0:00:17.479,0:00:20.063
「はーい 反原子さん[br]僕は水素だよ はじめまして

0:00:20.063,0:00:22.033
ダイビングするってどんな感じ？」

0:00:22.033,0:00:24.955
「ハイ 私は反水素よ[br]あなたから見れば反原子ね

0:00:24.955,0:00:27.119
正直言って 電荷的には中性よ

0:00:27.119,0:00:31.509
あなたの電子と陽子のように[br]私の陽電子と反陽子も釣り合っているの 分る？」

0:00:31.509,0:00:34.504
「そうかあ！ 僕と同じなんだね[br]でも何かが違う」

0:00:34.504,0:00:38.498
「わっ 気を付けて！ 近づきすぎると[br]私たちスパークして消滅するわ

0:00:38.498,0:00:40.256
私 無事でいたいもの」

0:00:40.256,0:00:41.403
「おっと ゴメン」

0:00:41.403,0:00:43.102
「大丈夫よ[br]でも考えて見れば

0:00:43.102,0:00:44.081
CERNの上空で

0:00:44.081,0:00:46.502
ダイビングする前に[br]会話するって何か変な気分ね」

0:00:46.502,0:00:47.486
「なぜ？」

0:00:47.486,0:00:50.010
「うーん どうして二人とも落ちるって分るの？」

0:00:50.010,0:00:51.821
「もちろん 重力があるから落ちるさ

0:00:51.821,0:00:54.224
知ってのとおり 質量があるもの[br]同士の間に働く引力さ

0:00:54.224,0:00:56.012
落下の速さだって分るよ

0:00:56.012,0:00:58.350
ガリレオがあの塔の実験で示した通り

0:00:58.350,0:01:02.736
落下する物体は質量に関係なく[br]一定の加速度で落ちていく」

0:01:02.736,0:01:04.535
「それは大きな物体の場合ね

0:01:04.535,0:01:07.682
私たちの様に小さな粒子では[br]話は違うわ

0:01:07.682,0:01:11.818
私たちの質量はとても僅かなので[br]私たちが感じる重力はとても僅かなの

0:01:11.818,0:01:16.526
私の反陽子や あなたの陽子のように[br]電荷がある粒子では

0:01:16.526,0:01:18.697
ずっと強い電磁力が働くので

0:01:18.697,0:01:22.199
重力は検知できないの」

0:01:22.199,0:01:25.468
「でも それは電荷のある粒子の場合だろ[br]君も僕も中性じゃないか

0:01:25.468,0:01:29.029
電荷が釣り合っているので[br]電磁力は小さく

0:01:29.029,0:01:31.368
重力は検知できるはずだよ

0:01:31.368,0:01:32.921
僕の場合 測定されたもの」

0:01:32.921,0:01:36.019
「水素はどこもあるけど[br]反水素は見つけるのが難しいのよ」

0:01:36.019,0:01:37.757
「どうして どういうこと？

0:01:37.757,0:01:38.977
ビッグバンの時に

0:01:38.977,0:01:41.359
物質と反物質は同じ数だけ[br]生成されたんじゃないの？」

0:01:41.359,0:01:43.845
「そう思うかもね[br]でも生成された全ての粒子が

0:01:43.845,0:01:46.833
対消滅して エネルギーに変わったて[br]覚えてる？

0:01:46.833,0:01:49.284
そして 宇宙は明らかに物質だらけ

0:01:49.284,0:01:52.304
だれも反物質よりも物質が多い[br]理由なんて知らない

0:01:52.304,0:01:55.088
だから科学者は私のことを[br]研究したがるのよ」

0:01:55.088,0:01:56.924
「じゃあ どこで君を発見できるんだい？」

0:01:56.924,0:01:59.200
「実際のところ[br]あそこの実験室で創られたの

0:01:59.200,0:02:03.875
私の反陽子はあなたの陽子と同じくらい[br]重いから

0:02:03.875,0:02:05.487
加速器が必要だったの

0:02:05.487,0:02:07.329
陽電子を作るのはもっと簡単だったわ

0:02:07.329,0:02:10.229
あなたの電子と同じくらい軽いし

0:02:10.229,0:02:12.732
自然に崩壊して陽電子を放出する[br]物質があるから

0:02:12.732,0:02:15.494
そして この二つを一緒すると[br]私のできあがり

0:02:15.494,0:02:16.558
ごく最近になって

0:02:16.558,0:02:18.042
私の寿命を長くできるようになって

0:02:18.042,0:02:20.306
私の性質を調べることが可能になったわ」

0:02:20.306,0:02:24.305
「そして 君は落下実験に送られてきたと[br]いうわけだ　う～ん ちょっと待ってね」

0:02:24.305,0:02:28.041
「いいわよ 私たちはガリレオの実験を[br]再現するのね

0:02:28.041,0:02:31.901
物質同士ではなく 物質と反物質でね」

0:02:31.901,0:02:33.356
「さあ 何が起こるかな？」

0:02:33.356,0:02:35.101
「君は上向きに落下するのかな？」

0:02:35.101,0:02:36.578
「試して見ないとね！」