1 00:00:00,833 --> 00:00:06,567 インテリのオアシスである 2 00:00:06,567 --> 00:00:09,285 TEDのみなさんを前にして 3 00:00:09,285 --> 00:00:15,159 寒い場所で重いものを引っ張るエキスパートの私が お話をさせていただきます 4 00:00:15,159 --> 00:00:18,145 成人してからのほとんどは極地での探検者 として過ごしてきました 5 00:00:18,145 --> 00:00:21,827 先月 チームメイトである タルカ・ラピニエール と 6 00:00:21,847 --> 00:00:27,025 人生でもっとも野心的な探検を終えてきました 7 00:00:27,025 --> 00:00:30,014 実のところ 8 00:00:30,014 --> 00:00:32,666 不満と文句ばかりで何もない場所から 9 00:00:32,666 --> 00:00:37,754 4ヶ月間の探検を終えてすぐ まっすぐここへ運ばれてきたような感覚でいます 10 00:00:37,754 --> 00:00:41,935 そのため まだ頭の切り替えがうまくいっていません 11 00:00:41,935 --> 00:00:43,815 探検の不思議な副作用により 12 00:00:43,815 --> 00:00:46,403 私の短期記憶は完全にダメになったようなのです 13 00:00:46,403 --> 00:00:48,665 だから 不満と文句の17分を回避するために 14 00:00:48,665 --> 00:00:53,363 メモを用意しました 15 00:00:53,363 --> 00:00:56,211 この探検の話をするのは初めてです 16 00:00:56,211 --> 00:01:01,683 これは 遺伝子の解読や宇宙望遠鏡の建設ではなく 17 00:01:01,690 --> 00:01:06,474 過去 誰も成し遂げられなかったことをなすために 18 00:01:06,474 --> 00:01:08,310 我々の全てをささげた話です 19 00:01:08,310 --> 00:01:12,455 少しでもみなさんの考えるヒントになればと思います 20 00:01:12,455 --> 00:01:16,066 地球上で もっとも寒く 過酷で 乾燥し  標高の高い大陸である 21 00:01:16,066 --> 00:01:20,743 南極大陸での探検の旅でした 22 00:01:20,757 --> 00:01:22,804 南極は魅力的で 広大です 23 00:01:22,804 --> 00:01:25,119 オーストラリアの2倍の大きさで 24 00:01:25,119 --> 00:01:30,211 中国とインドを足したほどの大きさです 25 00:01:30,220 --> 00:01:32,088 話がそれますが 26 00:01:32,088 --> 00:01:34,312 この数日 興味深い現象を経験しました 27 00:01:34,312 --> 00:01:38,087 数年後 TEDでクリス・ハドフィールドが 28 00:01:38,089 --> 00:01:40,144 次のようなことを話すことになるのではないかと 29 00:01:40,144 --> 00:01:41,767 「あぁ 南極 最高だわよ 30 00:01:41,767 --> 00:01:47,604 夫と私の記念にリンドブラードと南極へ行ったわ」 31 00:01:47,604 --> 00:01:50,951 とか 「イイね マラソンで南極に行ったんですって?」 32 00:01:50,951 --> 00:01:53,060 (笑) 33 00:01:54,445 --> 00:01:58,482 我々の旅はマラソンの距離で69回分 34 00:01:58,485 --> 00:02:04,476 南極の海岸から南極点まで歩き そしてまた戻ってくる 35 00:02:04,476 --> 00:02:07,247 105日 約3,000キロの旅です 36 00:02:07,247 --> 00:02:09,491 我々はこの過程で 極地での人力移動距離の最長記録を 37 00:02:09,491 --> 00:02:15,084 約640キロ更新しました 38 00:02:15,087 --> 00:02:19,498 (拍手) 39 00:02:19,498 --> 00:02:21,913 西海岸沿いの方のためにご説明すると 40 00:02:21,913 --> 00:02:26,030 ここからサンフランシスコまで歩いてから 41 00:02:26,030 --> 00:02:28,908 また歩いて戻ってくるという道のりです 42 00:02:28,908 --> 00:02:33,827 キャンプ旅行としては 相当に長い道のりでした 43 00:02:33,827 --> 00:02:36,994 マレーシアのビジネスインサイダー紙に 44 00:02:36,994 --> 00:02:40,720 よくまとめられた記事が載っているので 紹介しましょう 45 00:02:40,720 --> 00:02:46,246 [過去 幾多の探検家が亡くなった極地での冒険を 