WEBVTT 00:00:01.220 --> 00:00:02.400 民主主義— 00:00:02.960 --> 00:00:04.296 西洋社会は 00:00:04.320 --> 00:00:08.256 それを当たり前に考えるという 大きな間違いを犯しています 00:00:08.280 --> 00:00:09.576 私たちの目には 00:00:09.600 --> 00:00:14.096 花の如く実に脆い 民主主義の本当の姿ではなく 00:00:14.120 --> 00:00:16.960 社会に備え付けのものとして 見えています 00:00:17.960 --> 00:00:21.960 岩のように動かないもの あって当然のものと思いがちです 00:00:22.680 --> 00:00:27.896 資本主義こそが民主主義を生み出すと 誤解していますが 00:00:27.920 --> 00:00:29.256 間違いです NOTE Paragraph 00:00:29.280 --> 00:00:33.656 シンガポール元首相リー・クアンユーと 彼を見事に真似た中国政府が 00:00:33.680 --> 00:00:36.616 合理的な疑いの余地なく 証明してみせたように 00:00:36.640 --> 00:00:40.536 資本主義を繁栄させ 00:00:40.560 --> 00:00:42.160 目覚ましい経済発展を遂げるのは 00:00:42.960 --> 00:00:46.016 民主性ゼロの政治でも 完全に可能なのです 00:00:46.040 --> 00:00:50.456 実際 我らが住処であるヨーロッパは 民主主義から 00:00:50.480 --> 00:00:52.056 遠ざかりつつあります NOTE Paragraph 00:00:52.080 --> 00:00:55.456 今年2015年の初め 新しく誕生したギリシャ政府の 00:00:55.480 --> 00:00:58.216 財務大臣として ユーロ圏の財務相が集まる— 00:00:58.240 --> 00:01:00.936 ユーログループに出席した際 00:01:00.960 --> 00:01:05.930 我が国の民主的プロセス つまり選挙によって 00:01:05.950 --> 00:01:09.136 ギリシャで実施中の経済政策を 00:01:09.160 --> 00:01:12.400 妨げることは許されないのだと はっきり告げられました 00:01:13.120 --> 00:01:18.656 リー・クアンユーや中国共産党のやり方を これほど正当化した話は他にない 00:01:18.680 --> 00:01:20.216 その時 そう感じました 00:01:20.240 --> 00:01:23.976 実際 何か少しでも 変化を起こす恐れがあれば 00:01:24.000 --> 00:01:28.320 民主制自体禁止されかねないと 反体制的な友人たちがいつも言っていました NOTE Paragraph 00:01:29.640 --> 00:01:32.896 私は今夜 ここで 真の民主主義とは何か 00:01:32.920 --> 00:01:36.083 経済的観点から 論証を行いたいと思います 00:01:36.600 --> 00:01:41.456 皆さんにも 再び信じてほしいことがあります 00:01:41.480 --> 00:01:43.510 リー・クアンユーや 00:01:44.480 --> 00:01:45.856 中国共産党 00:01:45.880 --> 00:01:47.256 ましてや ユーログループが 00:01:47.280 --> 00:01:50.920 民主主義なしで済ませられるなどと 考えるのは誤りであり 00:01:51.600 --> 00:01:55.336 我々には 議論飛び交う 真の民主主義が 必要なのです 00:01:55.360 --> 00:01:58.336 民主主義なしでは 00:01:58.360 --> 00:02:01.216 我々の社会はますます荒れていき 00:02:01.240 --> 00:02:03.376 未来に希望はなく 00:02:03.400 --> 00:02:06.216 人類の素晴らしい技術革新も 無駄になってしまいます NOTE Paragraph 00:02:06.240 --> 00:02:07.496 無駄といえば 00:02:07.520 --> 00:02:10.294 ひとつ 面白いパラドックスを 紹介させていただきましょう 00:02:10.320 --> 00:02:13.096 今まさに 我々の経済を 脅かしている現象です 00:02:13.120 --> 00:02:15.416 「ツインピークス・パラドックス」と呼びます 00:02:15.440 --> 00:02:16.736 片方のピーク(山)は 00:02:16.760 --> 00:02:18.376 もう見てお分かりですね 00:02:18.400 --> 00:02:23.456 アメリカやヨーロッパ、そして全世界に 長く暗い影を落としている— 00:02:23.480 --> 00:02:26.296 山積みの負債のことです 00:02:26.320 --> 00:02:28.200 負債の山のことは誰でもわかります 00:02:28.880 --> 00:02:33.000 でも その双子の片割れが見えている人は 僅かでしょう 00:02:33.640 --> 00:02:35.840 動かずに眠っている 莫大なお金の山です 