WEBVTT 00:00:01.317 --> 00:00:03.357 どうやって恐竜を見つけるのか? 00:00:03.928 --> 00:00:06.073 無理そうですよね? 00:00:06.650 --> 00:00:07.945 でも そうでもありません 00:00:07.969 --> 00:00:12.195 その答えは古生物学者なら 誰でも使う ある公式のおかげです 00:00:12.722 --> 00:00:14.674 これから秘訣をお話しします 00:00:15.350 --> 00:00:18.290 まず 正しい年代の岩石を見つけること 00:00:19.226 --> 00:00:23.320 次に その岩石が堆積岩であること 00:00:23.863 --> 00:00:28.303 それから 堆積岩の地層が 自然に露出したものであること 00:00:28.768 --> 00:00:29.919 それだけです 00:00:29.943 --> 00:00:33.354 その3つを備えた場所に行けば 00:00:33.378 --> 00:00:35.783 化石が見つかる可能性は高まります 00:00:36.313 --> 00:00:38.403 その公式を一つずつ見ていきましょう 00:00:38.812 --> 00:00:43.183 生物は それぞれ特定の 地質時代に生息します 00:00:43.207 --> 00:00:45.637 だから自分の興味に応じて 00:00:45.661 --> 00:00:47.829 正しい時代の岩石を 見つけ出さねければなりません 00:00:47.853 --> 00:00:49.363 三葉虫を見つけようと思ったら 00:00:49.387 --> 00:00:52.538 とっても とっても古い古生代の岩石- 00:00:52.562 --> 00:00:55.867 5億年前〜2.5億年前の岩石を 見つけなければなりません 00:00:56.306 --> 00:00:58.394 でも恐竜を見つけたいのなら 00:00:58.418 --> 00:01:00.775 古生代の岩石を探しても 見つかりません 00:01:00.799 --> 00:01:02.280 まだ恐竜は出現していませんから 00:01:02.304 --> 00:01:05.391 より新しい 中生代の岩石 さらに その中でも 00:01:05.415 --> 00:01:06.812 恐竜の場合なら 00:01:06.836 --> 00:01:10.561 2億3千5百万年〜6千6百万年前の 岩石を探さなくてはなりません 00:01:11.495 --> 00:01:14.670 正しい年代の岩を見つけるところまでは まあまあ簡単です 00:01:14.694 --> 00:01:17.826 なぜなら地球上どこでも ある程度の精度の地質図が 00:01:17.850 --> 00:01:19.180 作成されているからです 00:01:19.578 --> 00:01:22.041 これは苦労して入手した情報です 00:01:22.323 --> 00:01:25.127 地球の年代記は 岩石に書きつけられ 00:01:25.151 --> 00:01:26.452 次々と重なっていって 00:01:26.476 --> 00:01:29.080 一番古いページが下で 00:01:29.104 --> 00:01:31.178 一番新しいページが上になります 00:01:31.583 --> 00:01:35.636 そんなに簡単なら 地質学者にとって喜ばしいことですが 00:01:35.660 --> 00:01:36.918 実際は違います 00:01:36.942 --> 00:01:38.996 地球という図書館は とても古い上に 00:01:39.020 --> 00:01:41.659 順序を整理する図書館員もいません 00:01:42.111 --> 00:01:45.241 長い時間の流れの中で 00:01:45.265 --> 00:01:49.398 無数の地質学的過程が 古い岩石に 00:01:50.136 --> 00:01:51.895 あらゆる損傷をもたらします 00:01:52.277 --> 00:01:54.946 大半のページは書かれると すぐに壊されます 00:01:55.410 --> 00:01:57.162 ページの中には何度も上書きされた 00:01:57.186 --> 00:02:01.756 太古の光景を記録する羊皮紙のように 判読が難しいものもあります 00:02:02.384 --> 00:02:07.175 時と共に積み重なった砂の下で 守られたページでも 00:02:07.175 --> 00:02:09.008 真に安全とは言えません 00:02:09.410 --> 