0:00:00.998,0:00:03.001 どうして宇宙は存在するのでしょう? 0:00:03.001,0:00:06.996 何故-はい はい(笑) 0:00:06.996,0:00:09.838 厳粛にしてください[br]これは広大無辺の謎なのです 0:00:09.838,0:00:13.414 どうして世界があり [br]私たちはその中に居るのか 0:00:13.414,0:00:15.293 そしてなぜ「無」ではなく[br]何かが「ある」のでしょう? 0:00:15.293,0:00:19.939 つまり これは超究極の「問いかけ」なのです 0:00:19.939,0:00:22.174 さて まさに我々が[br]取り掛かろうとしている 0:00:22.174,0:00:23.730 存在の謎や存在の難問について 0:00:23.730,0:00:26.644 それから 何故皆さんが注意を払うべきか 0:00:26.644,0:00:28.894 -そうして頂くことを望んでいますが 0:00:28.894,0:00:30.810 それらについてお話しましょう 0:00:30.810,0:00:33.636 哲学者のアルトゥル・ショーペンハウアーは 0:00:33.636,0:00:37.416 己の存在 世界の存在の測り知れなさに 0:00:37.416,0:00:40.273 思いを巡らせない者は 0:00:40.273,0:00:41.936 低能だと言いました 0:00:41.936,0:00:45.883 やや辛辣ですが 言い得て妙(笑) 0:00:45.883,0:00:47.560 ですので これは最も崇高で 0:00:47.560,0:00:49.854 荘厳な謎- 0:00:49.854,0:00:52.523 人類が提起できる 最も深遠で壮大な[br]問いかけで 0:00:52.523,0:00:53.583 偉大な思想家を 0:00:53.583,0:00:55.297 悩ませ続けています 0:00:55.297,0:00:56.901 恐らく20世紀で最も偉大な哲学者 0:00:56.901,0:00:59.231 ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタインは 0:00:59.231,0:01:01.714 世界はまごうことなく あるべきことに驚嘆しました 0:01:01.714,0:01:05.718 彼は『論理哲学論考』の命題4.66で 0:01:05.718,0:01:08.408 「世界の中での事象の有り様が 0:01:08.408,0:01:09.760 神秘的ではなくて 0:01:09.760,0:01:12.095 どの様に世界が存在しているかが[br]神秘的なのである」 0:01:12.095,0:01:14.313 もし哲学者からの警句を 0:01:14.313,0:01:17.224 拝借するのが好きでなければ [br]科学者はどうでしょうかー 0:01:17.224,0:01:19.825 20世紀で最も偉大な物理学者で[br]リチャード・ファインマンの師 0:01:19.825,0:01:21.051 20世紀で最も偉大な物理学者で[br]リチャード・ファインマンの師 0:01:21.051,0:01:22.976 「ブラックホール」を造語した 0:01:22.976,0:01:25.636 ジョン・アーチボルト・ホイーラーは 0:01:25.636,0:01:28.059 「私はどうして量子が 宇宙が 0:01:28.059,0:01:29.792 存在が『ある』のか知りたいのです」 0:01:29.792,0:01:32.936 と言ったのです 0:01:32.936,0:01:34.935 そして 私の友人の[br]マーティン・エイミス- 0:01:34.935,0:01:37.612 すみません 講演中に多くの名前が出てきますが 0:01:37.612,0:01:38.987 どうか慣れて下さい- 0:01:38.987,0:01:43.963 私の友人のマーティン・エイミスは かつて 0:01:43.963,0:01:47.183 我々は宇宙がどこから来たのか[br]という謎に答えるには 0:01:47.183,0:01:49.219 アインシュタインが約5人必要だと言ったのです 0:01:49.219,0:01:51.200 そして 今夜の観客席には間違いなく 0:01:51.200,0:01:53.387 5人のアインシュタインが居ると確信しています 0:01:53.387,0:01:54.890 アインシュタインさん? 0:01:54.890,0:01:56.052 手を挙げて?居ないですか? 