WEBVTT 00:00:00.485 --> 00:00:02.707 10年前 私は本を書きました 00:00:02.707 --> 00:00:05.800 題は『今世紀で人類は終わる?』 と疑問符がついたものでしたが 00:00:05.800 --> 00:00:09.377 出版社は疑問符を取りました (笑) 00:00:09.377 --> 00:00:11.259 アメリカの出版社は それを 00:00:11.259 --> 00:00:15.168 『人類最後の日』と変えたのです 00:00:15.168 --> 00:00:18.660 幸も不幸も待てないという アメリカ人気質なのでしょうか 00:00:18.660 --> 00:00:20.368 (笑) NOTE Paragraph 00:00:20.368 --> 00:00:22.118 今日のテーマは 00:00:22.118 --> 00:00:26.284 4,500万世紀もの間 続いて来た地球の 00:00:26.284 --> 00:00:28.297 今世紀は特別で 00:00:28.297 --> 00:00:31.313 人類が その手中に 00:00:31.313 --> 00:00:34.115 地球の未来を 握っているという事です 00:00:34.115 --> 00:00:36.105 地球は その誕生以来 ほぼずっと 00:00:36.105 --> 00:00:38.041 脅威は 00:00:38.041 --> 00:00:41.537 病気、地震、小惑星など 自然からのものでした 00:00:41.537 --> 00:00:47.209 これからは 最悪の惨事を もたらすのは人類です 00:00:47.209 --> 00:00:50.480 それは何も核だとは限りません 00:00:50.480 --> 00:00:52.231 相互に繋がるこの世界では 00:00:52.231 --> 00:00:55.394 ネットワークが断たれると 世界は瞬く間に崩壊し 00:00:55.394 --> 00:00:59.350 疫病は人々の空の旅により 数日で世界中に広がり 00:00:59.350 --> 00:01:02.677 ソーシャルメディアは パニックと噂を拡げます 00:01:02.677 --> 00:01:05.894 それも文字通り光速で 00:01:05.894 --> 00:01:09.119 我々はあまりに些細な問題— 00:01:09.119 --> 00:01:13.150 起こりそうもない飛行機事故 食物に含まれる発がん性物質 00:01:13.150 --> 00:01:15.376 僅かな放射線などに 動揺し過ぎです 00:01:15.376 --> 00:01:18.201 しかし我々や政治家達は 00:01:18.201 --> 00:01:22.404 壊滅的な筋書きには否定的です 00:01:22.404 --> 00:01:25.442 最悪のケースは 有り難い事に まだ起きてはいませんし 00:01:25.442 --> 00:01:27.638 実際 多分起きない かもしれません 00:01:27.638 --> 00:01:30.823 しかし壊滅的可能性が ありそうなら 00:01:30.823 --> 00:01:33.691 対策を立てて 00:01:33.691 --> 00:01:37.527 例え ありそうでなくても 予防策に投資する価値は十分あります 00:01:37.527 --> 00:01:42.040 家の火災保険に 入っておくようなものです NOTE Paragraph 00:01:42.040 --> 00:01:47.037 科学の力は大きく 約束してくれるものは多い一方 00:01:47.037 --> 00:01:50.903 その否定的側面は空恐ろしく 00:01:50.903 --> 00:01:53.142 人類はこれまでになく 危険に曝されています 00:01:53.142 --> 00:01:54.980 この2、30年内に 00:01:54.980 --> 00:01:57.210 何百万人が 00:01:57.210 --> 00:02:00.331 急速に進歩しているバイオテク技術を 悪用できるようになるでしょう 00:02:00.331 --> 00:02:03.884 それは今日サイバーテクが 悪用される様なものです 00:02:03.884 --> 00:02:07.083 フリーマン・ダイソン氏がTEDで 00:02:07.083 --> 00:02:10.679 彼の世代が化学実験セットで 遊んだように未来の子どもは 00:02:10.679 --> 00:02:15.190 新しい生命体をデザインして 作れるようになると予言しています 00:02:15.190 --> 00:02:17.718 SFの一端のようですが 00:02:17.718 --> 00:02:20.901 これは彼のシナリオの 一部でもあり 00:02:20.901 --> 