00:02:12.754 地球の相棒の月は 岩だらけで すでに死んでいますが 00:02:12.778 --> 00:02:16.418 地球は生きていて 創造と破壊の力がみなぎり 00:02:16.442 --> 00:02:18.893 地質的な新陳代謝の源となります 00:02:19.864 --> 00:02:22.237 アポロの宇宙飛行士が 持ち帰った月の岩石は全て 00:02:22.261 --> 00:02:25.228 太陽系とほぼ同じ年齢を示していました 00:02:25.609 --> 00:02:28.199 月の岩石は不変です 00:02:28.960 --> 00:02:33.100 一方 地球の岩石は 岩石圏の活動により 危機に直面しています 00:02:33.118 --> 00:02:37.544 破断、圧縮、褶曲、熱などが 組み合わさることで 00:02:37.568 --> 00:02:40.074 岩石が破壊されるのです 00:02:41.140 --> 00:02:46.192 だから 地球史という書物は 不完全で乱雑です 00:02:47.079 --> 00:02:50.694 その図書館は膨大で素晴らしいですが 00:02:51.964 --> 00:02:53.688 老朽化しているのです 00:02:54.273 --> 00:02:57.139 岩石に残された記録の 混乱と複雑さのせいで 00:02:57.163 --> 00:03:00.194 比較的最近まで その意味が捉えにくかったのです 00:03:01.031 --> 00:03:03.357 自然は蔵書目録を 与えてくれなかったので 00:03:03.381 --> 00:03:05.474 地質学者が考案する必要がありました 00:03:06.079 --> 00:03:09.710 シュメール人が粘土板に 考えを記録することを思いついてから 00:03:09.734 --> 00:03:10.886 5千年経っても 00:03:10.910 --> 00:03:13.993 人間にとって地球史という書物は 謎のままでした 00:03:14.495 --> 00:03:17.269 私たちに地質を読み解く力はなく 00:03:17.637 --> 00:03:20.819 我が地球に残された記録にも気付かず 00:03:20.843 --> 00:03:22.352 遠い昔と自分たちとの繋がりにも 00:03:22.376 --> 00:03:24.033 無知でした 00:03:25.040 --> 00:03:30.656 開眼したのは19世紀になってからでした 00:03:30.660 --> 00:03:35.054 まず ジェームズ・ハットンは 『地球の理論』で 00:03:35.078 --> 00:03:38.950 地球には 始まりの痕跡も 終わりの兆しも 00:03:38.974 --> 00:03:40.992 見当たらないと述べました 00:03:41.545 --> 00:03:45.491 次にイギリス本土全体の 初の地質図となる 00:03:45.515 --> 00:03:47.700 ウィリアム・スミスの 地図が出版されたことで 00:03:47.724 --> 00:03:49.090 初めて私たちが 00:03:49.114 --> 00:03:53.042 どこに どういう種類の岩石があるのかを 予測できるようになりました 00:03:53.504 --> 00:03:55.527 これを契機に こう言えるようになったのです 00:03:55.551 --> 00:03:58.554 「そこに行けば ジュラ紀の地層に なっているはずだ」とか 00:03:58.578 --> 00:04:02.329 「あの丘を越えれば 白亜紀の地層が見つかるはずだ」と 00:04:03.129 --> 00:04:05.984 だから 三葉虫を発掘したいなら 00:04:06.008 --> 00:04:08.137 正しい地質図を入手し 00:04:08.161 --> 00:04:10.412 古生代の岩石のある所へ行ってください 00:04:11.023 --> 00:04:13.342 皆さんが私のように 恐竜を見つけたいのなら 00:04:13.366 --> 00:04:16.420 中生代の岩石のある所へ行ってください 00:04:17.216 --> 00:04:20.315 無論 化石は砂や泥からできた 00:04:20.339 --> 00:04:21.988 堆積岩の中にしか見つかりません 00:04:22.489 --> 00:04:23.656 花崗岩のように 00:04:23.680 --> 00:04:27.004 マグマから作られた火成岩や 00:04:27.028 --> 00:04:30.090 熱や圧力によって作られた変成岩には 化石は見つかりません 