00:02:36.840 --> 00:02:40.200 金持ちや企業が溜めこみながら 00:02:41.120 --> 00:02:43.696 投資に二の足を踏んでいる資金です 00:02:43.720 --> 00:02:47.016 生産活動を通じて 収入を生み出し 00:02:47.040 --> 00:02:50.096 ひいては巨額の負債を 返済に充てるための投資や 00:02:50.120 --> 00:02:54.096 例えば再生可能エネルギーのように 人類が切に必要としているものを 00:02:54.120 --> 00:02:55.776 生み出すための投資です NOTE Paragraph 00:02:55.800 --> 00:02:58.136 ここで2つの数字に 注目してください 00:02:58.160 --> 00:02:59.496 過去3ヶ月に 00:02:59.520 --> 00:03:02.296 アメリカ、イギリス そしてユーロ圏にて 00:03:02.320 --> 00:03:06.736 富を生み出す財への投資された額を すべて合わせると 00:03:06.760 --> 00:03:09.416 3.4兆ドルにあたります 00:03:09.440 --> 00:03:12.456 例えば 工場、機械 00:03:12.480 --> 00:03:14.696 オフィスビル、学校 00:03:14.720 --> 00:03:17.856 道路、鉄道、機械設備など まだまだあります 00:03:17.880 --> 00:03:20.616 3.4兆ドルって 大金に聞こえますよね 00:03:20.640 --> 00:03:24.496 でも 今言った国々で 同時期に 5.1兆ドルが 00:03:24.520 --> 00:03:27.216 金融機関の中で 遊んでいるだけだとしたら 00:03:27.240 --> 00:03:29.056 そうも思えなくなります 00:03:29.080 --> 00:03:32.280 5.1兆ドルが まったく何もせず 00:03:33.440 --> 00:03:38.296 むしろ 株価と不動産価格の高騰を 招いたのみなのですからね NOTE Paragraph 00:03:38.320 --> 00:03:43.576 つまり 山積みの負債と 眠れる資産の山 00:03:43.600 --> 00:03:47.296 この2つの山が 経済市場の通常の活動の中では 00:03:47.320 --> 00:03:50.136 相殺できていないのです NOTE Paragraph 00:03:50.160 --> 00:03:52.480 これが賃金の停滞につながり 00:03:53.360 --> 00:03:59.016 アメリカ、日本、ヨーロッパにおける 25歳から54歳までの4人に1人は 00:03:59.040 --> 00:04:00.536 失業者です 00:04:00.560 --> 00:04:02.896 結果 総需要も上がらないという 00:04:02.920 --> 00:04:05.136 悪循環は止まらず 00:04:05.160 --> 00:04:07.880 投資する側は悲観的になります 00:04:08.880 --> 00:04:12.696 需要不足を恐れて控えた投資が みずから需要を減らしているのです 00:04:12.720 --> 00:04:15.416 オイディプスの父親と全く同じ状況です 00:04:15.440 --> 00:04:17.935 実の息子に殺されるであろうという 00:04:17.959 --> 00:04:20.696 神託を恐れるあまりに 00:04:20.720 --> 00:04:22.656 図らずして 息子のオイディプスに 00:04:22.680 --> 00:04:25.880 本当に殺されるための お膳立てをしてしまう話です NOTE Paragraph 00:04:26.560 --> 00:04:28.830 資本主義がおかしいと思うのはここです 00:04:29.200 --> 00:04:31.216 全体的な無駄や 00:04:31.240 --> 00:04:32.856 この眠れる大金こそ 00:04:32.880 --> 00:04:36.976 人々の生活の質を向上するため 00:04:37.000 --> 00:04:38.336 人材を開発するため 00:04:38.360 --> 00:04:41.216 そして何より 様々な技術を開発するため— 00:04:41.240 --> 00:04:43.426 特に 地球を守るために必要不可欠な 00:04:43.450 --> 00:04:45.700 環境に優しい技術開発に 投資するべきです NOTE Paragraph 00:04:46.280 --> 00:04:49.536 民主主義がこの課題を解決すると 信じていいのでしょうか? 