:47,264 --> 00:02:50,591
心臓病や癌の比率が減ります

65
00:02:50,591 --> 00:02:54,433
ビタミンDが体にいいという証拠は
いろいろあります

66
00:02:54,433 --> 00:02:56,727
くる病といった病気を防ぐ効果もあります

67
00:02:56,727 --> 00:02:59,447
しかし ビタミンDのサプリメントを服用しても

68
00:02:59,447 --> 00:03:02,879
心臓病の発症率の高さは変わりません

69
00:03:02,879 --> 00:03:06,607
同じように 癌を予防する効果も
あまりありません

70
00:03:06,607 --> 00:03:11,464
ビタミンDだけが
主役ではないと言えます

71
00:03:11,464 --> 00:03:14,775
ビタミンDだけが
心臓病を予防しているのではないのです

72
00:03:14,775 --> 00:03:19,144
ビタミンDが多いという事は単に日光を浴びている証拠で

73
00:03:19,144 --> 00:03:22,359
これからお話するように
日光を浴びることが

74
00:03:22,359 --> 00:03:24,798
心臓病の予防に
効果があるのではないかと思います

75
00:03:24,798 --> 00:03:26,759
それはそれとして
私はオーストラリアから戻り

76
00:03:26,759 --> 00:03:30,255
健康へのリスクが高いことを承知で
アバディーンに移りました

77
00:03:30,255 --> 00:03:32,807
（笑）

78
00:03:32,807 --> 00:03:35,958
そして アバディーンで
皮膚科医としてのトレーニングを始めました

79
00:03:35,958 --> 00:03:37,903
また研究にも興味をもつようになりました

80
00:03:37,903 --> 00:03:41,078
特に一酸化窒素という物質に
興味を持っていました

81
00:03:41,078 --> 00:03:42,454
ここにいる３人の人物

82
00:03:42,454 --> 00:03:44,024
ファーチゴット､イグナロ､ムラドは

83
00:03:44,024 --> 00:03:47,286
ノーベル医学賞を1998年に受賞しました

84
00:03:47,286 --> 00:03:49,429
彼らは 一酸化窒素が

85
00:03:49,429 --> 00:03:52,774
新しい化学伝達物質であることを
最初に見つけました

86
00:03:52,774 --> 00:03:55,799
一酸化窒素は血管を拡張させる効果があります

87
00:03:55,799 --> 00:03:57,670
つまり 血圧を下げる効果があります

88
00:03:57,670 --> 00:04:01,837
また 冠状動脈を拡張させて
狭心症を防ぐ効果もあります

89
00:04:01,837 --> 00:04:03,223
この発見の画期的なところは

90
00:04:03,223 --> 00:04:07,294
いままで体内の化学伝達物質というと

91
00:04:07,294 --> 00:04:10,464
女性ホルモンやインシュリン
神経伝搬といったものを

92
00:04:10,464 --> 00:04:11,934
想像していました

93
00:04:11,934 --> 00:04:15,229
非常に複雑なプロセスをもち
非常に複雑な化学反応が起き

94
00:04:15,229 --> 00:04:17,517
非常の複雑な受容体に
影響を与えるようなものでした

95
00:04:17,517 --> 00:04:19,878
一方 これは非常に単純な分子です

96
00:04:19,878 --> 00:04:23,216
窒素の原子と酸素の原子が結合したものです

97
00:04:23,216 --> 00:04:27,846
しかし これは血圧を下げることや
神経伝達にとって

98
00:04:27,846 --> 00:04:30,452
非常に重要な物質です

99
00:04:30,452 --> 00:04:33,854
特に心臓血管の健康維持に重要な意味を持ちます

100
00:04:33,854 --> 00:04:37,156
そこで私は研究を始め
皮膚が一酸化窒素を生成する

101
00:04:37,156 --> 00:04:39,766
という驚くべき事実を見つけました

102
00:04:39,766 --> 00:04:42,663
心臓血管システムのなかで生成されるだけではなく

103
00:04:42,663 --> 00:04:44,530
皮膚でも生成されるのです

104
00:04:44,530 --> 00:04:46,396
このことを発見し 論文としてまとめた後