00:04:30.773 --> 00:04:32.908 さらに 砂漠へ行かなければなりません 00:04:33.378 --> 00:04:36.459 ただし砂漠だけに恐竜がいた という意味ではありません 00:04:36.483 --> 00:04:38.047 恐竜は全ての大陸の 00:04:38.071 --> 00:04:40.128 考えうる あらゆる環境下で 生きていました 00:04:40.596 --> 00:04:43.541 今は砂漠になっている場所に 行くべきだという意味です 00:04:43.565 --> 00:04:46.739 岩石を覆う植物が多すぎず 00:04:46.763 --> 00:04:50.643 浸食により常に新しい骨が 地表に露出する所だからです 00:04:51.302 --> 00:04:52.835 だから この3つを探しましょう 00:04:52.859 --> 00:04:54.414 目指す年代の 00:04:54.438 --> 00:04:57.487 堆積岩で 砂漠にあるものです 00:04:57.511 --> 00:04:59.068 そして自分で その場所に行き 00:04:59.092 --> 00:05:00.604 文字どおり歩き回って 00:05:00.628 --> 00:05:03.216 岩から突き出した骨を 見つけるのです 00:05:04.562 --> 00:05:07.664 この写真は私が パタゴニア南部で撮ったものです 00:05:08.347 --> 00:05:11.109 地面にある小石はすべて 00:05:11.133 --> 00:05:12.866 恐竜の骨の破片です 00:05:13.478 --> 00:05:15.344 適切な状況下にいれば 00:05:15.368 --> 00:05:18.122 化石が見つかるかどうかは 問題ではありません 00:05:18.146 --> 00:05:19.535 化石は見つかるものです 00:05:19.559 --> 00:05:23.607 それより 科学的に重要なものが 見つかるかどうかが問題です 00:05:23.631 --> 00:05:27.601 この点を解決する 4つ目の公式をお話ししましょう 00:05:27.625 --> 00:05:28.802 こういうことです 00:05:29.431 --> 00:05:32.891 他の古生物学者から 出来る限り遠くへ離れること 00:05:32.915 --> 00:05:34.886 (笑) 00:05:34.910 --> 00:05:37.265 他の古生物学者が 嫌いなわけではありません 00:05:37.289 --> 00:05:39.814 比較的調査が進んでいない所に行けば 00:05:39.838 --> 00:05:42.652 化石が見つかるだけでなく 科学に貢献する 00:05:42.676 --> 00:05:45.185 新しい発見の可能性が ずっと高くなるからです 00:05:45.788 --> 00:05:47.899 これが恐竜を見つける 私の方法で 00:05:47.923 --> 00:05:49.956 世界中で試しています 00:05:49.980 --> 00:05:52.308 2004年 南半球の夏季に 00:05:52.332 --> 00:05:54.157 私は南アメリカの果て― 00:05:54.181 --> 00:05:56.298 アルゼンチンのパタゴニアの奥地まで 00:05:56.322 --> 00:05:58.575 恐竜が見つかることを期待して行きました 00:05:58.599 --> 00:06:01.972 そこには適切な年代の 陸成の堆積岩があり 00:06:01.996 --> 00:06:03.199 砂漠であり 00:06:03.223 --> 00:06:06.485 古生物学者がほとんど行かない所です 00:06:07.166 --> 00:06:08.599 そしてこれを見つけたのです 00:06:09.206 --> 00:06:11.319 これは大腿骨 つまり腿の骨で 00:06:11.343 --> 00:06:13.712 巨大な植物食恐竜のものです 00:06:13.736 --> 00:06:16.570 その骨は2.2メートルの長さがあり 00:06:16.594 --> 00:06:18.683 つまり7フィートを超えています 00:06:19.807 --> 00:06:21.907 ただ残念なことに これ1本だけでした 00:06:21.931 --> 00:06:24.970 私たちは掘りまくったのですが 周辺では別の骨は出ませんでした 00:06:24.994 --> 00:06:27.689 でも おかげで翌年も来て もっと調べたくなりました 00:06:27.713 --> 00:06:30.316 そして翌年の現地調査の初日に 00:06:30.340 --> 00:06:33.709 私はこれを見つけました またもや2メートルもある大腿骨です 00:06:33.733 --> 00:06:35.376 今回は1本だけでなく 00:06:35.400 --> 00:06:38.495 巨大な1体の植物食恐竜の145個の骨を 00:06:38.519 --> 00:06:40.319 見つけることができました 00:06:41.064 --> 00:06:45.160 とても大変で 過酷な 3度の野外調査期間を終えると 00:06:45.184 --> 00:06:47.136 石切り場はこうなりました 00:06:47.597 --> 00:06:51.715 私を取り巻いているのが 巨大恐竜の尻尾です 00:06:51.739 --> 00:06:55.291 ここに横たわっている恐竜は新種で 00:06:55.315 --> 00:06:59.013 後に「ドレッドノータス・シュラニ」と 命名しました 00:06:59.513 --> 00:07:02.509 ドレッドノータスは鼻先から尻尾まで 26メートルあります 00:07:03.030 --> 00:07:05.708 肩までが2.5階に相当します 00:07:06.217 --> 00:07:10.401 肉付けして復元すると 体重は65トンありました 00:07:11.290 --> 00:07:14.872 ドレッドノータスは ティラノサウルスより 大きかったか よく聞かれます 00:07:14.896 --> 00:07:17.680 ティラノサウルスの8~9倍の体重です 00:07:18.669 --> 00:07:21.709 古生物学者の特権といえば 00:07:21.733 --> 00:07:24.502 新種を発見した時 名前を付けられることがあります 00:07:24.526 --> 00:07:28.360 私が日頃から残念に思っているのは この巨大な植物食恐竜が 00:07:28.384 --> 00:07:32.863 復元図の中では 消極的でウスノロな 肉の塊として描かれることが 00:07:32.887 --> 00:07:34.132 あまりに多い点です 00:07:34.156 --> 00:07:35.282 (笑) 00:07:35.585 --> 00:07:36.884 でも違うのです 00:07:36.908 --> 00:07:39.927 大型草食動物は短気で 縄張り意識が強い場合があります 00:07:39.951 --> 00:07:44.474 カバやサイや水牛に ちょっかいを出してはいけません 00:07:44.871 --> 00:07:49.822 イエローストンのバイソンは グリズリーよりも多くの人を傷つけます 00:07:49.846 --> 00:07:54.987 想像できますか? 65トンもある 牡牛のようなドレッドノータスが 00:07:55.011 --> 00:07:56.714 繁殖期に 00:07:56.738 --> 00:07:58.238 縄張りを守る姿を 00:07:58.990 --> 00:08:01.310 ドレッドノータスは ひどく凶暴だったことでしょう 00:08:01.334 --> 00:08:06.055 周囲の生き物にとっては脅威である一方 自らは怖がるものが無かったことでしょう 00:08:06.507 --> 00:08:08.732 だから 「ドレッドノータス」 00:08:08.756 --> 00:08:10.717 「何も恐れないもの」なのです 00:08:12.047 --> 00:08:13.213 これほど巨大に成長するには 00:08:13.237 --> 00:08:15.849 ドレッドノータスのような動物は 効率的である 00:08:15.873 --> 00:08:17.030 必要がありました 00:08:17.054 --> 00:08:20.817 長い首と尻尾により体外へ熱を放出し 00:08:20.841 --> 00:08:23.379 受動的に体温調整します 00:08:23.403 --> 00:08:26.908 さらに その長い首で 非常に効率的に餌を摂ることができます 00:08:26.932 --> 00:08:29.712 ドレッドノータスは立っている所から 00:08:29.736 --> 00:08:32.028 首の届く広範囲の植物を平らげ 00:08:32.052 --> 00:08:35.966 極僅かなカロリー消費で 何万カロリーも摂取できました 00:08:36.621 --> 00:08:40.921 さらにブルドッグのような がに股に進化したことで 00:08:40.945 --> 00:08:42.760 驚異的な安定性を誇りました 