WEBVTT 00:00:05.504 --> 00:00:07.398 子供の頃 00:00:07.398 --> 00:00:10.959 私たちが一番恐れていた災害といえば 核戦争でした 00:00:11.818 --> 00:00:15.085 地下室にはこんなバレルがあり 00:00:15.085 --> 00:00:17.656 その中には缶詰や 水が貯えられていました 00:00:18.256 --> 00:00:19.901 核ミサイルが飛んできたら 00:00:19.901 --> 00:00:24.637 私たちは地下へ降りて うずくまり バレルの食糧を食べるのです NOTE Paragraph 00:00:25.877 --> 00:00:29.597 いま 最大の世界的危機は 00:00:29.597 --> 00:00:32.457 こんな姿はしておらず 00:00:32.457 --> 00:00:35.238 代わりにそれはこのようなものでしょう 00:00:36.438 --> 00:00:41.929 もし1千万人以上の人々が 次の数十年で亡くなるような災害があるとすれば 00:00:41.929 --> 00:00:45.314 それは戦争というよりは むしろ感染性の高い 00:00:45.314 --> 00:00:47.792 ウイルスが原因の可能性が 大いにあります 00:00:47.792 --> 00:00:51.679 ミサイルではなく 微生物なのです 00:00:51.679 --> 00:00:53.878 その理由の一つは 00:00:53.878 --> 00:00:58.081 これまで 私たちは核の抑制に 巨額の費用をつぎ込みましたが 00:00:58.081 --> 00:01:03.179 疫病の抑制システムの創出については 殆ど何もやって来ていない事です 00:01:04.129 --> 00:01:07.093 よって 私たちは次の疫病の蔓延への 準備が出来ていないのです NOTE Paragraph 00:01:08.023 --> 00:01:09.758 エボラの例を見てみましょう 00:01:09.758 --> 00:01:13.615 皆さんきっとエボラについて 新聞で読まれたでしょう 00:01:13.615 --> 00:01:15.221 とても厳しい危機です 00:01:15.221 --> 00:01:18.876 我々がポリオ撲滅の状況を追った時の 00:01:18.876 --> 00:01:23.721 ケース分析ツールを用いて エボラの状況を追跡しました 00:01:23.721 --> 00:01:25.573 観察していて分かったことは 00:01:25.573 --> 00:01:30.081 システムが不十分で状況に 対処し切れていなかった ということではなく 00:01:30.081 --> 00:01:33.649 そもそもシステム自体すら 存在しなかった ということでした 00:01:34.589 --> 00:01:39.028 事実 非常に明らかな幾つかの ミッシング・ピースは NOTE Paragraph 00:01:39.028 --> 00:01:43.940 急な召集にも応じ出動できる―そして出動するべきだった 疫学者達の一団はいませんでした 00:01:43.940 --> 00:01:47.696 疫病の感染拡大 状況を観察し分析する人々です 00:01:47.696 --> 00:01:50.452 症例レポートは 紙ベースで送られてきました 00:01:50.452 --> 00:01:52.808 報告書が電子化されるまでに とても時間がかかり 00:01:52.808 --> 00:01:54.782 しかもその内容は間違いだらけでした 00:01:55.492 --> 00:01:57.858 招集に応じ出動する 医療従事者のチームもおらず 00:01:57.858 --> 00:02:00.453 人々の準備や体制を 整える手立てもありませんでした 00:02:00.453 --> 00:02:05.784 国境なき医師団は大変うまく ボランティア達を指揮しましたが 00:02:05.784 --> 00:02:08.880 それでも私たちは これらの国々へ何千人もの 00:02:08.880 --> 00:02:12.022 支援者を送り込むのに 無駄な時間を要したのです 00:02:12.022 --> 00:02:19.007 規模の大きな伝染病が起こると 何十万という支援スタッフが必要となります 00:02:20.752 --> 00:02:25.155 現地では 治療が適切に行われているかを確認する人員すら一人もおらず 00:02:25.155 --> 00:02:26.946 診断方法を見る人も 00:02:26.946 --> 00:02:30.243 どんなツールが使われるべきか 判断する人もいませんでした 00:02:30.243 --> 00:02:33.723 スタッフがいれば 例えば生存者の血液を採取し 00:02:33.723 --> 00:02:39.158 それから作った血清を人々に注射し 免疫を作ってみたりできたでしょう 00:02:39.158 --> 00:02:41.764 しかしそれは実現されませんでした 00:02:41.764 --> 00:02:43.520 つまり 見落とされた事が 数多くあったのです 00:02:43.520 --> 00:02:47.415 これらは 実に グローバルな規模の失敗です 00:02:48.305 --> 00:02:53.873 WHOには疫病をモニタリングする為の研究費はありますが