1 00:00:00,801 --> 00:00:04,696 (音楽) 2 00:00:04,720 --> 00:00:07,416 4万3千年ほど前 3 00:00:07,420 --> 00:00:09,220 若いホラアナグマが 4 00:00:09,220 --> 00:00:13,816 現在のスロベニアの 北西端にある丘陵で死にました 5 00:00:13,840 --> 00:00:17,930 その千年後 マンモスが ドイツ南部で死にました 6 00:00:17,930 --> 00:00:20,600 さらに数百年後 そこから遠くないところで 7 00:00:20,600 --> 00:00:23,070 シロエリハゲワシが死にました 8 00:00:23,280 --> 00:00:27,416 この動物たちが どうやって死んだのかは ほとんど分かっていませんが 9 00:00:27,440 --> 00:00:31,496 時代も場所もバラバラな この異なる動物たちは 10 00:00:31,520 --> 00:00:34,696 特筆すべき ある運命を 共有しています 11 00:00:34,720 --> 00:00:37,840 死後に その骨を使って 12 00:00:37,840 --> 00:00:40,220 人間の手で 13 00:00:40,220 --> 00:00:42,870 フルートが作られたのです 14 00:00:42,910 --> 00:00:44,376 考えてみてください 15 00:00:44,400 --> 00:00:47,056 自分が4万年前の 洞穴人だったとします 16 00:00:47,080 --> 00:00:48,736 火の作り方を覚え 17 00:00:48,760 --> 00:00:50,816 狩りに使う シンプルな道具を作り 18 00:00:50,840 --> 00:00:52,770 冬の寒さをしのぐために 19 00:00:52,770 --> 00:00:55,536 動物の皮から服を作ることを 学びました 20 00:00:55,560 --> 00:00:58,296 その次に何を発明しようと 思いますか? 21 00:00:58,320 --> 00:01:02,646 フルートという 役に立たない 空気の振動を生み出す道具を発明するなんて 22 00:01:02,646 --> 00:01:05,296 馬鹿げたことに見えますが 23 00:01:05,319 --> 00:01:08,680 それがまさに 我々の祖先がしたことでした 24 00:01:09,040 --> 00:01:11,690 そしてこれは 発明の歴史において 25 00:01:11,690 --> 00:01:14,256 たびたび起きていることなんです 26 00:01:14,270 --> 00:01:16,090 人々が発明をするのは 27 00:01:16,090 --> 00:01:19,100 生きるためだったり 子供に食べさせるためだったり 28 00:01:19,100 --> 00:01:21,336 隣の村を征服するため だったりします 29 00:01:21,360 --> 00:01:22,776 しかし同じくらい頻繁に 30 00:01:22,800 --> 00:01:24,696 単に楽しいからという理由で 31 00:01:24,720 --> 00:01:27,200 新しいアイデアが 世に生み出されているのです 32 00:01:27,520 --> 00:01:29,670 そして奇妙なのは 33 00:01:29,670 --> 00:01:33,516 楽しいにはしても しょうもないものにしか 見えない そういった発明が 34 00:01:33,516 --> 00:01:36,216 たびたび科学や政治や社会に 35 00:01:36,216 --> 00:01:38,976 重大な変化を 引き起こしていることです 36 00:01:39,000 --> 00:01:41,650 現代における 最も重要な発明であろう 37 00:01:41,650 --> 00:01:44,696 プログラム可能なコンピューターを 例にとってみましょう 38 00:01:44,720 --> 00:01:49,336 よく聞く説明は コンピューターは 軍事技術から生まれたというものです 39 00:01:49,360 --> 00:01:51,340 初期のコンピューターの多くは 40 00:01:51,340 --> 00:01:55,696 戦時の暗号解読や ロケット弾道計算用に設計されたからです 41 00:01:55,700 --> 00:01:57,300 しかし実際には 42 00:01:57,300 --> 00:01:59,640 現代のコンピューターの起原は 43 00:01:59,640 --> 00:02:01,750 みんなが思っているよりも ずっと楽しく 44 00:02:01,750 --> 00:02:03,496 音楽的でさえあるのです 45 00:02:03,520 --> 00:02:04,776 