WEBVTT

00:00:08.566 --> 00:00:15.283
雲による気候の変化：
雲が地球の温度にどう影響するのか

00:00:15.283 --> 00:00:20.988
地球の平均表面気温は
1750年以来 摂氏0.8度上昇しました

00:00:20.988 --> 00:00:24.577
大気中の二酸化炭素の濃度が２倍になった時

00:00:24.577 --> 00:00:28.253
―それは21世紀末までに
起こると予想されますが―

00:00:28.253 --> 00:00:30.583
研究者たちは地球の気温が

00:00:30.583 --> 00:00:35.602
1.5度から4.5度の範囲で上昇すると予想しています

00:00:35.602 --> 00:00:39.623
気温上昇が1.5度ぐらいであれば

00:00:39.623 --> 00:00:43.675
今や既にその半分まで来ているので
適応できるでしょう

00:00:43.675 --> 00:00:46.491
ある地域では乾燥し生産性が落ち

00:00:46.491 --> 00:00:50.588
ある地域では温暖化と雨量の増加により
生産性が向上します

00:00:50.588 --> 00:00:56.062
一方 4.5度の上昇はどの程度のものでしょうか

00:00:56.062 --> 00:01:01.939
２万２千年前 北アメリカが
２キロメートルの厚い氷で覆われていた―

00:01:01.939 --> 00:01:06.715
最終氷期の極大期から後の
温暖化と同じ程度です

00:01:06.715 --> 00:01:11.040
ですから劇的な気候変動を意味します

00:01:11.040 --> 00:01:14.750
科学者にとって
気温変化の予想は極めて重要で

00:01:14.750 --> 00:01:20.294
可能な限りの正確な予測は
社会にとって将来の計画に必須です

00:01:20.294 --> 00:01:22.778
現在の予測はあまりにも不確かで

00:01:22.778 --> 00:01:27.559
気候の変化に対してどう対応するのが
最善なのか確信が持てません

00:01:27.569 --> 00:01:33.279
しかし二酸化炭素が２倍になり
気温が1.5度から4.5度上昇するという予想は

00:01:33.279 --> 00:01:36.575
35年前と変わっていません

00:01:36.575 --> 00:01:39.707
なぜ予想の範囲を狭められないのでしょう？

00:01:39.707 --> 00:01:44.566
それは私達はまだエアロゾルと雲のことを
正確に理解していないからです

00:01:44.566 --> 00:01:47.844
CERN(欧州素粒子物理学研究所)は
この問題に対する新たな実験を始めました

00:01:47.844 --> 00:01:50.292
気温の変化を正確に予想するには

00:01:50.292 --> 00:01:53.947
地球の気候感度と呼ばれる量

00:01:53.947 --> 00:01:57.981
つまり 「放射強制力」に対する気温の変化を知る必要があります

00:01:57.981 --> 00:02:00.640
放射強制力とは

00:02:00.640 --> 00:02:06.154
太陽からの入射エネルギーと地球が宇宙へと
反射するエネルギーの一時的な不均衡のことです

00:02:06.154 --> 00:02:09.636
例えば温室効果ガスの増加によって
生じる不均衡です

00:02:09.636 --> 00:02:13.114
その不均衡は 地球の気温の上げ下げによって
補正されます

00:02:13.114 --> 00:02:15.663
科学者は 1750年の産業革命から
続いている実験によって

00:02:15.663 --> 00:02:18.031
科学者は 1750年の産業革命から
続いている実験によって

00:02:18.031 --> 00:02:20.964
地球の気候感度を決定することができます

00:02:20.964 --> 00:02:24.516
この数字を使い21世紀の様々に予想される
放射強制力に対し

00:02:24.516 --> 00:02:29.186
地球がどれ位温暖化するかを
決定することができます

00:02:29.186 --> 00:02:31.590
これには２つの事を知る必要があります

00:02:31.590 --> 00:02:35.560
１つは1750年以降の地球の気温上昇値と

00:02:35.560 --> 00:02:39.349
２つ目は産業革命以前と比べた

00:02:39.349 --> 00:02:42.480
今日の放射強制力です

00:02:42.480 --> 00:02:45.043
放射強制力については
人類の活動が

00:02:45.043 --> 00:02:47.560
大気中の温室効果ガスを増加させ

00:02:47.560 --> 00:02:49.653
地球を温暖化させたことは分かっています

00:02:49.653 --> 00:02:53.351
しかし人類の活動は同時に
雲に含まれる

00:02:53.351 --> 00:02:57.794
エアロゾルの粒子を増加させ
地球を冷却します

00:02:57.794 --> 00:03:01.131
産業革命以前の温室効果ガス濃度は
グリーンランドや南極の

00:03:01.131 --> 00:03:05.435
氷のコアに閉じ込められていた気泡から
正確に測定されています

00:03:05.435 --> 00:03:08.896
ですから温室効果ガスによる放射強制力は
正確に把握されています

00:03:08.896 --> 00:03:14.239
しかし1750年頃の雲量については
知る由もありません

00:03:14.239 --> 00:03:19.223
それが地球気候感度の不確実性の