0:01:56.052,0:02:00.274 さて なぜ「無」ではなく 何かが「ある」のか[br]というこの「問いかけ」 0:02:00.274,0:02:02.242 この崇高な問いかけは 0:02:02.242,0:02:04.552 思想史のかなり後期に提起されました 0:02:04.552,0:02:07.031 それは17世紀末にかけて[br]哲学者であり 0:02:07.031,0:02:09.993 アイザック・ニュートンから独立し[br]微積分学を生み出した 0:02:09.993,0:02:11.736 アイザック・ニュートンから独立し[br]微積分学を生み出した 0:02:11.736,0:02:13.886 非常に聡明なライプニッツが 0:02:13.886,0:02:16.740 同時期に提起したのです 0:02:16.740,0:02:19.342 なぜ「無」ではなく 何かが「ある」のか― 0:02:19.342,0:02:21.535 彼にとっては 大した謎でもなかったのです 0:02:21.535,0:02:23.931 彼の形而上学的な見地では 0:02:23.931,0:02:26.687 彼はキリスト教正教徒[br]もしくはそのフリをしていたので 0:02:26.687,0:02:29.702 何故 世界が存在するのかは[br]明らかだと言ったのです 0:02:29.702,0:02:32.164 何故なら 神が創造したからです 0:02:32.164,0:02:35.449 神は無から創造されたのです 0:02:35.449,0:02:36.960 神は全知全能な存在なのです 0:02:36.960,0:02:40.602 神は世界を形作るのに[br]いかなる既存材料も必要としないのです 0:02:40.602,0:02:42.762 神はまったくの無から 何もないところから 0:02:42.762,0:02:44.236 世界を創造されたのです 0:02:44.236,0:02:45.181 ちなみに これは 0:02:45.181,0:02:48.020 殆どの現代のアメリカ人が信じていることです 0:02:48.020,0:02:49.734 彼らには存在の謎はないのです 0:02:49.734,0:02:51.302 神が創り給うたのですから 0:02:51.302,0:02:53.888 さて これを方程式に入れてみましょう 0:02:53.888,0:02:56.515 スライドがありませんので[br]身振り手振りをしますから 0:02:56.515,0:02:57.950 想像力を働かせてください 0:02:57.950,0:03:03.804 神+無=世界 0:03:03.804,0:03:07.118 いいですか?これが方程式です 0:03:07.118,0:03:08.851 皆さんは恐らく神を信じないでしょう 0:03:08.851,0:03:10.681 科学的 または非科学的な無神論者とか 0:03:10.681,0:03:14.015 いずれにせよ 神を信じておらず 0:03:14.015,0:03:15.433 快く思ってはいないでしょう 0:03:15.433,0:03:18.137 ところで[br]神+無=世界 0:03:18.137,0:03:20.039 この様な方程式の場合でも 0:03:20.039,0:03:21.725 何故 神は存在するのか? 0:03:21.725,0:03:24.759 という問題が既にあるのです 0:03:24.759,0:03:26.962 本体論的証明を信じれば別ですが[br]良いものでもなく 0:03:26.962,0:03:28.775 信じていない方がいいのですが 0:03:28.775,0:03:31.102 神は論理のみで存在しないのです 0:03:31.102,0:03:34.263 ですから 神が存在するのであれば 0:03:34.263,0:03:37.413 未来永劫 全知全能な存在であることに[br]神は訝しむかもしれません 0:03:37.413,0:03:39.843 でも 我はどこから来たのだろうか? 0:03:39.843,0:03:42.013 (笑) 0:03:42.013,0:03:43.432 そしてでも 我はどこにいるのだろうか? 0:03:43.432,0:03:46.640 神は「我」とか 格式ばった言葉で話しますからね 0:03:46.640,0:03:48.629 (笑) 0:03:48.629,0:03:51.677 そして 神は自身の[br]存在の謎を思案し飽き飽きし 0:03:51.677,0:03:53.466 気晴らしに世界を想像したのだと 0:03:53.466,0:03:56.388 そういう説があります 0:03:56.388,0:03:58.500 とにかく 神の事は置いておきましょう 0:03:58.500,0:03:59.857 方程式から神を除くと 0:03:59.857,0:04:02.980 ________ +無=世界 [br]となります 0:04:02.980,0:04:04.761 さて もし皆さんが仏教徒なら 0:04:04.761,0:04:06.505 ここまでで十分だと思うでしょう 0:04:06.505,0:04:08.474 何故なら 本質的に皆さんが得たものは 0:04:08.474,0:04:10.050 無=世界 0:04:10.050,0:04:11.563 そして式は対称ですから 0:04:11.563,0:04:13.918 世界=無なんです 分かりますか? 