1781年 英国の作曲家であり
科学技術者であり
天文学者であるウィリアム・ハーシェルは
空に他の星とは
動きが異なる天体が
あることに気づきました
何かが異なり
何かがおかしいという
ハーシェルの認識は
惑星の発見になったのです
その惑星は 天王星です
天王星という名前は
何世代にもわたって
子どもたちを楽しませました
その夜に発見された惑星によって
それまでに知られていた
太陽系の大きさが2倍になりました
ほんの先月のこと NASAは
近隣恒星の周りを回る軌道にある
517個の新惑星を発見したと
発表しました
我が銀河系で知られている惑星の数が
一夜でほぼ2倍になりました
天文学は データの収集能力が
毎年ほぼ2倍になることにより
絶えず変革を遂げてきています
今後20年以内には
宇宙にある主だった銀河系を
史上初めて
発見することになるかもしれません
しかし このビッグデータの時代に突入し
データ量が多ければよいということと
異なる内容を含むデータを集めることの
違いを理解し始め
疑問の投げかけ方を
変えられるようになりました
この違いはデータ収集量ではなく
それらのデータが宇宙への新しい窓を
開くかどうかであり
天空の見方を
変えるかどうかなのです
宇宙への次なる窓とは何でしょうか?
天文学の次章とは何でしょうか?
今後20年間に開発する
ツールや技術を紹介し
このような技術が
データを上手に扱うことによって
宇宙への窓 つまり
時間への窓を開くことで
今一度天文学を
変革させるかを説明します
なぜ時間なのでしょうか?
時間とは起源に関することで
また 進化に関することなのです
太陽系の起源-
太陽系の形成過程は
特異であり 特別なのでしょうか?
宇宙の進化において
なぜ宇宙は膨張し続けているのでしょうか?
宇宙を膨張させた
神秘的なダークエネルギーとは
何なのでしょうか?
まず最初に技術が
いかに空への見方を
変えるのかについてお話します
想像してみてください
あなたはチリ北部にある山脈で
座っていて
日が昇るの数時間前に
太平洋のある西側を
見ています
これは 夜空の光景で
天の川が地平線にちょっと顔を
覗かせている美しい光景
を眺めています
それは 静止した光景でもあります
多くの意味で これが私たちの
宇宙に対する考え方-
永遠と不変であるということです
しかし 宇宙は静止しておらず
数秒から数十億年の時間的尺度で
たえず変化しているのです
銀河同士は
融合したり
毎時数十万マイルの速さで 衝突します
星は生まれては 死にますが
華々しく爆発して散るのです
実際 チリの静かな空に戻り
時間を進めて
その空が来年にかけて
どう変化するのかをみてみましょう
目にしたパルスは
超新星-
死にゆく星の残像で
爆発して輝きを増し
そして視界から消えていくのです
それぞれの超新星は 太陽よりも
50億倍も明るいのです
ですから遥か彼方にあっても
ほんの短時間だけですが
見ることができます
1秒間に10個の超新星が
宇宙のどこかで
爆発しています
音を聞くことができたなら
ポップコーンがはじける音のようかも
しれません
さて 超新星の話はここまでにしますが
変化するものは明るさだけではありません
天空は絶えず動いています
空を横切るように動いている一群は
太陽の周りを回る小惑星で
変化や動きが見られます
系の動力学により
宇宙のモデルを作り
未来を予測したり
過去を説明することができます
私たちが過去10年間
使っていた望遠鏡は
この規模のデータを捉えるように
設計されていません
ハッブル宇宙望遠鏡ですが
過去25年間に
宇宙遠方の
最も詳細な画像の多くを
記録してきました
でも もし空全体の画像を
ただ一度作成するのに
ハッブル天体望遠鏡を使うとすると 1,300万枚の画像を
約120年かけて撮らなければなりません
そのことが 我々が
新しい技術や新しい望遠鏡を
開発する動機となりました
信号が弱くなる
遠方の宇宙を捉える望遠鏡
しかも できるだけ素早く画像を撮って
広い範囲を撮影できる望遠鏡です
大型シノプティック・サーベイ望遠鏡
LSSTともいいますが―
天文学史上
最も素晴らしい実験装置につけられた
最も平凡な名前なのかもしれません
実際 科学者やエンジニアに
我が子の名前であれ 何であれ
名前を付けさせるべきではないという
証明なのです (笑)
私たちはLSSTを作っています
10年以内にデータの取得を
開始する予定です
我々の考えを紹介します
宇宙に対する考えは
変わっていくでしょう
それというのもLSSTによる1枚の画像は
ハッブル宇宙望遠鏡の
3,000枚分の画像に相当し
3.5度分の空の画像で
満月の幅の7倍あります
この規模の画像は
どのように見るのでしょう?