2名は成し遂げた] 46 00:02:46,247 --> 00:02:48,917 クリス・ハドフィールドは 47 00:02:48,917 --> 00:02:54,139 探検での恐怖、成功、 そして生存の可能性について雄弁に語っています 48 00:02:54,139 --> 00:02:58,014 我々以前に 9名がチャレンジし 49 00:02:58,019 --> 00:03:00,712 1人として極点を往復できず 50 00:03:00,712 --> 00:03:04,590 途中で5名が亡くなっています 51 00:03:04,590 --> 00:03:07,237 ロバート・ファルコン・スコット隊長です 52 00:03:07,237 --> 00:03:10,000 この冒険を試みた最後の部隊を率いました 53 00:03:10,000 --> 00:03:12,438 彼とライバルのアーネスト・シャクルトン卿の探検隊は 54 00:03:12,438 --> 00:03:15,154 南極点に最初に到着し 55 00:03:15,154 --> 00:03:19,414 南極大陸の測量を行うために 56 00:03:19,427 --> 00:03:22,446 10年にわたって競い合いました 57 00:03:22,446 --> 00:03:24,581 その当時 南極大陸は 58 00:03:24,581 --> 00:03:26,485 天体望遠鏡で観察できる月面よりも 59 00:03:26,485 --> 00:03:28,830 知られていなかったのです 60 00:03:28,830 --> 00:03:32,964 南極大陸の大部分は 100年前には測量されていませんでした 61 00:03:32,964 --> 00:03:34,475 ご存知の方もいらっしゃるでしょう 62 00:03:34,475 --> 00:03:37,288 スコット隊長の最後の探検 1910年のテラ・ノヴァ号の探検は 63 00:03:37,288 --> 00:03:39,802 壮大な極地法で始まりました 64 00:03:39,802 --> 00:03:42,031 ポニーや犬 65 00:03:42,031 --> 00:03:44,778 石油で動くトラクター等を使って 66 00:03:44,778 --> 00:03:48,175 南極点に向かうスコット隊の 最後の5名が通る区間に 67 00:03:48,175 --> 00:03:51,883 たくさんの食料と燃料を事前に配備して 68 00:03:51,883 --> 00:03:55,187 その後 5名は南極点で折り返し 徒歩でそりを引いて戻る計画でした 69 00:03:55,187 --> 00:03:57,599 スコットと最後の5名のチームは 70 00:03:57,599 --> 00:04:01,284 1912年の1月に南極点に到着しましたが 71 00:04:01,284 --> 00:04:06,274 犬ぞりを使った ノルウェーのロアルド・アムンゼン隊に 72 00:04:06,274 --> 00:04:07,908 先を越されたことを知りました 73 00:04:07,908 --> 00:04:09,997 スコット隊は最後は徒歩でした 74 00:04:09,997 --> 00:04:14,595 それから100年以上の間 人力での南極点到達は未達のままでした 75 00:04:14,595 --> 00:04:17,520 5名のスコット隊は復路で全滅したからです 76 00:04:17,520 --> 00:04:19,633 過去10年間の間 77 00:04:19,633 --> 00:04:22,954 私はその理由を考え続けました 78 00:04:22,954 --> 00:04:26,246 なぜ スコット隊の記録が その後も塗り替えられないのか? 79 00:04:26,246 --> 00:04:28,596 スコット隊は2,500キロを徒歩で歩きました 80 00:04:28,596 --> 00:04:30,497 それ以来 誰もその記録に近づけていません 81 00:04:30,497 --> 00:04:33,318 だから それが地球上 最も過酷な気候での 82 00:04:33,318 --> 00:04:35,839 人類の忍耐 努力 83 00:04:35,839 --> 00:04:38,510 肉体的成果の最高到達点なのです 84 00:04:38,510 --> 00:04:41,018 これはマラソンの記録が 85 00:04:41,018 --> 00:04:44,037 1912年以来破られていないようなものです 86 00:04:44,037 --> 00:04:49,141 好奇心 頑固さ または尊大さなど 87 00:04:49,145 --> 00:04:51,095 もちろん 多少突飛ですが ご想像の通りの要素が一緒になり 88 00:04:51,095 --> 00:04:55,165 ひょっとして自分がこの偉業を成し遂げる男になれる かもしれないと考えさせました 89 00:04:55,182 --> 00:04:58,873 スコットの探検と異なり 我々は二人だけです 90 00:04:58,873 --> 00:05:01,996 