00:08:43.625 --> 00:08:47.701 体重が65トンもあって まさに家のような大きさになると 00:08:47.702 --> 00:08:51.013 転ぶことは死を意味するからです 00:08:51.677 --> 00:08:53.582 ドレッドノータスは 大きくて頑丈でしたが 00:08:53.606 --> 00:08:55.383 そういう衝撃には耐えられません 00:08:55.407 --> 00:08:57.988 転んでしまうと 肋骨が折れ 肺に突き刺さり 00:08:58.012 --> 00:08:59.537 臓器が破裂してしまうのです 00:08:59.561 --> 00:09:01.347 65トンもあるドレッドノータスは 00:09:01.371 --> 00:09:03.948 一生に一度だって 転ぶことは許されないのです 00:09:05.664 --> 00:09:09.230 さて このドレッドノータスの死体が 土に埋まり 00:09:09.254 --> 00:09:13.974 無数の細菌、蠕虫、昆虫によって 肉が分解され 00:09:13.998 --> 00:09:16.163 地下水との間で分子の交換が 00:09:16.187 --> 00:09:18.203 短時間の間に行われ 骨は変性を受けて 00:09:18.227 --> 00:09:20.845 墓場の石のように ますます固くなっていったのです 00:09:21.603 --> 00:09:23.979 堆積物が何層にも積み重なると 00:09:24.003 --> 00:09:26.829 四方からの圧力がかかり まるで石のグローブに 00:09:26.853 --> 00:09:32.478 がっちりと長期間 握られるように 骨は安定し固定されます 00:09:33.654 --> 00:09:35.304 長い時間が過ぎ・・・ 00:09:36.044 --> 00:09:37.273 何も起こりませんでした 00:09:37.868 --> 00:09:41.186 単調な時の流れが続き 00:09:41.210 --> 00:09:43.154 何も起こりませんでした 00:09:43.501 --> 00:09:46.923 その間ずっと ドレッドノータスの骨は 00:09:46.947 --> 00:09:49.310 完璧な静けさの中で石の墓場に 00:09:49.334 --> 00:09:51.047 延々と横たわっていました 00:09:51.995 --> 00:09:54.012 一方 地上では 地球史が繰り広げられていました 00:09:54.036 --> 00:09:56.683 恐竜は その後1,200万年に渡って 君臨しましたが 00:09:56.707 --> 00:10:00.971 その後 恐ろしい大災害により絶滅しました 00:10:01.542 --> 00:10:04.220 大陸が移動し 哺乳類が興隆しました 00:10:04.244 --> 00:10:05.615 氷河期が到来すると 00:10:06.623 --> 00:10:08.870 東アフリカでは 00:10:08.894 --> 00:10:14.506 将来有望には見えなかった猿の一種が 「意識的思考」という奇妙な技を進化させました 00:10:15.752 --> 00:10:19.464 この賢い霊長類は 格別に速くも 強くもありませんでしたが 00:10:20.062 --> 00:10:22.268 広い範囲で生存する能力に優れており 00:10:22.292 --> 00:10:24.161 驚くべき大移動を成し遂げ 00:10:24.185 --> 00:10:27.327 その範囲はかつての恐竜の分布域を 凌駕していました 00:10:27.351 --> 00:10:29.281 彼らは地球上 至る所に広がり 00:10:29.305 --> 00:10:32.485 周囲の生態系をすべて略奪し 00:10:32.509 --> 00:10:35.690 その過程で文化や金属細工や絵画 00:10:35.714 --> 00:10:37.196 ダンスや音楽を作り 00:10:37.786 --> 00:10:39.270 科学を生み出し 00:10:39.793 --> 00:10:44.322 そして12匹の知能をもったサルが 00:10:44.346 --> 00:10:46.637 ロケットで月面に降り立ちました 00:10:48.900 --> 00:10:53.259 地球上には70億人もの ホモ・サピエンスが歩き回っているのですから 00:10:53.259 --> 00:10:54.470 たまたまその内の1人が 00:10:54.494 --> 00:10:58.532 パタゴニア南部の荒れ地に埋まった 巨大な恐竜の墓を 