00:04:49.560 --> 00:04:50.916 私は信じていますが 00:04:50.940 --> 00:04:52.016 次の話に移る前に 00:04:52.040 --> 00:04:53.850 民主主義の定義を見ておきましょう 00:04:54.520 --> 00:04:56.936 アリストテレスによれば 00:04:56.960 --> 00:05:01.896 大多数を占める 自由人や貧乏人が 00:05:01.920 --> 00:05:04.080 政府を支配する制度を指します NOTE Paragraph 00:05:05.000 --> 00:05:08.296 もちろん アテネの民主政は 多くの人を除外するものでした 00:05:08.320 --> 00:05:11.360 女性、移民、そして当然 奴隷も除外されていました 00:05:12.040 --> 00:05:13.926 しかし 除外された人がいたからと言って 00:05:13.926 --> 00:05:16.896 古代アテネの民主政の重要性を 00:05:16.920 --> 00:05:18.920 否定するのは間違いだと思います NOTE Paragraph 00:05:19.680 --> 00:05:21.656 それより重要なのは 00:05:21.680 --> 00:05:24.816 低所得の労働者は 含まれていたという点です 00:05:24.840 --> 00:05:28.336 今でも大事なことです 00:05:28.360 --> 00:05:33.056 言論の自由も得ていましたが 00:05:33.080 --> 00:05:35.336 それより重要な 肝心な点は 00:05:35.360 --> 00:05:37.976 労働者階級が参政権を持ち 00:05:38.000 --> 00:05:40.376 一人一人が 同じ重みを与えられて 00:05:40.400 --> 00:05:44.056 国を動かす意思決定に関わったのです 00:05:44.080 --> 00:05:47.136 もちろん アテネの民主政は 長続きしませんでした 00:05:47.160 --> 00:05:51.576 輝くろうそくのように すぐに燃え尽きてしまいました 00:05:51.600 --> 00:05:52.816 事実 00:05:52.840 --> 00:05:57.096 今日の自由民主主義の根源は 古代アテネではありません 00:05:57.120 --> 00:05:59.456 むしろ マグナ・カルタや 00:05:59.480 --> 00:06:02.736 1688年の名誉革命や 00:06:02.760 --> 00:06:04.976 アメリカ合衆国憲法から 発展したものです 00:06:05.000 --> 00:06:10.016 アテネの民主政は 所有者のいない市民を中心に据え 00:06:10.040 --> 00:06:12.320 貧しい労働者階級に力を与えたのに対し 00:06:13.240 --> 00:06:17.416 我々の自由民主主義は マグナ・カルタ— 00:06:17.440 --> 00:06:20.536 つまり支配者のための憲章という 伝統に基づいています 00:06:20.560 --> 00:06:24.856 事実 自由民主主義が 浮上したのは 00:06:24.880 --> 00:06:28.736 政治を経済の領域から 完全に切り離して 00:06:28.760 --> 00:06:33.816 民主政治のプロセスを政治の領域内に 限定することができてからでした 00:06:33.840 --> 00:06:35.696 これにより 経済の領域— 00:06:35.720 --> 00:06:37.656 いわば 営利企業の世界が 00:06:37.680 --> 00:06:40.360 民主主義とは無関係になりました NOTE Paragraph 00:06:41.720 --> 00:06:44.696 さて 現代の民主主義においては 00:06:44.720 --> 00:06:48.216 経済と政治の領分の分離 00:06:48.240 --> 00:06:50.496 これが始まった途端に 00:06:50.520 --> 00:06:54.816 双方の間に 手のつけられない 壮大な争いが勃発しました 00:06:54.840 --> 00:06:57.936 経済界が 政界に侵食し 00:06:57.950 --> 00:06:59.600 政治を乗っ取り始めたのです NOTE Paragraph 00:07:00.480 --> 00:07:03.880 昔に比べると ろくな政治家がいないと 思ったことはありませんか? 00:07:04.560 --> 00:07:06.976 DNAが劣化したからではありませんよ NOTE Paragraph 00:07:07.000 --> 00:07:08.616 (笑) NOTE Paragraph 00:07:08.640 --> 00:07:13.256 現代では 内閣の一員だからといって 権力者だとは限りませんん 00:07:13.290 --> 00:07:17.840 権力が 政界から離れて 経済界に移動してしまったせいです NOTE Paragraph 00:07:19.160 --> 00:07:20.736 先ほど 00:07:20.760 --> 00:07:23.056 資本主義はおかしいと思う と言いましたが 00:07:23.080 --> 00:07:24.816 考えてみると 00:07:24.840 --> 00:07:28.160 これは 例えるならば 肉食動物が 00:07:29.080 --> 00:07:33.800 食糧である被食動物を獲りすぎて 根絶やしにしてしまい 00:07:34.560 --> 00:07:36.696 最終的には 飢えに苦しむようなものです NOTE Paragraph 00:07:36.720 --> 00:07:37.936 これと同じように 00:07:37.960 --> 00:07:41.656 経済界による政治の 乗っ取りや共食いが 00:07:41.680 --> 00:07:45.056 