ルービック・キューブを プレイできますか? それで遊ぶのではなく ピアノにように演奏できるでしょうか? 最初は この質問が ピンとこないかもしれませんが 抽象代数学の分野である 群論でその答えが分かります では お付き合いください 数学では 群とはある条件に従う 要素(元)の集まりです それは 整数の集合だったり ルービック・キューブの面だったり その他 何であれ ある4つの規則 あるいは公理に 従うなら何でも構いません 公理1 全ての群の演算について閉じていること つまり 演算結果もその群に属すること ですから この四角に どのような演算を行ったとしても― ある方向に回転したり 逆方向に回転しても 同じ群の要素になります 公理2 一連の演算を行う時 括弧の位置により演算の順序を変えても 結果が同じになることです たとえば四角を 右に2回 次に右に1回 回転した時と 1回転の後 2回転した場合でも 同じ結果が得られ 数字の場合なら1+2と 2+1が 同じ結果になるといったことです 公理3 どの演算に於いても 群には単位元と呼ばれる要素があります これを群のどの要素に作用させても もとの要素と変わりません 四角を回転させる場合も 整数の加法においても 単位元はゼロというわけです さして 面白くはありませんね 公理4 群の各要素に対して 逆元と呼ばれるものが存在します ある要素とその逆元について 群の演算を行うと 単位元 つまり ゼロになることで お互いに打ち消し合うということです これで全てですが 何の役立つのでしょう? これらの基本的な規則を応用してみると 興味深い特性が現れてきます 例えば 先程の四角を ルービック・キューブ全体に拡張してみましょう これも同様に 公理をすべて満たす群ですが 今度は 要素の数が格段に増え 演算も増えています 各面の行や列を 回転させることができます 各配置への操作は置換と呼ばれます 群の要素が増えるほど 考えられる置換は増えます ルービック・キューブは 4300京以上の置換がありますので やみくもに解いたところで うまくはいきません しかし 群論を用いてキューブを解析し 一連の置換を決定することができれば それが解法となります 実際 そうやって解くソフトが多いのです 群論の表記を使って 回転を表記することもあります そして パズルを解くだけではありません 群論は音楽にも深く関わっているのです 和音を視覚化するには 12の音符をすべて書き出し その中に正方形を描くことができます どの音符から始めても構いませんが C(ド)の音からにしましょう 減七の和音(dim7)が得られます この和音は4つの要素からなる群です 一番下の音を一番上に移動する 操作を行うことができます これを音楽では転回といいます そして これは先にお話しした 加法と同様です 各転回により 和音の音色は変わるものの Cdim7であることに 変わりはありません つまり 公理1を満たしています 作曲家は転回により 和音の進行を操って 不自然な進行を避けるというわけです 楽譜の上では 転回はこのように表されますが 四角の上に重ねてやることもできます 音符でルービック・キューブ全面を 埋め尽くし 各面が協和音になるようにすると キューブを解くことは 不協和音が徐々に協和音に変化する 過程として表現されます これで ルービック・キューブを 演奏するという意味がお判りでしょう