WEBVTT 00:00:01.089 --> 00:00:05.153 オリバーはとても威勢が良く 00:00:05.153 --> 00:00:09.974 ハンサムで魅力的で じっとしていることがない 00:00:09.974 --> 00:00:13.159 私が完全に心奪われた男性でした NOTE Paragraph 00:00:13.159 --> 00:00:16.080 (笑) NOTE Paragraph 00:00:16.080 --> 00:00:17.746 バーニーズ・マウンテン・ドッグで 00:00:17.746 --> 00:00:20.929 元夫と私が引き取りました 00:00:20.929 --> 00:00:22.618 半年経つ頃には 00:00:22.618 --> 00:00:25.182 オリバーには手がかかることが 分かりました 00:00:25.182 --> 00:00:27.962 ひどい分離不安のために 00:00:27.962 --> 00:00:29.498 1頭にはしておけませんでした 00:00:29.498 --> 00:00:32.626 あるときはアパートの3階から飛び降りました 00:00:32.626 --> 00:00:37.047 布やリサイクルごみなどを口にし 00:00:37.047 --> 00:00:38.952 存在しないハエを追い 00:00:38.952 --> 00:00:40.681 幻覚に苦しみました 00:00:40.681 --> 00:00:43.985 イヌ科の強迫性障害と診断されたものの 00:00:43.985 --> 00:00:47.331 それは氷山の一角だったのです NOTE Paragraph 00:00:47.331 --> 00:00:51.432 でも人間と同様 00:00:51.432 --> 00:00:54.543 ときに 半年後 00:00:54.543 --> 00:00:56.580 気付いたときには 00:00:56.580 --> 00:00:59.527 すでに愛する人が問題を抱えているのです 00:00:59.527 --> 00:01:00.938 (笑) 00:01:00.938 --> 00:01:04.872 大抵の人は 付き合っている彼を 出会ったバーに連れ戻したり 00:01:04.872 --> 00:01:07.008 大抵の人は 付き合っている彼を 出会ったバーに連れ戻したり 00:01:07.008 --> 00:01:11.344 紹介してくれた友達に返したり 00:01:11.344 --> 00:01:14.098 出会いサイトに登録しなおしたりしません 00:01:14.098 --> 00:01:16.928 (笑) 00:01:16.928 --> 00:01:18.727 ともかく愛し 00:01:18.727 --> 00:01:20.723 ずっと付き合う 00:01:20.723 --> 00:01:24.955 それが私のイヌにしたことです 00:01:24.955 --> 00:01:28.757 私は生物学を勉強しました 00:01:28.757 --> 00:01:31.377 MITで科学史の博士号をとりました 00:01:31.377 --> 00:01:32.882 MITで科学史の博士号をとりました 00:01:32.882 --> 00:01:36.980 もし10年前 飼いイヌや他のイヌに 感情があるか聞かれたら 00:01:36.980 --> 00:01:38.825 あると答えたでしょう 00:01:38.825 --> 00:01:40.289 でも 不安障害にかかったり 00:01:40.289 --> 00:01:45.987 抗鬱剤・セラピストのお世話になることもあるとは 言わなかったと思います 00:01:46.678 --> 00:01:50.624 ですが オリバーを好きになって 分かったんです 00:01:50.624 --> 00:01:55.700 自分のイヌがパニックや不安を克服する 手助けが出来るのだと 00:01:55.864 --> 00:01:58.227 それは私の人生を変えました 00:01:58.227 --> 00:02:00.764 私の世界をぱっと開きました 00:02:00.764 --> 00:02:03.131 実際 私は過去7年間 00:02:03.131 --> 00:02:05.730 動物の精神疾患について調べたのです 00:02:05.730 --> 00:02:07.075 人間同様に精神を病むこともあるのか 00:02:07.075 --> 00:02:10.080 あるとすれば私達にとって どんな意味があるのか 00:02:10.080 --> 00:02:12.879 そして分かったことは 00:02:12.879 --> 00:02:14.819 動物も精神疾患にかかることがあり 00:02:14.819 --> 00:02:19.295 それを認識し 精神疾患を見つけることは 00:02:19.295 --> 00:02:21.377 動物達のより良き友となるのに役立つと同時に 00:02:21.377 --> 00:02:25.431 私達自身を理解するのに役立つということです NOTE Paragraph 00:02:25.431 --> 00:02:28.877 精神疾患の診断について 少しお話ししましょう 00:02:28.877 --> 00:02:33.778 動物が考えていることは分からない と多くの人は思っています 00:02:34.021 --> 00:02:35.299 事実 正しいですが 00:02:35.299 --> 00:02:37.891 親しい関係にある場合 