あまりに行きすぎて 経済そのものが蝕まれ 00:07:45.080 --> 00:07:46.816 経済危機が起きているのです 00:07:46.840 --> 00:07:48.936 企業が持つ力は拡大し 00:07:48.960 --> 00:07:51.176 「政治財」の価値は下がります 00:07:51.200 --> 00:07:53.016 不平等が進み 00:07:53.040 --> 00:07:54.616 総需要が収縮し 00:07:54.640 --> 00:08:00.760 企業経営者達は 自社資金での 投資を渋るというわけです NOTE Paragraph 00:08:01.520 --> 00:08:08.176 つまり 資本主義が 民主主義から 人民(デモス)を除外すればするほど 00:08:08.200 --> 00:08:09.536 2つの山は高くなり 00:08:09.560 --> 00:08:13.096 人材の無駄や 人類の富の無駄が 00:08:13.120 --> 00:08:14.560 増すばかりなのです NOTE Paragraph 00:08:15.640 --> 00:08:18.496 これが正しいとすれば 00:08:18.520 --> 00:08:21.576 政治と経済の領域を 合体させねばなりません 00:08:21.600 --> 00:08:25.096 できれば 人民が中心となって 行うべきでしょう 00:08:25.120 --> 00:08:28.056 古代アテネに倣うのです ただし 奴隷はなしで 00:08:28.080 --> 00:08:31.040 女性や移民を除外せずに行うべきです NOTE Paragraph 00:08:32.120 --> 00:08:33.856 これは何も目新しい考えではなく 00:08:33.880 --> 00:08:36.655 100年前 マルクス主義左派が 既に唱えていました 00:08:36.679 --> 00:08:38.360 でも失敗しましたね NOTE Paragraph 00:08:38.840 --> 00:08:42.256 ソヴィエト崩壊からの学びは 00:08:42.280 --> 00:08:48.616 新たな残虐行為や無駄を生み出さすことなく 低所得労働者が 古代アテネのように 00:08:48.640 --> 00:08:50.616 再び力を得るのは 00:08:50.640 --> 00:08:54.400 奇跡が起こらないと無理だ ということでした NOTE Paragraph 00:08:54.960 --> 00:08:56.200 でも 解決策はあります 00:08:56.880 --> 00:08:58.720 低所得労働者をなくせばいい 00:08:59.360 --> 00:09:00.616 資本主義では 00:09:00.640 --> 00:09:05.520 低賃金労働者を自動機械、アンドロイド ロボットなどで置き換えています 00:09:07.080 --> 00:09:08.296 ここでの問題は 00:09:08.320 --> 00:09:11.536 政治と経済の領域が 別々に存在する限りは 00:09:11.560 --> 00:09:15.880 どんなに自動化を進めても 2つの山はさらに高くなり 00:09:16.640 --> 00:09:18.376 ゴミの山は積み上がり 00:09:18.400 --> 00:09:20.456 社会の葛藤は深くなるのみ 00:09:20.480 --> 00:09:21.680 もうすぐ 00:09:22.320 --> 00:09:23.856 中国のような地域でも 00:09:23.880 --> 00:09:25.480 そうなるでしょう NOTE Paragraph 00:09:26.720 --> 00:09:29.136 だから我々は 今までのやり方を見直し 00:09:29.160 --> 00:09:32.816 経済と政治の領域を 再び合体させねばなりません 00:09:32.840 --> 00:09:38.216 ただし 合体した領域を 民主化させる必要があります 00:09:38.240 --> 00:09:43.936 さもなくば がんじがらめに監視された 超独裁世界が待っています 00:09:43.960 --> 00:09:47.976 『マトリックス』が ドキュメンタリー映画になってしまいます NOTE Paragraph 00:09:48.000 --> 00:09:49.576 (笑) NOTE Paragraph 00:09:49.600 --> 00:09:53.016 ここでの問題は 次々に生まれる技術革新の中で 00:09:53.040 --> 00:09:55.360 資本主義が生き延びるかでは ありません 00:09:55.960 --> 00:09:57.576 それよりも 00:09:57.600 --> 00:10:03.336 資本主義が『マトリックス』のような 暗黒世界に取って代わられるか 00:10:03.360 --> 00:10:07.776 それとも『スタートレック』のように 00:10:07.800 --> 00:10:10.176 機械が人間に仕え 00:10:10.200 --> 00:10:14.616 人間は宇宙の探検に力を注ぎ 00:10:14.640 --> 00:10:18.936 古代アテネのアゴラ(政治を論ずる場)の ハイテク版を作り 00:10:18.960 --> 00:10:22.960 人生の意味について存分に議論できる 世界に発展するかです