フルートの原理は 46 00:02:04,800 --> 00:02:07,880 筒に空気を送って音を鳴らす というものですが 47 00:02:07,880 --> 00:02:09,850 そこから最初のオルガンが 48 00:02:09,850 --> 00:02:12,576 2千年以上前に 作られることになりました 49 00:02:12,600 --> 00:02:15,896 小さなレバーを指で押したときに 音が出るようにするという 50 00:02:15,920 --> 00:02:18,380 素晴らしいアイデアを 誰かが思いつき 51 00:02:18,380 --> 00:02:21,216 最初の鍵盤が 発明されました 52 00:02:21,240 --> 00:02:23,890 鍵盤はオルガンから クラビコード 53 00:02:23,890 --> 00:02:26,736 ハープシコード ピアノへと 進化していきましたが 54 00:02:26,760 --> 00:02:29,370 19世紀の中頃になって 55 00:02:29,370 --> 00:02:32,776 鍵盤で音の代わりに 文字を打つというアイデアに 56 00:02:32,776 --> 00:02:36,136 多くの発明家が たどり着きました 57 00:02:36,160 --> 00:02:38,456 実際 最初のタイプライターは 58 00:02:38,480 --> 00:02:41,800 「書くためのハープシコード」 と呼ばれていたんです 59 00:02:43,440 --> 00:02:47,256 フルートと音楽は さらに大きな発明へと繋がりました 60 00:02:47,280 --> 00:02:49,016 千年ほど前 61 00:02:49,040 --> 00:02:51,256 イスラム・ルネサンスの最盛期に 62 00:02:51,280 --> 00:02:53,230 バグダードに住む3兄弟が 63 00:02:53,230 --> 00:02:56,136 自動オルガンを設計し 64 00:02:56,160 --> 00:02:59,260 「自奏器」と名付けました 65 00:02:59,880 --> 00:03:03,096 それは巨大な オルゴールのようなものでした 66 00:03:03,120 --> 00:03:07,456 このオルガンは 回転する円筒に 配置したピンの指示で 67 00:03:07,480 --> 00:03:11,000 様々な曲を 演奏させることができました 68 00:03:11,440 --> 00:03:13,920 この装置に別の曲を 弾かせたかったら 69 00:03:13,920 --> 00:03:17,310 円筒を異なる符号のものに 入れ替えるだけでよかったのです 70 00:03:17,840 --> 00:03:21,216 これはその種のものとして 最初のものでした 71 00:03:21,240 --> 00:03:22,976 プログラム可能だったのです 72 00:03:23,000 --> 00:03:26,056 概念として これは大きな飛躍でした 73 00:03:26,080 --> 00:03:28,500 この発明によって初めて 74 00:03:28,500 --> 00:03:32,736 ハードウェアとソフトウェアというものを 考えられるようになりました 75 00:03:32,760 --> 00:03:35,216 そのような強力な 概念をもたらしたのは 76 00:03:35,240 --> 00:03:38,120 戦争や征服のための 道具ではなく 77 00:03:38,120 --> 00:03:40,206 必要なものですら ありませんでした 78 00:03:40,206 --> 00:03:45,296 機械が音楽を奏でるのを眺めるという 奇妙な愉しみからもたらされたのです 79 00:03:45,320 --> 00:03:48,536 プログラム可能な機械 というアイデアは 80 00:03:48,560 --> 00:03:53,216 もっぱら音楽によって 700年もの間 生き続けました 81 00:03:53,240 --> 00:03:55,736 1700年代に 音楽を奏でる機械は 82 00:03:55,760 --> 00:03:59,336 パリの上流階級の おもちゃになりました 83 00:03:59,360 --> 00:04:02,536 同様の符号化された円筒を使って 84 00:04:02,560 --> 00:04:06,496 芸人は自動人形の動きを 制御していました 85 00:04:06,520 --> 00:04:08,536 初期のロボットです 86 00:04:08,560 --> 00:04:11,066 そのようなロボットで 最も有名だったのが 87 00:04:11,066 --> 00:04:13,870 他でもない 自動フルート吹き人形で 88 00:04:13,870 --> 00:04:15,340 フランスの優れた発明家 89 00:04:15,340 --> 00:04:18,015 ジャック・ド・ヴォーカンソンにより 設計されました 90 00:04:18,279 --> 00:04:21,720 ヴォーカンソンは 演奏ロボットを設計していて 91 00:04:21,720 --> 00:04:23,736 別のアイデアを 思いつきました 92 00:04:23,760 --> 00:04:27,736 快い音色を奏でるよう 機械をプログラムできるなら 93 00:04:27,760 --> 00:04:32,550 布に素敵な模様を織り出すように プログラムすることだってできるのでは? 