105
00:04:46,396 --> 00:04:48,452
私は 次に何をするべきか考えました

106
00:04:48,452 --> 00:04:49,932
皮膚が低血圧になる とはどういうことか

107
00:04:49,932 --> 00:04:52,023
心臓ではありません
どう考えればいいのでしょうか

108
00:04:52,023 --> 00:04:56,094
そこで 多くの研究者と同じように
私はアメリカに渡り

109
00:04:56,094 --> 00:04:59,831
数年間ピッツバーグで過ごしました
これがピッツバーグです

110
00:04:59,831 --> 00:05:02,444
私は 非常に複雑なシステムに興味をもちました

111
00:05:02,444 --> 00:05:06,485
我々は 一酸化窒素が細胞死に
関係しているのではないか と考えました

112
00:05:06,485 --> 00:05:08,965
細胞の生存や様々なものに対する
耐性に関係があるのではないかと

113
00:05:08,965 --> 00:05:12,332
そこでまず育てた
培養細胞を使って研究を始めました

114
00:05:12,332 --> 00:05:14,452
次に 遺伝子を作らない
ノックアウトマウスを使った

115
00:05:14,452 --> 00:05:16,189
研究に取り組みました

116
00:05:16,189 --> 00:05:20,599
我々は 一酸化窒素が細胞の生存を
助ける仕組みを解明し

117
00:05:20,599 --> 00:05:24,420
エジンバラに戻ってきました

118
00:05:24,420 --> 00:05:27,202
エジンバラでは
医学生が我々の実験動物です

119
00:05:27,202 --> 00:05:29,260
それは人類に近い種で

120
00:05:29,260 --> 00:05:31,162
マウスよりも優位な点がいくつかあります

121
00:05:31,162 --> 00:05:34,618
費用が掛からず 毛を剃る必要がなく
自分でえさを探すことができます

122
00:05:34,618 --> 00:05:36,738
そして「実験用医学生を救え」と言いながら

123
00:05:36,738 --> 00:05:39,138
研究室の周りを占拠する人もいません

124
00:05:39,138 --> 00:05:42,401
彼らは本当に理想的な実験動物です

125
00:05:42,401 --> 00:05:44,362
ところが マウスで得られた実験結果が

126
00:05:44,362 --> 00:05:48,979
人間では再現しないことがわかりました

127
00:05:48,979 --> 00:05:52,219
皮膚の一酸化窒素の生成を止めることは

128
00:05:52,219 --> 00:05:55,299
できませんでした

129
00:05:55,299 --> 00:05:58,091
酵素の生成を抑制するクリームを塗ったり

130
00:05:58,091 --> 00:06:02,475
いろいろな注射をしましたが
ー酸化窒素の生成を止めることはできませんでした

131
00:06:02,475 --> 00:06:05,739
そして２・３年の研究の結果

132
00:06:05,739 --> 00:06:09,787
我々の皮膚には
そのままではありませんが

133
00:06:09,787 --> 00:06:12,875
一酸化窒素を大量に蓄える機能
があることがわかりました

134
00:06:12,875 --> 00:06:16,027
一酸化窒素はガスで 数秒でなくなるので

135
00:06:16,027 --> 00:06:19,251
窒素酸化物として蓄えます

136
00:06:19,251 --> 00:06:22,883
硝酸塩 (NO3) や亜硝酸塩 (NO2)
ニトロソチオールなど

137
00:06:22,883 --> 00:06:24,299
これらはより安定した物質です

138
00:06:24,299 --> 00:06:28,459
皮膚は非常に多くの窒素酸化物を
蓄えることができます

139
00:06:28,459 --> 00:06:31,284
そこで考えました

140
00:06:31,284 --> 00:06:34,595
もし太陽光が
皮膚に蓄えられた窒素酸化物を活性化して

141
00:06:34,595 --> 00:06:36,339
皮膚から放出できるとしたら

142
00:06:36,339 --> 00:06:39,731
その量は 循環している一酸化窒素の
約10倍になるのではないかと

143
00:06:39,731 --> 00:06:42,571
太陽光が貯蔵されたものを活性化して
循環させられるでしょうか?

