WEBVTT 00:00:10.844 --> 00:00:15.116 20歳のころ僕は少年院で教師をしていたんだ 00:00:15.116 --> 00:00:17.113 彼らとの間には いろいろな壁を感じたけど 00:00:17.113 --> 00:00:21.432 お互いに共通の話題が一つだけあるって気がついた 00:00:21.432 --> 00:00:23.429 みんなヒップホップが大好きなんだ 00:00:23.429 --> 00:00:27.609 それから数年は 授業でラップばかり教えたよ 00:00:27.609 --> 00:00:31.231 すると やる気がなかった生徒が リーダーシップを発揮するようになった 00:00:31.231 --> 00:00:33.599 一緒にヒップホップ文化に関わることで 00:00:33.599 --> 00:00:35.480 みんなが言葉の使い方や生活の知恵 00:00:35.480 --> 00:00:39.079 お互いをもっと大切にする事を学んだ 00:00:39.079 --> 00:00:42.562 考えてみると今までの教育制度は 00:00:42.562 --> 00:00:45.697 黒人やラテン系そして低所得者には とても不公平なものだった 00:00:45.697 --> 00:00:49.087 だから教育者として ヒップホップからもっと学べないかと考えた 00:00:49.087 --> 00:00:51.966 急成長して国際的な現象になっている ヒップホップという文化は 00:00:51.966 --> 00:00:54.822 まさにこのコミュニティーから 生まれたものだからね 00:00:54.822 --> 00:00:57.028 ここで言うヒップホップは 単なる音楽とか 00:00:57.028 --> 00:01:00.209 ダンスといった普通考えられている メインの要素だけじゃない 00:01:00.209 --> 00:01:03.414 才能や自信そして知恵なども含めたもので 00:01:03.414 --> 00:01:05.178 それは抑圧された社会で育つことで磨かれる 00:01:05.178 --> 00:01:08.267 ヒップホップ文化の発展が そのいい例だ 00:01:08.267 --> 00:01:10.798 サウス・ブロンクスに住む 10代のジャマイカ人たちは 00:01:10.798 --> 00:01:12.330 同じレコード2枚を使い 00:01:12.330 --> 00:01:14.383 それらを交互に流して 00:01:14.383 --> 00:01:16.347 踊りやすい部分を繰り返しながら 00:01:16.347 --> 00:01:19.134 新しい音楽を創り出して行った 00:01:19.134 --> 00:01:20.569 創造力にあふれた ビジュアル・アーティストたちは 00:01:20.569 --> 00:01:23.104 自分たちを表現するのに ギャラリーは必要がないことに気づき 00:01:23.104 --> 00:01:25.682 作品を見せるために 電車の車両に描きだした 00:01:25.682 --> 00:01:28.073 すると一瞬にして自分の作品が 何千もの人々の目にふれるようになった 00:01:28.073 --> 00:01:31.278 学校を退学して 救済措置を受けている子たちは 00:01:31.278 --> 00:01:33.553 企業家精神やラップのスキルを使って 00:01:33.553 --> 00:01:36.990 ドラッグを売り 車に積んだCDを売り 00:01:36.990 --> 00:01:38.963 メーシーズの商品まで売りさばく 00:01:38.963 --> 00:01:41.703 こうしたことが ヒップホップ精神 00:01:41.703 --> 00:01:45.233 限られた材料を自在に利用する才能だ 00:01:45.233 --> 00:01:47.555 これをヒップホップ流に表現するなら 00:01:47.555 --> 00:01:50.504 「無から何かをつくりだす」だろうね 00:01:50.504 --> 00:01:53.778 この大胆な取り組みが 教育制度に与える影響は何だろう 00:01:53.778 --> 00:01:57.377 ヒップホップ初心者のために 先駆者たちの業績を示すなら 00:01:57.377 --> 00:01:59.536 ヒップホップのプロデューサーは 他人の音楽をサンプリングして 00:01:59.536 --> 00:02:01.696 独自の新しい曲を創り 聴衆の耳を楽しませた 00:02:01.696 --> 00:02:05.086 同様にヒップホップを教育に使う時も いろいろなモデルを借りてきて 00:02:05.086 --> 00:02:08.430 生徒の必要に応じて その場で独自に組み合わせ 