一番最近自由を感じた瞬間は いつでしょうか? 本当に自由な瞬間 人生は私たちが想像する以上に ずっと大きな広がりを 持っている考える瞬間です 例えば 物事を行うのに 十分な時間が常にあると考える瞬間 これは稀なことです あるいは身体が 自在に動くと考える瞬間 あらゆることが可能であると 思えるような自由な瞬間 これこそが私が常に 追い求めてきた問いであり 15年間 禅宗の僧院で 暮らしている理由でもあります そこで私は多くを学びました オリビエ・ワン=ゲン禅師のおかげです これまでの道のりを 私がどう進んできたかを語るだけで ひとつTEDxトークができそうです 僧院での生活は とても独特ですから ですが 今日は3つの核となる教えを 皆さんと共有したいと思います 大きな意味を持った3つの経験― 心の平穏を見いだす 手助けとなった経験です 1つ目の教えを 「日の出の小鳥」と呼んでいます 私には詩的な一面もあるんですよ! このお話の舞台は日本 私が伝統的な禅の修行に 飛び込んだ場所です 2008年 私は 名古屋に降り立ち 尼寺へと向かいましたが 聞いた話では 西洋から来た尼僧は すぐに飛んで帰ると言うことでした もちろんのことながら 生活環境は非常に厳しいものでした 現代の快適さはありません お湯はなく すべてを水で行います 私の手はひび割れ しもやけになりました 真冬であっても 暖房はありません 10平米の部屋に 7人ほどが生活しており プライバシーは ほとんどありませんでした 修行は朝から晩まで続きます ゆっくりと静かな禅ではなく 時間は飛ぶように過ぎていきます すべて日本語で行われましたが 私が日本語を学んだのは 『聖闘士星矢』からでした (笑) 私は途方に暮れました これこそが非常に 貴重な教えの目的でもありました 身を任せるしかないところまで 自分を追い込むのです 3週間も経つと 自分を追い込むのも もう限界を迎え これ以上は無理 というところまで来ました ある朝 僧院で私は ヨーロッパと連絡を取ることもなく たった独りで 去ることに決めました その日 私の心の中は 失望でいっぱいでした この旅路に私は 多くの希望を抱いていたのです でも私はひとり わだかまりを抱えていました 部屋で私物をまとめる間も 私は独りでした ある時 私がこんな風に 顔を上げると 窓の向こうに 雪に覆われた木の枝があり そこに小鳥が止まっていました なんと繊細なことか! なんて美しい! 小鳥は羽根を揺らして 身震いしていました 私の中で その瞬間 怒りと失望は 畏敬の念に変わりました この美しさを目にしたからです 私の奥深くから優しさが 波のようにわき上がってきました これこそが 1万キロの旅路の先にある― 教えなのだとしたら? 感情と考えは 概して 永続しないものです ふと現れたかと思えば 消えてしまうこともあります 怒りを感じたと思えば 次の瞬間には 世界の美しさに触れて 畏敬の念を抱いていることもあります これは誰もが日常生活で 経験することでしょう 例えば 職場でも 同僚に苛立ちを覚え 対立して 諍いが続いても 友人からの電話で 冗談を言い合うと 突然 笑い出すのです この能力こそが最初の教えです 「感情は常ならぬものである」 小鳥が教えてくれました 2つ目の教えは少し違っています 私は「頭の中には何がある?」 と呼んでいます 全部はお話ししませんよ! (笑) これは感情が現れたり さらに重要なことに消えたりするのなら 執着すべきでないというものです 概して 私たちは 逡巡しがちです 何か嫌なことが起こると 何度も思い悩みます 皆 そうするものですし 自然なことです 思い悩むのをやめるには 自分がしていることを 理解する必要があるのです ですから 頭の中に 何があるのか知るべきなのです 頭の中には何があるでしょう? こんな経験があります 座禅を組んで 瞑想中でした 仏のように静かに その時の私には難しかったのですが― ある時 師が言いました 「空に浮かぶ雲のように 考えや感情を漂わせなさい」と 美しい喩えでしたが 同時にひどく怒りも感じました なぜなら 私の感情は 「深く青い空に漂う ちっぽけで穏やかな雲」ではなく 大きくて どす黒い 密度の高い積乱雲のような 停滞しているものだったからです 穏やかな仏のように見えても 内側では感情がたぎっていました 私は なんとかその境地に 到達したいと願い たくさん学びました 今日は皆さんの時間を 節約してさしあげます (笑) ちょっとした練習を してみましょうか よろしいですか? (観客)はい! (タニエ)ゆったりと腰掛けて ちょっとリラックスしてください 頭と身体の中にあるものを 吟味し 見つけることができるでしょう では目を閉じてください 身体が椅子に触れている部分に 神経を集中してください 今ここで この部屋で 座っていることに意識を向けてください それが現在です 私たちが今いる場所です そこから 少し探検を 始めることができます 頭の中のインディ・ジョーンズに なってみるのです 皆さんが自分の思考を 把握できるよう私が導きます イメージのような形で 考えを持っている方もいるでしょう 自分の中で映し出される 映画であったり きらめく光であったり 自分がいる場所に関する 記憶であったり 今話している相手であったりします これは視覚的心的表象です 音が聞こえる人もいるでしょう 「頭の中の小さな声」 と呼ばれるものです 時には おしゃべりになって この小さな声が 意見を言ったり 話したり 分析したり 文章の一部を言ったり 歌うことさえあります 頭の中の小さな声は 内なる対話です 頭の中には何がありますか? イメージ? 