1 00:00:00,742 --> 00:00:07,963 我々人間は 善行への 並外れた可能性を持っています 2 00:00:07,963 --> 00:00:12,363 しかし 害を為す 計り知れない力も持っています 3 00:00:12,363 --> 00:00:18,029 どんな道具も やり方次第で 建設的にも破壊的にも使えます 4 00:00:18,036 --> 00:00:21,217 全ては我々の動機にかかっています 5 00:00:21,217 --> 00:00:24,664 したがって 利己的な動機よりも 6 00:00:24,664 --> 00:00:28,938 愛他的な動機を育むことが とても重要です 7 00:00:30,508 --> 00:00:37,008 我々は 今まさに 多くの問題に直面しています 8 00:00:37,008 --> 00:00:40,325 個人的な問題もあるでしょう 9 00:00:40,325 --> 00:00:44,911 己の心は 最高の友にも 最悪の敵にもなり得ます 10 00:00:46,341 --> 00:00:49,225 社会的な問題もあります 11 00:00:49,225 --> 00:00:54,924 豊かさの只中にある貧困や 不平等、葛藤、不正です 12 00:00:54,924 --> 00:00:59,120 それから新しい問題もあります 我々が予期していなかったものです 13 00:00:59,120 --> 00:01:03,763 1万年前 地球上にいた人類は およそ500万人でした 14 00:01:03,763 --> 00:01:05,373 人類がどんなことをしようとも 15 00:01:05,373 --> 00:01:10,559 地球の回復力が人間の活動による 傷をすぐに癒していたものです 16 00:01:10,559 --> 00:01:13,775 産業革命や技術革命の後 17 00:01:13,775 --> 00:01:16,008 状況は変わりました 18 00:01:16,008 --> 00:01:20,073 いまや我々は地球に影響を及ぼす 主要因子になっています 19 00:01:20,073 --> 00:01:24,977 我々は「人新世」 つまり人類の時代にいるのです 20 00:01:24,977 --> 00:01:31,550 ですから もし我々が この際限のない成長 — 21 00:01:31,550 --> 00:01:35,616 際限のない物質的資源の消費を 続ける必要があると言うのなら 22 00:01:35,616 --> 00:01:38,514 この男のようなことになります 23 00:01:38,514 --> 00:01:43,386 某国の前首脳がこう言うのを聞きました お名前は出しませんが — 24 00:01:43,386 --> 00:01:47,395 「5年前 我々は崖っぷちにいた 25 00:01:47,395 --> 00:01:50,272 今日 我々は大きな一歩を踏み出した」と 26 00:01:50,587 --> 00:01:56,590 この崖っぷちは科学者達が 「地球の限界」として 27 00:01:56,590 --> 00:01:59,244 定義してきたものです 28 00:01:59,244 --> 00:02:03,705 この限界に含めるものとして 様々な要因を考えることができます 29 00:02:03,705 --> 00:02:06,961 我々は繁栄を続けることもできます 30 00:02:06,961 --> 00:02:12,563 気候の安定性を ここ1万年の完新世と同水準に維持すれば 31 00:02:12,563 --> 00:02:15,721 人類はさらに15万年 繁栄し続けられます 32 00:02:15,721 --> 00:02:20,849 しかしこれは 簡素な生活を 自発的に選択することや 33 00:02:20,849 --> 00:02:24,160 量的成長から質的成長へと 転換できるかに かかっています 34 00:02:24,160 --> 00:02:30,394 1900年には ご覧のように 安全な範囲のずっと内側にいました 35 00:02:30,394 --> 00:02:35,793 それから1950年代に 大きな加速がありました 36 00:02:35,793 --> 00:02:40,762 さあこの後どうなるか想像して 息を飲んで下さい 37 00:02:40,762 --> 00:02:46,907 今や 我々は地球の限界のいくつかを 大幅に超えてしまっています 38 00:02:46,907 --> 00:02:50,866 生物多様性だけを見ても 今のペースでは 39 00:02:50,866 --> 