WEBVTT 00:00:00.833 --> 00:00:06.567 インテリのオアシスである 00:00:06.567 --> 00:00:09.285 TEDのみなさんを前にして 00:00:09.285 --> 00:00:15.159 寒い場所で重いものを引っ張るエキスパートの私が お話をさせていただきます 00:00:15.159 --> 00:00:18.145 成人してからのほとんどは極地での探検者 として過ごしてきました 00:00:18.145 --> 00:00:21.827 先月 チームメイトである タルカ・ラピニエール と 00:00:21.847 --> 00:00:27.025 人生でもっとも野心的な探検を終えてきました 00:00:27.025 --> 00:00:30.014 実のところ 00:00:30.014 --> 00:00:32.666 不満と文句ばかりで何もない場所から 00:00:32.666 --> 00:00:37.754 4ヶ月間の探検を終えてすぐ まっすぐここへ運ばれてきたような感覚でいます 00:00:37.754 --> 00:00:41.935 そのため まだ頭の切り替えがうまくいっていません 00:00:41.935 --> 00:00:43.815 探検の不思議な副作用により 00:00:43.815 --> 00:00:46.403 私の短期記憶は完全にダメになったようなのです 00:00:46.403 --> 00:00:48.665 だから 不満と文句の17分を回避するために 00:00:48.665 --> 00:00:53.363 メモを用意しました 00:00:53.363 --> 00:00:56.211 この探検の話をするのは初めてです 00:00:56.211 --> 00:01:01.683 これは 遺伝子の解読や宇宙望遠鏡の建設ではなく 00:01:01.690 --> 00:01:06.474 過去 誰も成し遂げられなかったことをなすために 00:01:06.474 --> 00:01:08.310 我々の全てをささげた話です 00:01:08.310 --> 00:01:12.455 少しでもみなさんの考えるヒントになればと思います NOTE Paragraph 00:01:12.455 --> 00:01:16.066 地球上で もっとも寒く 過酷で 乾燥し  標高の高い大陸である 00:01:16.066 --> 00:01:20.743 南極大陸での探検の旅でした 00:01:20.757 --> 00:01:22.804 南極は魅力的で 広大です 00:01:22.804 --> 00:01:25.119 オーストラリアの2倍の大きさで 00:01:25.119 --> 00:01:30.211 中国とインドを足したほどの大きさです NOTE Paragraph 00:01:30.220 --> 00:01:32.088 話がそれますが 00:01:32.088 --> 00:01:34.312 この数日 興味深い現象を経験しました 00:01:34.312 --> 00:01:38.087 数年後 TEDでクリス・ハドフィールドが 00:01:38.089 --> 00:01:40.144 次のようなことを話すことになるのではないかと 00:01:40.144 --> 00:01:41.767 「あぁ 南極 最高だわよ 00:01:41.767 --> 00:01:47.604 夫と私の記念にリンドブラードと南極へ行ったわ」 00:01:47.604 --> 00:01:50.951 とか 「イイね マラソンで南極に行ったんですって?」 00:01:50.951 --> 00:01:53.060 (笑) NOTE Paragraph 00:01:54.445 --> 00:01:58.482 我々の旅はマラソンの距離で69回分 00:01:58.485 --> 00:02:04.476 南極の海岸から南極点まで歩き そしてまた戻ってくる 00:02:04.476 --> 00:02:07.247 105日 約3,000キロの旅です 00:02:07.247 --> 00:02:09.491 我々はこの過程で 極地での人力移動距離の最長記録を 00:02:09.491 --> 00:02:15.084 約640キロ更新しました 00:02:15.087 --> 00:02:19.498 (拍手) 00:02:19.498 --> 00:02:21.913 西海岸沿いの方のためにご説明すると 00:02:21.913 --> 00:02:26.030 ここからサンフランシスコまで歩いてから 00:02:26.030 --> 00:02:28.908 また歩いて戻ってくるという道のりです 00:02:28.908 --> 00:02:33.827 キャンプ旅行としては 相当に長い道のりでした 00:02:33.827 --> 00:02:36.994 マレーシアのビジネスインサイダー紙に 00:02:36.994 --> 00:02:40.720 よくまとめられた記事が載っているので 紹介しましょう 