1 00:00:00,968 --> 00:00:03,611 私の仕事は未来を訪れること 2 00:00:04,265 --> 00:00:05,891 単一の未来ではなく 3 00:00:05,915 --> 00:00:08,161 いくつもの可能な未来を見に行って 4 00:00:08,185 --> 00:00:12,304 そこから証拠を現在に持ち帰り 人々に体験してもらいます 5 00:00:13,197 --> 00:00:15,420 いわば未来に関する考古学者です 6 00:00:16,432 --> 00:00:20,004 何年も前から繰り返し未来を訪れ いろいろな物を持ち帰りました 7 00:00:20,268 --> 00:00:23,243 遺伝子工学で作り出した 新種のハチや 8 00:00:25,052 --> 00:00:27,885 『Pets as Protein』 (蛋白源としてのペット)という本や 9 00:00:28,153 --> 00:00:31,307 自分の遺伝子データを売って 収入を得る装置 10 00:00:31,451 --> 00:00:33,498 砂糖をエネルギー源とするランプ 11 00:00:33,845 --> 00:00:36,166 食物を栽培するための コンピューターなどです 12 00:00:36,573 --> 00:00:40,844 そう 実際にいろいろな未来世界に 旅するのではありません―今のところは 13 00:00:40,898 --> 00:00:44,467 夫のジョンと私は 長い時間を工房で過ごし 14 00:00:44,597 --> 00:00:47,641 さまざまな未来のビジョンを 考え生み出しています 15 00:00:48,081 --> 00:00:50,857 私たちは常に 微かなシグナルを― 16 00:00:50,881 --> 00:00:53,255 未来の可能性を告げる ささやきを探しています 17 00:00:53,279 --> 00:00:57,352 そして 未来へとつながる 可能性の糸をたどり 問いかけます 18 00:00:57,963 --> 00:01:00,498 こんな未来に生きていたら どんな感じがするだろう? 19 00:01:01,068 --> 00:01:03,903 どんなものを見聞きし 呼吸するだろう? 20 00:01:05,157 --> 00:01:09,606 それから 実験を行い 試作し 製作に取りかかります 21 00:01:09,630 --> 00:01:11,660 未来のいろいろな側面に 命を吹き込み 22 00:01:11,684 --> 00:01:13,996 手で触れられる 具体的な形にするのです 23 00:01:14,020 --> 00:01:17,624 未来の可能性のインパクトを 皆さんが 今 ここで 24 00:01:17,624 --> 00:01:19,365 感じられるように 25 00:01:20,936 --> 00:01:23,737 でも この仕事の主眼は 予測することではありません 26 00:01:23,761 --> 00:01:25,768 狙いはツールを作ること― 27 00:01:25,792 --> 00:01:29,256 現在と未来の自分を 結びつけるのに役立つツールを作り 28 00:01:29,280 --> 00:01:33,685 私たちの望む未来― すべての人の役に立つ未来に 29 00:01:33,709 --> 00:01:35,565 私たちが積極的に 関われるようにすることです 30 00:01:36,758 --> 00:01:38,573 では どんなふうに 取り組むのか? 31 00:01:39,143 --> 00:01:42,487 Drone Aviary (ドローン飼育場)という 最近のプロジェクトでは 32 00:01:42,503 --> 00:01:44,820 ドローンとともに 都市で暮らすというのが 33 00:01:44,820 --> 00:01:46,753 どういうことかを 探ろうとしています 34 00:01:46,861 --> 00:01:49,683 ドローンは 私たちが見られないものを見たり 35 00:01:49,697 --> 00:01:51,616 私たちが行けない場所に 行ったりでき 36 00:01:51,664 --> 00:01:54,014 しかも どんどん自律性が 高まっています 37 00:01:54,788 --> 00:01:56,657 でも この技術を理解するには 38 00:01:56,662 --> 00:01:58,372 じかに手を使って学ぶことが 欠かせません 39 00:01:58,406 --> 00:02:01,120 そこで 工房で何台か ドローンを組み立てました 40 00:02:01,165 --> 00:02:04,608 それぞれに名前をつけ 機能を与えて飛行させました 41 00:02:05,243 --> 00:02:07,282 すんなりとは行きません 42 00:02:07,506 --> 00:02:08,896 部品がはずれたり 43 00:02:08,920 --> 00:02:10,332 