NOTE Paragraph 00:10:24.360 --> 00:10:27.800 楽観的に見る余地はあると思いますが 00:10:29.400 --> 00:10:30.800 暗黒の『マトリックス』より 00:10:30.820 --> 00:10:33.100 『スタートレック』ユートピアを 実現するには 00:10:33.140 --> 00:10:37.600 どうしたらよくて どんな世界になるのでしょうか? NOTE Paragraph 00:10:38.240 --> 00:10:39.496 現実的な観点で 00:10:39.520 --> 00:10:41.256 手短に 2つの例について 00:10:41.280 --> 00:10:42.480 お話しましょう NOTE Paragraph 00:10:43.080 --> 00:10:44.856 まずは 企業のレベルで 00:10:44.880 --> 00:10:47.216 働くほど資本が増える資本市場を 00:10:47.240 --> 00:10:49.920 思い浮かべてください 00:10:50.880 --> 00:10:56.216 仕事を移ったり 会社を移ると 00:10:56.240 --> 00:10:57.736 資本もついてきます 00:10:57.760 --> 00:10:59.016 会社の方は 00:10:59.040 --> 00:11:02.496 その時 自分が どの会社で働いていても 00:11:02.520 --> 00:11:06.840 内部で働く人間が 完全に所有しています 00:11:07.400 --> 00:11:12.096 収入はすべて 資本や利益から発生し 00:11:12.120 --> 00:11:16.496 賃金労働の概念自体が 時代遅れのものとなります 00:11:16.520 --> 00:11:23.136 会社を所有してはいるが 中で働いてはいない人と 00:11:23.160 --> 00:11:26.416 働いているが所有しない人との 乖離がなくなります 00:11:26.440 --> 00:11:29.640 資本と労働の間の 綱引き競争は終わりです 00:11:30.440 --> 00:11:34.576 投資と貯金の間の 深い溝が無くなります 00:11:34.600 --> 00:11:37.840 高くそびえる 負債と余剰金の山も消えます NOTE Paragraph 00:11:38.600 --> 00:11:40.976 世界政治経済のレベルでは 00:11:41.000 --> 00:11:42.936 我々の国の通貨が 00:11:42.960 --> 00:11:47.936 自由に変動する相場を持ち 00:11:47.960 --> 00:11:51.736 IMFやG−20が 人類を代表して発行する— 00:11:51.760 --> 00:11:57.016 世界共通のデジタル通貨に なったとしたら 00:11:57.040 --> 00:11:59.446 どうでしょうか 00:11:59.600 --> 00:12:00.816 さらに発展させて 00:12:00.840 --> 00:12:05.176 この共通通貨— 仮に「コズモス」とします— 00:12:05.200 --> 00:12:07.016 国際貿易はすべて 00:12:07.040 --> 00:12:09.280 コズモス建てで行います 00:12:09.720 --> 00:12:14.096 どの国の政府も 共通の通貨基金に 00:12:14.120 --> 00:12:19.656 貿易赤字 または 貿易黒字に比例する額を 00:12:19.680 --> 00:12:23.080 コズモス建てで 払い入れる協定を結びます 00:12:23.720 --> 00:12:28.936 この基金を 環境のための技術への投資に活用し 00:12:28.960 --> 00:12:34.280 特に 世界の中でも 投資が不足している地域に投入します NOTE Paragraph 00:12:34.840 --> 00:12:36.416 これは何も新しい考えではなく 00:12:36.440 --> 00:12:39.776 ジョン・メイナード・ケインズが 事実上 00:12:39.800 --> 00:12:43.350 1944年のブレトンウッズ会議で 提案したものです 00:12:44.080 --> 00:12:45.296 問題は 当時 00:12:45.320 --> 00:12:48.616 この考えを実践するための 技術がなかったことです 00:12:48.640 --> 00:12:49.856 でも 今はあります 00:12:49.880 --> 00:12:55.800 政治と経済を融合すれば もっと確実です NOTE Paragraph 00:12:56.640 --> 00:12:59.056 今お話している世界は 様々な側面を有しています 00:12:59.080 --> 00:13:01.536 まず自由主義— 00:13:01.560 --> 00:13:06.136 個人に力を与えることを 優先するからです 00:13:06.160 --> 00:13:07.376 次にマルクス主義— 00:13:07.400 --> 00:13:10.616 資本と労働の間の境界を 過去のものとして 00:13:10.640 --> 00:13:13.096 捨て去るからです 00:13:13.120 --> 00:13:14.930 3つめは 世界規模の 00:13:15.320 --> 00:13:16.800 ケインズ主義です 00:13:18.320 --> 00:13:19.896 しかし何よりも 00:13:19.920 --> 00:13:24.840 その世界では 真の民主主義が実現できるのです NOTE Paragraph 00:13:25.760 --> 00:13:27.520 そんな世界が来るでしょうか? 