00:02:40.720 --> 00:02:46.246 [過去 幾多の探検家が亡くなった極地での冒険を 2名は成し遂げた] NOTE Paragraph 00:02:46.247 --> 00:02:48.917 クリス・ハドフィールドは 00:02:48.917 --> 00:02:54.139 探検での恐怖、成功、 そして生存の可能性について雄弁に語っています 00:02:54.139 --> 00:02:58.014 我々以前に 9名がチャレンジし 00:02:58.019 --> 00:03:00.712 1人として極点を往復できず 00:03:00.712 --> 00:03:04.590 途中で5名が亡くなっています NOTE Paragraph 00:03:04.590 --> 00:03:07.237 ロバート・ファルコン・スコット隊長です 00:03:07.237 --> 00:03:10.000 この冒険を試みた最後の部隊を率いました 00:03:10.000 --> 00:03:12.438 彼とライバルのアーネスト・シャクルトン卿の探検隊は 00:03:12.438 --> 00:03:15.154 南極点に最初に到着し 00:03:15.154 --> 00:03:19.414 南極大陸の測量を行うために 00:03:19.427 --> 00:03:22.446 10年にわたって競い合いました 00:03:22.446 --> 00:03:24.581 その当時 南極大陸は 00:03:24.581 --> 00:03:26.485 天体望遠鏡で観察できる月面よりも 00:03:26.485 --> 00:03:28.830 知られていなかったのです 00:03:28.830 --> 00:03:32.964 南極大陸の大部分は 100年前には測量されていませんでした NOTE Paragraph 00:03:32.964 --> 00:03:34.475 ご存知の方もいらっしゃるでしょう 00:03:34.475 --> 00:03:37.288 スコット隊長の最後の探検 1910年のテラ・ノヴァ号の探検は 00:03:37.288 --> 00:03:39.802 壮大な極地法で始まりました 00:03:39.802 --> 00:03:42.031 ポニーや犬 00:03:42.031 --> 00:03:44.778 石油で動くトラクター等を使って 00:03:44.778 --> 00:03:48.175 南極点に向かうスコット隊の 最後の5名が通る区間に 00:03:48.175 --> 00:03:51.883 たくさんの食料と燃料を事前に配備して 00:03:51.883 --> 00:03:55.187 その後 5名は南極点で折り返し 徒歩でそりを引いて戻る計画でした 00:03:55.187 --> 00:03:57.599 スコットと最後の5名のチームは 00:03:57.599 --> 00:04:01.284 1912年の1月に南極点に到着しましたが 00:04:01.284 --> 00:04:06.274 犬ぞりを使った ノルウェーのロアルド・アムンゼン隊に 00:04:06.274 --> 00:04:07.908 先を越されたことを知りました 00:04:07.908 --> 00:04:09.997 スコット隊は最後は徒歩でした 00:04:09.997 --> 00:04:14.595 それから100年以上の間 人力での南極点到達は未達のままでした 00:04:14.595 --> 00:04:17.520 5名のスコット隊は復路で全滅したからです 00:04:17.520 --> 00:04:19.633 過去10年間の間 00:04:19.633 --> 00:04:22.954 私はその理由を考え続けました 00:04:22.954 --> 00:04:26.246 なぜ スコット隊の記録が その後も塗り替えられないのか? 00:04:26.246 --> 00:04:28.596 スコット隊は2,500キロを徒歩で歩きました 00:04:28.596 --> 00:04:30.497 それ以来 誰もその記録に近づけていません 00:04:30.497 --> 00:04:33.318 だから それが地球上 最も過酷な気候での 00:04:33.318 --> 00:04:35.839 人類の忍耐 努力 00:04:35.839 --> 00:04:38.510 肉体的成果の最高到達点なのです 00:04:38.510 --> 00:04:41.018 これはマラソンの記録が 00:04:41.018 --> 00:04:44.037 1912年以来破られていないようなものです 00:04:44.037 --> 00:04:49.141 好奇心 頑固さ または尊大さなど 00:04:49.145 --> 00:04:51.095 もちろん 多少突飛ですが ご想像の通りの要素が一緒になり 00:04:51.095 --> 00:04:55.165 ひょっとして自分がこの偉業を成し遂げる男になれる かもしれないと考えさせました NOTE