WEBVTT 00:00:00.120 --> 00:00:02.215 信頼についてお話しするわけですが 00:00:02.215 --> 00:00:04.495 まずは 信頼について 00:00:04.495 --> 00:00:08.576 一般的に思われていることから 始めましょう 00:00:08.576 --> 00:00:10.815 非常にありふれた 00:00:10.815 --> 00:00:13.103 世間で決まり文句のように 言われてきていることが 00:00:13.103 --> 00:00:15.129 3つあると思うのです 00:00:15.129 --> 00:00:19.961 一つ目は こんな主張です 「信頼が極度に失われている」 00:00:19.961 --> 00:00:21.869 とても多くの人が そう信じています 00:00:21.869 --> 00:00:26.376 二つ目は 目標 「もっと相手を信頼するべきである」 00:00:26.376 --> 00:00:31.866 そして三つ目は 課題です 「信頼を再構築しなければならない」 NOTE Paragraph 00:00:31.866 --> 00:00:36.204 こうした主張・目標・課題は どれも 00:00:36.204 --> 00:00:38.374 見当はずれだと思うのです 00:00:38.374 --> 00:00:40.023 そこで今日はみなさんに 00:00:40.023 --> 00:00:44.713 信頼について もっとよく理解するための 手がかりとなる 00:00:44.713 --> 00:00:49.340 一味違った 主張・目標・課題について お話ししたいと思います NOTE Paragraph 00:00:49.340 --> 00:00:54.106 まず主張について なぜ信頼が 失われていると思うのでしょう? 00:00:54.106 --> 00:00:57.907 私自身がもつ証拠から考えてみますと 00:00:57.907 --> 00:00:59.681 正直わかりません 00:00:59.681 --> 00:01:03.490 信頼が失われた活動や団体も あるかとは思いますが 00:01:03.490 --> 00:01:06.996 より信頼を得たところも あるでしょう 00:01:06.996 --> 00:01:08.800 より信頼を得たところも あるでしょう 00:01:08.800 --> 00:01:10.744 概観は わかりませんが 00:01:10.744 --> 00:01:15.081 もちろん 世論調査を 見てみることはできます 00:01:15.081 --> 00:01:17.449 その世論調査が恐らく 00:01:17.449 --> 00:01:21.401 信頼が失われているという主張の 根拠なのでしょうが 00:01:21.401 --> 00:01:25.258 実際に 世論調査を 時代別に見てみますと 00:01:25.258 --> 00:01:27.056 あまりそういった 証拠はありません 00:01:27.056 --> 00:01:29.646 つまり こういうことです 20年前に 信頼されていなかった 00:01:29.646 --> 00:01:31.257 つまり こういうことです 20年前に 信頼されていなかった 00:01:31.257 --> 00:01:35.810 ジャーナリストとか政治家といった人たちは 今も 信頼されていないのです 00:01:35.810 --> 00:01:39.180 逆に 20年前に大きな信頼を得ていた人たちは 00:01:39.180 --> 00:01:42.625 今でも 信頼されているわけです 裁判官とか 看護師とかですが 00:01:42.625 --> 00:01:44.529 他は その中間です 00:01:44.529 --> 00:01:47.599 ちなみに そこらにいる平均的な人間は 00:01:47.599 --> 00:01:49.623 ちょうど真ん中あたり 00:01:49.623 --> 00:01:51.856 でも これが順当な証拠でしょうか 00:01:51.856 --> 00:01:56.012 世論調査が伝えるのは あくまで世論です 00:01:56.012 --> 00:01:57.579 それ以上のものはありません 00:01:57.579 --> 00:02:01.120 ですから世論調査で分かるのは 00:02:01.120 --> 00:02:04.659 「政治家は信頼できますか」 「先生は信頼できますか」 というような 00:02:04.659 --> 00:02:08.589 一定の質問を した時に 全体としてどんな反応が得られたかです NOTE Paragraph 00:02:08.589 --> 00:02:12.221 あなたが こう聞かれたとします 「八百屋さんは信頼できますか」 00:02:12.221 --> 00:02:14.118 「魚屋さんは信頼できますか」 00:02:14.118 --> 00:02:16.750 「小学校の先生は信頼できますか」 00:02:16.750 --> 00:02:20.341 そう聞かれたら 「何に対して?」 