00:02:57,288 2050年には 地球上の全ての種のうち 30%が滅ぶでしょう 40 00:02:57,288 --> 00:03:03,085 いくらDNAを冷凍保存しても それらの種が 生き返る訳ではありません 41 00:03:03,085 --> 00:03:04,936 ですから私は 42 00:03:04,936 --> 00:03:10,836 ブータンにある 標高7千メートルの 氷河の前に座っているわけです 43 00:03:10,836 --> 00:03:17,987 この「第3の極」では 2千の氷河が 北極よりも早く溶けています 44 00:03:17,987 --> 00:03:20,994 ではこの状況で我々に 何ができるのでしょう? 45 00:03:22,144 --> 00:03:29,453 環境問題が政治的 経済的 また科学的に 46 00:03:29,453 --> 00:03:31,851 いかに複雑であっても 47 00:03:31,851 --> 00:03:38,678 それは 愛他性 対 利己性 の問題に 単純に還元できます 48 00:03:38,678 --> 00:03:42,287 私はマルクスを信奉しています — グルーチョの方ですけど 49 00:03:42,287 --> 00:03:43,432 (笑) 50 00:03:43,432 --> 00:03:47,121 グルーチョ・マルクス曰く 「なんで将来の世代を気にかけなきゃいけない? 51 00:03:47,121 --> 00:03:49,381 そいつらが俺に何してくれたって言うんだ?」 52 00:03:49,381 --> 00:03:50,647 (笑) 53 00:03:50,647 --> 00:03:55,430 大富豪スティーヴ・フォーブスも Fox ニュースで 同じことを言っていましたが 54 00:03:55,430 --> 00:03:58,958 彼の方は真剣でした 55 00:03:58,958 --> 00:04:01,293 海面上昇について聞かれて 言ったんです 56 00:04:01,293 --> 00:04:04,640 「100年後に起きることのために 57 00:04:04,640 --> 00:04:07,695 今日の自分の行動を変えるなんて 馬鹿げている」 と 58 00:04:07,695 --> 00:04:10,593 もし将来の世代のことなんて 気にしないというなら 59 00:04:10,593 --> 00:04:13,494 ご勝手に 60 00:04:13,494 --> 00:04:16,420 我々の時代における 主な問題の一つは 61 00:04:16,420 --> 00:04:19,538 3つの時間尺度の間を 取り持つことです 62 00:04:19,538 --> 00:04:21,683 経済という短期的なもの つまり 63 00:04:21,683 --> 00:04:25,915 株式市場の変動や 年末決算といったもの 64 00:04:25,915 --> 00:04:28,621 それから生活の質という 中期的なもの — 65 00:04:28,621 --> 00:04:33,945 10年 20年にわたる 生活の質はどうかということ 66 00:04:33,945 --> 00:04:37,554 そして環境という 長期的なものです 67 00:04:37,554 --> 00:04:39,903 環境活動家が経済学者と話をすると 68 00:04:39,903 --> 00:04:42,982 統合失調症風の会話になって 筋が全く通りません 69 00:04:42,982 --> 00:04:45,814 彼らは話す言語が 違っているんです 70 00:04:45,814 --> 00:04:49,354 この10年 私は世界中を回って 至る所の 71 00:04:49,354 --> 00:04:53,062 経済学者、科学者 神経科学者、環境活動家 72 00:04:53,062 --> 00:04:57,332 哲学者、ヒマラヤの思索家に 会ってきましたが 73 00:04:57,332 --> 00:05:01,834 先程の 3つの時間尺度の間を 取り持てるのは 74 00:05:01,834 --> 00:05:04,794 たった1つの概念しか ないように思えます 75 00:05:04,794 --> 00:05:09,198 それは単に 他者を もっと大事にするということです 76 00:05:09,198 --> 00:05:14,099 もし他者をもっと大事にすれば 経済は思いやりに基づくものになるでしょう 77 00:05:14,099 --> 00:05:17,051 そこでは金融が社会に 奉仕するのであって 78 00:05:17,051 --> 