144
00:06:42,571 --> 00:06:47,811
そして循環した一酸化窒素は心臓血管に
良い効果をもたらすのでしょうか

145
00:06:47,811 --> 00:06:50,339
さて 私は実験を重んじる皮膚科医です

146
00:06:50,339 --> 00:06:51,644
そこで実験動物を

147
00:06:51,644 --> 00:06:55,171
太陽に当ててみることにしました

148
00:06:55,171 --> 00:06:59,251
多くのボランティアを集めて

149
00:06:59,251 --> 00:07:01,949
紫外線ライトに当てました

150
00:07:01,949 --> 00:07:03,678
太陽灯の一種です

151
00:07:03,678 --> 00:07:06,374
ここで我々が注意したのは

152
00:07:06,374 --> 00:07:09,334
ビタミンDが
紫外線B波から生成される
ということです

153
00:07:09,334 --> 00:07:13,310
実験からビタミンDの影響を排除するために

154
00:07:13,310 --> 00:07:17,157
ビタミンDを生成しない紫外線A波を使用しました

155
00:07:17,157 --> 00:07:19,438
実験ボランティアの人々を紫外線ランプに当てて

156
00:07:19,438 --> 00:07:24,514
エジンバラの夏の日差しに
30分当たるのと同じ条件を作りました

157
00:07:24,514 --> 00:07:27,054
結果的に 循環する一酸化窒素の生成量を

158
00:07:27,054 --> 00:07:29,046
増加させることが出来ました

159
00:07:29,046 --> 00:07:31,894
そこで 患者に同じように紫外線を当てました

160
00:07:31,894 --> 00:07:34,310
その結果 一酸化窒素のレベルが上がり

161
00:07:34,310 --> 00:07:36,446
血圧が下がりました

162
00:07:36,446 --> 00:07:38,823
個人個人の変化は大きくありませんが

163
00:07:38,823 --> 00:07:41,190
集団全体としては

164
00:07:41,190 --> 00:07:44,910
心臓疾患の比率に変化を及ぼすのに十分です

165
00:07:44,910 --> 00:07:47,334
紫外線を当てる代わりに

166
00:07:47,334 --> 00:07:50,996
同じ温度まで患者の皮膚を暖めた場合には

167
00:07:50,996 --> 00:07:54,258
この効果は顕われませんでした

168
00:07:54,258 --> 00:07:58,122
これは 紫外線を皮膚に当てたときの
効果と言えると思います

169
00:07:58,122 --> 00:07:59,946
いまもデータの収集を続けています

170
00:07:59,946 --> 00:08:01,394
良い点をいくつか挙げます

171
00:08:01,394 --> 00:08:04,541
この効果は 年を取った人の方が高いようです

172
00:08:04,541 --> 00:08:06,154
どのくらい高いか
具体的にはわかりませんが

173
00:08:06,154 --> 00:08:07,927
私の義母が一例です

174
00:08:07,927 --> 00:08:10,879
もちろん正確な年齢は知らないのですが

175
00:08:10,879 --> 00:08:14,311
私の妻より年齢の高い人々では

176
00:08:14,311 --> 00:08:17,444
このような傾向が高いようです

177
00:08:17,444 --> 00:08:18,695
もう一つ指摘しておきたいのは

178
00:08:18,695 --> 00:08:20,751
ビタミンDの量には
変化がなかったということです

179
00:08:20,751 --> 00:08:22,871
これはビタミンDの効果とは別の効果です

180
00:08:22,871 --> 00:08:24,407
ビタミンDには くる病や

181
00:08:24,407 --> 00:08:26,647
カルシウム代謝障害を防ぐ効果があります

182
00:08:26,647 --> 00:08:29,679
しかし今お話したことは
ビタミンDとは別のメカニズムです

183
00:08:29,679 --> 00:08:32,255
血圧を考えるときに課題となるのは

184
00:08:32,255 --> 00:08:33,807
人体は血圧を一定に保つために

185
00:08:33,807 --> 00:08:35,390
あらゆる反応をする ということです

186
00:08:35,390 --> 00:08:37,039
仮に 脚が切断され
血液を失うと