そして昨年の10月に持ち物を全部引きずって 91 00:05:01,996 --> 00:05:04,214 南極の海岸を出発しました 92 00:05:04,214 --> 00:05:06,814 スコットが ”人力輸送”と呼んだ方法です 93 00:05:06,814 --> 00:05:09,837 ここからサンフランシスコまで 歩いて往復するといいましたが 94 00:05:09,837 --> 00:05:13,214 実際にはNFL史上最も重い選手よりも 95 00:05:13,214 --> 00:05:15,638 少し重いくらいの荷物を引きずっていました 96 00:05:15,638 --> 00:05:17,681 我々のそりはスタート時点で 97 00:05:17,681 --> 00:05:20,746 200キロまたは440ポンドあり 98 00:05:20,746 --> 00:05:25,020 スコット隊の最も弱いポニーが 引っ張った重さと同じです 99 00:05:25,020 --> 00:05:28,200 最初は 我々は時速800mでした 100 00:05:28,200 --> 00:05:31,887 多分 100年以上もの間 101 00:05:31,887 --> 00:05:33,145 この旅が行われなかった理由は 102 00:05:33,145 --> 00:05:38,418 これに挑戦するほど馬鹿な人が いなかったからでしょう 103 00:05:38,418 --> 00:05:40,437 まさしくエドワード朝時代の方法であったと 104 00:05:40,437 --> 00:05:43,454 主張することは出来ませんが- 105 00:05:43,454 --> 00:05:47,192 どの山の名前を名づけることもなく 未測量の谷も地図に記しませんでした 106 00:05:47,192 --> 00:05:51,573 人類が未だ測量したことのない土地に 足を踏み入れたと思います 107 00:05:51,573 --> 00:05:54,962 人類の脳に自身を呪う時に点灯する部分を 108 00:05:54,962 --> 00:05:58,779 我々が将来知ることがあるとしても 109 00:05:58,779 --> 00:06:01,945 きっと驚きはしないでしょう 110 00:06:01,945 --> 00:06:05,997 一般的なアメリカ人は90%の時間を屋内で過ごします 111 00:06:05,997 --> 00:06:09,253 我々はほぼ4ヶ月屋内に入らなかったのです 112 00:06:09,253 --> 00:06:11,495 日没も見ませんでした 113 00:06:11,495 --> 00:06:13,151 24時間 昼間です 114 00:06:13,151 --> 00:06:15,306 生活環境はとても苛酷です 115 00:06:15,306 --> 00:06:20,148 105日間 下着は3回しか替えませんでした 116 00:06:20,148 --> 00:06:24,072 タルカと私は2.7㎡のテントを共有しました 117 00:06:24,072 --> 00:06:28,813 スコットが夢想だにしなかった いくつかのテクノロジーもありました 118 00:06:28,813 --> 00:06:32,180 毎晩テントから 太陽光発電の 119 00:06:32,180 --> 00:06:34,225 特注の衛星通信機器とパソコンで 120 00:06:34,225 --> 00:06:36,085 ブログを書いていました 121 00:06:36,085 --> 00:06:38,482 テントの上には折り曲げ可能な 太陽電池パネルがありました 122 00:06:38,482 --> 00:06:41,940 私にとって書くことはとても重要でした 123 00:06:41,940 --> 00:06:48,493 子供の頃 冒険や探検文学に影響されましたが 124 00:06:48,493 --> 00:06:51,014 皆さんも今週ここで 125 00:06:51,021 --> 00:06:55,265 物語を話すことの大切さと力を知ったでしょう 126 00:06:55,265 --> 00:06:57,081 21世紀の装置を使っていましたが 127 00:06:57,081 --> 00:06:59,868 我々が実際に体験した現実は 128 00:06:59,868 --> 00:07:01,865 スコットが直面した困難と同じものでした 129 00:07:01,865 --> 00:07:05,602 天候であり スコットがグライドと呼んだ 130 00:07:05,603 --> 00:07:08,951 そりと雪の間の大量の摩擦抵抗でした 131 00:07:08,951 --> 00:07:12,799 経験した暴風雪の最低温度はマイナス70度 132 00:07:12,801 --> 00:07:15,378 旅のほとんどは ホワイトアウトと呼ばれる 133 00:07:15,378 --> 00:07:18,391 視界ゼロの状態でした 134 00:07:18,391 --> 00:07:20,742 世界で最も大きく危険な氷河の一つである 135 