Paragraph 00:04:55.182 --> 00:04:58.873 スコットの探検と異なり 我々は二人だけです 00:04:58.873 --> 00:05:01.996 そして昨年の10月に持ち物を全部引きずって 00:05:01.996 --> 00:05:04.214 南極の海岸を出発しました 00:05:04.214 --> 00:05:06.814 スコットが ”人力輸送”と呼んだ方法です 00:05:06.814 --> 00:05:09.837 ここからサンフランシスコまで 歩いて往復するといいましたが 00:05:09.837 --> 00:05:13.214 実際にはNFL史上最も重い選手よりも 00:05:13.214 --> 00:05:15.638 少し重いくらいの荷物を引きずっていました 00:05:15.638 --> 00:05:17.681 我々のそりはスタート時点で 00:05:17.681 --> 00:05:20.746 200キロまたは440ポンドあり 00:05:20.746 --> 00:05:25.020 スコット隊の最も弱いポニーが 引っ張った重さと同じです 00:05:25.020 --> 00:05:28.200 最初は 我々は時速800mでした 00:05:28.200 --> 00:05:31.887 多分 100年以上もの間 00:05:31.887 --> 00:05:33.145 この旅が行われなかった理由は 00:05:33.145 --> 00:05:38.418 これに挑戦するほど馬鹿な人が いなかったからでしょう 00:05:38.418 --> 00:05:40.437 まさしくエドワード朝時代の方法であったと 00:05:40.437 --> 00:05:43.454 主張することは出来ませんが- 00:05:43.454 --> 00:05:47.192 どの山の名前を名づけることもなく 未測量の谷も地図に記しませんでした 00:05:47.192 --> 00:05:51.573 人類が未だ測量したことのない土地に 足を踏み入れたと思います 00:05:51.573 --> 00:05:54.962 人類の脳に自身を呪う時に点灯する部分を 00:05:54.962 --> 00:05:58.779 我々が将来知ることがあるとしても 00:05:58.779 --> 00:06:01.945 きっと驚きはしないでしょう NOTE Paragraph 00:06:01.945 --> 00:06:05.997 一般的なアメリカ人は90%の時間を屋内で過ごします 00:06:05.997 --> 00:06:09.253 我々はほぼ4ヶ月屋内に入らなかったのです 00:06:09.253 --> 00:06:11.495 日没も見ませんでした 00:06:11.495 --> 00:06:13.151 24時間 昼間です 00:06:13.151 --> 00:06:15.306 生活環境はとても苛酷です 00:06:15.306 --> 00:06:20.148 105日間 下着は3回しか替えませんでした 00:06:20.148 --> 00:06:24.072 タルカと私は2.7㎡のテントを共有しました 00:06:24.072 --> 00:06:28.813 スコットが夢想だにしなかった いくつかのテクノロジーもありました 00:06:28.813 --> 00:06:32.180 毎晩テントから 太陽光発電の 00:06:32.180 --> 00:06:34.225 特注の衛星通信機器とパソコンで 00:06:34.225 --> 00:06:36.085 ブログを書いていました 00:06:36.085 --> 00:06:38.482 テントの上には折り曲げ可能な 太陽電池パネルがありました 00:06:38.482 --> 00:06:41.940 私にとって書くことはとても重要でした 00:06:41.940 --> 00:06:48.493 子供の頃 冒険や探検文学に影響されましたが 00:06:48.493 --> 00:06:51.014 皆さんも今週ここで 00:06:51.021 --> 00:06:55.265 物語を話すことの大切さと力を知ったでしょう NOTE Paragraph 00:06:55.265 --> 00:06:57.081 21世紀の装置を使っていましたが 00:06:57.081 --> 00:06:59.868 我々が実際に体験した現実は 00:06:59.868 --> 00:07:01.865 スコットが直面した困難と同じものでした 00:07:01.865 --> 00:07:05.602 天候であり スコットがグライドと呼んだ 00:07:05.603 --> 00:07:08.951 そりと雪の間の大量の摩擦抵抗でした 00:07:08.951 --> 00:07:12.799 経験した暴風雪の最低温度はマイナス70度 00:07:12.801 --> 00:07:15.378 旅のほとんどは ホワイトアウトと呼ばれる 00:07:15.378 --> 