00:02:08.430 --> 00:02:10.101 教育用のプログラムを作ることができる 00:02:10.101 --> 00:02:12.354 ミネソタ州にある映像専門高校を考えてみよう 00:02:12.354 --> 00:02:15.070 そこでは演習を通じた学習と 能力に合わせた課題を 00:02:15.070 --> 00:02:19.505 芸術や職業 ビジネスのトレーニングに使ったり 00:02:19.505 --> 00:02:23.174 地元の大学と協力して行ったり 学生の強いリーダーシップに結びつけている 00:02:23.174 --> 00:02:26.286 前と同じ事をする必要もないし 次も同じモデルでやる必要もない 00:02:26.286 --> 00:02:28.817 いろいろな教授法をサンプリングして ミックスすることができる 00:02:28.817 --> 00:02:31.673 だからこそ 生徒に最適なカリキュラムの 学校が見つかる 00:02:31.673 --> 00:02:35.411 ヒップホップが新鮮さにこだわっている ことも重要だ 00:02:35.411 --> 00:02:38.476 昨日のヒット曲は もう過去のものなのだ 00:02:38.476 --> 00:02:40.357 今ヒットしている曲を提供する人たちが 00:02:40.357 --> 00:02:43.886 話題であり続けるには 新しい事をしなければならない 00:02:43.886 --> 00:02:45.535 世界はめまぐるしく変わっている 00:02:45.535 --> 00:02:48.995 2010年にトップ10位だった仕事も 6年前には存在しなかった 00:02:48.995 --> 00:02:52.687 だから新鮮さを最高とするヒップホップの考えは 学校にも浸透するに違いない 00:02:52.687 --> 00:02:54.475 そしてまた臨機応変でいることも必要だ 00:02:54.475 --> 00:02:57.215 1970年代に リノリウムの床の張替が 00:02:57.215 --> 00:02:58.399 たくさんの家庭で行われ 00:02:58.399 --> 00:03:01.209 貧しい地域では リノリウムの床が道路に捨てられていた 00:03:01.209 --> 00:03:04.831 そこで運動場やダンス教室に 行けない若者たちは 00:03:04.831 --> 00:03:06.387 両親が捨てた床をダンスフロアにし 00:03:06.387 --> 00:03:09.661 ウインドミルやヘッドスピンなどの 新しい動きを発明し 00:03:09.661 --> 00:03:11.750 ダンスの可能性を最大限まで高めた 00:03:11.750 --> 00:03:13.678 手持ちの情報が不足しているので 00:03:13.678 --> 00:03:15.489 教師たちは新しい指針を必要としている 00:03:15.489 --> 00:03:17.346 それは 私たちが隠れて踊れる場所はどこで 00:03:17.346 --> 00:03:19.088 新しい踊りは何かなどの情報だ 00:03:19.088 --> 00:03:22.757 マイクやスプレー缶や ターンテーブルの向こうにいても 00:03:22.757 --> 00:03:25.961 生徒たちは教育について 素晴らしい考えを持っている 00:03:25.961 --> 00:03:29.189 ヒップホップ精神でできるのは 教師がヒップホップの歌を使って 00:03:29.189 --> 00:03:31.882 伝統的な学校で生徒を成功させるだけではない 00:03:31.882 --> 00:03:35.876 若者たちの考えを尊重し形づくれるよう 00:03:35.876 --> 00:03:37.083 教育を変えることができる 00:03:37.083 --> 00:03:38.337 そして生徒たちが消費者としてではなく 00:03:38.337 --> 00:03:39.707 創造者として取り組んだ時に 00:03:39.707 --> 00:03:42.029 素晴らしい可能性を生むのがヒップホップ精神だ 00:03:42.029 --> 00:03:45.628 教師は既存の学問の深いところまで 注目する必要はない 00:03:45.628 --> 00:03:47.788 教室の外の世界を考えて 00:03:47.788 --> 00:03:50.388 若者の興味や才能を根本的に反映させた 00:03:50.388 --> 00:03:53.128 施設をつくる必要があるのだ 00:03:53.128 --> 00:03:54.754 そして私たちが創る学校や教育制度では 00:03:54.754 --> 00:03:58.715 ヒップホップを教えるだけでなく 学校そのものがヒップホップ的でなければならない