00:02:37.891 --> 00:02:39.747 少なくとも私の場合 00:02:39.747 --> 00:02:41.547 一緒にいる誰かや 親や子供に 00:02:41.547 --> 00:02:45.401 どんな気持ちか聞いて 答えが返ってくるというものではありません 00:02:45.551 --> 00:02:48.899 何を感じているのか 言葉で説明できないのかもしれないし 00:02:48.932 --> 00:02:50.775 何を感じているのか 知らないのかもしれません 00:02:50.775 --> 00:02:52.640 その人の感情的苦痛を 理解するためには 00:02:52.640 --> 00:02:54.386 話をしなければと 感じるというのは 00:02:54.386 --> 00:02:56.790 実はかなり最近の現象です 00:02:56.790 --> 00:02:59.217 20世紀初頭より前には 00:02:59.217 --> 00:03:04.827 医者の所見だけで感情的苦痛に 診断を下すことが多々ありました 00:03:05.235 --> 00:03:06.918 動物の精神疾患を考えることは 00:03:06.918 --> 00:03:10.593 それほど拡大解釈でもない ということも明らかになりました 00:03:10.706 --> 00:03:12.619 アメリカにおける精神障害の多くは 00:03:12.619 --> 00:03:15.339 恐怖や不安の障害であり 00:03:15.339 --> 00:03:17.308 考えてみれば 恐怖や不安は 00:03:17.308 --> 00:03:21.500 実際とても役立つ動物的感情なのです 00:03:21.500 --> 00:03:24.600 普通は危険な時に恐怖や不安を感じ 00:03:24.600 --> 00:03:25.897 一度感じると 00:03:25.897 --> 00:03:29.306 あらゆる危険なものから逃れようとします 00:03:29.357 --> 00:03:34.326 問題なのは恐怖や不安を 不必要に感じる場合です 00:03:34.326 --> 00:03:37.536 気分障害も同様で 00:03:37.536 --> 00:03:41.042 感情を持つ動物の不運なマイナス面 というだけかもしれないし 00:03:41.042 --> 00:03:44.207 強迫性障害もまた 00:03:44.207 --> 00:03:47.616 身綺麗にするという 00:03:47.616 --> 00:03:50.396 非常に健康な動物的行動の表れです 00:03:50.396 --> 00:03:52.544 精神疾患に及ぶのは そのほんの一部で 00:03:52.544 --> 00:03:53.690 例えば 00:03:53.690 --> 00:03:56.293 強迫的に手足を洗いすぎたり 00:03:56.293 --> 00:03:58.359 極端な儀式を 必要とするようになって 00:03:58.359 --> 00:04:00.451 その儀式を行わないと 00:04:00.451 --> 00:04:03.443 エサ皿の前に座れなくなったりするのです NOTE Paragraph 00:04:03.443 --> 00:04:07.774 人間には 『精神障害の診断と統計マニュアル』があり 00:04:07.774 --> 00:04:12.551 現在の精神疾患の 診断基準となっていますが 00:04:12.634 --> 00:04:15.885 動物には YouTubeがあります 00:04:15.885 --> 00:04:17.491 (笑) 00:04:17.491 --> 00:04:20.138 これは「強迫性障害 イヌ」で検索した結果ですが 00:04:20.138 --> 00:04:21.926 皆さんには 00:04:21.926 --> 00:04:24.877 「強迫性障害 ネコ」を見ていただきたいです 00:04:24.877 --> 00:04:28.271 ショックを受けますよ 00:04:28.271 --> 00:04:32.770 2つだけ例をお見せします 00:04:32.770 --> 00:04:35.492 影追いの一例です 00:04:35.492 --> 00:04:38.568 可笑しくてどこか可愛いですよね 00:04:38.568 --> 00:04:42.063 問題は イヌがこのような強迫行為を 00:04:42.063 --> 00:04:44.965 一日中続けるようになった場合です 00:04:44.965 --> 00:04:46.237 散歩にもいかず 00:04:46.237 --> 00:04:47.891 仲間とも遊ばず 00:04:47.891 --> 00:04:49.477 食欲もなくなるのです 00:04:49.477 --> 00:04:51.010 強迫的に自分の尻尾を追いかけるという 病的な執着を示します 00:04:51.010 --> 00:04:54.127 強迫的に自分の尻尾を追いかけるという 病的な執着を示します NOTE Paragraph 00:04:54.127 --> 00:04:57.528 ギズモという名のネコの症例です 00:04:57.528 --> 00:05:00.740 張り込んでいるように見えますが 00:05:00.740 --> 00:05:04.054 一日何時間もこうしているのです 00:05:04.054 --> 00:05:09.018 窓際に座り前足でブラインドを かき続けます 00:05:09.092 --> 00:05:11.569 常同行為の例を 00:05:11.569 --> 00:05:13.353 もう一つお見せしましょう 00:05:13.353 --> 00:05:16.060 オークランド動物園にいるマレーグマの ティンティンです 00:05:16.060 --> 00:05:17.825 ここに居合わせたら 00:05:17.825 --> 00:05:18.776 ティンティンが 00:05:18.776 --> 00:05:20.490 ただ棒で遊んでいるだけだと 思うかもしれません 00:05:20.490 --> 00:05:22.536 でもティンティンは一日中こうしているのです 00:05:22.536 --> 00:05:24.132 よく見ると 00:05:24.132 --> 00:05:27.803 そしてこの30分の動画の全てを観れば 00:05:27.803 --> 00:05:29.829 全く同じことを 00:05:29.829 --> 00:05:31.978 同じ順序で 毎回同じように 00:05:31.978 --> 00:05:34.328 棒を回しているのが分かります 00:05:34.328 --> 00:05:36.820 他にも非常によく見られる行動 00:05:36.820 --> 00:05:38.644 特に捕われた動物に見られる行動は 00:05:38.644 --> 00:05:43.204 行ったり来たりしたり 体を揺さぶる常同症です 00:05:43.204 --> 00:05:44.880 実は人間もこういった行動をします 00:05:44.880 --> 00:05:46.624 人間は 揺れたり 00:05:46.624 --> 00:05:48.211 左右に動きます 00:05:48.211 --> 00:05:50.482 多くの人はときに 00:05:50.482 --> 00:05:52.028 自分を落ち着かせるためにそうします 00:05:52.028 --> 00:05:54.678 動物もそうだと思います NOTE Paragraph 00:05:54.678 --> 00:05:56.364 でも動物がするのは 00:05:56.364 --> 00:05:58.130 常同行動だけではありません 00:05:58.130 --> 00:06:00.258 こちらはジジです ボストンの 00:06:00.258 --> 00:06:01.919 フランクリンパーク動物園にいるゴリラです 00:06:01.919 --> 00:06:04.127 ハーバード大学の精神科医から 00:06:04.127 --> 00:06:05.849 他の症状と合わせて 気分障害の治療を 00:06:05.849 --> 00:06:07.432 受けています 00:06:07.432 --> 00:06:10.427 多くの動物が気分障害を発症します 00:06:10.427 --> 00:06:11.855 多くの生物は 00:06:11.855 --> 00:06:13.390 馬も その一例ですが 00:06:13.390 --> 00:06:15.072 自己破壊的な行動をします 00:06:15.072 --> 00:06:16.357 物を噛むとか 00:06:16.357 --> 00:06:18.503 気持ちが落ち着くことをします 00:06:18.503 --> 00:06:20.201 自己破壊的であってもです 00:06:20.201 --> 00:06:24.448 人間の自傷行為に 類似する行為です NOTE Paragraph 00:06:25.249 --> 00:06:26.562 毛をむしる行為もあります 00:06:26.562 --> 00:06:30.319 毛・羽根・皮膚があると 00:06:30.319 --> 00:06:32.294 強迫的に自分の毛をむしることがあります 00:06:32.294 --> 00:06:34.616 オウムが研究されていますが 00:06:34.616 --> 00:06:37.714 これは現在2千万人以上のアメリカ人が苦しむ 00:06:37.714 --> 00:06:41.211 抜毛症について理解を深めるためです 00:06:41.441 --> 00:06:43.509 実験用ラットも毛をむしることがあり 00:06:43.509 --> 00:06:45.742 バーバリング(毛刈り)といいます 00:06:45.742 --> 00:06:48.819 イラクやアフガニスタンで 戦争に用いられたイヌは 00:06:48.819 --> 00:06:51.800 のちにイヌPTSD(心的外傷後ストレス障害)となり 00:06:51.800 --> 00:06:54.512 軍隊配備から戻ったとき 元の生活に戻ることが 00:06:54.512 --> 00:06:55.797 非常に困難になります 00:06:55.797 --> 00:06:58.403 髭のある人におびえたり 00:06:58.403 --> 00:07:01.116 車に乗るのを怖がったりします NOTE Paragraph 00:07:01.116 --> 00:07:03.882 ここで注意したいこと 明確にしておきたいことは 00:07:03.882 --> 00:07:06.559 イヌ科のPTSDは 00:07:06.559 --> 00:07:09.360 ヒトのPTSDとは違うと 私は考えていることです 00:07:09.360 --> 00:07:11.835 ただ私のPTSDと 00:07:11.835 --> 00:07:12.930 あなたのPTSDも違います 00:07:12.930 --> 00:07:16.632 私の不安や悲しみは あなたのものとは違います 00:07:16.632 --> 00:07:18.337 私達は皆違います 00:07:18.337 --> 00:07:21.172 それぞれが非常に異なる感受性を持っています 00:07:21.172 --> 00:07:24.913 なので同じ家で育った2頭のイヌが 00:07:24.913 --> 00:07:27.260 まったく同じ環境にいても 00:07:27.260 --> 00:07:31.159 例えば 1頭がバイクを非常に怖がったり 00:07:31.159 --> 00:07:33.907 レンジの音に対して恐怖症であっても 00:07:33.907 --> 00:07:35.762 もう1頭は全く平気だ ということがあるでしょう NOTE Paragraph 00:07:35.762 --> 00:07:38.595 私が人によく聞かれることは 00:07:38.595 --> 00:07:40.538 これは人間が動物を狂わせている 00:07:40.538 --> 00:07:42.167 一例なのかとか 00:07:42.167 --> 00:07:46.090 虐待が 動物の精神疾患の 一因なのかということです 00:07:46.090 --> 00:07:47.619 結果的に実は 00:07:47.619 --> 00:07:51.174 もっと複雑であることが分かりました NOTE Paragraph 00:07:51.174 --> 00:07:54.161 私に起こっている ある素晴らしいことは 00:07:54.161 --> 00:07:57.410 最近このテーマで本を出版したことで 00:07:57.410 --> 00:08:01.355 毎日メールを開いたり 00:08:01.355 --> 00:08:02.809 または朗読しに行ったり 00:08:02.809 --> 00:08:04.921 カクテルパーティに行ったとき 00:08:04.921 --> 00:08:06.822 周りの人達が出会った動物の話を 00:08:06.822 --> 00:08:08.576 私に話してくれることです 00:08:08.576 --> 00:08:11.020 つい最近 カリフォルニアで 朗読した時のことです 00:08:11.020 --> 00:08:13.450 講演の後1人の女性が手を挙げて言うには 00:08:13.450 --> 00:08:17.126 「ブレイトマン先生 私のネコはPTSDだと思います」 NOTE Paragraph 00:08:17.126 --> 00:08:20.490 そこで詳しくお話を伺いました NOTE Paragraph 00:08:20.490 --> 00:08:23.909 ピンという名前で 保護されたネコでした 00:08:23.909 --> 00:08:26.631 かつて年配の男性と暮らしていて 00:08:26.631 --> 00:08:28.902 ある日その男性は掃除機をかけている最中 00:08:28.902 --> 00:08:31.727 心臓発作で苦しみ亡くなってしまいました 00:08:31.727 --> 00:08:34.661 1週間後 アパートで発見されたピンは 00:08:34.661 --> 00:08:36.655 飼い主の遺体のそばに寄り添っていて 00:08:36.655 --> 00:08:40.042 掃除機は動いたままでした 00:08:40.042 --> 00:08:45.350 その出来事から2年たっても 00:08:45.350 --> 00:08:47.960 ピンは誰かが掃除している時には 怯えて家に入れませんでした 00:08:47.960 --> 00:08:49.750 文字通り臆病ネコでした 00:08:49.750 --> 00:08:52.190 クローゼットに隠れ 00:08:52.190 --> 00:08:53.992 自信なく震えていましたが 00:08:53.992 --> 00:08:56.330 家族の愛情に満ちた支えと 00:08:56.330 --> 00:08:58.726 時間の経過や辛抱で 00:08:58.726 --> 00:08:59.980 3年後の今は 00:08:59.980 --> 00:09:03.225 幸せで自信に満ちたネコになりました NOTE Paragraph 00:09:03.225 --> 00:09:06.180 別のトラウマと回復についての話といえば 00:09:06.180 --> 00:09:07.676 数年前のことです 00:09:07.676 --> 00:09:09.916 私は研究のためタイにいて 00:09:09.916 --> 00:09:13.010 ブーンルアという名前のサルに会いました 00:09:13.010 --> 00:09:15.282 ブーンルアが赤ちゃんのとき 00:09:15.282 --> 00:09:17.296 イヌの群れに襲われ 00:09:17.296 --> 00:09:22.140 両足と片腕を引き裂かれ 00:09:22.140 --> 00:09:25.283 身を引きずり僧院にたどりつき 00:09:25.283 --> 00:09:26.834 僧侶に受け入れられました 00:09:26.834 --> 00:09:29.445 僧侶が助けを求めた獣医によって 治療が施され 00:09:29.445 --> 00:09:31.660 最終的にブーンルアは 00:09:31.660 --> 00:09:33.453 ゾウの施設に入ることになりました 00:09:33.453 --> 