00:07:18.391 視界ゼロの状態でした 00:07:18.391 --> 00:07:20.742 世界で最も大きく危険な氷河の一つである 00:07:20.742 --> 00:07:23.955 ベアドモア氷河を上り下りしました 00:07:23.955 --> 00:07:27.381 全長180キロで 表面のほとんどは ブルーアイスと呼ばれるものです 00:07:27.381 --> 00:07:30.979 きれいでキラキラ光る 鉄のように固い青い表面が 00:07:30.979 --> 00:07:34.817 最深60メートルにもなる 氷河の深い亀裂 00:07:34.817 --> 00:07:38.798 何千ものクレバスが覆っています 00:07:38.798 --> 00:07:40.315 飛行機は着陸できません 00:07:40.315 --> 00:07:43.775 そのため 実質的に救助される可能性が最も低く 00:07:43.775 --> 00:07:48.219 最大の危険にさらされます NOTE Paragraph 00:07:48.219 --> 00:07:52.115 我々は悪天候のため 1日遅れの 00:07:52.115 --> 00:07:54.694 61日目に徒歩で南極点に到着しましたが 00:07:54.694 --> 00:07:57.261 残念なことに ここは期待はずれでした 00:07:57.261 --> 00:07:59.726 南極点には アメリカの常設基地である 00:07:59.726 --> 00:08:03.044 アムンゼン・スコット基地があります 00:08:03.044 --> 00:08:04.995 滑走路があり 食堂があり 00:08:04.995 --> 00:08:06.448 温水シャワーもあります 00:08:06.448 --> 00:08:08.353 郵便局や土産物屋 00:08:08.353 --> 00:08:12.091 映画館としても使われている バスケットボールコートもあります 00:08:12.091 --> 00:08:14.066 最近はちょっと違うのです 00:08:14.066 --> 00:08:15.862 そして 多くのごみが捨てられています 00:08:15.862 --> 00:08:17.292 人類が年間365日 00:08:17.292 --> 00:08:22.576 ハンバーガーと温水シャワーと映画館のある 00:08:22.586 --> 00:08:26.131 生活が出来るのは素晴らしいと思いますが 00:08:26.131 --> 00:08:28.887 同時に多くの空の段ボール箱が 生み出されているように見えます 00:08:28.887 --> 00:08:30.949 この写真の左側には 00:08:30.949 --> 00:08:33.174 南極から飛行機での搬出を待っている 00:08:33.174 --> 00:08:35.657 何エーカーものごみの山が見えます 00:08:35.657 --> 00:08:38.929 しかし 南極点には 00:08:38.929 --> 00:08:42.325 我々が 誰の力も借りずに 00:08:42.325 --> 00:08:43.971 最も険しいルートを助けもなく 00:08:43.971 --> 00:08:46.316 1,500キロを 史上最速で 00:08:46.316 --> 00:08:48.364 歴史上の誰よりも重い荷物を引きずり 踏破したという記念碑があります 00:08:48.364 --> 00:08:50.333 もし我々が中断して飛行機で家に帰ったら 00:08:50.333 --> 00:08:53.467 もちろんそれは極めて常識的な判断ですが 00:08:53.467 --> 00:08:55.348 私の話はここで終わり 00:08:55.348 --> 00:08:58.938 結末はこういったものになるでしょう NOTE Paragraph 00:08:58.938 --> 00:09:03.743 正しいチームが周りにいて 正しい道具と テクノロジーがあり 00:09:03.743 --> 00:09:07.481 十分な自信と決意があるのなら 00:09:07.481 --> 00:09:10.926 不可能はありません NOTE Paragraph 00:09:12.656 --> 00:09:15.289 しかしもし引き返したら 00:09:15.289 --> 00:09:18.048 物語は面白くなります 00:09:18.048 --> 00:09:20.842 3000メートルを超える南極の高地は 00:09:20.842 --> 00:09:24.841 風が強く とても寒い場所で 我々は疲弊していました 00:09:24.841 --> 00:09:26.711 35回分のマラソンをし 00:09:26.711 --> 00:09:28.297 まだ道半ばです 00:09:28.297 --> 00:09:30.328 スコットの時代にはなかった 