00:05:20,319 社会が金融に 奉仕するのではありません 79 00:05:20,319 --> 00:05:22,187 人々が信頼して 預けた資産を 80 00:05:22,187 --> 00:05:25,073 カジノで賭けたりは しないでしょう 81 00:05:25,073 --> 00:05:27,919 もしあなたが他人を もっと大事にするなら 82 00:05:27,919 --> 00:05:31,396 あなたはきっと 不平等を是正したり 83 00:05:31,396 --> 00:05:33,936 社会や教育や職場に 84 00:05:33,936 --> 00:05:37,176 何らかの幸せを もたらそうとするでしょう 85 00:05:37,176 --> 00:05:40,649 そうでなければ 国自体は力や富を持っても 86 00:05:40,649 --> 00:05:43,936 一人一人は不幸な国になってしまいます そんなの意味があるでしょうか? 87 00:05:43,936 --> 00:05:45,973 そして他人をもっと 大事にするなら 88 00:05:45,973 --> 00:05:49,369 今のようなペースで地球を 荒らしたりはしないでしょう 89 00:05:49,369 --> 00:05:53,703 こんなことを続けられる 予備の惑星がある訳ではないのです 90 00:05:53,703 --> 00:05:56,056 そこで生じる疑問はこれです 91 00:05:56,056 --> 00:06:00,387 愛他性が答えなのだとして それは単に目新しい理想ではなく 92 00:06:00,387 --> 00:06:03,611 現実的で実用的な 解決策なのか? 93 00:06:03,611 --> 00:06:06,469 そもそも 真の愛他性なんて 存在するのか? 94 00:06:06,469 --> 00:06:10,213 我々は本当のところ 利己的ではないのか? 95 00:06:10,213 --> 00:06:15,553 我々は救いようのないほど 利己的な存在だと考えた哲学者もいます 96 00:06:15,553 --> 00:06:20,765 しかし我々は皆 本当に単なる 悪党なのでしょうか? 97 00:06:20,765 --> 00:06:23,579 ありがたい話ですな 98 00:06:23,579 --> 00:06:26,108 ホッブズなど多くの哲学者は かつてそう言いました 99 00:06:26,108 --> 00:06:28,999 しかし悪党には見えない人もいます 100 00:06:28,999 --> 00:06:32,262 それとも人間は 人間の敵なのでしょうか? 101 00:06:32,262 --> 00:06:35,150 でもこの人は それほど悪人面をしていません 102 00:06:35,150 --> 00:06:38,073 彼はチベットにいる 私の友人の1人です 103 00:06:38,073 --> 00:06:40,312 彼はとても親切です 104 00:06:40,312 --> 00:06:43,937 それに 我々は協同することが大好きです 105 00:06:43,937 --> 00:06:48,275 一緒に活動すること以上に 喜ばしいことはないですよね? 106 00:06:48,275 --> 00:06:52,350 そしてこれは 人間に限ったことではありません 107 00:06:52,350 --> 00:06:54,837 もちろん 生きる上での闘争はあります 108 00:06:54,837 --> 00:06:59,178 適者生存 社会的ダーウィニズムです 109 00:06:59,178 --> 00:07:05,015 しかし進化の中では もちろん競争もありますが 110 00:07:05,015 --> 00:07:10,732 複雑さを増す世界を生きていくために もっと創造的に協同する必要があります 111 00:07:10,732 --> 00:07:15,414 我々は協同することに長けていますが さらなる進歩が必要です 112 00:07:15,414 --> 00:07:21,443 そこで何よりも 人間関係の質が問題になります 113 00:07:21,443 --> 00:07:25,925 OECDが収入その他 10の要因について 調査を行ったところ 114 00:07:25,925 --> 00:07:29,268 幸福の重要な要因として 人々が一番に挙げたのは 115 00:07:29,268 --> 00:07:32,621 社会的関係の質でした 116 00:07:32,621 --> 00:07:35,498 これは人間に限ったことではありません 117 00:07:35,498 --> 00:07:38,844 そしてご覧下さい この素敵なおばあちゃん達を 118 00:07:38,846 --> 00:07:44,000 ですから つまるところ我々が 119 00:07:44,000 --> 00:07:46,570 救いようないほどに 利己的であるという考えは 120 00:07:46,570 --> 00:07:49,224 机上の考えにすぎません 121 00:07:49,224 --> 00:07:51,491 社会学の研究にも 心理学の研究にも 122 00:07:51,491 --> 00:07:54,737 そんな結果を示すものは 1つもありません 123 00:07:54,737 --> 00:07:56,697 むしろ逆です 124 00:07:56,697 --> 00:08:00,355 友人の ダニエル・バトソンは 全人生を費やして 125 00:08:00,355 --> 00:08:03,118 人々を非常に複雑な状況に置く 実験をしてきました 126 00:08:03,118 --> 00:08:07,487 もちろん我々は利己的になる時もあるし 他の人より利己的な人もいます 127 00:08:07,487 --> 00:08:10,149 しかし体系的に研究した結果 どんな場合にも 128 00:08:10,149 --> 00:08:13,149 愛他的にふるまう人は 129 00:08:13,149 --> 00:08:16,504 かなり多くいることを 彼は見出しました 130 00:08:16,504 --> 00:08:19,696 もしひどい怪我をして 苦しんでいる人を見かけたら 131 00:08:19,696 --> 00:08:22,988 苦しみに共感して とにかく助けようとするでしょう 132 00:08:22,988 --> 00:08:26,468 見ているのが耐えられず 助ける方が楽なのです 133 00:08:26,468 --> 00:08:32,344 それを検証した結果 彼は言いました 人間は明らかに愛他的だと 134 00:08:32,344 --> 00:08:34,284 これは吉報です 135 00:08:34,284 --> 00:08:39,895 さらに言えば 善行がありふれていることにも 我々は目を向けるべきです 136 00:08:39,895 --> 00:08:41,600 この場を見て下さい 137 00:08:41,600 --> 00:08:43,809 ここから帰る時 我々は こうは言わないでしょう 138 00:08:43,809 --> 00:08:48,937 「素晴らしかった!誰も殴り合わずに 愛他性について考えていたんだから!」 139 00:08:48,937 --> 00:08:51,099 それを当然のことと 思っていますよね? 140 00:08:51,099 --> 00:08:54,278 もし殴り合いがあったら 何か月も 語り草になるでしょう 141 00:08:54,278 --> 00:08:57,949 ありふれた善行には 誰も注意を向けません 142 00:08:57,949 --> 00:08:59,437 しかしそれは存在するのです 143 00:08:59,437 --> 00:09:04,913 これをご覧下さい 144 00:09:09,253 --> 00:09:12,054 こんなことを言う心理学者もいました 145 00:09:12,054 --> 00:09:15,291 私はヒマラヤで 140の 人道的プロジェクトを運営していて 146 00:09:15,291 --> 00:09:17,545 それが多くの喜びを もたらしてくれると言うと 147 00:09:17,545 --> 00:09:20,799 彼らは言いました 「なるほど 満足感のための活動ですね 148 00:09:20,799 --> 00:09:23,923 愛他的なのではなく 単に自分が良い気分になりたいだけでしょう」 149 00:09:23,923 --> 00:09:26,991 皆さんは この人が 電車の前に飛び込んだ時 150 00:09:26,991 --> 00:09:29,947 「よしこれで良い気分になれるぞ」 と考えたと思うわけですね 151 00:09:29,947 --> 00:09:31,563 (笑) 152 00:09:31,563 --> 00:09:33,849 しかも それだけではありません 153 00:09:33,849 --> 00:09:36,391 彼は後でインタビューされて 言ったんです 154 00:09:36,391 --> 00:09:39,526 「選択の余地などなく ともかく 飛び込む以外にありませんでした」 155 00:09:39,526 --> 00:09:43,407 選択の余地がないなら自動的な行動で 利己的でも愛他的でもありません 156 00:09:43,407 --> 00:09:45,162 でも本当に 選択の余地がないのか? 