0:04:13.918,0:04:16.337 仏教徒にとって世界は[br]ただの無の集積なんです 0:04:16.337,0:04:19.442 それは広大無辺の空虚なのです 0:04:19.442,0:04:21.995 そこに多くの何かがあると考えるのですが 0:04:21.995,0:04:24.560 それは我々が自身の欲望の虜に[br]なっているからです 0:04:24.560,0:04:27.271 もし我々が欲望を消滅させるなら 0:04:27.271,0:04:30.151 世界は真にどんなものか [br]知ることが出来るでしょう 0:04:30.151,0:04:32.131 -虚空[br]-無 0:04:32.131,0:04:34.313 そして我々は今世の命は成仏(死後)を 0:04:34.313,0:04:36.136 楽しむ為のものである というような 0:04:36.136,0:04:39.454 解脱による至福の境地に至るでしょう(笑) 0:04:39.454,0:04:41.333 それが仏教徒の考えです 0:04:41.333,0:04:44.832 しかし 私は西洋人なので 0:04:44.832,0:04:46.815 まだ存在の難問に関心があるので 0:04:46.815,0:04:48.423 ________ + — 0:04:48.423,0:04:50.581 直にエライことになりますよ いいですか? 0:04:50.581,0:04:53.607 ________ + 無 = 世界 0:04:53.607,0:04:54.830 そこの空白には何を入れましょうか? 0:04:54.830,0:04:56.678 科学はどうでしょう 0:04:56.678,0:05:00.229 科学は現実の自然現象を[br]最も紐解いてくれますし 0:05:00.229,0:05:03.244 科学の根本は物理学なのです 0:05:03.244,0:05:06.214 それは我々に素の現実が[br]本当はどんなものか 0:05:06.214,0:05:08.840 「TAUFOTU」-宇宙の真実と究極の構成物-[br]The True And Ultimate Furniture Of The Universe 0:05:08.840,0:05:11.830 というものを明らかにするのです 0:05:11.830,0:05:14.482 ですので 恐らく物理学はこの空白を埋められます 0:05:14.482,0:05:19.544 そして実際 1960年代後半か1970年頃から 0:05:19.544,0:05:23.207 物理学者は全くの虚無- 0:05:23.207,0:05:26.327 空間からの量子変動から 0:05:26.327,0:05:29.322 どのようにして[br]このような宇宙が存在することとなったかの 0:05:29.322,0:05:31.201 純粋な科学的説明を 0:05:31.201,0:05:34.281 口にし始めたのです 0:05:34.281,0:05:36.339 スティーヴン・ホーキングは[br]そんな物理学者の1人で 0:05:36.339,0:05:38.645 近頃では アレックス・ビレンケンや 0:05:38.645,0:05:40.378 その他 実に優秀な物理学者の友人で 0:05:40.378,0:05:42.571 『宇宙が始まる前には何があったのか?』 0:05:42.571,0:05:45.103 の著者であるローレンス・クラウスなどが 0:05:45.103,0:05:47.229 人気を博しています 0:05:47.229,0:05:49.445 ちなみにローレンスは 0:05:49.445,0:05:51.526 闘争的な無神論者なので 0:05:51.526,0:05:53.150 神を枠から外しています 0:05:53.150,0:05:55.531 最新技術の物理学である 0:05:55.531,0:05:57.432 場の量子論の法則は 0:05:57.432,0:05:58.750 どの様に全くの無から- 0:05:58.750,0:06:00.975 空間も時間も何もかもの無から- 0:06:00.975,0:06:04.420 偽真空の小さな塊が 0:06:04.420,0:06:06.393 実在へと変化していき 0:06:06.393,0:06:08.375 そして膨張の奇跡によって 0:06:08.375,0:06:11.460 我々の周りにある[br]この巨大で多様な宇宙へと 