WEBVTT 00:00:17.417 --> 00:00:19.595 こんにちは はじめまして 00:00:20.265 --> 00:00:26.185 さて チャイルド・ライフ・スペシャリスト 00:00:26.779 --> 00:00:29.514 この職業をご存知だった方 いらっしゃいますか? 00:00:31.029 --> 00:00:34.162 いらっしゃらない... もっと頑張って働きます 00:00:34.162 --> 00:00:35.382 (笑) 00:00:35.382 --> 00:00:37.895 この職業は 北米で生まれた専門職 00:00:38.182 --> 00:00:41.786 私は毎日 病院で 子どもや家族と関わっています 00:00:42.587 --> 00:00:45.194 今日は 私が 子ども達から教えてもらった 00:00:45.286 --> 00:00:49.135 「受け入れる」ということについて お話ししたいと思っています 00:00:49.693 --> 00:00:53.775 「受け入れる」という姿勢でいると 少し楽になったり 00:00:54.150 --> 00:00:58.415 違うものが見えたり 今を大切に生きられる 00:00:58.415 --> 00:01:02.355 そんな気がしています 00:01:03.345 --> 00:01:05.444 北米の資格なので 00:01:05.444 --> 00:01:08.153 私もアメリカに留学して この資格を取りました 00:01:08.153 --> 00:01:11.493 これは 私が初めて 実習をした保育園の様子です 00:01:11.836 --> 00:01:13.926 肌の色 かみの毛 00:01:13.926 --> 00:01:17.039 文化的背景 家族背景も 様々 00:01:17.177 --> 00:01:19.646 パパが2人 ママが2人 00:01:19.982 --> 00:01:22.027 アジアやアフリカからの養子 00:01:22.027 --> 00:01:25.027 という家族も 少なくありませんでした 00:01:25.027 --> 00:01:27.254 「みんな違って みんないい」 ということ 00:01:27.836 --> 00:01:30.798 そして本当にたくさんのことを 学んだ保育園です 00:01:31.883 --> 00:01:35.417 でも 私は 英語が得意だった訳ではありません 00:01:35.934 --> 00:01:39.615 大学入試 センター試験の 英語はさんざんでした 00:01:40.144 --> 00:01:43.454 なので 保育園での実習は わりと大変で 00:01:43.454 --> 00:01:45.885 子どもが言っていることが分からない 00:01:45.885 --> 00:01:47.972 伝えたいことが伝わらない 00:01:47.972 --> 00:01:49.653 そんな毎日でした 00:01:50.559 --> 00:01:53.384 私が特に 苦手だった言葉は 00:01:53.384 --> 00:01:55.366 この動物 リスです 00:01:55.586 --> 00:01:58.575 皆さん 英語で何というか ご存知ですか? 00:02:00.690 --> 00:02:02.694 今でも上手に言えませんが 00:02:02.694 --> 00:02:04.998 「Squirrel」と言います 00:02:05.566 --> 00:02:07.889 RとLがいっぱいなんです 00:02:08.500 --> 00:02:10.351 5歳の子に 真剣な顔で 00:02:10.351 --> 00:02:14.011 「Repeat after me.」 と練習させられました 00:02:14.011 --> 00:02:15.481 (笑) 00:02:15.481 --> 00:02:18.807 何度頑張っても 上手に発音できないので 00:02:18.807 --> 00:02:22.082 「It’s not squirrel, SQUIRREL!」 00:02:22.082 --> 00:02:23.589 と怒られました 00:02:23.589 --> 00:02:25.818 何が違うのかも分からなかった... 00:02:26.812 --> 00:02:28.180 そして 不幸なことに 00:02:28.180 --> 00:02:31.474 この大学の構内 リスがいっぱいいたんです 00:02:31.474 --> 00:02:33.074 (笑) 00:02:33.074 --> 00:02:37.139 「あ リスがいるね」と言うたびに へこみました 00:02:37.371 --> 00:02:39.243 最初 私は 00:02:39.243 --> 00:02:42.097 上手に英語を話そうと頑張りました 00:02:42.097 --> 00:02:43.730 必死でした 00:02:43.730 --> 00:02:47.613 でも そんな時 指導教官の先生が言ってくれました 00:02:48.203 --> 00:02:51.338 「あなたは確かに英語は話せない 00:02:51.338 --> 00:02:55.793 