00:07:20,742 --> 00:07:23,955 ベアドモア氷河を上り下りしました 136 00:07:23,955 --> 00:07:27,381 全長180キロで 表面のほとんどは ブルーアイスと呼ばれるものです 137 00:07:27,381 --> 00:07:30,979 きれいでキラキラ光る 鉄のように固い青い表面が 138 00:07:30,979 --> 00:07:34,817 最深60メートルにもなる 氷河の深い亀裂 139 00:07:34,817 --> 00:07:38,798 何千ものクレバスが覆っています 140 00:07:38,798 --> 00:07:40,315 飛行機は着陸できません 141 00:07:40,315 --> 00:07:43,775 そのため 実質的に救助される可能性が最も低く 142 00:07:43,775 --> 00:07:48,219 最大の危険にさらされます 143 00:07:48,219 --> 00:07:52,115 我々は悪天候のため 1日遅れの 144 00:07:52,115 --> 00:07:54,694 61日目に徒歩で南極点に到着しましたが 145 00:07:54,694 --> 00:07:57,261 残念なことに ここは期待はずれでした 146 00:07:57,261 --> 00:07:59,726 南極点には アメリカの常設基地である 147 00:07:59,726 --> 00:08:03,044 アムンゼン・スコット基地があります 148 00:08:03,044 --> 00:08:04,995 滑走路があり 食堂があり 149 00:08:04,995 --> 00:08:06,448 温水シャワーもあります 150 00:08:06,448 --> 00:08:08,353 郵便局や土産物屋 151 00:08:08,353 --> 00:08:12,091 映画館としても使われている バスケットボールコートもあります 152 00:08:12,091 --> 00:08:14,066 最近はちょっと違うのです 153 00:08:14,066 --> 00:08:15,862 そして 多くのごみが捨てられています 154 00:08:15,862 --> 00:08:17,292 人類が年間365日 155 00:08:17,292 --> 00:08:22,576 ハンバーガーと温水シャワーと映画館のある 156 00:08:22,586 --> 00:08:26,131 生活が出来るのは素晴らしいと思いますが 157 00:08:26,131 --> 00:08:28,887 同時に多くの空の段ボール箱が 生み出されているように見えます 158 00:08:28,887 --> 00:08:30,949 この写真の左側には 159 00:08:30,949 --> 00:08:33,174 南極から飛行機での搬出を待っている 160 00:08:33,174 --> 00:08:35,657 何エーカーものごみの山が見えます 161 00:08:35,657 --> 00:08:38,929 しかし 南極点には 162 00:08:38,929 --> 00:08:42,325 我々が 誰の力も借りずに 163 00:08:42,325 --> 00:08:43,971 最も険しいルートを助けもなく 164 00:08:43,971 --> 00:08:46,316 1,500キロを 史上最速で 165 00:08:46,316 --> 00:08:48,364 歴史上の誰よりも重い荷物を引きずり 踏破したという記念碑があります 166 00:08:48,364 --> 00:08:50,333 もし我々が中断して飛行機で家に帰ったら 167 00:08:50,333 --> 00:08:53,467 もちろんそれは極めて常識的な判断ですが 168 00:08:53,467 --> 00:08:55,348 私の話はここで終わり 169 00:08:55,348 --> 00:08:58,938 結末はこういったものになるでしょう 170 00:08:58,938 --> 00:09:03,743 正しいチームが周りにいて 正しい道具と テクノロジーがあり 171 00:09:03,743 --> 00:09:07,481 十分な自信と決意があるのなら 172 00:09:07,481 --> 00:09:10,926 不可能はありません 173 00:09:12,656 --> 00:09:15,289 しかしもし引き返したら 174 00:09:15,289 --> 00:09:18,048 物語は面白くなります 175 00:09:18,048 --> 00:09:20,842 3000メートルを超える南極の高地は 176 00:09:20,842 --> 00:09:24,841 風が強く とても寒い場所で 我々は疲弊していました 177 00:09:24,841 --> 00:09:26,711 35回分のマラソンをし 178 00:09:26,711 --> 00:09:28,297 まだ道半ばです 179 00:09:28,297 --> 00:09:30,328 スコットの時代にはなかった 雪上飛行機や携帯電話 180 00:09:30,328 --> 00:09:32,452 