187
00:08:37,039 --> 00:08:39,944
あなたの体は引き締まり 心拍数を上げ

188
00:08:39,944 --> 00:08:42,168
血圧を一定に保つために
できることを全て行ないます

189
00:08:42,168 --> 00:08:45,144
これは生理学的な基本原理です

190
00:08:45,144 --> 00:08:46,951
そこで我々が次に行なったのは

191
00:08:46,951 --> 00:08:50,607
血管拡張を観察することです

192
00:08:50,607 --> 00:08:52,104
そこでまた実験を行いました

193
00:08:52,104 --> 00:08:57,432
これが医学生です
しっぽがなく 毛がないのが特徴です

194
00:08:57,432 --> 00:09:00,050
腕で血管の膨張を測定することで

195
00:09:00,050 --> 00:09:03,282
血流を測ることができます

196
00:09:03,282 --> 00:09:06,757
ここでは偽の照射をおこなっています

197
00:09:06,757 --> 00:09:08,226
この太い線です

198
00:09:08,226 --> 00:09:10,626
紫外線を腕に当てているもので
温度が上がりますが

199
00:09:10,626 --> 00:09:13,450
カバーによって紫外線が
皮膚に当たらないようにしています

200
00:09:13,450 --> 00:09:17,362
血流や血管拡張に関して変化は見られません

201
00:09:17,362 --> 00:09:19,211
しかし 有効な紫外線を照射した場合

202
00:09:19,211 --> 00:09:22,563
照射中と その後1時間とでは

203
00:09:22,563 --> 00:09:24,660
血管拡張が観察されました

204
00:09:24,660 --> 00:09:27,260
これが血圧を下げるメカニズムで

205
00:09:27,260 --> 00:09:29,636
冠状動脈も心臓から血液を送り込むために

206
00:09:29,636 --> 00:09:31,347
拡張します

207
00:09:31,347 --> 00:09:35,740
これは紫外線の効果 
つまり 太陽光の効果を示す別のデータです

208
00:09:35,740 --> 00:09:40,619
紫外線が血流や心臓血管に
良い効果を与えていることがわかります

209
00:09:40,619 --> 00:09:42,962
そこで 以下のようなモデルを考えました

210
00:09:42,962 --> 00:09:49,211
紫外線の量は場所や時期で変わります

211
00:09:49,211 --> 00:09:53,235
そこで皮膚に蓄えられた窒素酸化物

212
00:09:53,235 --> 00:09:55,491
硝酸塩や亜硝酸塩
ニトロソチオールから

213
00:09:55,491 --> 00:09:58,363
一酸化窒素を取り出すことが
できるのではないかと考えました

214
00:09:58,363 --> 00:10:02,188
異なる波長の光には異なる効果があるので

215
00:10:02,188 --> 00:10:04,267
うまく作用する光の波長を探すことができます

216
00:10:04,267 --> 00:10:08,252
赤道直下に住んでいる場合
太陽の光は真上から降り注ぎます

217
00:10:08,252 --> 00:10:10,068
光は 非常に薄い空気の層を通して届きます

218
00:10:10,068 --> 00:10:12,507
冬と夏の光の量は同じです

219
00:10:12,507 --> 00:10:15,020
ここに住んでいる場合

220
00:10:15,020 --> 00:10:17,676
夏は 太陽の光はかなり高いところから
降り注ぎます

221
00:10:17,676 --> 00:10:20,983
しかし冬には
光は非常に厚い空気の層を通り

222
00:10:20,983 --> 00:10:24,204
紫外線の多くが失われます

223
00:10:24,204 --> 00:10:26,556
地表に届く光の波長も

224
00:10:26,556 --> 00:10:28,884
夏と冬では違います

225
00:10:28,884 --> 00:10:30,826
これらのデータと

226
00:10:30,826 --> 00:10:32,819
放出された一酸化窒素の量を掛けることで

227
00:10:32,819 --> 00:10:36,003
どれだけの一酸化窒素が
皮膚から放出され

228
00:10:36,003 --> 00:10:39,172
循環したかがわかります

229
00:10:39,172 --> 00:10:41,172
赤道直下にいる場合には