私達と同じように 子どもと関わることはできない 00:02:55.793 --> 00:02:58.841 でも 言葉が不自由な分 00:02:58.841 --> 00:03:01.350 私たちには見えてないものが 見えている 00:03:01.350 --> 00:03:04.536 あなたにしかできない 関わりがある 00:03:04.536 --> 00:03:06.696 だから そのままでいいのよ」 00:03:06.696 --> 00:03:10.691 何だかとても楽になりました 00:03:10.691 --> 00:03:14.718 できない英語を上達させようと もがくのをやめて 00:03:14.819 --> 00:03:18.882 できない自分を受け入れて あきらめて 00:03:18.891 --> 00:03:22.012 「私 英語できないの 教えて」と 00:03:22.012 --> 00:03:26.018 ありのままの自分で 子どもと 向き合うようになりました 00:03:26.027 --> 00:03:28.302 すると不思議なもので 00:03:28.302 --> 00:03:31.302 子どもの方も私のことを 受け入れてくれて 00:03:31.302 --> 00:03:35.654 どんどん楽しく深く 関われるようになりました 00:03:35.654 --> 00:03:38.998 ありのままの自分を受け入れて 00:03:38.998 --> 00:03:41.998 ありのままで相手と向き合うと 00:03:41.998 --> 00:03:46.692 お互いに 少し心を開いて 良い関係が築けるのかな 00:03:46.692 --> 00:03:49.692 そんな気がしています 00:03:49.692 --> 00:03:52.217 仕事の一場面を紹介します 00:03:52.217 --> 00:03:53.655 お医者さんごっこです 00:03:53.663 --> 00:03:58.422 これは 子どもがいつも受けている医療— 検査や注射などを 00:03:58.602 --> 00:04:03.417 子どもが先生や看護師さん役になって 人形にする という遊びです 00:04:03.417 --> 00:04:07.863 この遊びの中で 子どもは 自分が受けている医療 00:04:07.863 --> 00:04:11.928 自分の病気のこと[を] 理解したり振り返ったり 00:04:11.928 --> 00:04:14.171 何かしら気持ちを昇華していく― 00:04:14.171 --> 00:04:17.171 手助けになればいいなと 思っています 00:04:17.171 --> 00:04:21.054 私はこの遊びの中で 00:04:21.054 --> 00:04:24.770 子どもたちに「痛い時は泣いてもいいよ 00:04:24.770 --> 00:04:26.550 嫌な時は泣いてもいいよ」 00:04:26.550 --> 00:04:29.222 ということを伝えたいと思っています 00:04:30.467 --> 00:04:32.087 印象的な女の子がいました 00:04:32.087 --> 00:04:33.408 当時4歳 00:04:33.408 --> 00:04:36.677 彼女は定期的に 注射が必要でした 00:04:36.677 --> 00:04:43.433 彼女は 注射の前 「私 絶対 泣くから」と宣言して 00:04:43.433 --> 00:04:46.057 この処置室に歩いて行きました 00:04:46.057 --> 00:04:47.985 すごいことだと思います 00:04:47.985 --> 00:04:52.586 泣くほど嫌なことがある場所に 自ら歩いて向かう 00:04:52.595 --> 00:04:56.058 彼女なりに どうして注射が必要なのか 00:04:56.058 --> 00:05:00.627 何をするのか 分かって 受け入れていたんだと思います 00:05:00.627 --> 00:05:05.179 この処置室に着いて 処置台に座った彼女は 00:05:05.179 --> 00:05:07.498 宣言通りに泣きました 00:05:07.498 --> 00:05:12.990 廊下中に響き渡る大きな声で 「ぎゃー」と 00:05:12.990 --> 00:05:15.435 でも 腕は動かさなかった 00:05:15.435 --> 00:05:17.515 じっとしていました 00:05:17.515 --> 00:05:19.928 そして 注射が終わると 00:05:19.928 --> 00:05:22.928 けろっとした笑顔で こう言いました 00:05:22.928 --> 00:05:28.216 「あー きょうも ないちゃった でも わたし がんばったね」 00:05:29.339 --> 00:05:32.330 子どもが こう思えたら 大丈夫です 00:05:32.330 --> 00:05:36.363 でももし 例えば 「男の子は泣かない」とか 00:05:36.363 --> 00:05:39.952 「泣かない子は 強い」 という言葉を重ねていたら 00:05:39.952 --> 00:05:45.068 泣いた時「私は弱い子」 