157 00:09:45,162 --> 00:09:47,844 もちろん この人は 「手を貸そうか 貸すまいか」と 158 00:09:47,844 --> 00:09:49,881 30分かけて考えたりはしないでしょう 159 00:09:49,881 --> 00:09:53,526 彼に選択の余地はありましたが 答えは明らかで 即決です 160 00:09:53,526 --> 00:09:56,497 そうして ここでも 選択をしています 161 00:09:56,497 --> 00:09:58,738 (笑) 162 00:09:58,738 --> 00:10:02,500 選択の余地のあった人々がここにもいます 牧師アンドレ・トロクメとその妻 163 00:10:02,500 --> 00:10:05,187 そして ル・シャンボン・シュル・リニョンの 村人達です 164 00:10:05,187 --> 00:10:09,135 第二次世界大戦中 彼らは 3千5百人のユダヤ人を救いました 165 00:10:09,135 --> 00:10:11,792 彼らをかくまい スイスに逃がしたのです 166 00:10:11,792 --> 00:10:15,237 自分や家族の命を 危険にさらしてです 167 00:10:15,237 --> 00:10:17,394 そう 愛他性はまさに存在するのです 168 00:10:17,394 --> 00:10:19,119 では愛他性とは何なのでしょう? 169 00:10:19,119 --> 00:10:23,021 それは願いです― 「他の人々が幸せになり 幸せの源を見つけてほしい」という 170 00:10:23,021 --> 00:10:27,476 さて 共感とは 感情的あるいは 認知的な共鳴のことで 171 00:10:27,476 --> 00:10:30,977 この人は喜んでいるとか 苦しんでいるとか 教えてくれます 172 00:10:30,977 --> 00:10:34,463 しかし共感だけでは 十分ではありません 173 00:10:34,463 --> 00:10:36,686 苦しみに直面し続ける場合 174 00:10:36,686 --> 00:10:39,447 共感的な苦痛や燃え尽きを 感じるかもしれません 175 00:10:39,447 --> 00:10:43,507 ですから必要なのは より高次の領域である慈しみです 176 00:10:43,507 --> 00:10:46,234 ライプツィヒにある マックス・プランク研究所の 177 00:10:46,234 --> 00:10:52,335 タニア・シンガーと我々は 脳のネットワークが 共感と慈しみの場合で異なることを示しました 178 00:10:52,335 --> 00:10:54,716 我々は 素晴らしいものを 持っているんです 179 00:10:54,716 --> 00:10:59,790 進化の過程 そして母親の心遣いや 親の愛情のおかげです 180 00:10:59,790 --> 00:11:01,625 しかしこれを拡張せねばなりません 181 00:11:01,625 --> 00:11:04,688 他の種の生物にまで 拡張することもできます 182 00:11:04,688 --> 00:11:09,375 さてもっと愛他的な社会を望むなら しなければならないことは2つです 183 00:11:09,375 --> 00:11:12,592 個人の変化と 社会の変化です 184 00:11:12,592 --> 00:11:15,150 では個人の変化は可能でしょうか? 185 00:11:15,150 --> 00:11:18,349 2千年にわたる瞑想研究によると 答えはイエスです 186 00:11:18,349 --> 00:11:21,951 神経科学とエピジェネティクスによる 15年間の共同研究でも 187 00:11:21,951 --> 00:11:26,435 答えはイエスです 愛他性の訓練は脳を変化させます 188 00:11:26,435 --> 00:11:30,707 そこで私はMRIの機械に入って 120時間過ごしました 189 00:11:30,707 --> 00:11:33,493 これは最初の2時間半を 終えたところです 190 00:11:33,493 --> 00:11:37,167 そうしてこの結果は 多くの学術誌に掲載されました 191 00:11:37,167 --> 00:11:40,749 利他愛を抱くよう 訓練した人には 192 00:11:40,749 --> 