携帯のカメラや
表通りで買ったデジカメのものと
同じ技術を使って
史上最大の望遠鏡を作るとします
直径約1.7m
フォルクスワーゲン・ビートル
くらいのサイズで
1枚の画像は30億ピクセルからなります
1枚のLSST画像を
最大解像度で見ようとすると
1,500台もの高解像度TVスクリーンが
必要です
しかもこのカメラは
20秒ごとに新しい写真をとって
空をたえず走査していき
空の全体像を作りあげていきます
3晩ごとにチリ上空の
真新しい景色が
見られます
この望遠鏡が役目を終えるまでに
400億個の星や銀河が見えることでしょう
地上の人々の数よりも多くの
宇宙に存在する天体が
史上初めて見えることになるでしょう
このことを テラバイト
ペタバイト 数十億個の物体という
言葉を使って語ったりしますが
このカメラから送られてくる
データ量を感覚的に
ご理解いただくには
録画されたTEDTalksを
全て同時に
毎日24時間 週7日間
10年間再生し続けるようなものと
お考えください
そして このデータ処理量は
すべてのTEDTalksの
ビデオの各パートを見て
コマから次のコマへの変化を調べて
全ての「新しいアイデア」や
「新しい概念」を
検索するようなものです
そして このことが科学の有り様や
天文学の有り様を変えています
つまりソフトウェアやアルゴリズムにより
データから情報を見出すことであり
我々が作り上げた望遠鏡やカメラと同じくらい
ソフトウェアが科学にとっての
生命線になっているのです
さて このプロジェクトで
数千もの発見がなされるでしょうが
この規模のデータ・アクセスにより
変革が起こるかもしれない
起源と進化に関する2つのアイデアを
お話ししたいと思います
過去5年間 NASAは
1,000個を超える
恒星の周囲を回る
惑星系を発見してきましたが
私たちが見つけた系は
太陽系とはあまり似ていませんでした
私たちの努力不足では?
それとも 太陽系の形成が特別であり
特異なものではないか?
などといった疑問に直面しました
その疑問に答るのなら
太陽系の歴史を
詳細に理解する必要があります
詳細にというのがポイントです
空を見上げると
空を横切る小惑星があり
まるで太陽系の破片のようです
小惑星の位置は
海王星や天王星の軌道が
ずっと太陽に近かった初期の頃に
刻まれた記録のようなもので
このような大型惑星が太陽系を
移動する時
その軌跡にあった小惑星を
まき散らしたのでした
小惑星の研究は
あたかも科学捜査を-
太陽系の科学捜査を
行っているかのようです
しかしこれを行うためには
距離を知らねばならず
距離を知るには
動きを測る必要がありますが
動きは時間を利用することによって
得られます
これはどういうことでしょう?
画面を動き回る
小さな黄色い小惑星を見ると
私たちに 地球に最も接近しているので
最も速く動いているように見えます
いつの日か宇宙船を小惑星に送り
鉱物を採掘するかもしれませんし
しかし 6,000万年前に
恐竜が絶滅したように
あるいは
前世紀初頭には
小惑星が1,000平方メートルの
シベリアの森林を
消滅させたように
あるいは
去年 ロシア上空で
小型核爆弾級のエネルギーを放出したように
いつの日にか また小惑星が
地球に衝突するかもしれません
つまり 太陽系の科学捜査という
研究によって
過去だけではなく
私たちの未来をも予測できるのです
さて 遠く離れてみると
太陽の周りを回る小惑星の普段の姿は
この様に見えるでしょう
このように視覚化された
すべての点が
本物の小惑星なのです
軌道は空を横切る動きから
計算されました
色は小惑星の成分を反映しています
中央部のものは水分を含まず
かつ石質ですが
縁辺部にあるものは
水分を多く含み原始的です
太古に小惑星が地球に衝突した時
水を豊富に含む小惑星が
地球の海の形成に
一役買ったのかもしれません
LSSTは広い範囲を撮れるだけでなく
弱い信号も検知できるので
私たちは太陽系の内側から
遥か離れたところにある-
海王星や火星の軌道の彼方にある小惑星や
太陽から約1光年離れている
彗星や小惑星を
見ることができるのです
この図の細部を見てみると―
10倍から100倍に拡大してみると
次のような疑問に答えることが
できるでしょう
たとえば 海王星の軌道の
外側にある惑星が存在する証拠や
地球の衝突し得る小惑星を
危険となるかなり前に見つけたり
おそらくは 太陽が独自に形成されたのか
もしくは星の集団の中で
形成されたのか といったことや
太陽には兄弟星があって それが―
太陽系の形成に影響を
与えたのではないかということや
それが 我が太陽系の類が それほど稀である
理由かもしれない といったことです
さて 距離と宇宙の変化についてですが
(地球からの)距離は
宇宙の時間と同等であり
宇宙の変化でもあります
1フィートずつ離れて見るごとに
または
物体が1フィートずつ離れるごとに
10億分の1秒ほどの
過去の宇宙の姿が見られます
この過去を見るという
発想や概念は
宇宙についての考え方に
1度ならずも
革命をもたらしました
最初は1929年で
エドウィン・ハッブルという天文学者が