00:10:58.556 --> 00:11:01.508 踏みつけることは 必然だったのでしょう 00:11:02.614 --> 00:11:04.285 私がそのサルなのです 00:11:05.038 --> 00:11:08.631 砂漠に独り佇んで 00:11:08.640 --> 00:11:09.791 分かったことは 00:11:09.815 --> 00:11:13.445 各々の個体が 化石記録として残る確率は 00:11:13.469 --> 00:11:15.142 ほとんどゼロに等しいことです 00:11:16.039 --> 00:11:18.087 でも地球はすごく古いので 00:11:18.111 --> 00:11:22.371 膨大な時を経ると 起こりそうもないことが起こるのです 00:11:22.395 --> 00:11:25.086 それが地質学的な記録の魔法なのです 00:11:25.110 --> 00:11:28.292 年月を経た惑星で 様々な生物が生まれては死んでいき 00:11:28.316 --> 00:11:30.243 膨大な量の化石を残します 00:11:30.267 --> 00:11:31.909 1つ1つは小さな奇跡ですが 00:11:32.691 --> 00:11:35.224 全体としては 必然の結果なのです 00:11:36.572 --> 00:11:39.445 6千6百万年前 小惑星が地球に衝突し 00:11:39.953 --> 00:11:41.636 恐竜は絶滅しました 00:11:42.771 --> 00:11:45.029 そうならなかった可能性は十分あります 00:11:45.312 --> 00:11:48.167 でも私たちの歴史は唯一 今 ここにある歴史だけです 00:11:48.191 --> 00:11:50.467 しかし この特定の現実に 必然性はありませんでした 00:11:50.491 --> 00:11:53.293 地球から遠く離れたその小惑星に ほんの僅かな― 00:11:53.317 --> 00:11:56.318 摂動が加わっていれば 地球を大きく逸れていたでしょう 00:11:56.754 --> 00:12:00.107 恐竜を絶滅させるのに決定的となった 災害が起きた日は 00:12:00.131 --> 00:12:03.342 我々の知ったる現代社会を産み出す 時代の幕開けとなりましたが 00:12:03.366 --> 00:12:04.898 その日である必然性はありませんでした 00:12:04.922 --> 00:12:06.887 別の日だったのかもしれません 00:12:07.443 --> 00:12:08.784 木曜日とか 00:12:09.856 --> 00:12:14.783 恐竜が繁栄した 630億日間の どの日でもよかったのです 00:12:15.313 --> 00:12:16.698 地質学的な時間においては 00:12:16.722 --> 00:12:19.607 起こるはずもないことが ほとんど有り得ないことが 00:12:19.631 --> 00:12:20.782 実際に起こるのです 00:12:20.806 --> 00:12:23.729 虫のようなカンブリア紀の私たちの祖先から 00:12:23.753 --> 00:12:26.156 スーツを着た霊長類に至るまで 00:12:26.180 --> 00:12:31.061 無数の分岐点があり この特定の現実へと導きました 00:12:31.982 --> 00:12:36.074 ドレッドノータスの骨は7千7百万年も 土に埋もれていました 00:12:36.899 --> 00:12:38.070 誰が想像できたでしょうか? 00:12:38.094 --> 00:12:41.058 恐竜が支配する世界の 隙間に住んでいた 00:12:41.082 --> 00:12:43.126 トガリネズミのような哺乳類の一種が 00:12:43.150 --> 00:12:45.202 恐怖の対象だったであろう恐竜の 00:12:45.226 --> 00:12:47.582 特徴を知り 理解することができる 00:12:47.606 --> 00:12:50.613 意識を持つ存在に 進化するなどと? 