主な原因なのです

00:03:19.223 --> 00:03:21.601
産業革命以前の雲量を知るには

00:03:21.601 --> 00:03:24.401
雲の中でエアロゾルが形成されるプロセスを

00:03:24.401 --> 00:03:28.398
精度よくシミュレーションできる
計算モデルを使う必要があります

00:03:28.398 --> 00:03:32.038
エアロゾルと言えば髪型を整える
ヘアースプレーかもしれませんが

00:03:32.038 --> 00:03:34.263
それだけではありません

00:03:34.263 --> 00:03:39.116
エアロゾルとは大気中に浮遊する
小さな液滴や固体粒子のことです

00:03:39.116 --> 00:03:40.570
エアロゾルには

00:03:40.570 --> 00:03:44.389
一次的なもの ―埃、潮しぶきや
バイオマスが燃焼して生成されたものと

00:03:44.389 --> 00:03:49.188
二次的なもの 
―大気中のガスから生成された粒子とがあります

00:03:49.188 --> 00:03:51.940
後者のことを雲核生成と呼びます

00:03:51.940 --> 00:03:54.786
エアロゾルは大気中のどこにでもあり

00:03:54.786 --> 00:03:58.282
都会の汚染された環境では
太陽の光を遮断します

00:03:58.282 --> 00:04:01.747
また遠方の山脈を覆う青い霞もエアロゾルです

00:04:01.747 --> 00:04:07.555
重要なのは エアロゾル粒子の核がないと
雲の水滴が生じないことです

00:04:07.555 --> 00:04:11.320
エアロゾルなしで雲はできず

00:04:11.320 --> 00:04:14.201
雲なしでは新しい水は生まれません

00:04:14.201 --> 00:04:18.507
気候はもっと暑くなり
生物は存在しないことでしょう

00:04:18.507 --> 00:04:22.645
私達の存在はエアロゾルにかかっています

00:04:22.645 --> 00:04:24.207
しかしその重要性にもよらず

00:04:24.207 --> 00:04:26.738
大気中のエアロゾルの形成と

00:04:26.738 --> 00:04:30.334
雲への影響はあまり理解されていません

00:04:30.334 --> 00:04:33.681
どの気体がエアロゾル形成を引き起こすのかも

00:04:33.681 --> 00:04:35.280
まだ解明されていません

00:04:35.280 --> 00:04:38.197
なぜならそれらの気体分子の量は

00:04:38.197 --> 00:04:42.410
空気の分子１兆個に対し１分子程度と
ほんの僅かだからです

00:04:42.410 --> 00:04:45.303
この未解明な点が

00:04:45.303 --> 00:04:48.294
気候感度の不確実さが大きいことの
主な理由であり

00:04:48.294 --> 00:04:52.680
将来の温度変化の予測の精度が
狭まらない原因です

00:04:52.680 --> 00:04:58.538
しかしCERNで進行中の「雲」と呼ぶ実験では
― 有り勝ちな名前ですが―

00:04:58.538 --> 00:05:01.301
十分に大きい鉄製容器が作られ

00:05:01.301 --> 00:05:05.996
混入物質を最小限に抑え

00:05:05.996 --> 00:05:11.231
実験室において 空気の状態の
精密なコントロール下で

00:05:11.231 --> 00:05:13.094
エアロゾルの形成が初めて観測されました

00:05:13.094 --> 00:05:17.184
開始して５年の内に 「雲」は

00:05:17.184 --> 00:05:20.608
大気中のエアロゾル形成の
原因となる気体を突き止めました

00:05:20.608 --> 00:05:24.422
それは硫酸、アンモニア、アミン類と

00:05:24.422 --> 00:05:27.059
木から放出される有機ガスも含まれます

00:05:27.059 --> 00:05:30.598
CERNの陽子シンクロトロンからの
イオンビームを使い

00:05:30.598 --> 00:05:34.844
「雲」では銀河宇宙線が

00:05:34.844 --> 00:05:38.865
エアロゾル形成を促すかどうかを
研究しています

00:05:38.865 --> 00:05:43.526
この仕組みがこれまで説明されていない
気候変動の要因であるとの説があります

00:05:43.526 --> 00:05:47.077
それは宇宙線が
大気に降り注がれる量が

00:05:47.077 --> 00:05:49.918
太陽活動とともに変化しているからです

00:05:49.918 --> 00:05:53.460
「雲」は２つの大きな問題への取り組みです

00:05:53.460 --> 00:05:57.600
１つ目は産業革命以前の雲量は
どれ程であったか?

00:05:57.600 --> 00:06:03.069
また雲量が人間の活動によって
どれ程変化したかということです

00:06:03.069 --> 00:06:08.232
それを把握できれば21世紀の気候の
予測精度を高められます

00:06:08.232 --> 00:06:12.735
２つ目は産業革命前の太陽気候の変化と

00:06:12.735 --> 00:06:15.941
気候との 頭を悩ませるような関係が

00:06:15.941 --> 00:06:18.533
宇宙線による影響で
説明できるのか、という問題です

00:06:18.533 --> 00:06:23.745
野心的ながらも現実的なこの問題について
空想を巡らせみてはいかがでしょう