0:06:11.460,0:06:13.215 変貌を遂げるのかを示してくれます 0:06:13.215,0:06:16.769 さて これは実に独創的な筋書です 0:06:16.769,0:06:19.537 とても推論的で魅惑的です 0:06:19.537,0:06:21.865 しかし ここでちょっと問題があります 0:06:21.865,0:06:23.750 宗教がかった見解が 0:06:23.750,0:06:25.221 問題なのです 0:06:25.221,0:06:27.217 さて ローレンスは自分が無神論者だと思っていますが 0:06:27.217,0:06:29.965 彼は未だに宗教的世界観に[br]囚われているのです 0:06:29.965,0:06:34.734 彼は物質の法則は神の命令のように[br]見なしているのです 0:06:34.734,0:06:36.784 彼にとって 場の量子論の法則は 0:06:36.784,0:06:39.395 まるで神の思召し-[br]「光あれ」なのです 0:06:39.395,0:06:43.834 その法則はある種の力や影響力があり 0:06:43.834,0:06:45.941 実在を孕んだ[br]天地創造以前の混沌を 0:06:45.941,0:06:47.781 形作れるのです 0:06:47.781,0:06:50.688 その法則により無から世界を実在させたのです 0:06:50.688,0:06:52.635 しかし それは自然界の法則に関する 0:06:52.635,0:06:54.108 非常に原始の見解ですよね 0:06:54.108,0:06:57.363 我々は物理法則は実際に[br]世界の様式と規則性の 0:06:57.363,0:07:00.407 一般化された記述である 0:07:00.407,0:07:01.612 と知っています 0:07:01.612,0:07:03.985 それらは世界の外には存在しません 0:07:03.985,0:07:05.965 それ自体 存在論的な[br]不透明さもありません 0:07:05.965,0:07:07.960 だから その法則では無から世界を 0:07:07.960,0:07:09.278 創造できないのです 0:07:09.278,0:07:10.809 それは科学の法則が何たるかの 0:07:10.809,0:07:12.993 非常に原始的な見立てなのです 0:07:12.993,0:07:14.988 そして もしあなたがこのことを信じないなら 0:07:14.988,0:07:16.790 いかなる外界の要因も 0:07:16.790,0:07:20.825 創造主も必要としない自己完結型の[br]宇宙モデルを周知させた 0:07:20.825,0:07:21.901 創造主も必要としない自己完結型の[br]宇宙モデルを周知させた 0:07:21.901,0:07:25.539 スティーヴン・ホーキングに[br]話を聞いてみてください 0:07:25.539,0:07:27.267 彼はこのモデルは 0:07:27.267,0:07:29.681 方程式に過ぎないと述べ 0:07:29.681,0:07:32.993 未だに途方に暮れていることも認めました 0:07:32.993,0:07:35.852 方程式に命を与え 0:07:35.852,0:07:38.774 描くべき世界を創造するのは何であるのか? 0:07:38.774,0:07:39.907 彼は困惑させられました 0:07:39.907,0:07:43.712 方程式それ自体は魔法を起こせません 0:07:43.712,0:07:45.850 存在の難問を解決できません 0:07:45.850,0:07:48.763 しかも 法則が解決出来たとしても 0:07:48.763,0:07:50.586 どうしてこの法則の組合せでしょうか? 0:07:50.586,0:07:53.150 どうして場の量子論の法則が 0:07:53.150,0:07:54.850 特定量の力と分子などで世界を 0:07:54.850,0:07:55.899 描写するのでしょう? 0:07:55.899,0:07:58.190 どうして全く異なる法則の組合せではないのか? 0:07:58.190,0:08:01.478 多くの 数学的に矛盾のない[br]法則の組合せがあります 0:08:01.478,0:08:04.917 どうして他の法則が何もないのか?[br]どうして全くの無でないのか? 