00:12:52.775 --> 00:12:55.798 以前 ミズーリ川の源流に立って 00:12:57.107 --> 00:12:58.708 またいでみたことがあります 00:12:59.123 --> 00:13:01.325 そこはゴボゴボと音を立てる 水の流れにすぎません 00:13:01.349 --> 00:13:05.960 ビタールート山脈の高地にある 牧草地の巨石の下から 00:13:05.984 --> 00:13:07.681 流れ出ています 00:13:08.165 --> 00:13:10.557 その隣にある小川は 数百メートル流れて 00:13:11.407 --> 00:13:12.859 小さな池で終わっています 00:13:13.970 --> 00:13:16.867 2つの小川は よく似ています 00:13:17.732 --> 00:13:20.271 でも片方は名もない流れで 00:13:20.295 --> 00:13:22.564 もう1つはミズーリ川です 00:13:23.667 --> 00:13:27.164 ミズーリ川の河口へと下り セントルイスの付近に来ると 00:13:27.188 --> 00:13:29.905 これが大河であることが よく分かります 00:13:30.640 --> 00:13:33.354 でもビタールート山脈で ミズーリ川を見ても 00:13:33.378 --> 00:13:37.848 人間の目には 特別な川に見えないのです 00:13:39.030 --> 00:13:40.984 さて 白亜紀に遡って 00:13:41.008 --> 00:13:43.453 小さな毛玉のような 私たちの祖先を見てみましょう 00:13:43.477 --> 00:13:44.914 彼らが何か特別な生き物に 00:13:44.938 --> 00:13:47.015 進化するとは思えなかったでしょうし 00:13:47.039 --> 00:13:48.687 厄介な小惑星が来なかったら 00:13:48.711 --> 00:13:50.948 多分こんな進化は遂げなかったでしょう 00:13:51.797 --> 00:13:55.158 千個の世界と千個の太陽系を作って 00:13:55.182 --> 00:13:56.468 時を進ませてみても 00:13:57.047 --> 00:13:59.201 同じ結果は決して得られません 00:13:59.225 --> 00:14:02.630 きっと どれも驚くほど あり得なさそうな世界でしょう 00:14:02.654 --> 00:14:05.962 ただ 我々の世界や歴史とは 違っていることでしょう 00:14:05.986 --> 00:14:08.965 起こり得る歴史は無数にありましたが 00:14:08.989 --> 00:14:11.515 我々はその1つを― 良い歴史を得たのです 00:14:11.539 --> 00:14:14.377 ドレッドノータスのような恐竜も 実在しました 00:14:15.058 --> 00:14:18.423 モササウルスのような海の怪獣も 実在しました 00:14:19.216 --> 00:14:23.312 ワシほどの翼長のあるトンボや 全長が車ほどのダンゴムシも 00:14:23.336 --> 00:14:24.899 実在したのです 00:14:27.192 --> 00:14:29.055 なぜ古代を研究するのか? 00:14:30.652 --> 00:14:33.049 大局観や謙虚さを 00:14:33.065 --> 00:14:34.529 与えてくれるからです 00:14:34.977 --> 00:14:38.409 恐竜は5回目の大量絶滅で 死に絶えました 00:14:38.433 --> 00:14:42.201 恐竜に落ち度はなく 宇宙で起きた偶然の出来事のせいです 00:14:43.114 --> 00:14:46.573 恐竜には それを予測する力も 選択肢もありませんでした 00:14:48.009 --> 00:14:51.475 でも 私たちには選択肢があるのです 00:14:51.943 --> 00:14:55.934 化石記録が語るのは 地球における我々の地位は 00:14:55.958 --> 00:14:58.757 不確かで はかないものだということです 00:14:59.127 --> 00:15:02.895 現在 人類は地質学的なスケールで 環境破壊を広げており 00:15:02.919 --> 00:15:06.502 その規模は広範囲で深刻なため 00:15:06.526 --> 00:15:09.431 まさに6回目の大量絶滅と 呼べるのです 00:15:10.429 --> 00:15:12.245 ただ恐竜とは違って 我々は― 00:15:13.128 --> 00:15:14.809 絶滅の危機を見通すことができます 00:15:15.438 --> 00:15:17.111 また 恐竜とは違って 00:15:17.708 --> 00:15:19.444 私たちは対策を立てられます 00:15:20.406 --> 00:15:22.815 我々は選択することができるのです 00:15:23.490 --> 00:15:24.641 ありがとうございました 00:15:24.665 --> 00:15:36.763 (拍手)