こうしたことを行うための資金はありません 00:02:55.049 --> 00:02:57.842 映画は現実とはかなり異なります 00:02:57.842 --> 00:03:02.674 この美男美女の疫学者達は 常に出動準備万端で 00:03:02.674 --> 00:03:08.446 現場に駆けつけ 救援に成功します でもそれはハリウッドの空想世界です NOTE Paragraph 00:03:10.177 --> 00:03:13.887 予め対策が準備できていないだけで 00:03:13.887 --> 00:03:17.695 次の疫病がエボラよりも 劇的に危機をもたらすかも知れません 00:03:18.735 --> 00:03:23.531 今年エボラが蔓延した段階を 見てみましょう 00:03:24.311 --> 00:03:27.149 およそ1万人が亡くなり 00:03:27.149 --> 00:03:31.846 ほぼ全員が西アフリカの 3カ国の住民でした 00:03:31.846 --> 00:03:34.433 これ以上に 感染拡大しなかった理由が3つあります 00:03:34.433 --> 00:03:38.874 一つ目は ヘルスワーカー達による 英雄的な努力です 00:03:38.874 --> 00:03:42.136 エボラ患者を発見し 感染が広がるのを防ぎました 00:03:42.136 --> 00:03:44.621 2つめはこのウイルスの性質です 00:03:44.621 --> 00:03:47.697 エボラは空気感染をしません 00:03:47.697 --> 00:03:49.810 患者が感染源となるまで悪化した頃には 00:03:49.810 --> 00:03:52.550 通常症状が重過ぎてベッドから動けません 00:03:54.220 --> 00:03:58.411 3つ目に 感染は都市部に あまり行き着かなかったことです 00:03:58.411 --> 00:04:00.115 これは単なる運です 00:04:00.115 --> 00:04:02.355 もし エボラが都市部に感染拡大していたら 00:04:02.355 --> 00:04:05.877 症例数はもっとずっと増えていたでしょう NOTE Paragraph 00:04:05.877 --> 00:04:09.466 次はそう運に恵まれないかもしれません 00:04:09.466 --> 00:04:14.530 ウイルスの中には 感染していても症状が無く 00:04:14.530 --> 00:04:17.841 そのまま飛行機に乗ったり 市場に行ったりするケースもあります 00:04:17.841 --> 00:04:20.846 ウイルスの感染源はエボラのような 自然由来の疫病だったり 00:04:20.846 --> 00:04:22.826 バイオテロでもあり得るのです 00:04:22.826 --> 00:04:27.474 よって シナリオが劇的に 悪化する理由は色々とあるのです NOTE Paragraph 00:04:27.474 --> 00:04:33.475 この 空気感染によりウイルスが 広がるモデルを見てみましょう 00:04:33.475 --> 00:04:37.070 1918年のスペイン風邪の例です 00:04:37.630 --> 00:04:39.560 このような事になりました 00:04:39.560 --> 00:04:43.558 猛烈な勢いで 世界中に瞬く間に蔓延し 00:04:43.558 --> 00:04:48.683 3千万人以上の感染者が死亡しました 00:04:48.683 --> 00:04:50.496 これは危機的な問題です 00:04:50.496 --> 00:04:52.257 深刻に捉えなければなりません NOTE Paragraph 00:04:52.257 --> 00:04:56.692 しかし実は 私たちは優れた 対策システムを作ることが出来るのです 00:04:56.692 --> 00:05:01.836 私たちには既に活用出来る科学や 技術があるのです 00:05:01.836 --> 00:05:02.883 私たちは携帯電話で 00:05:02.883 --> 00:05:06.140 公開された情報を得て また逆にこちらから情報を発信出来ます 00:05:06.140 --> 00:05:10.319 衛星画像により人々の居場所や 移動する様子を知ることが出来ます 00:05:10.319 --> 00:05:12.627 生物学における発展のお陰で 00:05:12.627 --> 00:05:16.453 病原体に応じて薬やワクチンを 作る時間が劇的に短縮出来ます 00:05:16.453 --> 00:05:21.322 病原体に応じて薬やワクチンを 作る時間が劇的に短縮出来ます 00:05:21.322 --> 00:05:22.888 私たちにはツールがありますが 00:05:22.888 --> 00:05:27.500 これらは世界規模のヘルスシステムの 中に組み込まれなければなりません 00:05:27.500 --> 00:05:29.793 そして危機に備えた体制づくりが必要です NOTE Paragraph 00:05:29.793 --> 00:05:32.257 その為の レッスンは 繰り返しになりますが 00:05:32.257 --> 00:05:34.758 戦争に備える事から学べると思います 00:05:34.758 --> 00:05:39.005 兵士たちは常時招集に備えています 00:05:39.005 --> 00:05:42.316 対策部隊の規模をスケールアップする為の 人員や資源は潤沢にあります 00:05:42.316 --> 00:05:46.005 NATOには非常に迅速に 現地へ赴ける機動部隊がいます 00:05:46.005 --> 00:05:49.455 NATOは頻繁にウォーゲームを行って確認します 人員が十分に訓練されているか? 