宇宙が膨張していることを証明し
ビックバン理論へと発展しました
観測結果は
24個の銀河系と
手書きの図表という単純なものでした
しかし 銀河系が遠ければ遠いほど
より速いスピードで遠ざかる
という考え方は
それだけで
現代宇宙論を生みだすのに十分でした
その70年後に
2回目の革命がありました
天文学者の2つのグループが
宇宙は単に膨張しているのではなく
膨張速度が―
加速していることを示しました
空に向かってボールを投げたとき
高く遠ざかるにつれて
速度を増していくことを見出すような
そんな驚きでした
超新星の明るさと
超新星の明るさが
遠くなるにつれ
どの程度弱くなるのかを
測定することで
このことを証明したのでした
これらの観察結果はより複雑です
超新星は
ハッブルが観察した銀河より
2,000倍以上も
遠い銀河系にあるので
新技術や新しい望遠鏡が
必要となるのです
超新星の爆発は 1つの銀河系で
100年に1度しか起こらないので
3年間かけても 42個の超新星しか
発見していません
数万個の銀河系を探して
3年間で42個の超新星なのです
データを収集し
発見したものがこの図面です
これは印象的には見えないかもしれません
しかし 110億光年離れている超新星の
明るさを予測した線があって
その線上に当て嵌まらない
一握りの点が
物理学における革命なのです
小さな変化が大きな結果を
もたらします
小さな変化は
ハーシェルが惑星を見つけたように
発見の機会を与えてくれます
小さな変化は 宇宙に対する理解を
覆します
42個の超新星において光が
僅かながらも弱いなら
僅かながら距離が遠く
宇宙が単に膨張しているのではなく
この膨張が加速していることを意味し
今やダークエネルギーと呼ばれている
宇宙の要素を存在を明らかにします
これは今日の宇宙のエネルギーの
68%を占めており
膨張を加速させている要素です
次の起こりうる革命とは何なのでしょうか?
ダークエネルギーとは何であり
なぜ存在するのでしょう?
これらの個々の線は それぞれ
ダークエネルギーに関する
異なるモデルを示し
ダークエネルギーの特性を表しています
それらはいずれも42個の点と整合的です
しかし これらの線の背後にある
考え方が抜本的に違うのです
ダークエネルギーは
時間と共に変化すると
考える人たちもいれば
暗黒エネルギーの特性は
どこで空を見るかで
異なると考える人たちもいます
亜原子レベルで 物理学に
変化や違いをもたらすと
考える人たちもいます
あるいは 大きな規模で
重力や一般相対性理論の修正を考えたり
私たちの宇宙が数ある宇宙の一つ
つまり
この神秘的な多元宇宙の一部だ
と言う人たちもいます
これらの考え方や理論のすべてが
素晴らしく
―幾分クレージーなものもありますが―
いずれも42個の点と
整合しています
次の10年でこのことを
理解するために
どうすればいいのでしょうか?
私があなたに2つのサイコロ
をあげたとします
あなたはそのサイコロに
細工がしてあるのか
公正なのかを調べたいとします
サイコロを一回振っただけでは
ほとんど分かりませんが
何度もサイコロを振ると
より多くのデータが収集されるので
あなたはより確信をもって
サイコロに細工がしてあるか
どうかだけでなく
細工の程度や
どういう細工なのかも分かるのです
3年間で42個の超新星しか
見つけられなかったのは
私たちが作った望遠鏡が
空の一部しか調査できないためです
LSSTを使って3晩ごとに
チリ上空の真新しい姿を
撮影します
観測を始める最初の夜には
ダークエネルギーの発見に使われた数の
10倍の超新星を見つけるでしょう
最初の4か月で
1,000個に増え
調査の終わる頃には
150万個の超新星になります
各超新星がサイコロの一振りにあたり
各超新星は
どのダークエネルギーの理論と整合し
どの理論と合わないかという
検証に使われます
それ故 これらの超新星のデータを
宇宙論の別の測定と
組み合わせることによって
願わくばこの調査の終わる
2030年頃までには
ダークエネルギーの
さまざま考え方や理論から
徐々に絞り込んで
願わくば 宇宙理論-
宇宙を司る物理学の基本定理が
徐々に解明されることを
期待しています
色々な意味で 私が提起した疑問は
実は最も単純なものなのです
答えは分からないかも
しれませんが
少なくとも質問の仕方を
知っているのです
数万個の銀河系を調べることにより
発見した42個の超新星が
我々の頭上にある宇宙の理解を
覆したのならば
数十億の銀河系を調べることにより
42個の何倍ほどの超新星を得て
予測と全く一致しないようなものを
見出すことになるのでしょうか
ハーシェルが発見した惑星や
ダークエネルギーや
量子力学や一般相対性理論のように
データが予測と違っていたために
様々な考え方ができました
今後10年で得られる
天文学のデータによって
我が宇宙の起源や進化といった
疑問に対する答えが
どれだけ得られるのだろうかと思うと
ワクワクします
質問することすら
思い浮かばないことに対する答えが
そこに いくつあるのでしょうか?
ありがとうございました
(拍手)