00:02:23.638 地球の生態系や人類は 00:02:23.638 --> 00:02:27.627 無傷では生き残れないだろう というものです 00:02:27.627 --> 00:02:31.490 例えば この惑星 大地の神ガイアの為には 00:02:31.490 --> 00:02:33.999 人口は削減されるべきだ 00:02:33.999 --> 00:02:37.402 と主張するエコ過激派が 00:02:37.402 --> 00:02:40.119 2050年までには誰でも 入手できると思われる 00:02:40.119 --> 00:02:42.256 合成生物学の技術を 00:02:42.256 --> 00:02:45.108 習得したらどうなるでしょう 00:02:45.108 --> 00:02:48.150 それまでに他のSF的悪夢が 00:02:48.150 --> 00:02:49.860 現実となるかもしれません 00:02:49.860 --> 00:02:51.930 馬鹿なロボットが 勝手な事をし出したり 00:02:51.930 --> 00:02:54.347 自己作動し始めた ネットワークが 00:02:54.347 --> 00:02:56.936 我々を脅かし出すかもしれません NOTE Paragraph 00:02:56.936 --> 00:03:00.206 そんなリスクから私たちを 法律で守れないでしょうか 00:03:00.206 --> 00:03:02.613 確かにやるだけの 価値はありますが 00:03:02.613 --> 00:03:06.142 世界中で競争が激化し 00:03:06.142 --> 00:03:08.122 商業的圧力に左右されるので 00:03:08.122 --> 00:03:11.407 法律がどうであれ 可能なことは 00:03:11.407 --> 00:03:13.443 どこかで実現するでしょう 00:03:13.443 --> 00:03:16.930 薬取締法みたいなもので 規制しようとしても無駄です 00:03:16.930 --> 00:03:19.974 地球村には愚かな者がいて 00:03:19.974 --> 00:03:23.470 彼らは 世界で幅を利かせるでしょう NOTE Paragraph 00:03:23.470 --> 00:03:25.761 私が本に書きましたように 00:03:25.761 --> 00:03:28.650 今世紀を乗り越えるのは たやすい事ではありません 00:03:28.650 --> 00:03:32.140 何度も我々の社会は挫折し 00:03:32.140 --> 00:03:36.255 実際 大きく挫折してしまう 可能性が半分でしょう 00:03:36.255 --> 00:03:39.169 最悪のケース 00:03:39.169 --> 00:03:41.330 全人類を抹消する様な 00:03:41.330 --> 00:03:44.760 出来事があるでしょうか 00:03:44.760 --> 00:03:47.686 新しい粒子加速器が 誕生したとき 00:03:47.686 --> 00:03:49.475 こう懸念する人がいました 00:03:49.475 --> 00:03:51.725 「地球を破壊するか 宇宙構成組織を 00:03:51.725 --> 00:03:54.384 バラバラにしてしまうのでは」と 00:03:54.384 --> 00:03:57.927 幸運にも そうならないという 証拠があります 00:03:57.927 --> 00:03:59.971 他の人も指摘するように 00:03:59.971 --> 00:04:01.904 宇宙線が他の原子核と衝突し 00:04:01.904 --> 00:04:04.090 自然は何度も 同じ実験を 00:04:04.090 --> 00:04:05.855 繰り返してきたからです 00:04:05.855 --> 00:04:08.909 しかし科学者は 00:04:08.909 --> 00:04:11.489 自然界に前例のない状態を 引き起こす実験には 00:04:11.489 --> 00:04:13.972 確かに慎重であるべきです 00:04:13.972 --> 00:04:17.394 生物学者は 遺伝子操作された 壊滅的影響を与えうる― 00:04:17.394 --> 00:04:20.110 病原体を世に放つべきではありません NOTE Paragraph 00:04:20.110 --> 00:04:23.627 ところで我々が 実存し得る惨事に対して 00:04:23.627 --> 00:04:27.088 特に嫌悪するのは 00:04:27.088 --> 00:04:30.363 道徳的、哲学的な問いに依るものです 00:04:30.363 --> 00:04:32.033 それはこうです 00:04:32.033 --> 00:04:34.341 2つの筋書きがあるとします 00:04:34.341 --> 00:04:39.577 筋書きAは 人類の90%を一掃する 00:04:39.577 --> 00:04:43.473 筋書きBは 人類の100%を一掃する 00:04:43.473 --> 00:04:46.391 Bの方がAより どれ程ひどいでしょうか? 