24時間の追跡無線装置などの 181 00:09:32,452 --> 00:09:36,505 セーフティネットも当然ありました 182 00:09:36,515 --> 00:09:38,257 しかし 後から分かることですが 183 00:09:38,257 --> 00:09:40,323 安全装置は 184 00:09:40,323 --> 00:09:42,482 人生を簡単にすることよりも 185 00:09:42,482 --> 00:09:46,337 人類の限界に限りなく 近いところに踏み出すための 186 00:09:46,337 --> 00:09:50,104 微妙な判断を可能にするのです 187 00:09:50,104 --> 00:09:53,577 人類の限界への旅は 激しい拷問で 188 00:09:53,577 --> 00:09:56,414 毎日食糧一杯のそりを曳いていながら 189 00:09:56,414 --> 00:10:00,676 毎日飢えにより疲弊していきます 190 00:10:00,686 --> 00:10:04,613 何年もの間 支援者への提案の中で 191 00:10:04,613 --> 00:10:07,724 人類の忍耐の限界への挑戦などと 軽薄な文章を書いてきましたが 192 00:10:07,724 --> 00:10:12,136 実際には とても怖い環境でした 193 00:10:12,136 --> 00:10:14,045 南極点に到着する前は 194 00:10:14,045 --> 00:10:17,509 二週間のほとんど止むことのない逆風が 我々の歩みを遅らせました 195 00:10:17,509 --> 00:10:20,159 その結果 何日かの間 半分の量しか食べられませんでした 196 00:10:20,159 --> 00:10:22,878 旅のためにそりに積まれた食糧は 限られていたので 197 00:10:22,878 --> 00:10:24,880 摂取カロリーを必要量の半分にすることで 198 00:10:24,880 --> 00:10:28,793 食糧を長持ちさせようとしたのです 199 00:10:28,793 --> 00:10:32,412 その結果 二人は徐々に低血糖になり- 200 00:10:32,412 --> 00:10:35,236 血糖値が日に日に下がっていき- 201 00:10:35,236 --> 00:10:39,994 極寒に敏感になっていきました 202 00:10:39,994 --> 00:10:42,097 タルカはある日 203 00:10:42,097 --> 00:10:44,227 低体温で気絶しそうな私の写真をとりました 204 00:10:44,227 --> 00:10:49,035 二人とも何度も低体温症の発作に襲われました かつて経験したこともなく 205 00:10:49,035 --> 00:10:50,746 とても屈辱的です 206 00:10:50,746 --> 00:10:54,414 私がそうであったように 207 00:10:54,414 --> 00:10:56,670 自分はくじけない人間だと思うほど 208 00:10:56,670 --> 00:10:58,664 そのダメージは大きくなります 209 00:10:58,664 --> 00:11:00,916 低体温症は選択肢を与えてくれません 210 00:11:00,916 --> 00:11:03,726 完全に無力になります 211 00:11:03,726 --> 00:11:06,907 よっぱらった幼児のようです 212 00:11:06,907 --> 00:11:08,880 惨めな姿になります 213 00:11:08,880 --> 00:11:12,999 ただ寝て止めたいと願ったのを覚えています 214 00:11:12,999 --> 00:11:15,173 とても とても奇妙な感覚です 215 00:11:15,173 --> 00:11:20,412 そこまで衰弱するのは本当に驚きでした 216 00:11:20,412 --> 00:11:24,894 ついに食糧は底をつきました 217 00:11:24,894 --> 00:11:28,352 我々が旅を始めた 218 00:11:28,352 --> 00:11:30,217 最初の補給所から46マイル手前です 219 00:11:30,217 --> 00:11:31,560 我々は復路のために文字通り食糧と燃料を埋めた 220 00:11:31,560 --> 00:11:34,277 10ヶ所の食糧補給所を用意していました 221 00:11:34,277 --> 00:11:37,554 燃料は雪を溶かし水を作る 調理器具用です 222 00:11:37,554 --> 00:11:43,361 私は補給機を呼ぶかの選択を迫られました 223 00:11:43,361 --> 00:11:47,930 雪上飛行機はこの区間を乗り越える 8日分の食糧を運んでくれます 224 00:11:47,930 --> 00:11:51,289 南極の反対側から12時間かかりました 225 00:11:51,289 --> 00:11:54,998 飛行機を呼ぶのは私の人生で 最もつらい決断の一つでした 226 