と 返すのではないでしょうか 00:02:20.341 --> 00:02:23.555 それが真っ当な反応だと思います 00:02:23.555 --> 00:02:28.680 そして 何に対する信頼を聞いているのか わかったとしても 00:02:28.680 --> 00:02:32.120 「それは 人によりますよ」 と言うんじゃありませんか 00:02:32.120 --> 00:02:34.038 それがもっとも合理的な答えです 00:02:34.038 --> 00:02:37.160 つまり 私たちは実生活において 00:02:37.160 --> 00:02:40.810 人を信頼するかは 個々のケースに委ねているのです 00:02:40.810 --> 00:02:44.386 特定の役職とか 職種とか あるタイプの人間に対して 00:02:44.386 --> 00:02:47.882 あらゆる状況において 常に同じだけの信頼を 00:02:47.882 --> 00:02:51.797 寄せているなんていうふうには 00:02:51.797 --> 00:02:53.742 考えないわけです 00:02:53.742 --> 00:02:57.465 例えば 私には 就学前の子どもに 読むことを教えることに対して 00:02:57.465 --> 00:02:59.910 例えば 私には 就学前の子どもに 読むことを教えることに対して 00:02:59.910 --> 00:03:02.536 絶対的な信頼を寄せている 小学校の先生がいるんですが 00:03:02.536 --> 00:03:06.184 その先生が スクールバスを運転するとなったら 信頼できません 00:03:06.184 --> 00:03:09.285 だって彼女は 恐らく運転がうまくありませんから 00:03:09.285 --> 00:03:12.562 おしゃべりが上手な友人は 00:03:12.562 --> 00:03:14.654 会話を続けることに関しては 信頼します 00:03:14.654 --> 00:03:24.313 でも―― 多分 秘密を守ることに関しては 信頼しないでしょうね 00:03:24.313 --> 00:03:25.562 単純なことです NOTE Paragraph 00:03:25.562 --> 00:03:30.468 普段の生活において 私たちの信頼の度合いは 場合によるという 00:03:30.468 --> 00:03:32.584 証拠がこれだけあるわけです 00:03:32.584 --> 00:03:35.835 ではなぜ 信頼について より抽象的に考えると 00:03:35.835 --> 00:03:39.458 それが分からなくなってしまうのでしょう 00:03:39.458 --> 00:03:42.202 世論調査というのは 実際の信頼度を測るのに 00:03:42.202 --> 00:03:45.259 非常に悪い方法だと思います 00:03:45.259 --> 00:03:48.831 そういった調査は 信頼を寄せるかどうかの判断材料について 00:03:48.831 --> 00:03:52.238 まったく触れないんです NOTE Paragraph 00:03:52.238 --> 00:03:54.430 次に 目標についてはどうでしょうか 00:03:54.430 --> 00:03:57.050 より多くの信頼を寄せる という目標です 00:03:57.050 --> 00:04:00.379 率直に言って これは ばかげた目標ですね 00:04:00.379 --> 00:04:02.326 私だったらこんなことは目指しません 00:04:02.326 --> 00:04:05.789 信頼できる人を もっと信頼して 00:04:05.789 --> 00:04:08.806 信頼できない人は 信頼しないことを目指します 00:04:08.806 --> 00:04:15.348 正直なところ 私は 信頼できない人を信頼しないように 努力しています 00:04:15.348 --> 00:04:18.960 例えば こういう人がいたでしょう 00:04:18.960 --> 00:04:23.661 かの有名な詐欺師の Mr.Madoff (マドフ氏) に財産を預けて 00:04:23.661 --> 00:04:26.300 文字通りMade-offされた (盗まれた) 人 00:04:26.300 --> 00:04:28.630 そういう人は 00:04:28.630 --> 00:04:30.493 信頼しすぎです 00:04:30.493 --> 00:04:34.350 多くの信頼を寄せることは 人生において賢い目標とは言えません 00:04:34.350 --> 00:04:38.344 賢く信頼し 賢く信頼しないことが 00:04:38.344 --> 00:04:40.811 適切な目標です 00:04:40.811 --> 00:04:44.274 こうとも言えますね 00:04:44.274 --> 00:04:47.418 つまり 一番に考えるべきは 00:04:47.418 --> 00:04:50.559 「信頼すること」ではなく 「信頼に足るか」 ということです 00:04:50.559 --> 00:04:53.477 ある点において どれだけ信頼できる人物なのか ということです 00:04:53.477 --> 00:04:55.406 ある点において どれだけ信頼できる人物なのか ということです NOTE Paragraph 