♪ [音楽] ♪
[アレックス] 企業の費用曲線と
参入・退出の決定を学んだ今、
このような根本的な要素が
供給曲線を左右するのか
示すことができるようになりました。
詳しく見ていきましょう。
供給曲線は、企業の参入・退出の決定と
その決定が費用をどう左右するのか
によって決まります。
では、ある産業の生産が増加すると、
費用はどう左右されるのでしょうか?
三つの可能性が考えられます。
まず、費用が増加する産業。
生産量が増えるにつれ、
費用が増加していく場合です。
次に、費用が変わらない産業。
産業の費用は一定で、
生産量の増減に左右されません。
最後に、費用が減少する産業。
生産量が増加するほど、
費用は減少します。
費用が増加する・一定の産業は
珍しくありません。
費用が減少する産業は
比較的まれですが、
のちに説明する経済地理学を
理解するために必要となる、
興味深い形態であることには
変わりありません。
産業の供給曲線が
企業の参入・退出と、企業の費用曲線に
由来していることをお見せしましょう。
費用が増加する産業については
企業を二つだけ用いて
簡単に説明できます。
企業1は油の生産者で、
油は地表にとても近いとしましょう。
つまり、平均費用曲線は
高くありません。
企業1は油を安価に生産できます。
企業2の平均費用曲線は、
企業1よりもずっと高いです。
企業2は、地中深く掘らないと
油を確保できないような立地なのです。
今の情報を元に考えてみましょう。
油の価格が$17より安ければ、
油産業の供給曲線はどうなるでしょうか。
もし油の価格が$17より安ければ、
どちらの企業も利益が出ません。
$17は、企業1・2両方の
平均費用曲線の最小値より少ない値です。
なので、どちらの企業も
産業には参入したくありません。
油の価格が$17よりも安ければ、
産業の供給量は0なのです。
油の価格が$17の時はどうでしょう
$17のとき、企業1は
損益分岐点にあります。
なので、企業1は
参入するとしましょう。
$17のとき、産業の供給量は
企業1の供給量と同じなのです。
$17のとき、企業2は参入しません。
まだ価格が安すぎるからです。
企業2は利益を出せず、
損失を出してしまうのです。
実際、油の価格が上昇すると、
企業2の供給量は限界費用曲線に沿って
増加していきます。
$29に到達するまで、
産業の供給曲線は、
企業1の供給曲線に沿って
増加していきます。
$29は企業2の損益分岐点であり、
この時点で企業2は参入します。
なので、$29のとき、産業の供給量は
企業1の6単位と、
企業2の5単位
合わせて11単位になります。
価格が$29より高くなると、
企業1と2の供給量は
限界費用曲線に沿って増加していきます。
つまり、産業の供給量は、
両企業の供給量の合計なのです。
産業の企業曲線は
右上がりになっています。
両企業の費用曲線が
異なっているからです。
この産業に、より多くの企業を
参入させる唯一の方法は、
費用の高い企業を誘致することなのです。
そのため、産業の供給曲線は
右上がりになっているのです。
全く同じ供給源を
用意することが難しい産業は
費用が増加していく産業となります。
一例として、油、銅、金、銀など、
鉱業はどこも同じようなものです。
同じ金鉱を複製することは
できませんよね。
新たな金鉱を開こうと思えば、
もっと深く掘るか、
他所で金鉱を開くなど、
費用は嵩んでしまいます。
コーヒーも同じです。
美味しいコーヒーを生産できる場所は
世界でも限られています。
ブラジルやグアテマラ以外の場所で
コーヒーを生産しようとすれば、
品質は下がってしまいます。
より低い高度で生産しようとすると、
もっと生産しなくてはなりません。
原子力技術者もそうです。
原子力技術者の供給を増やすのは
とても難しいです。
原子力技術者になれるような人は
限られています。
技術者の数を増やそうとすれば、
機会費用の高い他の産業から
連れてこなくてはなりません。
原子力技術者の給料を増やさないことには、
増員することは難しいのです。
これが費用が増加する産業です。
更に、費用が増加する産業から
製品を多く購入する産業もまた、
費用が増加する産業です。
ガソリン産業はその一例です。
ガソリンの需要が増えれば、
当然、油の需要も増えますが、
油産業は費用が増加する産業なのです。
電力産業も、石炭から電力を得る限り、
費用が増加する産業です。
電力の需要が増えれば、
石炭の需要も増えますが、
そうなると石炭の価格は上昇し、
電力の価格も上昇するのです。
費用が増加する産業では、
右上がりの供給曲線が描けるのです。
次の授業では、費用が一定の産業では
供給曲線が平坦であり、
費用が減少する産業では、
ーもうわかるかもしれませんがー
右下がりの供給曲線が描けることを
ご説明しましょう。
今回の授業はここまでです。
ありがとうございました。
[告知] 自分の知識を
確認したい方は「練習問題」を
次の動画を見たい方は、
「次の動画」をクリックしてください。
♪ [音楽] ♪