00:11:54,998 --> 00:11:58,474 だからこんな腹をしてここに立っているのは 詐欺のように聞こえます 227 00:11:58,474 --> 00:12:01,314 この3週間で私は15キロ太りました 228 00:12:01,314 --> 00:12:04,389 あまりの空腹は面白い心の傷を残しました 229 00:12:04,389 --> 00:12:08,996 ホテルのビュッフェを見つけるたびに 食べあさってしまうのです 230 00:12:08,996 --> 00:12:10,774 (笑) 231 00:12:10,774 --> 00:12:16,468 実際 我々は極めて悪い意味で 本当に空腹でした 232 00:12:16,468 --> 00:12:18,909 ここに生きて立って 233 00:12:18,909 --> 00:12:20,911 無傷で この話ができるのですから 234 00:12:20,911 --> 00:12:22,971 補給機を呼んだことに微塵も後悔はありません 235 00:12:22,971 --> 00:12:27,709 しかし 外部の助けを呼ぶことは 計画に全くなかったので 236 00:12:27,709 --> 00:12:30,913 自分の心の中はいまだに葛藤しています 237 00:12:30,913 --> 00:12:33,955 この旅は 私の最大の夢であり 238 00:12:33,955 --> 00:12:36,047 ほとんど完璧でした 239 00:12:36,967 --> 00:12:38,648 海岸線に戻る道のり 240 00:12:38,648 --> 00:12:40,839 ベアドモア氷河の頂上で 241 00:12:40,839 --> 00:12:42,625 我々のクランポン - 242 00:12:42,625 --> 00:12:44,760 氷河のブルーアイスの上を旅するための ブーツのスパイクが壊れました 243 00:12:44,760 --> 00:12:46,525 滑りやすい岩のように固い ブルーアイスの下り坂が 244 00:12:46,525 --> 00:12:48,709 160キロも残っていました 245 00:12:48,709 --> 00:12:51,810 ほぼ毎時 クランポンを直す必要がありました 246 00:12:51,810 --> 00:12:53,761 規模のイメージをお伝えするため 247 00:12:53,761 --> 00:12:56,758 ベアドモア氷河の入り口を見下ろしています 248 00:12:56,758 --> 00:13:00,233 地平線上のくぼみにマンハッタンが すっぽり入ります 249 00:13:00,233 --> 00:13:03,447 マウント・ホープとマウント・キフィンの間は 約32キロです 250 00:13:03,447 --> 00:13:09,680 私は南極にいたときほど 自分が小さく感じたことがありません 251 00:13:09,680 --> 00:13:11,785 氷河の入り口に下りていくと 252 00:13:11,785 --> 00:13:16,431 新雪が何十もの深いクレバスを 覆っていることがわかります 253 00:13:16,431 --> 00:13:19,381 シャクルトン卿の部下達は このような地域を歩いてわたることを 254 00:13:19,381 --> 00:13:24,375 列車の駅のガラス窓の上を 歩くようだと表現しました 255 00:13:24,375 --> 00:13:27,289 たいていはスキーやブーツが 雪を突き抜ける程度ですが 256 00:13:27,289 --> 00:13:30,721 数え切れないくらいクレバスに落ちました 257 00:13:30,721 --> 00:13:33,324 あるときは 脇ぐらいまで落ちましたが 258 00:13:33,324 --> 00:13:36,767 幸いにもそれ以上は落ちませんでした 259 00:13:36,767 --> 00:13:40,947 そしてたった5週間前 105日間の後 260 00:13:40,947 --> 00:13:44,522 南極のニュージーランド側のロス島の海岸で 261 00:13:44,522 --> 00:13:47,544 多難の末のゴールを迎えました 262 00:13:47,544 --> 00:13:49,694 手前に氷が見えますが 263 00:13:49,694 --> 00:13:52,556 後ろには荒々しい岩が見えます 264 00:13:52,556 --> 00:13:56,358 後ろには途切れることのない 1,800マイルのスキー跡があります 265 00:13:56,358 --> 00:13:58,866 私が10年もの間 あこがれていた 266 00:13:58,866 --> 00:14:03,256 至上最も長い徒歩での極地旅行を 我々は成し遂げたのです 267 00:14:03,256 --> 00:14:05,271 そして 今振り返ってみても 268 00:14:05,271 --> 00:14:07,666 私はまだ同じ考えを持っています 269 00:14:07,666 --> 00:14:09,248 