00:13:28.400 --> 00:13:32.896 『マトリックス』の暗黒世界に 堕ちるほうがいいでしょうか? 00:13:32.920 --> 00:13:37.040 答えは 我々が集団として行う 政治的選択にかかっています 00:13:37.720 --> 00:13:39.336 選ぶのは我々自身です 00:13:39.360 --> 00:13:41.850 ですから 民主的に選ぶべきでしょう NOTE Paragraph 00:13:42.280 --> 00:13:43.656 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:13:43.676 --> 00:13:46.920 (拍手) NOTE Paragraph 00:13:49.480 --> 00:13:51.270 ブルーノ・ジュッサーニ:ヤニス… 00:13:51.880 --> 00:13:56.320 自己紹介文に「自由マルクス主義者」と 書いておられましたね 00:13:58.400 --> 00:14:01.120 マルクスの分析は 現代にどう当てはまるのでしょうか? NOTE Paragraph 00:14:02.000 --> 00:14:05.336 ヤニス・ バルファキス: 今の話に少しでも納得いただけるなら 00:14:05.360 --> 00:14:06.906 マルクスも通用すると言えます 00:14:06.926 --> 00:14:10.096 政治と経済を再統合する意義とは すなわち 00:14:10.120 --> 00:14:11.336 もし統合しなければ 00:14:11.360 --> 00:14:13.616 技術革新が総需要の激減を 00:14:13.640 --> 00:14:15.936 もたらしてしまう というものです NOTE Paragraph 00:14:15.960 --> 00:14:20.736 ラリー・サマーズが 長期的経済停滞と呼ぶ現象です 00:14:20.760 --> 00:14:24.956 経済危機が 世界の一部から 他所へ移動している今 00:14:25.200 --> 00:14:27.896 この経済停滞により 我々の民主主義だけでなく 00:14:27.920 --> 00:14:32.136 自由民主化に消極的な 新興世界までもが安定性を失うでしょう 00:14:32.160 --> 00:14:35.976 この分析が理にかなっているのなら マルクスの思想も大いに有効です 00:14:36.000 --> 00:14:37.736 しかし ハイエクも正しいし 00:14:37.760 --> 00:14:39.686 だから私は 自由マルクス主義なのですが 00:14:39.700 --> 00:14:40.900 そして ケインズも正しい 00:14:40.940 --> 00:14:42.896 ですから 非常に混乱しています NOTE Paragraph 00:14:42.910 --> 00:14:43.976 (笑) NOTE Paragraph 00:14:44.000 --> 00:14:46.306 ブルーノ:ごもっとも おそらく私たちもです NOTE Paragraph 00:14:46.320 --> 00:14:47.376 (笑) NOTE Paragraph 00:14:47.400 --> 00:14:49.376 (拍手) NOTE Paragraph 00:14:49.400 --> 00:14:52.176 ヤニス:混乱していない人は 頭を使っていないのです NOTE Paragraph 00:14:52.200 --> 00:14:55.076 ブルーノ:かなりギリシャ哲学的な 発言ですね NOTE Paragraph 00:14:55.100 --> 00:14:57.136 ヤニス:アインシュタインの引用ですがね NOTE Paragraph 00:14:57.150 --> 00:14:59.616 ブルーノ:お話の中に シンガポールや中国が登場し 00:14:59.640 --> 00:15:01.696 昨晩の講演者向け夕食会でも 00:15:01.720 --> 00:15:06.896 中国に対する西洋の視点について 鋭い批判をされていました 00:15:06.920 --> 00:15:08.466 ここでも お話されませんか? NOTE Paragraph 00:15:08.480 --> 00:15:10.680 ヤニス:はい かなり偽善的だと思います 00:15:11.400 --> 00:15:15.696 我々の自由民主主義は 表面上は民主的に見えます 00:15:15.720 --> 00:15:18.456 講演の中で申し上げたように 民主主義を 00:15:18.480 --> 00:15:20.136 政治の領域に閉じ込めて 00:15:20.160 --> 00:15:23.616 実際に事が起きている領域— 00:15:23.640 --> 00:15:24.856 つまり経済の領域には— 00:15:24.880 --> 00:15:26.720 民主主義が存在しないからです NOTE Paragraph 