00:05:49.455 --> 00:05:51.883 燃料や物流の状況が理解出来ているか? 00:05:51.883 --> 00:05:54.241 無線周波数の設定は? 00:05:54.241 --> 00:05:56.779 そうして人員は常に完璧に 出動可能な状態なのです 00:05:56.779 --> 00:06:01.134 こうしたことが 疫病への対策にも必要なのです NOTE Paragraph 00:06:01.134 --> 00:06:03.301 では主なキー・ピースは何でしょう? 00:06:03.301 --> 00:06:08.591 第一に 貧しい国々にしっかりとした 病院・健康保証システムがある事 00:06:08.591 --> 00:06:11.778 母親が安全に出産できて 子どもたちが必要なワクチンを 00:06:11.778 --> 00:06:13.295 全て受けられるような仕組みです 00:06:13.295 --> 00:06:17.634 アウトブレイクの初期の兆候も そこで把握出来ます 00:06:18.154 --> 00:06:19.935 次に 医療従事者達の 待機部隊が必要です 00:06:19.935 --> 00:06:22.501 医療に携わるよう訓練され 経験のある 00:06:22.501 --> 00:06:25.853 いつでも招集に応じられる 専門知識のある人々です 00:06:25.853 --> 00:06:30.266 そして 彼らを軍隊と連携させます 00:06:30.266 --> 00:06:34.417 軍隊の機動力を利用し 物流を確保し 感染地の隔離等を 00:06:34.417 --> 00:06:36.220 素早く行えるようにです 00:06:36.220 --> 00:06:39.129 戦争ではなく 細菌の 00:06:39.129 --> 00:06:43.927 拡大シミュレーションをして 対策の為に欠けている要素をあぶり出すのです 00:06:43.927 --> 00:06:46.723 前回アメリカで細菌シミュレーションが 行われた際は 00:06:46.723 --> 00:06:50.443 2001年でしたが 良い結果ではありませんでした 00:06:50.453 --> 00:06:55.490 細菌との戦いは 今のところ人類の負けです 00:06:55.490 --> 00:07:01.609 最後に ワクチンや診断の分野での 研究開発がもっと必要です 00:07:01.609 --> 00:07:05.246 例えばアデノウイルス系ワクチンのように 非常に速く効く 00:07:05.246 --> 00:07:09.229 目覚ましいブレークスルーもあります NOTE Paragraph 00:07:09.229 --> 00:07:12.599 これに必要な 正確な予算はわかりませんが 00:07:12.599 --> 00:07:17.095 予期され得る被害に比べれば 大したことのない額だと確信しています 00:07:17.095 --> 00:07:21.740 世界銀行は 世界規模での インフルエンザ大流行が起これば 00:07:21.740 --> 00:07:25.465 世界の総資産が360兆円以上の 打撃を受けると推定しています 00:07:25.465 --> 00:07:29.332 加えて 何百万人という死者が見込まれます 00:07:29.332 --> 00:07:32.317 こうした投資は 単に疫病への準備が出来る 00:07:32.317 --> 00:07:34.518 という事以上の大きな利益を生みます 00:07:34.518 --> 00:07:36.982 プライマリケア 研究開発 00:07:36.982 --> 00:07:39.812 これらは世界的に 健康における公平性を向上させ 00:07:39.812 --> 00:07:43.502 世界をより 公正で 安全な場所にすることでしょう NOTE Paragraph 00:07:43.502 --> 00:07:46.864 ですから 私はこれが 喫緊の課題だと考えます 00:07:47.514 --> 00:07:48.980 パニックに陥る必要はありません 00:07:48.980 --> 00:07:53.469 スパゲッティの缶詰を買いだめしたり 地下室へ逃げ込む必要はありません 00:07:53.469 --> 00:07:57.309 でも 時間は味方をしてはくれません 今すぐに 取り組み始めなければ NOTE Paragraph 00:07:57.309 --> 00:08:03.524 実際 エボラの蔓延から得る 何か一つ良い教訓があるとすれば 00:08:03.524 --> 00:08:09.330 私たちが準備を始める為の 警鐘となったということでしょう 00:08:09.330 --> 00:08:14.978 今始めれば 次の疫病への対策は間に合います NOTE Paragraph 00:08:14.978 --> 00:08:16.574 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:08:16.574 --> 00:08:19.868 ( 拍手 )