WEBVTT 00:00:07.261 --> 00:00:08.131 物理学者 00:00:08.131 --> 00:00:09.562 航空管制官 00:00:09.562 --> 00:00:11.222 テレビゲームのクリエイター 00:00:11.222 --> 00:00:14.461 この人達には共通点が 少なくともひとつあります 00:00:14.461 --> 00:00:15.752 ベクトルです 00:00:15.752 --> 00:00:19.092 これは一体何であり どうして重要なのでしょうか? 00:00:19.092 --> 00:00:23.273 それには まずスカラーを 理解する必要があります 00:00:23.273 --> 00:00:26.161 スカラーは大きさのある量です 00:00:26.161 --> 00:00:29.212 これでそこにある物の量が分かります 00:00:29.212 --> 00:00:31.392 あなたとベンチの間の距離 00:00:31.392 --> 00:00:34.722 カップの中の飲み物の体積や温度 00:00:34.722 --> 00:00:37.642 これらは どれもスカラーで 表すことができます 00:00:37.642 --> 00:00:42.983 ベクトルにも大きさがありますが さらにもう1つ情報が加わります 00:00:42.983 --> 00:00:44.459 方向です 00:00:44.459 --> 00:00:45.972 ベンチに誘導しようとすると 00:00:45.972 --> 00:00:49.953 その距離と方向を 知る必要があります 00:00:49.953 --> 00:00:53.163 距離だけでなく その相対的な位置関係も必要だからです 00:00:53.163 --> 00:00:56.853 ベクトルを特別なものにし 様々な分野で有用としているのは 00:00:56.853 --> 00:00:59.852 視点によって変わることがなく 00:00:59.852 --> 00:01:03.342 座標系に対しても 不変であるからです 00:01:03.342 --> 00:01:04.763 これはどういう意味でしょうか? 00:01:04.763 --> 00:01:07.535 例えば 友達と一緒に テントを移動しているとします 00:01:07.535 --> 00:01:11.634 あなたは反対側に立って お互いに向き合っているわけです 00:01:11.634 --> 00:01:15.845 友達は右側に2歩動いてから 3歩前進しますが 00:01:15.845 --> 00:01:19.454 あなたは左側に2歩動いてから 3歩後退します 00:01:19.454 --> 00:01:22.223 別の動きをしているように見えたとしても 00:01:22.223 --> 00:01:25.785 同じベクトルに従って 00:01:25.785 --> 00:01:28.414 同じ方向に同じ距離 進んだわけです 00:01:28.414 --> 00:01:30.294 どの方向を向いていたとしても 00:01:30.294 --> 00:01:33.284 キャンプ場でどんな座標系を 使用したとしても 00:01:33.284 --> 00:01:35.635 ベクトルが変わることはありません 00:01:35.635 --> 00:01:38.168 x座標と y座標がある おなじみの直交座標系を 00:01:38.168 --> 00:01:40.774 使ってみましょう 00:01:40.774 --> 00:01:43.794 この2つの方向を基底ベクトルと 呼んでいます 00:01:43.794 --> 00:01:46.974 それは グラフ上の全ての点を 表すのに使うことができるからです 00:01:46.974 --> 00:01:51.765 テントを原点からB点まで 移動するとしましょう 00:01:51.765 --> 00:01:54.005 2点をつなぐ真っ直ぐな矢印は 00:01:54.005 --> 00:01:56.994 原点からB点までのベクトルです 00:01:56.994 --> 00:01:59.506 友達が移動しようとする時 00:01:59.506 --> 00:02:03.847 これを数学では 2x + 3yと表記したり 00:02:03.847 --> 00:02:07.213 この様に配列というもので 表記します 00:02:07.213 --> 00:02:08.856 あなたは反対向きなので 00:02:08.856 --> 00:02:12.476 基底ベクトルは 反対の方向を向いていますが 00:02:12.476 --> 00:02:15.371 これらを x' およびy' とすると 00:02:15.371 --> 00:02:18.975 あなたの動きは このように表したり 00:02:18.975 --> 00:02:21.725 このような配列で表すことができます 00:02:21.725 --> 00:02:25.150 この2つの配列を見てみると 明らかに異なりますが 00:02:25.150 --> 00:02:29.635 この配列自体がベクトルを完全に 表しているわけではありません 00:02:29.635 --> 00:02:32.646 各配列を定めるには 基底ベクトルが必要で 00:02:32.646 --> 00:02:34.397 適切なものを割り当ててやると 00:02:34.397 --> 00:02:38.465 実は同じベクトルを 記述していることが分かります 00:02:38.465 --> 00:02:41.656 この配列の要素を個々の数字だと みなすことができます 00:02:41.656 --> 00:02:44.715 特定の言語の文脈では 00:02:44.715 --> 00:02:47.595 文字の列が語になるように 00:02:47.595 --> 00:02:52.966 配列は基底ベクトルを指定すると ベクトルとしての意味を持つようになります 00:02:52.966 --> 00:02:57.246 2つの言語の異なる語が 同じ概念をもたらすように 00:02:57.246 --> 00:03:01.785 2つの基底ベクトルの異なる配列表現が 同じベクトルを記述し得るのです 00:03:01.785 --> 00:03:05.326 ベクトルは記述する言語によらず 00:03:05.326 --> 00:03:08.176 コミュニケーションの中身の 本質を伝えます 00:03:08.176 --> 00:03:12.528 スカラーもまた座標系に対し 不変である性質を持っています 00:03:12.528 --> 00:03:18.048 実際この性質を持つ量は テンソルと呼ばれるものの一種です 00:03:18.048 --> 00:03:22.637 様々なタイプのテンソルがあり それぞれが異なる量の情報を含んでいます 00:03:22.637 --> 00:03:26.659 ベクトルより多くの情報量を伝え得る 何かがあるということでしょうか? 00:03:26.659 --> 00:03:28.267 その通りです 00:03:28.267 --> 00:03:29.897 例えば TVゲームを設計中に 00:03:29.897 --> 00:03:33.648 リアルな水の動きを表すモデルが 欲しいとしましょう 00:03:33.648 --> 00:03:36.558 たとえ 同じ方向に 00:03:36.558 --> 00:03:38.187 同じ大きさで力を加えたとしても 00:03:38.187 --> 00:03:42.908 その水の向きによって波になったり 渦になったりします 00:03:42.908 --> 00:03:47.720 ベクトルである力が 方向性を与える他のベクトルと結びつくと 00:03:47.720 --> 00:03:50.917 応力という物理的な量が得られます 00:03:50.917 --> 00:03:54.479 これが2階のテンソルの一例です 00:03:54.479 --> 00:03:59.729 これらのテンソルは テレビゲームだけでなく あらゆる目的 ― 00:03:59.729 --> 00:04:01.498 科学的なシミュレーション 00:04:01.498 --> 00:04:02.818 カーデザイン 00:04:02.818 --> 00:04:04.488 脳撮像も含まれます 00:04:04.488 --> 00:04:09.149 スカラーにベクターそしてテンソルは 比較的シンプルな方法で 00:04:09.149 --> 00:04:12.837 複雑な概念や相互作用を 表すことができるので 00:04:12.837 --> 00:04:16.868 それ自体が数学の 優美さ、美しさ そして― 00:04:16.868 --> 00:04:20.011 根本的な有用性を示す 好例となっているのです