0:08:04.917,0:08:06.649 信じようが信じまいが[br]これは問題です 0:08:06.649,0:08:09.647 思慮深い物理学者が再三考え 0:08:09.647,0:08:12.755 そしてこの点においては[br]彼らは形而上学に傾倒しがちで 0:08:12.755,0:08:14.970 例えば- [br]我々の宇宙を描写する 0:08:14.970,0:08:16.217 法則の組合せは 0:08:16.217,0:08:17.952 一組だけで 0:08:17.952,0:08:19.988 それは現実のある一面を描写しているが 0:08:19.988,0:08:22.784 すべて矛盾のない法則は 0:08:22.784,0:08:24.570 現実の他の側面を描写し 0:08:24.570,0:08:28.503 そしてすべての有り得る物質界は 0:08:28.503,0:08:30.954 実際にそこに存在していて[br]「ある」のである 0:08:30.954,0:08:33.236 我々は場の量子論の法則によって描写された 0:08:33.236,0:08:35.780 小さな現実の一部を見るだけだが 0:08:35.780,0:08:37.511 非常に異なる仮説で語られる 0:08:37.511,0:08:39.278 多くの別の世界や 0:08:39.278,0:08:41.235 現実の要素は 0:08:41.235,0:08:44.251 想像できない程[br]我々のものとは違うので 0:08:44.251,0:08:47.996 想像を絶するほどに異世界なのです 0:08:47.996,0:08:49.733 一般的な素粒子物理学の父とされる 0:08:49.733,0:08:52.174 スティーヴン・ワインバーグは 0:08:52.174,0:08:55.000 全ての可能な現実は実際に存在しているという 0:08:55.000,0:08:59.243 このアイデアに実に魅了されました 0:08:59.243,0:09:02.332 また 若手の物理学者のマックス・テグマークは 0:09:02.332,0:09:06.708 全ての数理的な構造は存在し 0:09:06.708,0:09:08.845 そして数理的な存在は物理的な存在と 0:09:08.845,0:09:10.612 同じであると信じているので 0:09:10.612,0:09:12.930 我々は全ての理論的な可能性を包括する 0:09:12.930,0:09:16.371 この広大で豊かな多元宇宙論を有するのです 0:09:16.371,0:09:19.881 さて この形而上学的なものはさて置き 0:09:19.881,0:09:22.153 これらの物理学者や哲学者は 0:09:22.153,0:09:24.675 事実 非常に昔のアイデア[br]-プラトーまで 0:09:24.675,0:09:26.132 立ち戻っています 0:09:26.132,0:09:29.330 それは充足や繁殖力の原則 0:09:29.330,0:09:31.243 あるいは 現実が出来る限り満たさている 0:09:31.243,0:09:35.110 大いなる存在の連鎖です 0:09:35.110,0:09:36.811 それは虚無から 0:09:36.811,0:09:39.706 出来る限り遠くに移されます 0:09:39.706,0:09:42.200 ですから 我々には[br]二つの極論があるのです 0:09:42.200,0:09:45.499 一方は全くの空虚で 最も簡素な現実です 0:09:45.499,0:09:47.997 もう一方は対極で 0:09:47.997,0:09:51.180 全ての想像し得る 0:09:51.180,0:09:53.909 世界を包含する 0:09:53.909,0:09:56.802 満ち溢れた現実―なのです 0:09:56.802,0:09:59.681 さて この二つの極論の間には何があるのでしょうか? 0:09:59.681,0:10:01.708 これらは あらゆる種類の中間の現実で 0:10:01.708,0:10:04.655 幾つかだけを含み[br]それ以外は除外されています 0:10:04.655,0:10:06.251 ですので これらの中間現実の1つ- 0:10:06.251,0:10:11.946 例えば 数学的にエレガントな現実が[br]そうでないもの 0:10:11.946,0:10:13.621 -不格好な非対称なもの等を 0:10:13.621,0:10:16.267 除外するのです 0:10:16.267,0:10:18.593 さて 我々が最もエレガントな現実に住んでいると 0:10:18.593,0:10:22.227 そう言う物理学者も中にはいます 0:10:22.227,0:10:25.174 私はブライアン・グリーンが[br]-観客席に居ると思いますが 0:10:25.174,0:10:28.787 『エレガントな宇宙』という著書で 0:10:28.787,0:10:31.058 我々が住んでいる宇宙は数学的に 0:10:31.058,0:10:32.767 非常にエレガントだと主張しています 0:10:32.767,0:10:34.450 彼を信じないでください(笑) 0:10:34.450,0:10:37.537 願わくば という[br]信心深い望みですが 0:10:37.537,0:10:39.450 ある日 彼が私に[br]実は不格好な宇宙だと 0:10:39.450,0:10:42.514 認めました 0:10:42.514,0:10:43.890 それは さほど考えもせずに作られ 0:10:43.890,0:10:47.144 多すぎる任意の結合定数と 0:10:47.144,0:10:48.810 質量比や 0:10:48.810,0:10:51.588 不必要な基礎素粒子の族です 0:10:51.588,0:10:53.736 ダークエネルギーとは何なのでしょうか? 