雪上飛行機や携帯電話 00:09:30.328 --> 00:09:32.452 24時間の追跡無線装置などの 00:09:32.452 --> 00:09:36.505 セーフティネットも当然ありました 00:09:36.515 --> 00:09:38.257 しかし 後から分かることですが 00:09:38.257 --> 00:09:40.323 安全装置は 00:09:40.323 --> 00:09:42.482 人生を簡単にすることよりも 00:09:42.482 --> 00:09:46.337 人類の限界に限りなく 近いところに踏み出すための 00:09:46.337 --> 00:09:50.104 微妙な判断を可能にするのです 00:09:50.104 --> 00:09:53.577 人類の限界への旅は 激しい拷問で 00:09:53.577 --> 00:09:56.414 毎日食糧一杯のそりを曳いていながら 00:09:56.414 --> 00:10:00.676 毎日飢えにより疲弊していきます NOTE Paragraph 00:10:00.686 --> 00:10:04.613 何年もの間 支援者への提案の中で 00:10:04.613 --> 00:10:07.724 人類の忍耐の限界への挑戦などと 軽薄な文章を書いてきましたが 00:10:07.724 --> 00:10:12.136 実際には とても怖い環境でした 00:10:12.136 --> 00:10:14.045 南極点に到着する前は 00:10:14.045 --> 00:10:17.509 二週間のほとんど止むことのない逆風が 我々の歩みを遅らせました 00:10:17.509 --> 00:10:20.159 その結果 何日かの間 半分の量しか食べられませんでした 00:10:20.159 --> 00:10:22.878 旅のためにそりに積まれた食糧は 限られていたので 00:10:22.878 --> 00:10:24.880 摂取カロリーを必要量の半分にすることで 00:10:24.880 --> 00:10:28.793 食糧を長持ちさせようとしたのです 00:10:28.793 --> 00:10:32.412 その結果 二人は徐々に低血糖になり- 00:10:32.412 --> 00:10:35.236 血糖値が日に日に下がっていき- 00:10:35.236 --> 00:10:39.994 極寒に敏感になっていきました 00:10:39.994 --> 00:10:42.097 タルカはある日 00:10:42.097 --> 00:10:44.227 低体温で気絶しそうな私の写真をとりました 00:10:44.227 --> 00:10:49.035 二人とも何度も低体温症の発作に襲われました かつて経験したこともなく 00:10:49.035 --> 00:10:50.746 とても屈辱的です 00:10:50.746 --> 00:10:54.414 私がそうであったように 00:10:54.414 --> 00:10:56.670 自分はくじけない人間だと思うほど 00:10:56.670 --> 00:10:58.664 そのダメージは大きくなります 00:10:58.664 --> 00:11:00.916 低体温症は選択肢を与えてくれません 00:11:00.916 --> 00:11:03.726 完全に無力になります 00:11:03.726 --> 00:11:06.907 よっぱらった幼児のようです 00:11:06.907 --> 00:11:08.880 惨めな姿になります 00:11:08.880 --> 00:11:12.999 ただ寝て止めたいと願ったのを覚えています 00:11:12.999 --> 00:11:15.173 とても とても奇妙な感覚です 00:11:15.173 --> 00:11:20.412 そこまで衰弱するのは本当に驚きでした NOTE Paragraph 00:11:20.412 --> 00:11:24.894 ついに食糧は底をつきました 00:11:24.894 --> 00:11:28.352 我々が旅を始めた 00:11:28.352 --> 00:11:30.217 最初の補給所から46マイル手前です 00:11:30.217 --> 00:11:31.560 我々は復路のために文字通り食糧と燃料を埋めた 00:11:31.560 --> 00:11:34.277 10ヶ所の食糧補給所を用意していました 00:11:34.277 --> 00:11:37.554 燃料は雪を溶かし水を作る 調理器具用です 00:11:37.554 --> 00:11:43.361 私は補給機を呼ぶかの選択を迫られました 00:11:43.361 --> 00:11:47.930 雪上飛行機はこの区間を乗り越える 8日分の食糧を運んでくれます 00:11:47.930 --> 00:11:51.289 南極の反対側から12時間かかりました NOTE Paragraph 00:11:51.289 --> 00:11:54.998 