GPS信号がうまく扱えなかったり 44 00:02:10,349 --> 00:02:12,491 墜落したりしました 45 00:02:12,565 --> 00:02:14,930 でも こうした試行を 重ねたおかげで 46 00:02:14,934 --> 00:02:16,847 起こりうる未来の1つを 極めて具体的な形で 47 00:02:16,847 --> 00:02:20,572 実験的に構成してみることが できたのです 48 00:02:21,559 --> 00:02:23,919 では そんな未来へ 行ってみましょう 49 00:02:24,006 --> 00:02:27,493 私たちの暮らす都市に こんなドローンがあるとしましょう 50 00:02:27,556 --> 00:02:30,275 Nightwatchman (夜警)と呼ばれるドローンで 51 00:02:30,279 --> 00:02:34,469 通りをパトロールする光景を 夕方や夜によく目にします 52 00:02:34,524 --> 00:02:38,522 当初 飛行するドローンの低く鈍い音を 気にする人が多かったのですが 53 00:02:39,382 --> 00:02:42,176 どんな物事であれ 私たちはやがて慣れてしまいます 54 00:02:42,215 --> 00:02:44,877 さて ドローンの目を通して 世界を見るとどうなるでしょう? 55 00:02:46,491 --> 00:02:50,591 たとえば 近所の人々を 常にログに取り 56 00:02:50,811 --> 00:02:54,348 ボール遊び禁止の場所で サッカーをする子供がいたら 57 00:02:54,348 --> 00:02:56,895 不法迷惑行為を働く者として 記録します 58 00:02:56,895 --> 00:02:58,045 (笑) 59 00:02:58,111 --> 00:03:00,005 こちらはまた別の若者グループで 60 00:03:00,027 --> 00:03:05,280 今にも非行を阻止する措置が 発動されそうになっています 61 00:03:06,513 --> 00:03:09,863 こちらはマディソンと呼ばれる 大きな円盤型のドローンで 62 00:03:09,867 --> 00:03:13,290 圧倒的な存在感があって 63 00:03:13,290 --> 00:03:15,111 つい じっと見つめてしまいます 64 00:03:15,111 --> 00:03:17,245 でも 私がこれを見るたびに 65 00:03:17,245 --> 00:03:19,660 少しずつ私のことが 知られていくようです 66 00:03:19,923 --> 00:03:23,017 たとえば 私が休暇中に 旅行を計画しているのを察知して 67 00:03:23,039 --> 00:03:25,906 Brianairの広告を しきりに見せようとします 68 00:03:26,366 --> 00:03:30,288 こういう機能を 多少は面白く思ったらいいのか 69 00:03:30,288 --> 00:03:32,452 ひどい押しつけと思うべきか よく分かりません 70 00:03:33,651 --> 00:03:35,274 現在に戻りましょう 71 00:03:35,562 --> 00:03:38,168 こんな未来を作ってみることで 私たちは多くを学びました 72 00:03:38,222 --> 00:03:40,711 こうしたマシンが どう機能するかだけでなく 73 00:03:40,729 --> 00:03:43,773 それとともに生きるのが どんな感じかがわかります 74 00:03:43,807 --> 00:03:46,604 MadisonやNightwatchmanのような ドローンは 75 00:03:46,608 --> 00:03:47,899 このままの形で 76 00:03:47,899 --> 00:03:49,356 現実に存在するわけでは ありませんが 77 00:03:49,596 --> 00:03:53,567 未来のドローンの基本的な要素は 既に現実化しています 78 00:03:54,139 --> 00:03:55,303 たとえば 79 00:03:55,517 --> 00:03:57,637 顔認識システムは 至るところにあります 80 00:03:57,781 --> 00:04:00,341 電話にも 室温のコントローラにも 81 00:04:00,341 --> 00:04:02,747 街中の監視カメラにも組み込まれていて 82 00:04:02,764 --> 00:04:05,379 私たちの一挙一動を記録しています 83 00:04:05,379 --> 00:04:09,489 どの広告を眺めたかや どんな抗議行動に参加したかもです 84 00:04:09,747 --> 00:04:11,401 こうした装置は既にあるのに 85 00:04:11,415 --> 00:04:14,105 それがどう機能し どんな結果をもたらす可能性があるかを 86 00:04:14,105 --> 00:04:16,745 