00:11:44,502 脳の構造的・機能的変化が 明らかに見られます 193 00:11:44,502 --> 00:11:46,252 参考のために少し紹介すると 194 00:11:46,252 --> 00:11:50,433 左側は瞑想者の安静時の状態と 慈悲の瞑想中の状態です 195 00:11:50,433 --> 00:11:52,776 活動の様子がよく分かるでしょう 196 00:11:52,776 --> 00:11:55,610 右側の対照群では 安静時にも瞑想時にも 197 00:11:55,610 --> 00:11:57,272 何も起きていません 198 00:11:57,272 --> 00:11:59,250 彼らは訓練を受けていません 199 00:11:59,250 --> 00:12:03,671 では5万時間ばかりの瞑想が 必要なのでしょうか? -いいえ 200 00:12:03,671 --> 00:12:07,837 4週間 1日20分 思いやりと マインドフルネスの瞑想をするだけで 201 00:12:07,838 --> 00:12:14,141 対照群と比較して 脳の構造的変化が起きるのです 202 00:12:14,141 --> 00:12:19,199 1日20分を4週間 それだけです 就学前の子供でもできます 203 00:12:19,199 --> 00:12:21,217 リチャード・デビッドソンは マディソンで 204 00:12:21,217 --> 00:12:27,627 8週間のプログラムを行いました 感謝、慈しみ、協同、マインドフル呼吸法についてです 205 00:12:27,627 --> 00:12:29,882 「就学前の子供にはまだ無理だ」 と仰るでしょう 206 00:12:29,882 --> 00:12:31,508 8週間で 向社会的行動が 207 00:12:31,508 --> 00:12:33,958 青い線のように変化します 208 00:12:33,958 --> 00:12:39,402 そして完璧に科学的な 「ステッカーテスト」を行います 209 00:12:39,402 --> 00:12:43,350 事前に それぞれの子供の 好きな子 好きでない子 210 00:12:43,350 --> 00:12:47,425 それから知名度の低い子 病気の子を 調べておきます 211 00:12:47,425 --> 00:12:50,129 そして子供達はステッカーを 配らねばなりません 212 00:12:50,129 --> 00:12:54,181 訓練前には 大半のステッカーを 好きな子にあげます 213 00:12:54,181 --> 00:12:58,810 この4、5歳の子供達に 週3回 20分の訓練をしたところ 214 00:12:58,810 --> 00:13:01,123 差別をしなくなったんです 215 00:13:01,123 --> 00:13:05,048 仲の良い子にも そうでない子にも 同数のステッカーをあげていました 216 00:13:05,048 --> 00:13:08,436 世界中の学校で これをすべきだと思います 217 00:13:08,436 --> 00:13:10,510 ではそこからどうしましょうか? 218 00:13:10,510 --> 00:13:14,308 (拍手) 219 00:13:14,308 --> 00:13:17,359 これを耳にしたダライ・ラマは デビッドソンに言いました 220 00:13:17,359 --> 00:13:20,815 「10校で 100校で 国連で 全世界でやりなさい」 221 00:13:20,815 --> 00:13:22,499 ではそこからどうしましょうか? 222 00:13:22,499 --> 00:13:24,762 個人の変化は可能です 223 00:13:24,762 --> 00:13:29,378 人類が愛他性の遺伝子を獲得するまで 我々は待たねばならないのでしょうか? 224 00:13:29,378 --> 00:13:33,132 それには5万年かかるでしょう 環境はそんなに待ってくれません 225 00:13:33,132 --> 00:13:37,157 さいわい 文化も進化します 226 00:13:37,157 --> 00:13:43,301 専門家が示してきたように 文化は遺伝子より速いスピードで変化します 227 00:13:43,301 --> 00:13:44,829 これは吉報です 228 00:13:44,829 --> 00:13:48,189 ほら 戦争への態度は年月を経て 劇的に変化したでしょう 229 00:13:48,189 --> 00:13:53,370 そのように 個人の変化と文化の変化は 互いを形づくるのです 230 00:13:53,370 --> 00:13:56,146 我々はもっと愛他的な社会を 作り上げることもできます 231 00:13:56,146 --> 00:13:57,888 ではここから何をしましょう? 