0:10:53.736,0:10:57.135 それは棒と風船ガムの奇妙な仕掛けです 0:10:57.135,0:11:01.138 それはエレガントな宇宙ではありません(笑) 0:11:01.138,0:11:03.881 そして倫理学上の意識の中に 0:11:03.881,0:11:05.471 最善の世界があるのです 0:11:05.471,0:11:06.650 厳粛にお願いします 0:11:06.650,0:11:09.845 何故なら 感覚のある生き物が 0:11:09.845,0:11:11.465 いわれなく苦しまない世界- 0:11:11.465,0:11:13.334 小児がんや大虐殺などのない世界 0:11:13.334,0:11:15.549 なのですから 0:11:15.549,0:11:16.800 これは倫理的な概念です 0:11:16.800,0:11:18.865 ともかく 虚無と 0:11:18.865,0:11:20.498 充足した可能現実 0:11:20.498,0:11:22.043 種々の特別な現実の間なんです 0:11:22.043,0:11:24.323 空虚は特別で 最も単純です 0:11:24.323,0:11:27.833 そして 最もエレガントな可能現実があるのです 0:11:27.833,0:11:29.197 それは特別です 0:11:29.197,0:11:31.849 充足した可能現実 [br]実に特別です 0:11:31.849,0:11:33.365 でも 我々はここで何を取りこぼすのでしょうか? 0:11:33.365,0:11:36.101 そこには ただ下らなく 0:11:36.101,0:11:37.856 どうあがいても 特別にはなり得ない 0:11:37.856,0:11:40.477 ある意味 手当り次第の 0:11:40.477,0:11:42.029 ごく一般的な現実もあります 0:11:42.029,0:11:44.756 それらは永遠に虚無から取り除かれていますが 0:11:44.756,0:11:48.682 完全な充足が永遠に足りないのです 0:11:48.682,0:11:51.202 それらは混沌と[br]数理的なエレガンスと醜さの 0:11:51.202,0:11:55.400 道理が混在しているのです 0:11:55.400,0:11:57.185 ですので 私はこれらの現実を 0:11:57.185,0:12:01.312 果てしない 二流の 不完全な混乱で[br]包括的な現実で 0:12:01.312,0:12:04.692 ある種の宇宙の下らない[br]試みだと述べましょう 0:12:04.692,0:12:06.876 そしてこれらの現実には 0:12:06.876,0:12:09.142 神性なるものがあるのでしょうか? 0:12:09.142,0:12:11.553 恐らく- [br]しかしユダヤ教やキリスト教の神のように 0:12:11.553,0:12:13.889 神性なるものは完璧ではありません 0:12:13.889,0:12:17.196 それは完璧に善良で万能ではありません 0:12:17.196,0:12:20.527 代わりに100%の悪意あるもので 0:12:20.527,0:12:22.630 でも80%しか効いてないような 0:12:22.630,0:12:28.767 まるで 我々を取り巻く[br]この世界のようなものかも知れません(笑) 0:12:28.767,0:12:31.499 ですから存在の謎の決意は 0:12:31.499,0:12:33.335 我々が存在している現実が 0:12:33.335,0:12:37.425 これらの包括的な現実の1つである 0:12:37.425,0:12:39.481 ということだと提案したいわけです 0:12:39.481,0:12:42.136 現実は 何とか判明しないとなりません 0:12:42.136,0:12:44.206 それは全く何でもない とか[br]その通りだったとか 0:12:44.206,0:12:47.887 どちらとも言えない とかでしょう 0:12:47.887,0:12:51.578 ですからそれが例えば[br]実にエレガントだとか充足しているとか 