私たちはたいてい よく理解していません 87 00:04:17,273 --> 00:04:18,855 私たちはこんな装置に 取り囲まれています 88 00:04:18,855 --> 00:04:23,209 現在の行動がもたらす結果を 想像することの難しさが 89 00:04:23,209 --> 00:04:25,024 私たちの未来に 影響を及ぼします 90 00:04:25,828 --> 00:04:27,443 私の住んでいる イギリスでは去年 [2016年] 91 00:04:27,453 --> 00:04:28,771 EUに留まるか離脱するか― 92 00:04:28,771 --> 00:04:30,693 いわゆる「Brexit」の賛否を問う 93 00:04:30,693 --> 00:04:34,065 国民投票が行われました 94 00:04:34,515 --> 00:04:36,530 投票結果が明らかになるとすぐ 95 00:04:36,530 --> 00:04:39,520 「Bregret」(英国の後悔)という言葉が 使われだしました 96 00:04:39,548 --> 00:04:40,723 (笑) 97 00:04:40,757 --> 00:04:44,307 抗議の意味を込めて EU離脱に賛成したものの 98 00:04:44,487 --> 00:04:47,911 結果について十分考えなかった 人々の行動を指します 99 00:04:49,055 --> 00:04:52,294 こうした「断絶」は ごく単純なことにも はっきり現れています 100 00:04:53,768 --> 00:04:55,502 たとえば 軽く1杯 呑みにいくとしましょう 101 00:04:55,506 --> 00:04:58,126 そのうち もう何杯か 呑んでもいいなと思い直します 102 00:04:58,460 --> 00:05:00,922 翌朝 ひどい気分で 目覚めるのがわかっていながら 103 00:05:00,922 --> 00:05:02,665 こう考えて正当化するのです 104 00:05:02,747 --> 00:05:04,615 「その問題は 未来の自分に任せよう」 105 00:05:05,669 --> 00:05:07,324 でも 次の朝が来ると気付くんです 106 00:05:07,414 --> 00:05:09,381 その「未来の自分」は 今の自分だと 107 00:05:10,475 --> 00:05:13,566 私が育った 1970年代の終わりから 80年代初めのインドでは 108 00:05:13,566 --> 00:05:16,073 未来についての計画は必要だし 109 00:05:16,073 --> 00:05:18,183 実際に計画できるんだという 感覚がありました 110 00:05:18,277 --> 00:05:21,426 私の両親は ごく単純なことにも 計画を立てなければなりませんでした 111 00:05:21,500 --> 00:05:23,320 家に電話を引こうと考えた両親は 112 00:05:23,334 --> 00:05:25,321 申し込んでから 延々と待たされました 113 00:05:25,795 --> 00:05:29,159 やっと工事が済んだのは 5年近く経ってからです 114 00:05:29,159 --> 00:05:30,447 (笑) 115 00:05:30,447 --> 00:05:33,375 しかも 別の市に住んでいる祖父母に 電話をかけようと思ったら 116 00:05:33,375 --> 00:05:35,695 「長距離通話」の申し込みをして さらに何時間も 117 00:05:35,718 --> 00:05:38,655 ひどいときは何日も 待たされるのです 118 00:05:39,119 --> 00:05:41,679 そして夜中の2時に 突然 電話が鳴ると 119 00:05:41,703 --> 00:05:44,368 私たちはみなベッドから飛び出して 電話のまわりに集まり 120 00:05:44,368 --> 00:05:47,021 元気でやっているかどうかを 受話器に向かって大声で尋ねます 121 00:05:47,219 --> 00:05:48,389 午前2時にですよ 122 00:05:49,493 --> 00:05:52,298 昨今は 変化が あまりにもめまぐるしく 123 00:05:53,172 --> 00:05:55,449 歴史の中で自らの置かれた位置を 理解するのが 124 00:05:55,453 --> 00:05:58,040 本当に難しくなっています 125 00:05:58,040 --> 00:06:01,502 そのために 不確実さや不安感に 押し潰されそうになって 126 00:06:01,682 --> 00:06:04,407 未来はただ 成り行きに まかせるばかりです 127 00:06:05,938 --> 00:06:08,250 私たちはまだ「未来の自分たち」を 自分のこととして感じていません 128 00:06:08,484 --> 00:06:10,672 未来の自分を 