内なる小さな声? 3つ目の思考の形態は 運動感覚と呼ばれ 体内に宿る感覚全てを言います 例えば 熱いとか冷たいとか 椅子に触れる感覚とか 重いとか軽いとか これは身体の中で感じる あらゆる感情も含まれます 喜びや怒り 悲しみなど全てです 3つの思考の形 まもなく 目を開けてもらいます その時には 自分の内面の働きが 少しよくわかっているはずです 主にイメージが見えるのか 声が聞えるのか 感情や 身体の感覚を感じるのかなどです 心地よくなってきたと 思いますが... そろそろ目を開けましょうか! 自分について新たな知識を 得ましたね 最初の一歩です これを知るのは興味深いことです なぜなら自分の働きを よりよく観察できるからです 皆さん各々 1日のいつでも 実践することができます それから 3つ目の教えです これを見いだしたのは 偶然のことでした これは「潜望鏡」と言うのですが 理由はすぐにわかります この教えを見いだしたのは 少しさかのぼって2003年のことです 2003年には 私は フランスの音楽コンサートで アメリカ人のために 150人から200人ほどの観客を 前にして歌っていました 初めてのコンサートで 舞台に上がると― そう まるで今晩のように― ただこの格好と髪型では ありませんでしたが (笑) レパートリーを歌い始めると 緊張感に襲われました 脚は震え 心臓はばくばくと脈打ち 舞台負けの症状が 一気に現れたのです 幸い 当時すでに 私は瞑想を行っていました この症状が出てくると同時に どこかで傍観している もうひとりの自分のような意識が 無意識にひとりでに生まれたのです つまり 私は歌いながら 体内では緊張感に襲われており その症状が現れていましたが それと同時に かろうじて緊張感に溺れないよう 支えてくれる意識もあったのです 首から上は自由に動かせたため コンサートを続けることができました 想像してみてください 歌い出すやいなや あがってしまい (『ばら色の人生』の歌唱) それと同時に 傍観している私がいるのです これは傍観する意識 自分を観察する意識でした 意識に自分の感情を 観察されていると どうでしょう 気持ちが和らいだのです! ただ観察するだけでよいのです それだけで沸々と現れる 不快な感情は自然と消えていきます 最初にお話しした通りにです 私はこれを「潜望鏡」と 呼んでいます これは潜水艦のてっぺんに ついているもので 水面から顔を出して あたりを観察するためのものです そのような意識を持っていると 水の中にいると同時に水の外にもいます 経験のただ中にありながら 切り離して考えられ 内側にいると同時に 外側にいることになります つまり その瞬間を生き 物事を完全に感じることができます ロボットなんかには なりたくありませんよね! しかし それと同時に 頭は解放され 心の奥深くで安らぎを得られます これは過去数年間で 3つ目に有意義な出来事でした 1つ目は「感情は自然に 表れては消えるということ」 2つ目は「考えや感情が 何でできているのか 知ることができるということ」 視覚や 頭の中の声のような聴覚 あるいは身体感覚 運動感覚かもしれません 3つ目は 「この素晴らしい俯瞰する意識― 自分を観察する意識を 見出すことができるということ」 それによって「今この瞬間を 完全に自由に生きることができること」です とてもいい感じでしょう? (笑) まだ終わりではありませんよ! 締めくくりに 毎日行う ちょっとした儀式を提案させてください 朝に行うちょっとした習慣です 朝は大切なひとときですから これをするだけで 3点とも盛り込むことができます よろしいですか? では 今が午前中だと思ってください 目覚まし時計が鳴りました 大体の場合 少し二度寝しますね 1回 そして2回 どこかの時点では 起きなければなりません ここで 私が提案したいのは 横になっていても ベッドの端に腰掛けていても 人生を変えることができる習慣です 朝一番に頭に浮かぶ考えに 意識的になるということです ただそれだけです 頭に浮かぶのは イメージでしょうか 内なる小さな声でしょうか 感情でしょうか それとも身体の感覚でしょうか? 2つ目 3つ目に浮かぶ考えにも 意識を向けてください このとき 自然に あなたの習慣は変化します 頭の中で延々と巡る雑音に 気づくことができるのです これの素晴らしい点は あなたは朝 目を覚ますと ひとりでに目も覚めやらぬまま コーヒーを淹れに行くロボットではなく 意識をしっかりと見つめて 起床できるのです あなたは自由を 再び手にしたことに気づくでしょう もはやロボットではなく 日々を能動的に生きる行動主となるのです これは内面を大きく 解き放つことになります これから始まる一日に あらゆることが可能であると思えるのです (拍手)