WEBVTT 00:00:06.791 --> 00:00:08.526 心がざわついて眠れませんか 00:00:08.526 --> 00:00:10.299 不機嫌でイライラしていますか 00:00:10.299 --> 00:00:11.839 物忘れが多いですか 00:00:11.839 --> 00:00:14.602 圧倒された感じや孤独感がありますか 00:00:14.602 --> 00:00:16.567 心配いりません 誰もが経験することです 00:00:16.567 --> 00:00:18.779 おそらくストレスが溜まっているのでしょう 00:00:18.779 --> 00:00:20.967 ストレスは悪いものとは限りません 00:00:20.967 --> 00:00:24.178 特にエネルギーや集中力が グッと必要な場面では便利なものです 00:00:24.178 --> 00:00:26.589 たとえば競技スポーツの最中や 00:00:26.589 --> 00:00:28.516 人前で話さなければならない場面です 00:00:28.516 --> 00:00:30.086 ただしストレスが長引き 00:00:30.086 --> 00:00:33.105 明けても暮れても ストレスにさらされていると 00:00:33.105 --> 00:00:36.932 脳に変化が起きてきます 00:00:36.932 --> 00:00:38.152 慢性ストレスは 00:00:38.152 --> 00:00:41.235 たとえば過労や 家族との口論の渦中にいる状態ですが 00:00:41.235 --> 00:00:42.778 その影響は脳の大きさや 00:00:42.778 --> 00:00:43.966 構造や 00:00:43.966 --> 00:00:45.249 機能の仕方から 00:00:45.249 --> 00:00:48.249 遺伝子レベルにまで及びます 00:00:48.249 --> 00:00:49.980 ストレスは まず 00:00:49.980 --> 00:00:53.606 視床下部・下垂体・副腎皮質(HPA)系で 起きます 00:00:53.606 --> 00:00:55.698 腎臓と脳の内分泌系で 00:00:55.698 --> 00:00:59.579 一連のやり取りが行われ 00:00:59.579 --> 00:01:02.500 これがストレスに対する身体の反応を コントロールします 00:01:02.500 --> 00:01:04.904 脳がストレスの多い状況を感知すると 00:01:04.904 --> 00:01:08.856 HPA系はすぐに活性化し 00:01:08.856 --> 00:01:15.022 コルチゾールというホルモンが分泌され 身体のとっさの動きに備えます 00:01:15.022 --> 00:01:18.331 しかし長期間にわたって コルチゾール値の高い状態が続くと 00:01:18.331 --> 00:01:20.826 脳内が大混乱します 00:01:20.826 --> 00:01:24.262 たとえば慢性ストレスは 扁桃体の活動レベルを高め 00:01:24.262 --> 00:01:28.277 扁桃体での神経結合を増強します 00:01:28.277 --> 00:01:30.489 扁桃体は脳内で 恐れを担当する部署です 00:01:30.489 --> 00:01:32.413 コルチゾール値が高まると 00:01:32.413 --> 00:01:34.760 海馬という― 00:01:34.760 --> 00:01:39.421 学習や記憶や ストレス制御に関わる脳の領域で 00:01:39.421 --> 00:01:41.054 電気信号の働きが鈍くなります 00:01:41.054 --> 00:01:45.229 海馬にはHPA系の働きを 抑制する役目もありますから 00:01:45.229 --> 00:01:46.511 海馬の働きが弱まると 00:01:46.511 --> 00:01:49.982 ストレスを制御する力も 弱まるというわけです 00:01:49.982 --> 00:01:51.322 それだけでは ありません 00:01:51.322 --> 00:01:55.880 コルチゾールは実際に脳を 萎縮させる可能性があります 00:01:55.880 --> 00:02:00.703 過剰なコルチゾールは ニューロン間のシナプス結合の減少や 00:02:00.703 --> 00:02:03.267 前頭前野の萎縮を引き起こします 00:02:03.267 --> 00:02:06.871 前頭前野とは脳の領域のうち 集中や 00:02:06.871 --> 00:02:08.253 決断や 00:02:08.253 --> 00:02:09.379 判断や 00:02:09.379 --> 00:02:11.620 社会的交流を司るところです 00:02:11.620 --> 00:02:16.437 また過剰なコルチゾールは 海馬で新しい脳細胞が作られるのを妨げます 00:02:16.437 --> 00:02:19.925 つまり慢性ストレスによって 00:02:19.925 --> 00:02:21.401 学習や記憶が困難になり 00:02:21.401 --> 00:02:24.324 うつなどの より深刻な精神疾患の土台を作り 00:02:24.324 --> 00:02:28.875 ついにはアルツハイマー病を 招いてしまうかもしれません 00:02:28.875 --> 00:02:33.181 ストレスの影響は脳のDNAにも 及ぶ可能性があります 00:02:33.181 --> 00:02:34.497 ある実験では 00:02:34.497 --> 00:02:38.706 生まれたてのマウスに対し 母親がどれだけ子育てするかによって 00:02:38.706 --> 00:02:43.878 子が後々ストレスにどう反応するか 決まってくることが証明されました 00:02:43.878 --> 00:02:48.336 母親に育てられた子の方が ストレス耐性がありました 00:02:48.336 --> 00:02:51.769 このタイプの子の脳では コルチゾールの受容体が多いためです 00:02:51.769 --> 00:02:54.757 受容体はコルチゾールを捕まえて ストレス反応を弱めます 00:02:54.757 --> 00:02:58.223 育児を放棄した母親の子は 反対の結果になりました 00:02:58.223 --> 00:03:01.910 つまり生涯にわたって ストレスを感じやすくなったのです 00:03:01.910 --> 00:03:04.675 これは後成的な変化と考えられます 00:03:04.675 --> 00:03:07.524 つまり こうした変化は 遺伝コードそのものには影響せず 00:03:07.524 --> 00:03:10.514 遺伝子の発現に 影響を与えるということです 00:03:10.514 --> 00:03:14.361 母親を入れ替えれば逆のことが起きます 00:03:14.361 --> 00:03:16.123 驚くべき結果が出ています 00:03:16.123 --> 00:03:19.788 ある1匹の母親マウスがもたらした 後成的な変化は 00:03:19.788 --> 00:03:23.622 その後 何代にもわたって 子孫に受け継がれました 00:03:23.622 --> 00:03:28.077 言い換えれば こうした作用の結果には 遺伝性があるということです 00:03:28.077 --> 00:03:30.417 悪い話ばかりではありません 00:03:30.417 --> 00:03:34.817 コルチゾールでストレスのたまった脳の状態を 好転させる方法はいろいろあります 00:03:34.817 --> 00:03:38.713 最強の武器は運動と瞑想です 00:03:38.713 --> 00:03:40.376 深く呼吸をしたり 00:03:40.376 --> 00:03:43.521 周囲の物事に対する認識力や 集中力を高めたりするからです 00:03:43.521 --> 00:03:46.255 運動も瞑想もストレスを軽減し 00:03:46.255 --> 00:03:49.525 海馬の容量を増やしますから 00:03:49.525 --> 00:03:51.770 結果的に記憶力を向上させます 00:03:51.770 --> 00:03:54.470 ですから日々のプレッシャーに 負けないでください 00:03:54.470 --> 00:03:59.228 ストレスに支配される前に ストレスを支配してしまいましょう