WEBVTT 00:00:07.124 --> 00:00:11.328 1997年 フランスとブラジルの試合で 00:00:11.328 --> 00:00:14.387 ロベルト・カルロスという名の 若いブラジルの選手が 00:00:14.387 --> 00:00:17.502 35メートルのフリーキックを 準備していました 00:00:17.502 --> 00:00:19.554 ゴールまで直線的に入る コースはなかったので 00:00:19.554 --> 00:00:23.859 カルロスは不可能にも見える 挑戦を決めました 00:00:23.859 --> 00:00:27.068 彼がボールを蹴ると 選手の右へと飛んでいくものの 00:00:27.068 --> 00:00:30.960 ラインを割る直前で ボールは左に曲がり 00:00:30.960 --> 00:00:33.082 ゴールに吸い込まれたのです 00:00:33.082 --> 00:00:35.877 ニュートンの運動の第1法則によれば 00:00:35.877 --> 00:00:39.246 物体は他の力が働かない限り 00:00:39.246 --> 00:00:42.077 同じ方向と速度で動きます 00:00:42.077 --> 00:00:45.931 カルロスがボールを蹴った時 彼はボールに方向と速度を与えました 00:00:45.931 --> 00:00:48.696 しかしどんな力がボールの進路を変え 00:00:48.696 --> 00:00:53.577 サッカー史上で最高のゴールの1つを 生み出したのでしょうか? 00:00:53.577 --> 00:00:55.828 その秘密は回転にあります 00:00:55.828 --> 00:00:59.515 カルロスはボールの右下を蹴り 00:00:59.515 --> 00:01:05.141 高く右側にボールを蹴りましたが 同時にボールを回転させていました 00:01:05.141 --> 00:01:08.223 見た目は直線的な進路で ボールは飛び始めましたが 00:01:08.223 --> 00:01:12.053 両側を流れる空気が ボールの動きを遅くしていきます 00:01:12.053 --> 00:01:16.989 片側では空気の流れと ボールの動きは逆向きで 00:01:16.989 --> 00:01:18.890 圧力を増加させました 00:01:18.890 --> 00:01:23.036 反対側では空気の流れと ボールの動きは同じで 00:01:23.036 --> 00:01:26.114 圧力の低い場所を生み出したのです 00:01:26.114 --> 00:01:30.929 この違いによりボールは 気圧の低い方向に向かって曲がりました 00:01:30.929 --> 00:01:34.302 この現象はマグヌス効果と呼ばれています 00:01:34.302 --> 00:01:37.673 このタイプのキックは バナナキックとも呼ばれ 00:01:37.673 --> 00:01:39.529 頻繁に試され 00:01:39.529 --> 00:01:43.581 素晴らしいゲームに彩りを加える 要素の一つです 00:01:43.581 --> 00:01:45.932 しかしボールを正確に曲げて 00:01:45.932 --> 00:01:51.061 ディフェンダーの壁を巻いて ゴールに戻すことは困難です 00:01:51.061 --> 00:01:53.314 高すぎるとゴールバーを越えてしまい 00:01:53.314 --> 00:01:56.587 低すぎても曲がる前に 地面にぶつかってしまいます 00:01:56.587 --> 00:01:59.093 外に外しすぎるとゴールには届かず 00:01:59.093 --> 00:02:02.591 内側に蹴りすぎたら ディフェンダーに止められてしまいます 00:02:02.591 --> 00:02:06.068 ボールが遅すぎると 早く曲がりすぎるか全く曲がらなくなり 00:02:06.068 --> 00:02:09.088 ボールが早すぎると 曲がるのが間に合いません 00:02:09.088 --> 00:02:10.978 同じ物理法則により 00:02:10.978 --> 00:02:14.386 不可能にも見える 00:02:14.386 --> 00:02:17.504 コーナーキックからの直接ゴールも 可能にします 00:02:17.504 --> 00:02:21.032 マグヌス効果はアイザック・ニュートン卿が 最初に発見しました 00:02:21.032 --> 00:02:26.261 1670年にテニスをしていて 気がついたのです 00:02:26.261 --> 00:02:30.217 この法則はゴルフボール、フリスビー 野球にも当てはまります 00:02:30.217 --> 00:02:33.138 いずれの場合でも同じことが起こります 00:02:33.138 --> 00:02:37.634 ボールの回転が周囲の空気の流れの中で 気圧の違いを生み出し 00:02:37.634 --> 00:02:40.651 回転の方向にボールが曲がるのです 00:02:40.651 --> 00:02:41.972 それでは問題です 00:02:41.972 --> 00:02:44.448 ボールを十分に強く蹴った場合 00:02:44.448 --> 00:02:48.292 理論的にはブーメランのように 自分のところに戻ってくるのでしょうか? 00:02:48.292 --> 00:02:50.139 残念ながら 答えはノーです 00:02:50.139 --> 00:02:52.672 もしボールが衝撃によって壊れたり 00:02:52.672 --> 00:02:54.311 障害物に当たったりしなければ 00:02:54.311 --> 00:02:55.786 空気がボールの動きを遅くし 00:02:55.786 --> 00:02:58.897 ボールの曲がり方が大きくなり 00:02:58.897 --> 00:03:02.658 どんどん小さな円となって 渦巻き状の軌跡を描き 00:03:02.658 --> 00:03:05.287 最後には止まってしまいます 00:03:05.287 --> 00:03:07.026 この渦巻きを得るためには 00:03:07.026 --> 00:03:11.103 カルロスの不朽のキックよりも 15倍早いスピードで 00:03:11.103 --> 00:03:13.904 ボールを回転させる必要があります 00:03:13.904 --> 00:03:16.215 うまくいくといいですね