230
00:10:41,172 --> 00:10:44,599
この赤と紫の２つ線が該当します

231
00:10:44,599 --> 00:10:48,996
放出された一酸化窒素の量は
この線の下側の面積になります

232
00:10:48,996 --> 00:10:51,027
この部分です

233
00:10:51,027 --> 00:10:53,724
12月でも6月でも

234
00:10:53,724 --> 00:10:56,980
大量の一酸化窒素が皮膚から放出されます

235
00:10:56,980 --> 00:10:59,444
ベンチュラは南カリフォルニアにあります

236
00:10:59,444 --> 00:11:01,660
夏は赤道直下にいるのとあまり変わりません

237
00:11:01,660 --> 00:11:03,716
たくさんの一酸化窒素が放出されます

238
00:11:03,716 --> 00:11:07,659
冬のベンチュラは
まだある程度の一酸化窒素の量があります

239
00:11:07,659 --> 00:11:11,620
夏のエジンバラでも
十分な一酸化窒素の量があります

240
00:11:11,620 --> 00:11:15,835
しかし冬のエジンバラで
放出される一酸化窒素は

241
00:11:15,835 --> 00:11:19,693
ほとんどありません 非常に小さい値です

242
00:11:19,693 --> 00:11:21,498
ここから何がわかるでしょうか

243
00:11:21,498 --> 00:11:23,090
我々はこの問題に取り組んでいます

244
00:11:23,090 --> 00:11:25,002
理解を深め 理論を拡張しています

245
00:11:25,002 --> 00:11:26,650
この問題は非常に重要だと考えています

246
00:11:26,650 --> 00:11:30,243
これがイギリスの北と南での
健康の違いの大きな原因だと予測しています

247
00:11:30,243 --> 00:11:31,874
これは妥当な結論だと考えています

248
00:11:31,874 --> 00:11:33,562
皮膚は

249
00:11:33,562 --> 00:11:36,450
窒素酸化物をいろいろな形態で保存できる

250
00:11:36,450 --> 00:11:38,674
大きな貯蔵庫だということが
わかっています

251
00:11:38,674 --> 00:11:40,547
窒素酸化物の多くは 正しい食事

252
00:11:40,547 --> 00:11:42,818
新鮮な葉野菜 ビーツ レタスから
採れるだろうと考えています

253
00:11:42,818 --> 00:11:46,138
これらの食物は
皮膚に保存できる窒素酸化物を多く含んでいます

254
00:11:46,138 --> 00:11:48,282
窒素酸化物は皮膚に蓄えられて

255
00:11:48,282 --> 00:11:50,682
太陽の光で放出されます

256
00:11:50,682 --> 00:11:53,315
これは通常 よい効果をもたらします

257
00:11:53,315 --> 00:11:55,794
これはまだ研究中の内容ですが

258
00:11:55,794 --> 00:11:57,514
皮膚科医としての私の毎日の仕事は

259
00:11:57,514 --> 00:12:00,042
人々に
「皮膚癌があります」

260
00:12:00,042 --> 00:12:01,922
「太陽光が原因なので外出禁止です」
と言うことです

261
00:12:01,922 --> 00:12:04,658
本当は もっと重要な
メッセージがあると考えています

262
00:12:04,658 --> 00:12:08,082
それは 太陽光にはリスクだけでなく
メリットもあるということです

263
00:12:08,082 --> 00:12:13,835
確かに 太陽光は皮膚癌のリスク要因です

264
00:12:13,835 --> 00:12:16,706
しかし 心臓疾患の死亡率は 
皮膚癌の死亡率より

265
00:12:16,706 --> 00:12:18,658
100倍も高いものです

266
00:12:18,658 --> 00:12:21,307
我々はリスクとメリットを正しくに理解し

267
00:12:21,307 --> 00:12:23,386
リスクとメリットの割合を
見極める必要があります

268
00:12:23,386 --> 00:12:24,858
どの程度の太陽光ならば安全で

269
00:12:24,858 --> 00:12:29,058
健康にとって最適な解を
どのようにして導きだせるのか

270
00:12:29,058 --> 00:12:31,238
ありがとうございました

271
00:12:31,238 --> 00:12:38,135
（拍手）