00:15:27.280 --> 00:15:28.536 ある意味— 00:15:28.560 --> 00:15:30.760 挑発的な発言をお許し頂ければ— 00:15:31.880 --> 00:15:36.296 今日の中国は 19世紀のイギリスに より近いのです 00:15:36.320 --> 00:15:37.576 理由は 前述のとおり 00:15:37.600 --> 00:15:40.046 自由主義を民主主義と 関連して考えるのは 00:15:40.070 --> 00:15:41.456 歴史的には間違いだからです 00:15:41.480 --> 00:15:44.016 自由主義は 民主的プロセスに特に懐疑的だった― 00:15:44.040 --> 00:15:48.736 ジョン・スチュアート・ミルに 似たスタンスです 00:15:48.760 --> 00:15:54.136 今 中国で起きていることは 産業革命の時期 00:15:54.160 --> 00:15:57.336 特に第一次から 第二次産業革命への移行期に 00:15:57.360 --> 00:16:00.336 イギリスで起こったことと よく似ています 00:16:00.360 --> 00:16:03.656 だから 19世紀の西洋がしていたことと 00:16:03.680 --> 00:16:06.816 同じことをしているからと 中国を酷評する人々には 00:16:06.840 --> 00:16:08.160 偽善の匂いがするわけです NOTE Paragraph 00:16:09.520 --> 00:16:13.176 ブルーノ:ここの皆さんはきっと 今年前半 ギリシャの財務大臣を 00:16:13.200 --> 00:16:15.936 務められていた時のことを 聞きたいはずですが NOTE Paragraph 00:16:15.960 --> 00:16:17.341 ヤニス:来ると思ってました NOTE Paragraph 00:16:17.365 --> 00:16:18.616 ブルーノ:はい NOTE Paragraph 00:16:18.640 --> 00:16:19.976 6か月経った今 00:16:20.000 --> 00:16:22.690 今年前半を振り返っての 感想をお願いします NOTE Paragraph 00:16:23.920 --> 00:16:26.536 ヤニス:個人的には ものすごく面白かった 00:16:26.560 --> 00:16:27.816 でも 非常に残念でした 00:16:27.840 --> 00:16:31.736 ユーロ圏を仕切り直す チャンスだったからです 00:16:31.760 --> 00:16:33.856 ギリシャだけでなく ユーロ圏全体です 00:16:33.880 --> 00:16:36.816 自己満足から抜け出して 00:16:36.840 --> 00:16:39.296 さらに ユーロ圏全体に 00:16:39.320 --> 00:16:42.176 EUの構成自体を 大きく脅かす— 00:16:42.200 --> 00:16:44.376 巨大な構造的断層が 横たわっているという現実 00:16:44.400 --> 00:16:48.816 この現実否定からも抜け出す チャンスでもあったからです NOTE Paragraph 00:16:48.840 --> 00:16:52.016 ギリシャの財政再建プログラムが ベースになりえたのです 00:16:52.040 --> 00:16:53.376 ちなみに 00:16:53.400 --> 00:16:57.776 この現実否定について 初めて明言し 正しく表現した— 00:16:57.800 --> 00:16:59.016 プログラムでした 00:16:59.040 --> 00:17:00.256 しかし 残念なことに 00:17:00.280 --> 00:17:03.336 ユーロ圏やユーログループの 権力者たちは 00:17:04.079 --> 00:17:06.056 現実を否定したままです NOTE Paragraph 00:17:06.079 --> 00:17:07.336 でも 先は見えますよね 00:17:07.358 --> 00:17:09.415 これは ソヴィエト連邦が 辿った道です 00:17:09.440 --> 00:17:11.935 政治的な意志や 独裁体制によって 00:17:11.960 --> 00:17:15.999 構造的に生き延びれない経済体制を 00:17:16.520 --> 00:17:19.175 生かしておこうとすると 00:17:19.200 --> 00:17:20.856 延命には成功しても 00:17:20.880 --> 00:17:22.454 何か起きたとき 00:17:22.480 --> 00:17:24.976 急激な そして破滅的な 変化が起こります NOTE Paragraph 00:17:25.000 --> 00:17:27.007 ブルーノ:どんな変化が見えますか? NOTE Paragraph 00:17:27.031 --> 00:17:28.285 ヤニス:まあ 00:17:28.309 --> 00:17:30.976 ユーロ圏の構造を変えなければ 00:17:31.001 --> 00:17:32.895 間違いなく 未来はありません NOTE Paragraph 00:17:32.920 --> 00:17:35.816 ブルーノ:財務大臣時代 間違いを犯したことは? NOTE Paragraph 