00:04:46.391 --> 00:04:49.414 Bが10%だけひどいと 言われる方がいるでしょう 00:04:49.414 --> 00:04:52.564 BがAより 死亡率が10%高いのですが 00:04:52.564 --> 00:04:55.470 Bは 比較にならない程 悪いと私は思います 00:04:55.470 --> 00:04:58.099 天文学者として 00:04:58.099 --> 00:05:00.566 人類がこの物語の終わりだとは 信じられないのです 00:05:00.566 --> 00:05:03.889 太陽が赤色巨星となるまでに 後50億年 00:05:03.889 --> 00:05:06.600 宇宙は永遠に続いて 00:05:06.600 --> 00:05:08.892 ポストヒューマンの進化は 00:05:08.892 --> 00:05:11.082 地球 そして 宇宙の彼方で 00:05:11.082 --> 00:05:13.796 我々がここまで来たように ダーウィン的進化を続け 00:05:13.796 --> 00:05:17.077 もっと素晴らしい進化を 辿るかもしれません 00:05:17.077 --> 00:05:19.741 確かに未来の人類の進化は 00:05:19.741 --> 00:05:21.940 自然淘汰的ではなく 人工的な時間尺度に於いて 00:05:21.940 --> 00:05:24.239 その速度は急速なものでしょう NOTE Paragraph 00:05:24.239 --> 00:05:28.434 この莫大な賭けを考慮して 00:05:28.434 --> 00:05:31.820 これ程の可能性に幕を降ろす 人類滅亡のリスクが 00:05:31.820 --> 00:05:34.049 10億分の1だとしても 00:05:34.049 --> 00:05:36.359 決して それに甘んじるべき ではないと思います 00:05:36.359 --> 00:05:38.131 予測されたシナリオは 中には確かに 00:05:38.131 --> 00:05:40.300 SFの話のようなのが あるかもしれません 00:05:40.300 --> 00:05:43.336 しかし不気味に迫真性の あるものもあります 00:05:43.336 --> 00:05:46.210 「知らない事と ありえそうもない事は 同じではない」 00:05:46.210 --> 00:05:48.907 ということわざ通りです 00:05:48.907 --> 00:05:51.305 これが 予測されるリスクを 00:05:51.305 --> 00:05:54.680 軽減する研究をするため 我々がケンブリッジ大学で 00:05:54.680 --> 00:05:56.712 センターを設置している理由です 00:05:56.712 --> 00:05:59.775 このような惨事に関して 模索するのは 00:05:59.775 --> 00:06:02.091 少数の人だけに 価値があるようですが 00:06:02.091 --> 00:06:05.104 我々は皆様からのどんなサポートも 必要としています 00:06:05.104 --> 00:06:07.583 なぜならこの広大な宇宙の 00:06:07.583 --> 00:06:11.066 貴重な青い一点の惑星では 00:06:11.066 --> 00:06:14.444 これから5千万世紀もの間 全人類が乗組員だからです 00:06:14.444 --> 00:06:17.000 だから未来を 台無しないようにしましょう NOTE Paragraph 00:06:17.000 --> 00:06:18.795 ある引用で終わらせて頂きます 00:06:18.795 --> 00:06:22.296 偉大なる科学者の ピーター・メダワーの言葉です 00:06:22.296 --> 00:06:25.569 「人類のために鳴るベルは 00:06:25.569 --> 00:06:28.213 アルプスの牧牛のベルのように 00:06:28.213 --> 00:06:30.499 我々の首に掛かっている 00:06:30.499 --> 00:06:33.174 それが美しく鳴らなければ 00:06:33.174 --> 00:06:35.305 我々の責任である」 NOTE Paragraph 00:06:35.305 --> 00:06:37.302 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:06:37.302 --> 00:06:39.685 (拍手)