私は何年もの間 270 00:14:09,248 --> 00:14:11,367 ゴールの重要性や 271 00:14:11,367 --> 00:14:14,809 意志の固さや 自信について語ってきましたが 272 00:14:14,809 --> 00:14:19,520 人生のほとんどをささげてきた 273 00:14:19,520 --> 00:14:23,432 ゴール地点に到達したときに 何が起こるかについて 274 00:14:23,432 --> 00:14:26,750 あまり考えていなかったこと 275 00:14:26,750 --> 00:14:30,330 また現実にはまだそれを探し続けていると 認めざるをえません 276 00:14:30,330 --> 00:14:33,931 お話したように 私が旅をした 目に見える証拠はほとんどありません 277 00:14:33,931 --> 00:14:35,382 15キロも太ったからです 278 00:14:35,382 --> 00:14:38,910 今はメイクで隠れてしまっていますが 何箇所かかすかな凍傷の跡はあります 279 00:14:38,910 --> 00:14:42,383 ゴーグルをしていた 鼻と両頬のあたりです 280 00:14:42,383 --> 00:14:47,128 しかし 私の内面は全く違った人間です 281 00:14:47,128 --> 00:14:49,625 正直にお話しすれば 282 00:14:49,625 --> 00:14:54,800 南極は私に挑みかけ 283 00:14:54,800 --> 00:14:58,503 将来も言葉に表せるか分からないほど 私のプライドをズタズタにしました 284 00:14:58,503 --> 00:15:02,603 私はまだ自分の考えを まとめることに苦労しています 285 00:15:02,603 --> 00:15:06,248 ここに私が立ってお話できることは 286 00:15:06,248 --> 00:15:09,956 我々の全てが 287 00:15:09,956 --> 00:15:11,980 野心や情熱 288 00:15:11,980 --> 00:15:14,372 撤退を拒む 純粋な頑なさにより 289 00:15:14,372 --> 00:15:16,857 偉大な何かを成し遂げられるということです 290 00:15:16,857 --> 00:15:19,813 それはスティングが言ったように 291 00:15:19,813 --> 00:15:22,884 「夢を強く願うなら それは叶う」 というようなものです 292 00:15:22,884 --> 00:15:26,230 しかし ご存知かもしれませんが 私はここで 293 00:15:26,230 --> 00:15:31,341 「旅程の方が目的地より重要だ」 という言葉をお伝えしたいと思います 294 00:15:31,341 --> 00:15:35,532 これには大切なことが含まれているからです 295 00:15:35,532 --> 00:15:37,901 私が あのロス島の荒々しい岩の海岸の 296 00:15:37,901 --> 00:15:41,657 ゴールに近づくにつれ 297 00:15:41,657 --> 00:15:44,851 とても大きなことを感じ始めました 298 00:15:44,851 --> 00:15:49,431 とても長く 過酷な徒歩が 私に教えてくれたことは 299 00:15:49,431 --> 00:15:52,174 人間にとって 300 00:15:52,174 --> 00:15:54,694 ゴールに着くことが幸福ではないということ 301 00:15:54,694 --> 00:15:58,170 多くの人々が夢見る完璧さは 302 00:15:58,170 --> 00:16:02,250 決して手に入らないのかもしれないということ 303 00:16:02,250 --> 00:16:07,626 混乱や努力 304 00:16:07,626 --> 00:16:13,704 終わりのない世界 や やりかけの仕事たち 305 00:16:13,704 --> 00:16:17,904 次回はもっと上手にできるという 人生の旅の中で 306 00:16:17,904 --> 00:16:20,756 今 ここで 満たされないのだとしたら 307 00:16:20,756 --> 00:16:24,055 決して幸福は 感じられないのではないかということ 308 00:16:24,055 --> 00:16:27,631 多くの人が私に 「次は何に挑戦するの」とたずねます 309 00:16:27,631 --> 00:16:34,629 今の私は 回復するだけでも ホテルのビュッフェに入るだけでもとても幸せです 310 00:16:34,629 --> 00:16:38,982 しかしボブ・ホープは言いました 311 00:16:38,982 --> 00:16:41,278 「とても光栄ではありますが 312 00:16:41,278 --> 00:16:45,347 まだここに満足しない頑固な性格です」と (笑) 313 00:16:45,347 --> 00:16:47,297 ありがとう