見知らぬ人のように扱い 129 00:06:10,785 --> 00:06:12,640 未来を異国の地のように 扱っています 130 00:06:13,794 --> 00:06:15,042 未来は異国ではありません 131 00:06:15,046 --> 00:06:16,610 未来は今も目の前で 132 00:06:16,690 --> 00:06:19,290 今の私たちの行動によって 少しずつ形作られていくのです 133 00:06:19,770 --> 00:06:21,470 私たち自身が その未来なのです 134 00:06:21,924 --> 00:06:24,547 自分の望む未来を求めて 戦う必要性が 135 00:06:24,547 --> 00:06:27,482 かつてないほど高まり 待ったなしの状況だと思います 136 00:06:28,496 --> 00:06:29,890 私たちは活動を通して 137 00:06:29,890 --> 00:06:33,294 変化を促す 最も強力な 手段の1つを学びました 138 00:06:33,302 --> 00:06:36,820 それは 手で触れることができ 感情に訴える 直接的な体験を通じて 139 00:06:36,830 --> 00:06:40,374 現在の行動がもたらす未来の結果を 人々に知ってもらうことです 140 00:06:41,278 --> 00:06:44,414 今年 私たちは アラブ首長国連邦(UAE)に招かれ 141 00:06:44,468 --> 00:06:47,492 2050年までの エネルギー戦略の立案に 142 00:06:47,492 --> 00:06:49,330 協力しました 143 00:06:49,430 --> 00:06:53,668 UAE政府の経済データに基づいて この大都市モデルを作成し 144 00:06:53,668 --> 00:06:56,988 いくつもの可能な未来の姿を 視覚化しました 145 00:06:58,471 --> 00:07:00,898 政府職員やエネルギー企業の皆さんに 146 00:07:00,898 --> 00:07:03,429 私たちのモデルで 持続可能な未来を 147 00:07:03,449 --> 00:07:05,379 意気込んで説明していたとき 148 00:07:05,852 --> 00:07:07,639 参加者の1人が私に言いました 149 00:07:08,073 --> 00:07:10,946 「人々が自分で車を運転せず 公共輸送機関を使うようになる― 150 00:07:10,946 --> 00:07:12,966 そんな未来は想像できません」 151 00:07:13,960 --> 00:07:15,016 さらに続けて 152 00:07:15,016 --> 00:07:18,377 「息子に車の運転をやめろなんて とても言えませんよ」とも 153 00:07:19,888 --> 00:07:21,935 でも この反応は予想していました 154 00:07:23,005 --> 00:07:26,560 私たちはインドの故郷の市で 化学研究所と協力して 155 00:07:26,560 --> 00:07:28,820 人々の行動が このまま変わらなかった場合 156 00:07:28,833 --> 00:07:33,476 2030年の空気がどうなるか 大まかに作ったサンプルを用意しました 157 00:07:34,640 --> 00:07:37,527 そして 空気のサンプルを噴き出す 装置のところへ 158 00:07:37,527 --> 00:07:40,793 このグループの人たちを 連れて行きました 159 00:07:41,734 --> 00:07:46,231 汚染された2030年の空気を ちょっと嗅いでもらうだけで 160 00:07:46,509 --> 00:07:48,681 どんな膨大なデータからも得られない 実感が得られました 161 00:07:49,080 --> 00:07:52,005 こんなものは 誰も子どもに 引き継がせたくない未来です 162 00:07:52,549 --> 00:07:55,092 翌日 UAE政府から 大きな発表がありました 163 00:07:55,116 --> 00:07:57,895 再生可能エネルギーに 何十億ドルも投入するというのです 164 00:07:58,439 --> 00:08:02,521 この決定に 私たちの未来体験が どれだけ影響したかはわかりませんが 165 00:08:02,711 --> 00:08:04,685 そんなシナリオを緩和するために 166 00:08:04,685 --> 00:08:06,660 エネルギー政策を変えたことは 間違いありません 167 00:08:06,760 --> 00:08:10,230 未来からの空気などは とても具体的で効果がありますが 168 00:08:10,236 --> 00:08:13,001 私たちの現在から 未来の結果に至る経路は 169 00:08:13,007 --> 00:08:14,870 常にそれほど直線的だとは 限りません 170 00:08:15,744 --> 00:08:18,477 高い理想を掲げて開発した テクノロジーであっても 171 00:08:18,477 --> 00:08:21,262 研究室を離れて 現実の世界に入った瞬間から 172 00:08:21,267 --> 00:08:24,811 開発者のコントロールが 効かなくなってしまいます 173 00:08:25,985 --> 00:08:29,516 私たちは あるプロジェクトで メディカル・ゲノミクスを調査しました 174 00:08:29,710 --> 00:08:31,709 ヒトの遺伝子データを集めて 175 00:08:31,728 --> 00:08:34,896 個別化医療に利用する研究です 176 00:08:35,210 --> 00:08:36,864 私たちはこう問いかけました 177 00:08:36,864 --> 00:08:38,725 遺伝子学とヘルスケアを結びつけると 178 00:08:38,725 --> 00:08:41,291 どんな予想もしない結果が 生じるだろうか? 179 00:08:43,185 --> 00:08:45,077 この問題をさらに深く 考えるために 180 00:08:45,534 --> 00:08:47,410 私たちは架空の訴訟を想定し 181 00:08:47,523 --> 00:08:52,231 慎重に作り上げた31の証拠を 提示しました 182 00:08:52,295 --> 00:08:55,478 非合法の遺伝子クリニックを作り 183 00:08:56,072 --> 00:08:58,738 恒温培養器をDIYで組み立て 184 00:08:59,158 --> 00:09:02,033 eBayで冷凍マウスを 購入することまでしました 185 00:09:02,262 --> 00:09:05,254 では この訴訟が行われている 未来に行って 186 00:09:05,254 --> 00:09:07,799 アーノルド・マン被告に 会っていただきましょう 187 00:09:08,173 --> 00:09:11,473 アーノルドを訴えたのは ダイナミック・ジェネティクスという 188 00:09:11,483 --> 00:09:13,341 バイオテクノロジーの グローバル企業で 189 00:09:13,491 --> 00:09:15,271 この会社が特許を持つ 遺伝子物質を 190 00:09:15,271 --> 00:09:18,055 アーノルドが自分の体に 不法に取り込んだ 191 00:09:18,055 --> 00:09:20,613 証拠があるというのです 192 00:09:21,513 --> 00:09:23,907 アーノルドはいったい どうしてそんなことを? 193 00:09:25,321 --> 00:09:26,704 事の発端は アーノルドが 194 00:09:26,704 --> 00:09:29,162 唾液サンプルを このキットに採取して 195 00:09:29,162 --> 00:09:31,602 英国の国民健康保険サービス(NHI)に 196 00:09:31,629 --> 00:09:34,969 提出するよう求められたことでした 197 00:09:35,073 --> 00:09:37,535 保険料の計算書が届いたとき 198 00:09:37,539 --> 00:09:39,921 自分と家族にはとても払えない 199 00:09:39,925 --> 00:09:42,309 とんでもなく高い保険料が 請求されていることを知って 200 00:09:42,380 --> 00:09:45,511 アーノルドはショックを受けました 201 00:09:46,035 --> 00:09:48,573 国の保険料算定システムが 遺伝子データをスキャンして 202 00:09:48,573 --> 00:09:52,617 彼のDNAに潜む 慢性的疾患リスクを発見したのです 203 00:09:53,323 --> 00:09:55,679 病気の治療にかかる 潜在的コストに備えて 204 00:09:55,679 --> 00:09:57,692 その支払いを 205 00:09:58,190 --> 00:10:00,232 今日から始めよというのです 206 00:10:00,416 --> 00:10:02,456 恐怖のあまり パニックに陥ったアーノルドは 207 00:10:02,456 --> 00:10:04,434 裏社会に足を踏み入れ 208 00:10:04,434 --> 00:10:07,285 非合法クリニックでの 処置を求めました 209 00:10:07,432 --> 00:10:09,670 自分のDNAに手を加え 210 00:10:09,670 --> 00:10:12,947 保険料の算定アルゴリズムに リスクと見なされないようにして 211 00:10:13,677 --> 00:10:16,032 高額な保険料請求を 免れようとしたのでした 212 00:10:16,304 --> 00:10:18,022 でも この行為は露見して 213 00:10:18,091 --> 00:10:21,813 