232 00:13:57,888 --> 00:14:00,137 私自身は 東へ戻るつもりです 233 00:14:00,137 --> 00:14:03,597 今 我々のプロジェクトでは 1年に10万人の患者を治療し 234 00:14:03,597 --> 00:14:07,346 我々の学校では2万5千人が学んでいて 4%の管理費で運営しています 235 00:14:07,346 --> 00:14:09,921 こう言う人達がいます 「君達は 実践はしているよ 236 00:14:09,921 --> 00:14:11,945 でも理論的検討はしているのかい?」 237 00:14:11,945 --> 00:14:15,287 「良い逸脱」は常にあるものです 238 00:14:15,287 --> 00:14:17,706 ですから私は僧院に戻り 239 00:14:17,706 --> 00:14:20,995 もっと人への奉仕に役立てられる 内的資源を探すつもりです 240 00:14:20,995 --> 00:14:24,182 しかし よりグローバルな水準で 我々がすべきことは何でしょうか? 241 00:14:24,182 --> 00:14:25,973 必要なのは3つの事です 242 00:14:25,973 --> 00:14:28,325 協同を増すことが必要です 243 00:14:28,325 --> 00:14:32,041 学校では競争的学習ではなく 協同学習を行うことであり 244 00:14:32,041 --> 00:14:35,612 職場では見返りを求めず 協働することです- 245 00:14:35,612 --> 00:14:40,019 企業間での競争は有り得ますが 内部では しません 246 00:14:40,019 --> 00:14:43,971 それから「持続可能な調和」も必要です 私はこの言葉がとても好きです 247 00:14:43,971 --> 00:14:45,914 もう持続可能な成長はいりません 248 00:14:45,914 --> 00:14:49,500 持続可能な調和とは 不平等を減らすことです 249 00:14:49,500 --> 00:14:53,826 将来的に より少ないもので より多くのことができるようになるでしょう 250 00:14:53,826 --> 00:14:58,310 そして我々は 質的に成長し続けます 量的にではありません 251 00:14:58,310 --> 00:15:00,615 さらに思いやりに基づく経済が必要です 252 00:15:00,615 --> 00:15:06,446 「ホモ・エコノミクス」は 豊かさの中の貧困には対処できませんし 253 00:15:06,446 --> 00:15:08,798 大気や海洋といった 共有資源の問題を 254 00:15:08,798 --> 00:15:10,746 取り扱うこともできません 255 00:15:10,746 --> 00:15:12,679 思いやりに基づく経済が 我々には必要です 256 00:15:12,679 --> 00:15:14,918 経済に思いやりが必要と言ったら 返事はこうでしょう 257 00:15:14,918 --> 00:15:16,353 「それは我々の仕事じゃない」 258 00:15:16,353 --> 00:15:19,588 しかし彼らが気にかけないとしたら それはまずいことです 259 00:15:19,588 --> 00:15:22,967 我々には地元への貢献と 世界に対する責任が必要です 260 00:15:22,967 --> 00:15:28,307 我々は愛他性を他の160万種の生き物にも 拡大しなければなりません 261 00:15:28,307 --> 00:15:31,732 生きとし生けるものは 世界に共に暮らす仲間です 262 00:15:31,732 --> 00:15:34,724 我々は愛他性を実践せねばなりません 263 00:15:34,724 --> 00:15:38,605 それでは 皆さん 愛他性革命万歳! 264 00:15:38,605 --> 00:15:43,155 Viva la revolución de altruismo. (愛他性革命万歳) 265 00:15:43,155 --> 00:15:48,515 (拍手) 266 00:15:48,515 --> 00:15:50,496 ありがとうございました 267 00:15:50,496 --> 00:15:52,448 (拍手)