飛行機を呼ぶのは私の人生で 最もつらい決断の一つでした 00:11:54.998 --> 00:11:58.474 だからこんな腹をしてここに立っているのは 詐欺のように聞こえます 00:11:58.474 --> 00:12:01.314 この3週間で私は15キロ太りました 00:12:01.314 --> 00:12:04.389 あまりの空腹は面白い心の傷を残しました 00:12:04.389 --> 00:12:08.996 ホテルのビュッフェを見つけるたびに 食べあさってしまうのです 00:12:08.996 --> 00:12:10.774 (笑) 00:12:10.774 --> 00:12:16.468 実際 我々は極めて悪い意味で 本当に空腹でした 00:12:16.468 --> 00:12:18.909 ここに生きて立って 00:12:18.909 --> 00:12:20.911 無傷で この話ができるのですから 00:12:20.911 --> 00:12:22.971 補給機を呼んだことに微塵も後悔はありません 00:12:22.971 --> 00:12:27.709 しかし 外部の助けを呼ぶことは 計画に全くなかったので 00:12:27.709 --> 00:12:30.913 自分の心の中はいまだに葛藤しています 00:12:30.913 --> 00:12:33.955 この旅は 私の最大の夢であり 00:12:33.955 --> 00:12:36.047 ほとんど完璧でした NOTE Paragraph 00:12:36.967 --> 00:12:38.648 海岸線に戻る道のり 00:12:38.648 --> 00:12:40.839 ベアドモア氷河の頂上で 00:12:40.839 --> 00:12:42.625 我々のクランポン - 00:12:42.625 --> 00:12:44.760 氷河のブルーアイスの上を旅するための ブーツのスパイクが壊れました 00:12:44.760 --> 00:12:46.525 滑りやすい岩のように固い ブルーアイスの下り坂が 00:12:46.525 --> 00:12:48.709 160キロも残っていました 00:12:48.709 --> 00:12:51.810 ほぼ毎時 クランポンを直す必要がありました 00:12:51.810 --> 00:12:53.761 規模のイメージをお伝えするため 00:12:53.761 --> 00:12:56.758 ベアドモア氷河の入り口を見下ろしています 00:12:56.758 --> 00:13:00.233 地平線上のくぼみにマンハッタンが すっぽり入ります 00:13:00.233 --> 00:13:03.447 マウント・ホープとマウント・キフィンの間は 約32キロです 00:13:03.447 --> 00:13:09.680 私は南極にいたときほど 自分が小さく感じたことがありません 00:13:09.680 --> 00:13:11.785 氷河の入り口に下りていくと 00:13:11.785 --> 00:13:16.431 新雪が何十もの深いクレバスを 覆っていることがわかります 00:13:16.431 --> 00:13:19.381 シャクルトン卿の部下達は このような地域を歩いてわたることを 00:13:19.381 --> 00:13:24.375 列車の駅のガラス窓の上を 歩くようだと表現しました 00:13:24.375 --> 00:13:27.289 たいていはスキーやブーツが 雪を突き抜ける程度ですが 00:13:27.289 --> 00:13:30.721 数え切れないくらいクレバスに落ちました 00:13:30.721 --> 00:13:33.324 あるときは 脇ぐらいまで落ちましたが 00:13:33.324 --> 00:13:36.767 幸いにもそれ以上は落ちませんでした NOTE Paragraph 00:13:36.767 --> 00:13:40.947 そしてたった5週間前 105日間の後 00:13:40.947 --> 00:13:44.522 南極のニュージーランド側のロス島の海岸で 00:13:44.522 --> 00:13:47.544 多難の末のゴールを迎えました 00:13:47.544 --> 00:13:49.694 手前に氷が見えますが 00:13:49.694 --> 00:13:52.556 後ろには荒々しい岩が見えます 00:13:52.556 --> 00:13:56.358 後ろには途切れることのない 1,800マイルのスキー跡があります 00:13:56.358 --> 00:13:58.866 私が10年もの間 あこがれていた 00:13:58.866 --> 00:14:03.256 至上最も長い徒歩での極地旅行を 我々は成し遂げたのです NOTE Paragraph 00:14:03.256 --> 00:14:05.271 そして 今振り返ってみても 00:14:05.271 --> 00:14:07.666 私はまだ同じ考えを持っています 