00:09:36.422 飼育員がそこで世話することを決め 00:09:36.422 --> 00:09:37.785 ブーンルアの好きな食べ物は 00:09:37.785 --> 00:09:39.804 ミント味のメントスと 00:09:39.804 --> 00:09:43.281 カブトムシと卵だということが分かりました 00:09:43.281 --> 00:09:46.453 飼育員は 社交的なブーンルアが 1匹でいるのを心配しましたが 00:09:46.453 --> 00:09:48.220 他のサルと一緒だと 00:09:48.220 --> 00:09:49.423 腕1本で 00:09:49.423 --> 00:09:52.218 自分を守ることも遊ぶことさえも 出来ないと判断し 00:09:52.218 --> 00:09:54.704 ウサギと一緒にすることにしました 00:09:54.704 --> 00:09:57.517 するとブーンルアはすぐに変わりました 00:09:57.517 --> 00:09:59.499 このウサギといるのがとても幸せだったのです 00:09:59.499 --> 00:10:01.779 身繕いし合い 親友になり 00:10:01.779 --> 00:10:04.482 ウサギが子供たちを産むと 00:10:04.482 --> 00:10:07.339 ブーンルアはさらに幸せになりました 00:10:07.339 --> 00:10:10.529 ある意味 朝起きる理由を与えられたようで 00:10:10.529 --> 00:10:11.434 実際それは 00:10:11.434 --> 00:10:14.918 寝る間も惜しむくらいでした 00:10:15.191 --> 00:10:18.810 子ウサギ達を極端にかばうようになり 00:10:18.810 --> 00:10:20.058 寝るのをやめたのです そして— 00:10:20.058 --> 00:10:23.119 ウサギ達の世話をしている間 うとうとしていました 00:10:23.390 --> 00:10:25.833 ブーンルアが過保護になり 愛情をかけ過ぎたので 00:10:25.833 --> 00:10:27.588 結果的に保護区の方が 00:10:27.588 --> 00:10:29.950 子ウサギ達を引き離したほどです 00:10:29.950 --> 00:10:31.885 あまりの過保護ぶりで 00:10:31.885 --> 00:10:33.764 親ウサギが子ウサギを傷付けるのでは と心配したのです 00:10:33.764 --> 00:10:35.608 保護区のスタッフは 引き離した後に 00:10:35.608 --> 00:10:37.217 ブーンルアがうつになるのを心配し 00:10:37.217 --> 00:10:38.449 そうならないよう 00:10:38.449 --> 00:10:41.447 別のウサギの友達を与えました 00:10:41.447 --> 00:10:44.804 (笑) 00:10:44.804 --> 00:10:47.509 うつ状態には見えないというのが 私の公式見解です 00:10:47.509 --> 00:10:49.459 (笑) NOTE Paragraph 00:10:49.459 --> 00:10:53.821 皆さんにこれだけはと願うことは 00:10:53.821 --> 00:10:56.900 よく知っている生き物について 皆さんには 00:10:56.900 --> 00:10:59.373 いろいろ想像する力があることを 00:10:59.373 --> 00:11:01.196 本当に感じて欲しいということです 00:11:01.196 --> 00:11:02.996 飼っているイヌ あるいは— 00:11:02.996 --> 00:11:06.704 ネコかもしれないし 片腕のサルかもしれませんが 00:11:06.742 --> 00:11:10.537 皆さんがみて心に傷を抱えているとか うつ状態だとか思うなら 00:11:10.537 --> 00:11:12.663 それは多分正しいのです 00:11:12.663 --> 00:11:15.471 これは大いに擬人化することで 00:11:15.471 --> 00:11:18.464 ヒトではない動物やモノに 00:11:18.464 --> 00:11:22.116 ヒトの特性を投影できるのです 00:11:22.116 --> 00:11:24.257 それが問題だとは思いません 00:11:24.257 --> 00:11:26.349 擬人化することができないとは思いません 00:11:26.349 --> 00:11:29.251 動物の思考について考察するため 00:11:29.251 --> 00:11:31.355 ヒトの頭から脳を取り出し 00:11:31.355 --> 00:11:33.560 瓶に入れて分析する というようなことではありません 00:11:33.560 --> 00:11:36.158 他の動物の感情的な経験について 想像できる 00:11:36.158 --> 00:11:38.678 私達は常にそういう動物なのです NOTE Paragraph 00:11:38.678 --> 00:11:41.671 二択であれば どれだけ上手に擬人化しますか? 00:11:41.671 --> 00:11:43.735 下手に擬人化しますか? 