00:04:55.406 --> 00:04:58.754 それを判断するには 次の3つのことをチェックする必要があります 00:04:58.754 --> 00:05:03.966 能力があるか 正直か 頼りになるか 00:05:03.966 --> 00:05:06.038 その人が 特定のことを遂行する能力があって 00:05:06.038 --> 00:05:07.774 その人が 特定のことを遂行する能力があって 00:05:07.774 --> 00:05:09.695 頼りになって 正直なら 00:05:09.695 --> 00:05:11.989 信頼に足るわけですから 00:05:11.989 --> 00:05:14.200 十分信頼していいでしょう 00:05:14.200 --> 00:05:17.866 でも反対に 頼りない人は 信頼に足るとはいえません 00:05:17.866 --> 00:05:20.110 私の友達に 有能で正直だけれども 00:05:20.110 --> 00:05:21.897 手紙の投函は頼めない人がいます 00:05:21.897 --> 00:05:24.469 忘れっぽいので信頼できないのです 00:05:24.469 --> 00:05:27.141 何かするのに自信満々なのですが 00:05:27.141 --> 00:05:29.104 何かするのに自信満々なのですが 00:05:29.104 --> 00:05:33.512 実はそう過信しているだけという友人もいます 00:05:33.512 --> 00:05:36.167 私は幸い 有能で頼りになるけれども 00:05:36.167 --> 00:05:39.801 とんでもなく嘘つきという友人は あまりいません 00:05:39.801 --> 00:05:40.641 (笑) 00:05:40.641 --> 00:05:44.028 いたとしても 気づいていません NOTE Paragraph 00:05:44.028 --> 00:05:46.322 でもつまり それが重要なことなのです 00:05:46.322 --> 00:05:48.520 信頼 よりも「信頼に足るか」 00:05:48.520 --> 00:05:50.428 信頼とは それに対する反応です 00:05:50.428 --> 00:05:52.768 信頼に足るかどうかを 判断しなければなりません 00:05:52.768 --> 00:05:54.499 これが難しいんですよね 00:05:54.499 --> 00:05:57.848 過去数十年の間に 00:05:57.848 --> 00:06:01.121 あらゆる組織 専門家 役人などが 00:06:01.121 --> 00:06:03.217 説明責任を求められるようになりました 00:06:03.217 --> 00:06:07.823 信頼に足るか判断するためのものだったはずですが 00:06:07.823 --> 00:06:11.095 多くの場合 逆効果でした 00:06:11.095 --> 00:06:12.971 本来の役目を果たしていないのです 00:06:12.971 --> 00:06:17.386 ある助産婦と話したとき こんなことを言っていました 00:06:17.386 --> 00:06:19.718 「赤ん坊を取り上げるより 書類作成に時間がかかって大変だわ」 00:06:19.718 --> 00:06:23.219 「赤ん坊を取り上げるより 書類作成に時間がかかって大変だわ」 00:06:23.219 --> 00:06:26.990 これは社会や組織で 00:06:26.990 --> 00:06:28.840 どこにでも見られる問題です 00:06:28.840 --> 00:06:31.253 信頼性を確保し証明するための 00:06:31.253 --> 00:06:33.582 説明責任のシステムが 00:06:33.582 --> 00:06:36.332 真逆に作用してしまっているのです 00:06:36.332 --> 00:06:38.196 真逆に作用してしまっているのです 00:06:38.196 --> 00:06:42.833 つまらない書類作成のために 00:06:42.833 --> 00:06:45.146 助産師のように 難しい仕事をする人が 00:06:45.146 --> 00:06:48.104 本来の仕事ができなくなっている 00:06:48.104 --> 00:06:50.838 例はいくらでもあります NOTE Paragraph 00:06:50.838 --> 00:06:52.748 ですから目標も違ってきます 00:06:52.748 --> 00:06:55.638 どちらかというと 「信頼に足ること」を目標とすべきで 00:06:55.638 --> 00:06:57.797 信頼に足るように努めることや 00:06:57.797 --> 00:06:59.746 信頼に足るということを 伝えようとしたり 00:06:59.746 --> 00:07:02.772 他人や 役人 政治家が信頼に足るか 00:07:02.772 --> 00:07:05.676 判断することは 00:07:05.676 --> 00:07:08.848 目標として変わってくるわけです 00:07:08.848 --> 00:07:13.222 これは簡単ではありません 