と思ってしまうかもしれない 00:05:45.068 --> 00:05:49.634 同じように泣いて 嫌なことを乗り越えた時に 00:05:49.634 --> 00:05:52.778 「泣いたけど 私ってすごい」 と思えるか 00:05:52.778 --> 00:05:55.623 「泣いた私は ダメな子」 と思ってしまうか 00:05:55.623 --> 00:05:59.315 この気持ちの差は 大きいと思います 00:05:59.315 --> 00:06:03.522 楽しいとか嬉しいという 00:06:03.522 --> 00:06:06.522 何だか一見 良さそうな気持ちだけでなく 00:06:06.522 --> 00:06:10.018 悲しい、怒ってる、泣きたい 00:06:10.018 --> 00:06:13.018 そんな気持ちも 「あり」だと思います 00:06:13.018 --> 00:06:16.287 悲しい相手 悲しい自分 00:06:16.287 --> 00:06:18.863 怒っている相手 怒っている自分も 00:06:18.863 --> 00:06:21.863 許し 受け入れたいと思っています 00:06:21.863 --> 00:06:24.681 ちなみにですが先ほどの 00:06:24.681 --> 00:06:26.971 「泣く宣言」をしていた女の子は 00:06:26.971 --> 00:06:29.985 いつの日か いつものように腕を出して 00:06:29.985 --> 00:06:32.985 「ぎゃー」っと言いながら 00:06:32.985 --> 00:06:37.353 「あれ 涙が出てない」 と自分で気がついて 00:06:37.353 --> 00:06:41.473 泣かずに 注射を受けるようになりました 00:06:41.473 --> 00:06:42.882 もう一つ 00:06:42.882 --> 00:06:47.334 私が 仕事の中で 大切にしていることを紹介します 00:06:47.334 --> 00:06:49.863 これは 私が アメリカでボランティアをした 00:06:49.863 --> 00:06:52.163 子どものためのホスピスです 00:06:52.163 --> 00:06:54.665 とっても素敵な施設でした 00:06:54.665 --> 00:06:58.085 ここでボランティアをするときの研修で 00:06:58.085 --> 00:06:59.775 こんなことを言われました 00:06:59.775 --> 00:07:03.624 『「サポーティブ・インパクト」 ではなく 00:07:03.624 --> 00:07:07.848 「サポーティブ・エンバイロメント」 であってください』という言葉です 00:07:07.848 --> 00:07:11.842 今の私が日本語を考えるなら 00:07:11.842 --> 00:07:14.356 サポーティブ・インパクト というのは 00:07:14.356 --> 00:07:18.824 何か与える してあげる という一方通行の矢印 00:07:18.824 --> 00:07:21.773 サポーティブ・エンバイロメント というのは 00:07:21.773 --> 00:07:27.385 何かするわけではなくて ただその人のことを思って そこにいる 00:07:27.385 --> 00:07:30.318 寄り添うという姿勢かなと思います 00:07:30.318 --> 00:07:33.724 日本で働き始めたころ 00:07:33.724 --> 00:07:36.724 印象的な男の子の言葉を聞きました 00:07:36.724 --> 00:07:39.343 小学生の男の子 その日は 病棟で 00:07:39.343 --> 00:07:42.343 お楽しみ会のイベントをしていました 00:07:42.343 --> 00:07:46.117 彼の部屋に行って 「イベント行く?」と声をかけると 00:07:46.117 --> 00:07:47.787 彼は 言いました 00:07:47.787 --> 00:07:51.471 「今日はいい やめとく だって気つかうじゃん 00:07:51.471 --> 00:07:54.471 笑ってあげないといけないでしょう?」 00:07:54.471 --> 00:07:57.814 私は はっとしました 00:07:57.814 --> 00:08:00.682 子どもは 大人の 00:08:00.682 --> 00:08:03.682 「楽しませたい」「笑ってほしい」 という気持ちを 00:08:03.682 --> 00:08:09.261 空気を読んで 気を遣って笑ってくれることが あるんだなと思いました 00:08:09.261 --> 00:08:11.029 でも 私が目指すのは 00:08:11.029 --> 00:08:14.029 気を遣って笑ってくれる関係じゃない 00:08:14.029 --> 00:08:18.146 嫌な時は「嫌」と言える 「あっち行け」と言える 00:08:18.436 --> 00:08:20.693 泣きたい時は 一緒に泣ける 00:08:20.693 --> 00:08:23.693 そんな関係でいたいです 00:08:23.693 --> 00:08:28.065 誰かの力になりたいと思う時 気をつけていないと 00:08:28.065 --> 00:08:30.140 サボーティブ・インパクト ― 00:08:30.140 --> 00:08:34.780 「してあげる」「楽しませる」「笑わせる」 00:08:34.780 --> 00:08:39.466 「私が」 笑ってほしい 「私が」 役に立ちたいという 00:08:39.466 --> 00:08:42.729 「私が」が主語になってしまう ことがあります 00:08:42.729 --> 00:08:46.295 そのときその人は 笑いたくないのかもしれない 00:08:46.295 --> 00:08:48.085 泣きたいのかもしれない 00:08:48.085 --> 00:08:52.662 ただのんびりお昼寝が したいのかもしれない 00:08:52.662 --> 00:08:56.404 「私が」という 自分の気持ちを少し引っ込めて 00:08:56.404 --> 00:08:59.514 ありのままの相手を受け入れて 00:08:59.514 --> 00:09:02.690 違いを受け入れて 寄り添う 00:09:02.690 --> 00:09:04.500 という姿勢でいられたら 00:09:04.500 --> 00:09:09.430 その時その人が本当にしたいこと 本当の気持ちが 00:09:09.430 --> 00:09:14.630 見えるのかもしれない そんな気がしています 00:09:14.630 --> 00:09:17.409 さて プレゼンも後半です 00:09:17.409 --> 00:09:20.942 ここで「命」について 考えてみたいと思います 00:09:22.192 --> 00:09:26.009 「100%」 これは何の数字でしょうか? 00:09:26.009 --> 00:09:31.409 私も含め 私たちが死ぬ確率です 00:09:31.409 --> 00:09:35.783 当たり前のことですが 普段はあまり意識しないかもしれません 00:09:35.783 --> 00:09:39.682 でも 私たち みんな死にます 00:09:39.682 --> 00:09:45.890 私は この事実をどう受け止め 受け入れようか? よく考えます 00:09:45.890 --> 00:09:49.498 ここに 希望が見出せるのではないか と思っています 00:09:49.498 --> 00:09:54.811 ちなみにですが 子どもの病気は とてもよく治るようになりました 00:09:54.811 --> 00:09:57.662 例えば小児がん、白血病などは 00:09:57.662 --> 00:10:02.562 8割を超える子どもが元気になって 大人になると言われています 00:10:02.706 --> 00:10:06.378 ただ 病院で働いているので 00:10:06.378 --> 00:10:12.058 時々は子どもが亡くなり 見送る という経験もしてきました 00:10:13.578 --> 00:10:15.871 2人の男の子を紹介します 00:10:15.871 --> 00:10:19.931 右が たいじゅ君 左が よしき君といいます 00:10:19.931 --> 00:10:23.934 この写真の時で 高校1年生と中学3年生 00:10:23.934 --> 00:10:25.556 これは 中高生のみんなで集まって 00:10:25.556 --> 00:10:28.556 たこ焼きパーティをした時の写真です 00:10:28.556 --> 00:10:32.315 この素敵なサングラスは 彼のジョークです 00:10:32.315 --> 00:10:36.104 「この写真使うのかよ?」って 怒られるかもしれませんが 00:10:36.104 --> 00:10:38.809 2人はガンダムが好きで 仲が良くて 00:10:38.809 --> 00:10:41.809 お互いに支え合っているような 関係だったと思います 00:10:41.809 --> 00:10:45.981 まず たいじゅ君の話から 00:10:45.981 --> 00:10:48.190 たいじゅ君は 中学生の時に 病気が発症し 00:10:48.190 --> 00:10:51.190 一旦は元気に退院したのですが 00:10:51.190 --> 00:10:56.875 高校になるころ 病気が再発し もう治せないという状態になりました 00:10:56.875 --> 00:10:59.216 16歳の時でしたが 00:10:59.216 --> 00:11:02.976 彼は 医師から「もう治せない」 ということを聞きました 00:11:02.976 --> 00:11:06.729 そして 抗がん剤の治療は 00:11:06.729 --> 00:11:10.239 気持ち悪くて辛くて 大嫌いだったので 00:11:10.239 --> 00:11:14.336 最後は 自分で 「もうこれ以上治療はしない」 00:11:14.336 --> 00:11:17.336 と選び 決めて 亡くなりました 00:11:17.336 --> 00:11:21.533 治療をやめて 亡くなるまでの間 00:11:21.533 --> 00:11:25.873 