「ダイナミック・ジェネティクス対マン訴訟」 が始まったのです 214 00:10:23,017 --> 00:10:25,531 このような未来を提示するにあたって 私たちが重視したのは 215 00:10:25,531 --> 00:10:27,449 人々がそうした可能性に触れ 216 00:10:27,449 --> 00:10:29,584 目で見て感じ取れるようにすること― 217 00:10:29,786 --> 00:10:32,317 なぜなら 間近でじかに 未来と出合うことで 218 00:10:32,317 --> 00:10:34,248 正しい質問を 発せられるからです 219 00:10:34,821 --> 00:10:35,957 たとえば― 220 00:10:35,957 --> 00:10:38,546 人が遺伝子に基づいて 判断される世界では 221 00:10:38,546 --> 00:10:40,737 どんなことが起きるのか? 222 00:10:41,220 --> 00:10:44,080 私の遺伝子データの権利は 誰が持っていて 223 00:10:44,080 --> 00:10:46,119 彼らはそれをどう扱うのか? 224 00:10:47,001 --> 00:10:49,723 あり得ないとか 飛躍しすぎだとか お考えかもしれませんが 225 00:10:49,737 --> 00:10:53,786 米国議会では今 ある目立たない法律が 成立しかかっています 226 00:10:53,786 --> 00:10:58,266 「従業員健康維持プログラム保護法」 (HR 1313)というものです 227 00:10:58,739 --> 00:11:01,315 これは 遺伝子情報差別禁止法― 228 00:11:01,315 --> 00:11:04,623 通称GINAを修正するもので 229 00:11:04,701 --> 00:11:08,145 雇用者が全従業員に対し 家族の医療情報と遺伝子データを 230 00:11:08,145 --> 00:11:10,708 開示するよう求めることを認める 231 00:11:10,708 --> 00:11:12,042 初めての法案です 232 00:11:12,996 --> 00:11:16,280 開示を拒否した場合 大きなペナルティが科されるでしょう 233 00:11:17,414 --> 00:11:19,097 ここまで見ていただいた プロジェクトでは 234 00:11:19,101 --> 00:11:21,379 ドローンにしろ 遺伝子に関わる犯罪にしろ 235 00:11:21,379 --> 00:11:23,601 望まない未来を 回避できるようにするため 236 00:11:23,601 --> 00:11:26,458 未来のやっかいな面を 提示していました 237 00:11:27,027 --> 00:11:29,119 でも回避できないものについては? 238 00:11:29,543 --> 00:11:31,613 現在 私たちは 特に気候変動の面で 239 00:11:31,621 --> 00:11:33,800 難局に向かって 突き進んでいるように見えます 240 00:11:34,134 --> 00:11:37,211 ですから 今 私たちがやりたいのは そうした未来に備えること 241 00:11:37,211 --> 00:11:39,883 希望を―行動のきっかけとなる 希望を見出す力となるツールや態度を 242 00:11:39,903 --> 00:11:44,061 用意し 育む取り組みです 243 00:11:44,870 --> 00:11:47,517 現在 私たちは工房で ある実験をしています 244 00:11:47,709 --> 00:11:49,373 まだ進行中ですが 245 00:11:49,597 --> 00:11:51,873 気候データの予測に基づいて 246 00:11:51,873 --> 00:11:53,226 西洋が豊かさを失い 247 00:11:53,226 --> 00:11:56,627 物資が乏しくなった 未来の世界を研究しています 248 00:11:56,689 --> 00:11:59,986 洪水が頻繁に起こり 249 00:12:00,236 --> 00:12:01,640 スーパーにほとんど食料がなく 250 00:12:01,640 --> 00:12:03,685 経済は不安定で 251 00:12:03,685 --> 00:12:06,421 サプライチェーンは崩壊― 252 00:12:07,055 --> 00:12:11,221 ただ生き延びるだけでなく 繁栄する術はないものでしょうか? 253 00:12:12,053 --> 00:12:13,802 何を食べられるでしょう? 