00:17:35.840 --> 00:17:37.056 ヤニス:毎日ですね NOTE Paragraph 00:17:37.080 --> 00:17:39.616 ブルーノ:例えば? ヤニス:誰でも 振り返れば— NOTE Paragraph 00:17:39.640 --> 00:17:41.720 (拍手) NOTE Paragraph 00:17:44.120 --> 00:17:45.496 真面目な話 00:17:45.520 --> 00:17:49.096 財務大臣 いや どんな大臣でも 00:17:49.120 --> 00:17:51.336 6か月にわたり務めた後で 00:17:51.360 --> 00:17:55.056 特に あのような緊迫した状況で 00:17:55.080 --> 00:17:57.776 1つも間違えていない などという人は危険です 00:17:57.800 --> 00:17:59.096 もちろん 失敗もしました NOTE Paragraph 00:17:59.120 --> 00:18:01.936 最大の失敗は 2月に 00:18:01.960 --> 00:18:04.056 融資延長の申請書に 00:18:04.080 --> 00:18:05.696 サインしたことです 00:18:05.720 --> 00:18:06.936 純粋に 我々との 00:18:06.960 --> 00:18:09.936 共通の利害を見出そうとする 債権者がいるはずだと 00:18:09.960 --> 00:18:11.216 期待していましたが 00:18:11.240 --> 00:18:12.456 そうではなかった 00:18:12.480 --> 00:18:15.096 ギリシャ政府を潰すことしか 頭になかったのです 00:18:15.120 --> 00:18:16.576 なぜかって ただ 00:18:16.600 --> 00:18:19.736 ユーロ圏に横たわる 構造的断層の問題に 00:18:19.760 --> 00:18:21.776 関わりたくないという理由と 00:18:21.800 --> 00:18:23.616 ギリシャで 5年もの間 00:18:23.640 --> 00:18:27.256 実施されたプログラムが大失敗だったと 認めたくないという理由です 00:18:27.280 --> 00:18:30.176 ギリシャは 名目GDPの 3分の1を失いました 00:18:30.200 --> 00:18:32.136 大恐慌時代よりひどい結果です 00:18:32.160 --> 00:18:34.066 そして 再建政策を押し付けていた— 00:18:34.090 --> 00:18:36.376 債権者の中に 名乗りを上げて 00:18:36.400 --> 00:18:39.376 「これは大変な間違いだった」 と言う人は誰一人いなかった NOTE Paragraph 00:18:39.400 --> 00:18:40.616 ブルーノ:そんな事実や 00:18:40.640 --> 00:18:42.976 非常に批判的なお話に反して 00:18:43.000 --> 00:18:45.416 ヨーロッパをかなり肯定的に 見ておられますね NOTE Paragraph 00:18:45.440 --> 00:18:46.656 ヤニス:当然です 00:18:46.680 --> 00:18:50.816 だって 私のEUやユーロ圏に対する批判は 00:18:50.840 --> 00:18:54.880 ヨーロッパを住処とする人間の言葉です 00:18:55.680 --> 00:18:59.256 私が最も恐れているのは ユーロ圏が崩壊することです 00:18:59.280 --> 00:19:00.736 もし 崩壊してしまったら 00:19:00.760 --> 00:19:03.616 溜まっている遠心力が解放されて 00:19:03.640 --> 00:19:05.336 恐ろしいことになり 00:19:05.360 --> 00:19:07.336 EUは破滅するでしょう 00:19:07.360 --> 00:19:09.776 そんなことが起これば ヨーロッパだけでなく 00:19:09.800 --> 00:19:11.416 世界経済全体にも 大打撃です NOTE Paragraph 00:19:11.440 --> 00:19:15.536 ヨーロッパはおそらく 世界最大の経済でしょう 00:19:15.560 --> 00:19:17.296 だからもしも 00:19:17.320 --> 00:19:20.136 ポストモダン1930年代と 同じ轍を踏んでしまったら— 00:19:20.160 --> 00:19:22.816 今起こっていることが まさにそうですが— 00:19:22.840 --> 00:19:24.656 ヨーロッパ内外かかわらず 00:19:24.680 --> 00:19:28.096 すべての人々の未来を 壊す結果になってしまいます NOTE Paragraph 00:19:28.120 --> 00:19:30.536 ブルーノ:今のは絶対 間違いであって欲しいですね 00:19:30.560 --> 00:19:32.256 お話 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:19:32.280 --> 00:19:33.496 ヤニス:ありがとう NOTE Paragraph 00:19:33.520 --> 00:19:38.343 (拍手)