彼は人類史上 最も恐ろしい将軍の1人で ユーラシア大陸中で 征服を続けました しかしゲンギス・カーンは 残忍な野蛮人だったのでしょうか それとも現代社会への道を開いた 統一者だったのでしょうか 「歴史対ゲンギス・カーン裁判」で 見ていきましょう 「静粛に 静粛に さて 本日の被告はだれだ カーン!」 「裁判長はゲンギス・カーンに 詳しいようですね 彼は13世紀の将軍で 彼の軍事作戦で何百万もの人が殺され 彼らが通った後には 破壊だけが残りました」 「異議あり まず彼の名前はチンギス・ハーンです」 「本当に?」 「モンゴル語ではそうです とにかく彼は人類史上 もっとも偉大なリーダーの1人でした テムジンの名で生まれた彼には 父がなく子供の時は貧しかったのですが 絶え間ない戦いに勝ち続けることで モンゴル民族同士をまとめ かつて見たこともない 偉大な帝国を築きました 結果その帝国は 太平洋からヨーロッパ中心部に広がりました」 「侵略と虐殺の どこが偉大だと言うのですか? 中国北部は 人口の3分の2を失ったのですよ」 「金王朝は長く 北部の部族を苦しめ 部族間が戦うように仕向け そして定期的に彼らを攻撃しました チンギス・ハーンは モンゴル統一を試みた先代ハーンと 同じ運命をたどることは ありませんでした また 人口減少は お粗末な調査方法のせいかもしれません また言うまでもなく 小作農の多くが ハーンの軍に徴兵されました」 「人数には いくらでも 異議を唱えられるでしょうが 彼らは住民もろとも 都市を一掃したのです」 「ハーンは敵が降伏し 敬意を表するのを望んでいましたが その一方で 忠誠心と外交における法を 固く信じていました 大虐殺を被った都市は 降伏後に反逆したり 使節を殺した都市でした 彼は正義というものを 厳密に理解していました」 「多数の記述によると 彼の軍のどう猛さは正義を超えており まだ生まれていない赤ちゃんを 母親の子宮から剥ぎ取ったり 人間の盾として または 堀を埋めて 攻城兵器を支えるために 囚人を使ったり 征服した町から女性をすべて連れ出し―」 「もういい!なんて野蛮な!」 「それは本当に他の中世の軍隊よりも 悪いのでしょうか」 「それはチンギス・ハーンの悪行の 言い訳にはなりませんよ」 「でもチンギス・ハーンの時代には それが普通で 血に飢えた野蛮人とはいえません 実際 彼が部族を統合し 誘拐婚が廃止されると モンゴル人階級の女性たちは それを最大限に利用しました 彼女たちは家庭をコントロールし 夫と離婚もでき 信頼されるアドバイザーでした テムジンは生涯 最初の妻と添い遂げ おそらく嫡出でない息子を 実子として育てさえしました」 「とにかくチンギス・ハーンが 残したものは 大惨事だけです 彼の子孫が征服している間 ユーラシア中で4千万人が殺されました 世界の人口の10%ですよ その数にはモンゴル軍がカッファ攻城戦で ヨーロッパにもたらした ペストの犠牲者さえ入っていません」 「たしかにそれは 意図的ではなかった」 「実際自軍の兵士が ペストで死ぬのを見て 彼らは感染した死体を 城壁の中へ放り込んだのです」 「おえー」 「参考にしている記述は 実際に起こってから 100年以上たって書かれました どれだけ信用できるでしょう? さらに生き残った者たちはチンギス・ハーンが 築いた帝国の恩恵を受けたのです」 「恩恵?」 「モンゴル帝国は あらゆる面において宗教に寛容で 兵士は厚遇され 生まれでなく功績で昇進し 郵便システムが広く確立され 法の支配を全国で実施し 言うまでもなく文化にも貢献しました」 「フレグ・ハーンが当時の 文化的中心地バグダッドを 消滅させたことを言っているのですか 図書館や病院、宮殿は燃やされ 灌漑水路は埋められたのに?」 「バグダッドは不運でしたが カリフは降伏を拒否し フレグは後に理由なく破壊したということで ベルケ・ハーンに罰せられました 文化の破壊は モンゴルの政策ではありませんでした 通常彼らは医者や学者、職人を 征服地から救い出し 国中に彼らを送り 世界中に知識を広めたのです」 「キエフ大公国の荒廃はどうですか 人々を暗黒時代に取り残したのです ルネサンスが西ヨーロッパ中に 広がった時でさえですよ」 「当時 西ヨーロッパは 平穏とは言えませんでした モンゴルによる支配が安定したことで シルクロードがもう一度栄え それにより東洋と西洋の 貿易や文化交流が可能になり ロシアと中国は交戦状態にある国から 統一された国となったのです 実際 帝国消滅後 ずっと後になっても チンギス・ハーンの子孫は ユーラシア中の支配階級の貴族の中で 見られました」 「独裁者がさらなる独裁者を刺激するのは 驚くことではありません」 「彼の呼び方には気をつけて あなたも血を引いているかもしれません 「なんですって?」 「現在いる1,600万人の男性は チンギス・ハーンの子孫です 200人に1人ですよ」 偉大な征服者がいれば 征服される人は何百万人にも上ります どちらの話が歴史に残るでしょう? また 歴史や文化における 指導者の重要性は その過程で 彼らが招いた 多くの死に勝るでしょうか? これは歴史を裁判にかけたときに 表面化する問題なのです