00:11:43.735 --> 00:11:46.215 下手に擬人化するのは 00:11:46.215 --> 00:11:48.380 あまりに一般的です 00:11:48.380 --> 00:11:50.012 (笑) 00:11:50.012 --> 00:11:52.616 コーギーに服を着せて 結婚式をするとか 00:11:52.616 --> 00:11:55.272 スピリチュアルな つながりがあると信じて 00:11:55.272 --> 00:11:57.228 エキゾチックな野生動物に 近づき過ぎることもあるでしょう 00:11:57.228 --> 00:11:59.206 様々なことがあります 00:11:59.206 --> 00:12:03.112 でも上手く擬人化するというのは 00:12:03.112 --> 00:12:05.830 私たち人間と他の種の 動物的類似を認めることで 00:12:05.830 --> 00:12:08.637 他の動物の心と体験について 00:12:08.637 --> 00:12:12.276 推測できることに 基づくと思います 00:12:12.276 --> 00:12:14.822 また上手く擬人化することによって ある意味 00:12:14.822 --> 00:12:17.792 全体が成り立っている業界が 00:12:17.792 --> 00:12:20.953 向精神薬の業界です NOTE Paragraph 00:12:20.953 --> 00:12:25.473 アメリカ人の5人に1人が 向精神薬を服用しています 00:12:25.473 --> 00:12:29.868 抗うつ薬・抗不安薬・抗精神病薬などです 00:12:29.950 --> 00:12:31.784 全ての向精神薬における 00:12:31.784 --> 00:12:34.157 これまでの業績は 00:12:34.157 --> 00:12:35.889 他の動物のおかげです 00:12:35.889 --> 00:12:38.399 薬剤は まず人間以外の動物で試され 00:12:38.399 --> 00:12:42.335 毒性だけでなく 行動影響も試験対象でした 00:12:42.335 --> 00:12:45.519 広く使われている 抗精神病薬のソラジンは 00:12:45.519 --> 00:12:49.265 ラットでの作用が確認されてから 人間に用いられました 00:12:49.265 --> 00:12:51.426 抗不安薬のリブリアムは 00:12:51.426 --> 00:12:55.249 1950年代に 野卑であると判断されたネコに投与し 00:12:55.249 --> 00:12:57.640 落ち着いたネコにすることができました 00:12:57.640 --> 00:13:02.200 抗うつ薬も最初はウサギで試されました NOTE Paragraph 00:13:02.200 --> 00:13:05.104 しかし今日ではこういう薬剤を 00:13:05.104 --> 00:13:07.455 被験対象である動物に 投与しているだけでなく 00:13:07.455 --> 00:13:09.946 患者である動物にも 投与しています 00:13:09.946 --> 00:13:14.429 倫理的・非倫理的なやり方でです 00:13:14.429 --> 00:13:18.299 シーワールドはシャチのお母さんに 00:13:18.299 --> 00:13:20.943 子シャチと引き離すとき 抗不安薬を投与しています 00:13:20.943 --> 00:13:23.226 多くの動物園はゴリラに 抗精神薬や 00:13:23.226 --> 00:13:25.292 抗不安薬を投与しています 00:13:25.292 --> 00:13:28.165 私のオリバーのようなイヌには 00:13:28.165 --> 00:13:31.404 抗うつ剤と抗不安薬が投与されています 00:13:31.404 --> 00:13:33.140 ビルから飛び降りたり 00:13:33.140 --> 00:13:35.203 車道に飛び出すのを防ぐためです 00:13:35.203 --> 00:13:38.402 最近『サイエンス』で発表された研究によれば 00:13:38.402 --> 00:13:40.231 ザリガニにさえも 00:13:40.231 --> 00:13:42.455 抗不安薬が効くそうです 00:13:42.455 --> 00:13:44.730 より勇敢で活発になり 00:13:44.730 --> 00:13:49.780 周りを探検するようになるのだそうです NOTE Paragraph 00:13:49.780 --> 00:13:52.138 このような薬に頼る動物の数を 把握するのは難しいですが 00:13:52.138 --> 00:13:55.602 動物の製薬業界が巨大で 00:13:55.602 --> 00:13:57.390 成長しているとは言えます 00:13:57.390 --> 00:14:00.113 業界規模は 2011年の70億ドルから 00:14:00.113 --> 00:14:05.692 2015年までには 92億5千万ドルになると予測されています NOTE Paragraph 00:14:05.692 --> 00:14:09.539 薬物治療を無期限に受けている動物もいます 00:14:09.539 --> 00:14:13.774 ミルウォーキーの動物園にいるボノボも 00:14:13.774 --> 00:14:15.360 そのうちの一頭でした 00:14:15.360 --> 00:14:17.511 与えられたパキシルを残して 00:14:17.511 --> 00:14:19.907 他のボノボに配り始めるまでは 00:14:19.907 --> 00:14:24.916 (笑) (拍手) NOTE Paragraph 00:14:24.916 --> 00:14:27.805 向精神薬以上に 00:14:27.805 --> 00:14:30.320 非常にたくさんの 00:14:30.320 --> 00:14:32.968 他の治療介入が他の生き物を救っています 00:14:32.968 --> 00:14:35.330 ここがまさに 人間の医学に向けて 00:14:35.330 --> 00:14:39.412 動物用の医学から 学べるところだと考えています 00:14:39.458 --> 00:14:41.348 例えば強迫的に 自分の尾を追う飼いイヌを 00:14:41.348 --> 00:14:43.148 行動療法を行う獣医の元に 00:14:43.148 --> 00:14:44.926 連れて行くとしましょう 00:14:44.926 --> 00:14:47.730 彼らの初動は処方箋つづりに 手を伸ばすことではなく 00:14:47.730 --> 00:14:50.686 イヌの日常について あなたに聞くことです 00:14:50.686 --> 00:14:53.622 散歩に出かける頻度や 00:14:53.622 --> 00:14:56.276 運動量を知りたいでしょうし 00:14:56.276 --> 00:14:57.761 他のイヌや他の人間と 00:14:57.761 --> 00:15:00.180 関わる時間がどれ位か訊いてきます 00:15:00.180 --> 00:15:02.390 その動物への治療歴— 00:15:02.390 --> 00:15:04.905 主に行動療法について 00:15:04.905 --> 00:15:07.165 どんな種類のものを 試みてきたか尋ねるでしょう 00:15:07.165 --> 00:15:09.562 こういうことは特に向精神薬との併用で 00:15:09.562 --> 00:15:12.891 かなりの助けになることが多いのです NOTE Paragraph 00:15:12.891 --> 00:15:15.344 でも一番の救いになると思うのは 00:15:15.344 --> 00:15:17.301 特に社交的な動物では 00:15:17.301 --> 00:15:20.439 他の社交的な動物との時間です 00:15:20.439 --> 00:15:24.347 多くの意味で私はオリバーに対して 00:15:24.347 --> 00:15:26.851 介助動物になった気がします 00:15:26.851 --> 00:15:30.878 オウムがヒトを助け 00:15:30.878 --> 00:15:32.588 ヒトがオウムを助け 00:15:32.588 --> 00:15:34.126 イヌがゾウを助け 00:15:34.126 --> 00:15:37.304 ゾウが他のゾウを助けるのを見てきました 00:15:37.304 --> 00:15:38.637 皆さんのことは分かりませんが 00:15:38.637 --> 00:15:41.217 ありそうもない動物の友情が 00:15:41.217 --> 00:15:43.433 インターネットを通じて 私に転送されてきます 00:15:43.433 --> 00:15:46.720 フェイスブックの大半を占めているのも 00:15:46.720 --> 00:15:49.597 サルがネコを育てるとか 00:15:49.597 --> 00:15:54.233 グレート・デーン犬が 親のない子シカを育てるとか 00:15:54.233 --> 00:15:57.237 ブタと友達になったウシとかいう話に思えます 00:15:57.237 --> 00:16:01.173 もしこれについて 8年か9年前に聞かれたら 00:16:01.173 --> 00:16:03.663 このような動物達の友情は すごく情に訴えるもので 00:16:03.663 --> 00:16:06.786 間違った形で擬人化されている 00:16:06.786 --> 00:16:09.565 やらせかもしれないと答えたかもしれませんが 00:16:09.565 --> 00:16:12.517 擬人化は大事だと今は言えます 00:16:12.517 --> 00:16:16.112 これがまともなんです オキシトシンは— 00:16:16.112 --> 00:16:18.038 別名 絆ホルモンとして知られ 00:16:18.038 --> 00:16:20.634 性行為や子育て 00:16:20.634 --> 00:16:23.040 すごく好きな人が近くにいるときに 放出されますが 00:16:23.040 --> 00:16:25.629 そのオキシトシンレベルの 興味深い研究によると 00:16:25.629 --> 00:16:28.121 ヒトとイヌでも 互いに気にかけていたり 00:16:28.121 --> 00:16:29.515 一緒に楽しんでいるとき 00:16:29.515 --> 00:16:31.175 両者のオキシトシンレベルが上がります 00:16:31.175 --> 00:16:33.484 その上 他の研究でも 明らかになったのは 00:16:33.484 --> 00:16:35.620 オキシトシンレベルが 他の動物のペアでも上がり 00:16:35.620 --> 00:16:39.225 例えば ヤギとイヌが仲良く一緒に遊んだ後に 00:16:39.225 --> 00:16:43.684 オキシトシンレベルが急増するのです NOTE Paragraph 00:16:43.684 --> 00:16:46.451 事実 心の健康は双方向であると 00:16:46.451 --> 00:16:48.875 教えてくれた友人がいます 00:16:48.875 --> 00:16:52.874 彼の名はロニー・ホッジ ベトナム戦争の退役軍人です 00:16:52.874 --> 00:16:55.496 帰還した時 大量殺戮の生存者と 00:16:55.496 --> 00:16:58.139 戦争の心的外傷に苦しむ多くの人達と 00:16:58.139 --> 00:16:59.667 働き始めました 00:16:59.667 --> 00:17:02.151 彼はPTSDと高所恐怖症もありましたが 00:17:02.151 --> 00:17:04.050 これはベトナムで 00:17:04.050 --> 00:17:06.295 空中のヘリコプターから 00:17:06.295 --> 00:17:07.730 懸垂下降していたからです 00:17:07.730 --> 00:17:10.799 PTSDと高所恐怖症がある彼を助ける目的で 00:17:10.799 --> 00:17:14.250 ガンダーという名のラブラドゥードルの 介助犬が与えられました 00:17:14.250 --> 00:17:16.910 これが彼らが初めて出会った日 00:17:16.910 --> 00:17:19.502 すばらしいです 00:17:19.502 --> 00:17:21.267 それから彼らはたくさんの時間を 一緒に過ごしています 00:17:21.267 --> 00:17:25.517 同じような問題に苦しむ退役軍人を 訪問したりしています 00:17:25.517 --> 00:17:28.579 しかしロニーとガンダーの関係で 興味深いのは 00:17:28.579 --> 00:17:30.357 約数ヶ月後 00:17:30.357 --> 00:17:33.684 ガンダーも高所恐怖症を発症したことです 00:17:33.684 --> 00:17:37.981 あまりに近くでロニーを 見ていたためかと思われます 00:17:37.981 --> 00:17:41.450 しかしとても良いことは ガンダーが それでも優れた介助犬であることです 00:17:41.450 --> 00:17:43.985 両者が高所にいる時には 00:17:43.985 --> 00:17:47.343 ロニーはガンダーの状態を憂慮して 00:17:47.343 --> 00:17:53.317 自身の高所恐怖を忘れるのです NOTE Paragraph 00:17:53.317 --> 00:17:56.598 このような話にかなりの時間を費やし 00:17:56.598 --> 00:17:58.002 資料を掘り起こし 00:17:58.002 --> 00:18:00.456 文字通り何年もこの研究に費やしたことは 00:18:00.456 --> 00:18:02.756 私を変えました 00:18:02.756 --> 00:18:06.692 動物を種のレベルでは見られなくなり 00:18:06.692 --> 00:18:08.920 個として見るようになり 00:18:08.920 --> 00:18:11.961 それぞれの予報システムをもとに行動し 00:18:11.961 --> 00:18:13.251 その予報システムから 00:18:13.251 --> 00:18:14.963 自分が世界にどう反応するか 00:18:14.963 --> 00:18:17.272 情報を与えられる生物として 考えるようになりました 00:18:17.272 --> 00:18:20.160 この概念によって 00:18:20.160 --> 00:18:22.524 私は 好奇心旺盛で 感情移入できる人間になりました 00:18:22.524 --> 00:18:28.077 ベッドをシェアしたり 私の皿の上に 乗ったりする動物に対しても 00:18:28.093 --> 00:18:30.943 不安や恐怖症や 00:18:30.943 --> 00:18:33.894 様々なことで苦しむ 00:18:33.894 --> 00:18:36.521 知人に対してもです 00:18:36.521 --> 00:18:38.496 私が強く信じることは 00:18:38.496 --> 00:18:44.134 ブタやパグやパートナーの 心で何が起こっているか 00:18:44.134 --> 00:18:46.238 たとえ正確に知ることが出来なくても 00:18:46.248 --> 00:18:50.055 彼らに共感できるということです 00:18:50.055 --> 00:18:52.544 愛している動物にできる最高のことは 00:18:52.544 --> 00:18:56.840 擬人化することかもしれません NOTE Paragraph 00:18:56.840 --> 00:19:00.341 チャールズ・ダーウィンが 父親から言われたことは 00:19:00.341 --> 00:19:05.560 誰しも正気を失くす時があるということです 00:19:05.560 --> 00:19:08.391 ありがたいことに 私達は大抵正気を取り戻しますが 00:19:08.391 --> 00:19:10.562 それは互いの助けがあってこそです NOTE Paragraph 00:19:10.562 --> 00:19:12.618 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:19:12.618 --> 00:19:16.191 (拍手)