0:12:51.578,0:12:53.768 虚無のように実に単純だとか 0:12:53.768,0:12:55.376 何か特別な特徴を備えていると 0:12:55.376,0:12:57.177 説明が必要になるでしょう 0:12:57.177,0:13:00.336 しかし 気まぐれな包括的な[br]現実の内の1つに過ぎなけば 0:13:00.336,0:13:02.486 それ以上の説明はないでしょう 0:13:02.486,0:13:03.870 実に言うなれば 0:13:03.870,0:13:05.850 それが我々の生きる現実なのです 0:13:05.850,0:13:08.107 それが科学が我々に教えてくれることです 0:13:08.107,0:13:09.438 今週始めに宇宙の膨張説の 0:13:09.438,0:13:12.554 胸躍る情報を得たのです 0:13:12.554,0:13:15.693 それは大きくて 無限で ごたまぜであり 0:13:15.693,0:13:19.663 気まぐれで[br]良く分からない現実を予言します 0:13:19.663,0:13:23.488 それはボトルから溢れ出る 0:13:23.488,0:13:26.172 シャンペンの大きな泡のようで 0:13:26.172,0:13:28.264 魅力と秩序と平和の[br]小さなポケット付きの 0:13:28.264,0:13:32.530 大概は不毛な 広大無辺の宇宙で 0:13:32.530,0:13:34.895 この膨張説は 0:13:34.895,0:13:37.797 南極大陸にある電波望遠鏡による 0:13:37.797,0:13:39.890 観測によって確認されています 0:13:39.890,0:13:42.713 それはビッグバンの直前に 0:13:42.713,0:13:44.637 重力の波の兆しを捉えました 0:13:44.637,0:13:46.482 皆さんもご存知のことと思いますが 0:13:46.482,0:13:49.306 いずれにせよ この現実というのは 0:13:49.306,0:13:52.793 我々に押し付けられた現実であるという[br]証拠があると思うのです 0:13:52.793,0:13:55.900 さて 我々はどうして懸念すべきなのでしょうか? 0:13:55.900,0:13:57.136 えーと (笑) 0:13:57.136,0:14:00.560 「なぜ世界は存在するのか?」[br]というその問い 0:14:00.560,0:14:02.239 それは広大無念な問いで 0:14:02.239,0:14:03.693 もっと身近な問いを呼び起こします 0:14:03.693,0:14:06.776 「どうして私は存在するのか?」[br]「どうしてあなたは存在するのか?」 0:14:06.776,0:14:10.376 遺伝子的に誕生可能な人間の数は膨大で 0:14:10.376,0:14:14.695 我々の存在は驚異の賜物のようなのです 0:14:14.695,0:14:16.099 もし遺伝子の数と 0:14:16.099,0:14:18.441 その対立遺伝子をを見積もると 0:14:18.441,0:14:20.737 概算して 約10から10,000乗の 0:14:20.737,0:14:22.892 遺伝的に誕生可能な人間が 0:14:22.892,0:14:24.552 いるわけです 0:14:24.552,0:14:28.020 それは100の10乗と天文学的数字の間なのです 0:14:28.020,0:14:29.636 そして実際に存在している人間の数は 0:14:29.636,0:14:32.130 1000億人とか50億人でしょうか 0:14:32.130,0:14:34.195 ごく僅かな割合です[br]ですから我々全員は 0:14:34.195,0:14:36.125 驚異的な広大無辺のくじを引き当てたのです 0:14:36.125,0:14:38.244 我々はここにいるのです[br]いいですね 0:14:38.244,0:14:41.165 どんな種類の現実に我々は住みたいのか? 0:14:41.165,0:14:43.415 我々は特殊な現実に住みたいのか? 0:14:43.415,0:14:47.644 もし我々が最もエレガントな[br]可能現実に住んでいるとしたら? 0:14:47.644,0:14:50.153 エレガントであろうと[br]その期待に応えようとする 0:14:50.153,0:14:51.992 我々の実存のプレッシャーを 0:14:51.992,0:14:53.858 想像してみてください 0:14:53.858,0:14:56.939 あるいは もし我々が最も充実した[br]可能現実に住んでいるとしたら? 