254 00:12:14,126 --> 00:12:15,910 この問題を深く追究するために 255 00:12:15,910 --> 00:12:19,726 私たちは2050年のロンドンを想定した アパートの部屋を作っています 256 00:12:20,574 --> 00:12:23,450 未来から持ち込んだ 小さなタイムカプセルみたいなもので 257 00:12:24,204 --> 00:12:26,110 最小限必要なものだけに 絞り込んだので 258 00:12:26,110 --> 00:12:28,126 私たちがぜひ家庭にほしいと 思うようなものは― 259 00:12:28,126 --> 00:12:29,712 薄型テレビも 260 00:12:29,712 --> 00:12:31,441 インターネット接続付きの冷蔵庫も 261 00:12:31,441 --> 00:12:32,763 職人技の光る家具も 262 00:12:32,833 --> 00:12:34,285 まったく置けません 263 00:12:34,679 --> 00:12:37,243 その代わりに私たちは フード・コンピュータを 264 00:12:37,255 --> 00:12:40,032 廃品や拾った材料などを再利用して 組み立てています 265 00:12:40,642 --> 00:12:43,063 現在の廃棄物を 明日の食料に変えるのです 266 00:12:44,642 --> 00:12:45,530 たとえば 267 00:12:45,534 --> 00:12:49,520 1号機が完成したばかりの 全自動フォグポニックス(噴霧耕)・マシンです 268 00:12:49,784 --> 00:12:51,953 水も土も使わず 肥料を霧状に噴霧する 269 00:12:51,953 --> 00:12:54,588 フォグポニックスの技術を使って 270 00:12:55,084 --> 00:12:56,833 作物を急速に育てます 271 00:12:57,277 --> 00:12:58,481 今のところ 272 00:12:58,481 --> 00:13:00,788 トマトの栽培に成功しています 273 00:13:01,095 --> 00:13:04,390 でも この小さな部屋で 栽培できる量では足りません 274 00:13:04,649 --> 00:13:07,021 都市で確保できる食料は 他にないでしょうか? 275 00:13:07,504 --> 00:13:10,793 昆虫? ハト? キツネ? 276 00:13:13,827 --> 00:13:16,300 前に私たちは 未来から 空気を持ち帰りました 277 00:13:16,524 --> 00:13:20,041 今回は1部屋まるごと 持ってこようとしています 278 00:13:20,041 --> 00:13:21,914 厳しい環境条件の中で 279 00:13:21,944 --> 00:13:24,875 積極的な行動を起こすための 希望とツールと戦術の詰まった部屋です 280 00:13:25,369 --> 00:13:27,072 私たちの未来の家に なるかもしれない 281 00:13:27,086 --> 00:13:29,028 この部屋で過ごしてみると 282 00:13:29,028 --> 00:13:32,257 気候変動や食料不足の もたらす結果を 283 00:13:32,257 --> 00:13:34,705 直接 現実のものとして 実感できできます 284 00:13:37,237 --> 00:13:38,728 こうした実験や実践 また人々との交流を通じて 285 00:13:38,742 --> 00:13:41,453 私たちが学んでいるのは 286 00:13:41,453 --> 00:13:44,311 具体的な体験を 作り出すことによって 287 00:13:44,311 --> 00:13:47,375 切り離された現在と未来の 橋渡しができるということです 288 00:13:47,499 --> 00:13:50,815 いくつもの可能な未来に 自分の身を置いてみて 289 00:13:50,815 --> 00:13:53,925 私たちの行動が招くかもしれない 不安や不快を 290 00:13:53,925 --> 00:13:56,450 心を開いて受け入れてみることにより 291 00:13:56,603 --> 00:13:59,647 新たな可能性を想像する 機会が得られるのです 292 00:14:00,291 --> 00:14:02,032 より楽観的な未来を 見つけることができます 293 00:14:02,032 --> 00:14:03,841 前に進む道を 見つけられます 294 00:14:03,841 --> 00:14:06,041 希望を行動に 結びつけることができます 295 00:14:06,746 --> 00:14:09,949 つまり 私たちには 方向転換のチャンスがある― 296 00:14:11,252 --> 00:14:13,417 声を上げて 私たちの望む未来に 297 00:14:13,778 --> 00:14:18,006 自分の意思を書き込む チャンスがあるということです 298 00:14:19,519 --> 00:14:21,526 別の世界もあり得るのです 299 00:14:22,540 --> 00:14:23,959 ありがとうございました 300 00:14:24,194 --> 00:14:27,774 (拍手)