判断の問題であり 00:07:13.222 --> 00:07:18.084 単純な反応や態度以上のものなのです NOTE Paragraph 00:07:18.084 --> 00:07:21.649 さて三つ目は 課題です 00:07:21.649 --> 00:07:25.221 信頼の再構築を 課題に設定すると 00:07:25.221 --> 00:07:26.960 これまた逆戻りです 00:07:26.960 --> 00:07:31.815 あなたと私が信頼を再構築する ということでしょうが 00:07:31.815 --> 00:07:34.268 まぁ 自分に対してはできますね 00:07:34.268 --> 00:07:36.666 自分の信頼性を高めることはできます 00:07:36.666 --> 00:07:40.298 二人の人間が ともに それぞれの信頼性を高めることはできます 00:07:40.298 --> 00:07:43.502 しかし信頼というのは やはり独特です 00:07:43.502 --> 00:07:46.262 人から得るものですからね 00:07:46.262 --> 00:07:49.439 人からもらうものを 再構築することはできません 00:07:49.439 --> 00:07:52.166 信頼をもらえるだけの基盤を 00:07:52.166 --> 00:07:55.349 相手に与えなければなりません 00:07:55.349 --> 00:07:58.541 だから あなた自身が信頼に足らないといけません 00:07:58.541 --> 00:08:00.925 だって 当たり前ですが 00:08:00.925 --> 00:08:04.511 常にすべての人を だますことは 通常 無理でしょう 00:08:04.511 --> 00:08:09.157 ですが あなた自身が信頼に足るという 00:08:09.157 --> 00:08:10.711 有用な証拠が必要です 00:08:10.711 --> 00:08:12.253 どうすればいいのでしょうか 00:08:12.253 --> 00:08:15.463 実は 毎日 あらゆるところで 00:08:15.463 --> 00:08:18.477 普通の人も 役人も 組織も とても効果的にやっていることなんですよ 00:08:18.477 --> 00:08:20.317 普通の人も 役人も 組織も とても効果的にやっていることなんですよ 00:08:20.317 --> 00:08:23.830 簡単な商売の例を出しましょう 00:08:23.830 --> 00:08:27.720 私が靴下を買うお店では 理由を言わずに 00:08:27.720 --> 00:08:29.972 返品することができます 00:08:29.972 --> 00:08:31.733 商品を返すと 代金をくれるか 00:08:31.733 --> 00:08:34.365 私が欲しかった色の靴下と替えてくれます 00:08:34.365 --> 00:08:36.554 すごいでしょう 信頼できるお店です 00:08:36.554 --> 00:08:39.885 だって私を優位に立たせてくれているんですから 00:08:39.885 --> 00:08:41.878 ここに大事なレッスンがあります 00:08:41.878 --> 00:08:44.932 相手を優位に立たせることは 00:08:44.932 --> 00:08:48.835 自分が信頼に足る人間であり 00:08:48.835 --> 00:08:51.853 言っていることに自信があるという証拠です 00:08:51.853 --> 00:08:54.025 つまるところ 私たちが目指すべきことは 00:08:54.025 --> 00:08:57.565 理解に難くはありません 00:08:57.565 --> 00:09:01.770 目指すべきは 互いが信頼に足る人間であり 00:09:01.770 --> 00:09:05.645 いつ どのように相手が信頼に足るのかを 判断できる人間関係です 00:09:05.645 --> 00:09:06.933 いつ どのように相手が信頼に足るのかを 判断できる人間関係です NOTE Paragraph 00:09:06.933 --> 00:09:10.791 大事なことは 00:09:10.791 --> 00:09:13.945 考えるべきは信頼ではなく― 00:09:13.945 --> 00:09:17.480 ましてや世論調査に現れる 間違った信頼度ではなく 00:09:17.480 --> 00:09:21.166 信頼に足る人間であること について である ということです 00:09:21.166 --> 00:09:23.780 信頼に足る人間であること について である ということです 00:09:23.780 --> 00:09:27.685 そして人に対して あなたが信頼に足るという 十分かつ有用な 00:09:27.685 --> 00:09:30.429 分かりやすい証拠をいかに与えるか ということです NOTE Paragraph 00:09:30.429 --> 00:09:31.490 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:09:31.490 --> 00:09:33.834 (拍手)