彼がとても穏やかに 家族と思い出話をしたり 00:11:25.873 --> 00:11:28.203 ガンダムのプラモデルを作ったり 00:11:28.203 --> 00:11:32.292 会いたい人に会ったりして 過ごしていたのをよく覚えています 00:11:32.292 --> 00:11:36.005 印象的なエピソードがありました 00:11:36.005 --> 00:11:41.097 この写真のように 中高生が集まってたこ焼きを作れば 00:11:41.097 --> 00:11:45.641 カラシ、ハチミツ、チョコレート 入ります 00:11:45.641 --> 00:11:50.401 これはまさに チョコレートを持って ニヤついている写真なんですけど 00:11:50.401 --> 00:11:54.669 そんなたこ焼きをよく食べさせられていた 看護師さんがいました 00:11:54.669 --> 00:11:56.274 リアクションが抜群で 00:11:56.274 --> 00:11:59.627 みんなで楽しくおしゃべりをしていたとき 00:11:59.627 --> 00:12:03.999 たいじゅ君が その看護師さんに聞きました 00:12:03.999 --> 00:12:07.579 「ねぇ たこ焼き 何が一番まずかった?」 00:12:07.579 --> 00:12:10.891 その看護師さんは答えました 00:12:10.891 --> 00:12:14.941 「グミだね ブドウのグミが最悪」と 00:12:14.941 --> 00:12:18.810 すると たいじゅ君は私に言いました 00:12:18.810 --> 00:12:23.198 「佐々木さん 分かった?グミだって 00:12:23.198 --> 00:12:27.177 今度のたこ焼きの時 忘れずにグミ用意しなきゃダメだよ」と 00:12:27.177 --> 00:12:33.124 「今度のたこ焼きの時」というのは もう自分がいない時 00:12:33.124 --> 00:12:36.280 自分は参加できないたこ焼きパーティです 00:12:36.280 --> 00:12:41.179 彼は 自分がもうすぐ死ぬ という事実を 00:12:41.179 --> 00:12:44.179 もちろん色んな気持ちが あったと思いますが 00:12:44.179 --> 00:12:49.593 そんなユーモアをもって受け入れていた そんなふうに感じています 00:12:49.593 --> 00:12:53.577 そして こんな手紙を残してくれました 00:12:54.842 --> 00:12:58.971 「最後まで楽しく過ごすことができて 幸せだった 00:12:58.971 --> 00:13:01.601 今までありがとう」 00:13:03.031 --> 00:13:06.284 次に よしき君の話です 00:13:06.284 --> 00:13:10.941 たいじゅ君ともお互いの夢の話を していたそうですが 00:13:10.941 --> 00:13:12.241 夢は漫画家 00:13:12.241 --> 00:13:15.074 でも そんな彼も たいじゅ君を見送ってから 00:13:15.074 --> 00:13:18.074 病気の再発が見つかりました 00:13:18.074 --> 00:13:23.661 そして彼もまた 医師から 「もう治せない」ということを聞きました 00:13:23.661 --> 00:13:29.707 それでも彼は最初 「治すために治療を続ける」といって 00:13:29.707 --> 00:13:33.781 病院で辛い抗がん剤治療を 続けていました 00:13:33.781 --> 00:13:37.677 その頃 印象的な会話をしています 00:13:37.677 --> 00:13:45.353 よしき君が 「たとえ機械につながれて動けなくなっても 00:13:45.353 --> 00:13:46.993 治療を続けていれば 00:13:46.993 --> 00:13:50.953 それは頑張って生きてると言えるのか? 00:13:50.953 --> 00:13:52.663 諦めていいのか?」[と] 00:13:52.663 --> 00:13:58.335 今まで 「病気に負けるな 頑張って闘え」 00:13:58.335 --> 00:14:02.605 そう言われ そう強いられてきた彼らです 00:14:02.605 --> 00:14:06.665 そんな彼らは 医師に 「もう治せない」と聞いてもなお 00:14:06.665 --> 00:14:10.465 治療をやめることは諦めること 00:14:10.465 --> 00:14:14.176 そう感じるのかもしれない と思いました 00:14:14.176 --> 00:14:17.766 私は 彼に言いました 00:14:17.766 --> 00:14:20.867 「治療をしても しなくても 00:14:20.867 --> 00:14:23.067 どんな治療を選択しても 00:14:23.067 --> 00:14:26.873 それはどう生きるか? という生き方の選択 00:14:26.873 --> 00:14:29.283 諦めではないよ 00:14:29.283 --> 00:14:32.536 どんな選択をしてもいいんだよ」 00:14:33.606 --> 00:14:36.521 そして彼は今 こんな風に言っています 00:14:36.521 --> 00:14:42.349 「治すことは あきらめた でも 生きることは あきらめない」 00:14:44.520 --> 00:14:48.059 そして今は 治すためではなく 00:14:48.059 --> 00:14:51.659 少しでも 家族といい時間を 過ごすということを目標に 00:14:51.659 --> 00:14:55.238 副作用の少ない薬に変えたり 00:14:55.238 --> 00:14:58.238 薬の量を減らしたり という選択をしています 00:15:00.108 --> 00:15:03.333 「生きることはあきらめない」 そう言うよしき君は 00:15:03.333 --> 00:15:07.423 「時間を大切に生きたい 自分にできることをしたい」 00:15:07.423 --> 00:15:09.365 と思っているそうです 00:15:09.365 --> 00:15:12.278 そして例えば 00:15:12.278 --> 00:15:16.888 愛知県知事に 「病院に院内高校を作ってください」 00:15:16.888 --> 00:15:19.563 というお願いの手紙を出しました 00:15:20.173 --> 00:15:22.346 みんなのためです 00:15:22.346 --> 00:15:25.370 そして その手紙がきっかけで 00:15:25.370 --> 00:15:28.370 今年の4月から正式に 00:15:28.370 --> 00:15:34.129 高校の院内訪問教育が 制度化されスタートしました 00:15:34.129 --> 00:15:38.149 自分の命の限りを受け入れて 00:15:38.465 --> 00:15:41.465 今を大切に生きようとしているよしき君 00:15:42.475 --> 00:15:46.367 本当に 大きなものを 残してくれたと思っています 00:15:48.157 --> 00:15:53.211 命は 誰でも 必ず終わりがやってきます 00:15:53.211 --> 00:15:58.493 大切なのは その時間の長さではない と思っています 00:15:58.493 --> 00:16:04.250 命の時間が長くても 短くても 00:16:04.250 --> 00:16:07.500 自分に与えられた命の時間を受け入れて 00:16:07.500 --> 00:16:11.781 その時間をどう生きるのか? それが大切です 00:16:13.681 --> 00:16:18.091 どんな選択 どんな生き方も 価値あるものです 00:16:18.091 --> 00:16:20.131 生き方— 00:16:20.131 --> 00:16:24.853 日常も たくさんの選択の繰り返しです 00:16:24.853 --> 00:16:28.497 悩むのも当然 迷うのも当然ですが 00:16:28.497 --> 00:16:32.464 どんな選択をしても あとから振り返ったときに 00:16:32.464 --> 00:16:36.214 「良かった」「幸せだった」と 00:16:36.214 --> 00:16:42.338 自分で自分の選択 生き方をとらえ 受け入れられたらと思っています 00:16:42.338 --> 00:16:46.705 それは 彼らが私に 教えてくれたことです 00:16:48.885 --> 00:16:52.518 最近 よしき君は 「死ぬのは怖い」と言います 00:16:52.518 --> 00:16:54.318 当然です 00:16:54.318 --> 00:16:57.703 でも こうも言っています 00:16:57.703 --> 00:17:03.013 「でも 楽しみもある また たいじゅ君と遊べるじゃないですか」 00:17:05.463 --> 00:17:08.582 最後に この言葉を紹介します 00:17:09.605 --> 00:17:11.832 変えることができるものについては 00:17:11.832 --> 00:17:14.832 それを変えるだけの勇気を 00:17:14.832 --> 00:17:18.941 変えることができないものについては 00:17:18.941 --> 00:17:21.941 それを受け入れるだけの心の平静を 00:17:21.941 --> 00:17:28.317 そして変えることができるものと 変えることができないものを 00:17:28.317 --> 00:17:31.317 見極めるための賢さを与えてください 00:17:33.117 --> 00:17:34.464 私も 00:17:34.464 --> 00:17:38.144 私に与えられた命の時間を受け入れて 00:17:38.144 --> 00:17:41.144 不甲斐ない自分も受け入れて 00:17:41.144 --> 00:17:44.508 今を大切に生きたいと思っています 00:17:44.508 --> 00:17:46.498 ありがとうございました 00:17:46.498 --> 00:17:48.075 (拍手)