0:14:56.939,0:14:58.950 すると 我々の存在は保証されるでしょう 0:14:58.950,0:15:00.728 何故ならすべての可能なことは 0:15:00.728,0:15:02.094 現実に存在しているのです 0:15:02.094,0:15:04.255 しかし 我々の選択は意味をなさないでしょう 0:15:04.255,0:15:07.250 もし私が本当に道徳的に苦しみもがき 0:15:07.250,0:15:09.330 正しい行いをしようと決めたら[br]どんな違いが 0:15:09.330,0:15:10.525 あるというのでしょうか 0:15:10.525,0:15:12.550 そこには無限の私のバージョンが存在し 0:15:12.550,0:15:13.564 そして正しい行いをし 0:15:13.564,0:15:14.961 また 無限の数の私が 0:15:14.961,0:15:16.616 悪いことを行っているのです 0:15:16.616,0:15:18.456 ですから私の選択は無意味で 0:15:18.456,0:15:20.740 我々はそんな特殊な現実に住みたくありません 0:15:20.740,0:15:23.327 無の特殊な現実については 0:15:23.327,0:15:25.554 もうお話しすることはないでしょう 0:15:25.554,0:15:32.489 ですから この平凡でありきたりの[br]現実に住むということは 0:15:32.489,0:15:34.385 良いことも嫌なこともありますが 0:15:34.385,0:15:35.927 我々は良いことはもっと多く 0:15:35.927,0:15:38.266 そして嫌なことはもっと少なくすることで 0:15:38.266,0:15:41.157 人生の目的のようなものを得るのです 0:15:41.157,0:15:42.563 宇宙は滑稽ですが 0:15:42.563,0:15:44.290 我々はまだ目的を掲げることができ 0:15:44.290,0:15:45.230 それはとても良いモノで 0:15:45.230,0:15:47.895 全体的な現実の平凡さのようなものは 0:15:47.895,0:15:50.500 我々の存在のコアで感じるような平凡さと 0:15:50.500,0:15:52.812 きちんと共鳴しているのです 0:15:52.812,0:15:54.446 皆さんも感じておられるはずです 0:15:54.446,0:15:55.550 皆さんは全員特別なのですが 0:15:55.550,0:15:57.872 ある種 密かに平凡なのです 0:15:57.872,0:15:59.261 そうですよね? 0:15:59.261,0:16:01.198 (笑)(拍手) 0:16:01.198,0:16:05.250 さて ともかく 皆さんはこう言うかもしれませんね[br]存在の謎の難問は 0:16:05.250,0:16:06.668 馬鹿らしい謎を煽っているだけだと 0:16:06.668,0:16:10.535 皆さんは宇宙の存在に驚きませんし 0:16:10.535,0:16:12.170 良い仲間に恵まれています 0:16:12.170,0:16:14.386 バートランド・ラッセルが言うには 0:16:14.386,0:16:18.041 「宇宙はただそこにあるんだ それだけさ」 0:16:18.041,0:16:19.442 どうしようもない事実です 0:16:19.442,0:16:22.276 偉大な達観したおどけ者であり[br]私の教授でコロンビア大学の 0:16:22.276,0:16:23.985 シドニー・モーゲンベッサーは 0:16:23.985,0:16:25.602 「モーゲンベッサー先生[br]なぜ無ではなく 0:16:25.602,0:16:28.098 何かが『ある』のでしょう?」と尋ねると 0:16:28.098,0:16:30.248 「えー もし何も無かったとしても 0:16:30.248,0:16:32.244 君は満足しないだろうからね」[br]と答えました 0:16:32.244,0:16:35.993 ですので―(笑)―はいはい 0:16:35.993,0:16:38.355 皆さんは驚かなくても 私は気にしません 0:16:38.355,0:16:41.328 でも結論として 0:16:41.328,0:16:43.606 皆さんが絶対に驚くようなことを[br]お話しします 0:16:43.606,0:16:46.273 それは このTEDカンファレンスで出会った 0:16:46.273,0:16:48.586 全ての輝くばかりの素晴らしい人々を 0:16:48.586,0:16:50.800 驚かしたものなのです [br]―それは― 0:16:50.800,0:16:55.302 「私は人生で一度も携帯電話を持ったことがない」 0:16:55.302,0:16:57.179 ありがとうございました 0:16:57.179,0:17:01.179 (拍手)