00:14:07.666 --> 00:14:09.248 私は何年もの間 00:14:09.248 --> 00:14:11.367 ゴールの重要性や 00:14:11.367 --> 00:14:14.809 意志の固さや 自信について語ってきましたが 00:14:14.809 --> 00:14:19.520 人生のほとんどをささげてきた 00:14:19.520 --> 00:14:23.432 ゴール地点に到達したときに 何が起こるかについて 00:14:23.432 --> 00:14:26.750 あまり考えていなかったこと 00:14:26.750 --> 00:14:30.330 また現実にはまだそれを探し続けていると 認めざるをえません 00:14:30.330 --> 00:14:33.931 お話したように 私が旅をした 目に見える証拠はほとんどありません 00:14:33.931 --> 00:14:35.382 15キロも太ったからです 00:14:35.382 --> 00:14:38.910 今はメイクで隠れてしまっていますが 何箇所かかすかな凍傷の跡はあります 00:14:38.910 --> 00:14:42.383 ゴーグルをしていた 鼻と両頬のあたりです 00:14:42.383 --> 00:14:47.128 しかし 私の内面は全く違った人間です 00:14:47.128 --> 00:14:49.625 正直にお話しすれば 00:14:49.625 --> 00:14:54.800 南極は私に挑みかけ 00:14:54.800 --> 00:14:58.503 将来も言葉に表せるか分からないほど 私のプライドをズタズタにしました 00:14:58.503 --> 00:15:02.603 私はまだ自分の考えを まとめることに苦労しています 00:15:02.603 --> 00:15:06.248 ここに私が立ってお話できることは 00:15:06.248 --> 00:15:09.956 我々の全てが 00:15:09.956 --> 00:15:11.980 野心や情熱 00:15:11.980 --> 00:15:14.372 撤退を拒む 純粋な頑なさにより 00:15:14.372 --> 00:15:16.857 偉大な何かを成し遂げられるということです 00:15:16.857 --> 00:15:19.813 それはスティングが言ったように 00:15:19.813 --> 00:15:22.884 「夢を強く願うなら それは叶う」 というようなものです 00:15:22.884 --> 00:15:26.230 しかし ご存知かもしれませんが 私はここで 00:15:26.230 --> 00:15:31.341 「旅程の方が目的地より重要だ」 という言葉をお伝えしたいと思います 00:15:31.341 --> 00:15:35.532 これには大切なことが含まれているからです 00:15:35.532 --> 00:15:37.901 私が あのロス島の荒々しい岩の海岸の 00:15:37.901 --> 00:15:41.657 ゴールに近づくにつれ 00:15:41.657 --> 00:15:44.851 とても大きなことを感じ始めました 00:15:44.851 --> 00:15:49.431 とても長く 過酷な徒歩が 私に教えてくれたことは 00:15:49.431 --> 00:15:52.174 人間にとって 00:15:52.174 --> 00:15:54.694 ゴールに着くことが幸福ではないということ 00:15:54.694 --> 00:15:58.170 多くの人々が夢見る完璧さは 00:15:58.170 --> 00:16:02.250 決して手に入らないのかもしれないということ 00:16:02.250 --> 00:16:07.626 混乱や努力 00:16:07.626 --> 00:16:13.704 終わりのない世界 や やりかけの仕事たち 00:16:13.704 --> 00:16:17.904 次回はもっと上手にできるという 人生の旅の中で 00:16:17.904 --> 00:16:20.756 今 ここで 満たされないのだとしたら 00:16:20.756 --> 00:16:24.055 決して幸福は 感じられないのではないかということ NOTE Paragraph 00:16:24.055 --> 00:16:27.631 多くの人が私に 「次は何に挑戦するの」とたずねます 00:16:27.631 --> 00:16:34.629 今の私は 回復するだけでも ホテルのビュッフェに入るだけでもとても幸せです 00:16:34.629 --> 00:16:38.982 しかしボブ・ホープは言いました 00:16:38.982 --> 00:16:41.278 「とても光栄ではありますが 00:16:41.278 --> 00:16:45.347 まだここに満足しない頑固な性格です」と (笑) NOTE Paragraph 00:16:45.347 --> 00:16:47.297 ありがとう