94 00:04:32,920 --> 00:04:37,176 円筒上のピンで 音符を表現する代わりに 95 00:04:37,200 --> 00:04:40,296 違った色の織り糸を 表すのです 96 00:04:40,320 --> 00:04:42,700 新しい模様の 織物がほしければ 97 00:04:42,700 --> 00:04:45,210 新しい筒を プログラムすればいいのです 98 00:04:45,210 --> 00:04:48,200 これは最初の プログラム可能な織機でした 99 00:04:48,410 --> 00:04:52,736 そのような円筒は 作るのに時間がかかり 高価でしたが 100 00:04:52,760 --> 00:04:54,296 半世紀後に 101 00:04:54,320 --> 00:04:56,936 別のフランス人発明家の ジャカールが 102 00:04:56,960 --> 00:05:00,540 金属の円筒の代わりに 紙のパンチカードを使うという 103 00:05:00,540 --> 00:05:03,456 素晴らしいアイデアを 思いつきます 104 00:05:03,480 --> 00:05:05,350 紙はずっと安く 105 00:05:05,350 --> 00:05:08,520 装置のプログラムの方法として ずっと柔軟性がありました 106 00:05:08,520 --> 00:05:13,566 このパンチカードが ビクトリア朝時代の発明家 チャールズ・バベッジにインスピレーションを与え 107 00:05:13,566 --> 00:05:15,696 解析機関を 作らせることになります 108 00:05:15,720 --> 00:05:18,336 最初の真にプログラム可能な 109 00:05:18,340 --> 00:05:19,736 コンピューターです 110 00:05:19,736 --> 00:05:22,160 パンチカードは1970年代まで 111 00:05:22,160 --> 00:05:24,750 プログラマーによって 使われていました 112 00:05:25,160 --> 00:05:27,550 だから考えて欲しいんです 113 00:05:27,550 --> 00:05:31,296 現代のコンピューターを可能にしたものは 何だったのかと 114 00:05:31,320 --> 00:05:35,336 軍事的応用というのは 歴史上重要な要素ですが 115 00:05:35,360 --> 00:05:39,096 コンピューターの発明には 他の要素も必要でした 116 00:05:39,120 --> 00:05:40,336 オルゴール 117 00:05:40,360 --> 00:05:42,376 おもちゃのフルート吹き人形 118 00:05:42,400 --> 00:05:43,896 ハープシコードの鍵盤 119 00:05:43,920 --> 00:05:46,496 織物の色とりどりの模様 120 00:05:46,520 --> 00:05:49,336 これはまだ話の 小さな一部でしかありません 121 00:05:49,360 --> 00:05:52,716 遊びから生まれた 世界を変えたアイデアやテクノロジーは 122 00:05:52,716 --> 00:05:54,056 たくさんあるんです 123 00:05:54,080 --> 00:05:56,056 美術館 ゴム 124 00:05:56,080 --> 00:05:58,416 確率論 保険業 125 00:05:58,440 --> 00:05:59,656 まだまだあります 126 00:05:59,680 --> 00:06:02,730 必要が発明の母とは 限らないのです 127 00:06:03,080 --> 00:06:07,256 遊び心というのは 本質的に探索的であり 128 00:06:07,280 --> 00:06:10,810 身の回りの世界に 新たな可能性を見つけようとします 129 00:06:10,920 --> 00:06:14,320 この見つけようとする ということが 130 00:06:14,320 --> 00:06:17,456 単なる愉しみや 娯楽として始まったものが 131 00:06:17,480 --> 00:06:20,530 大いなる発明に 繋がる理由なんです 132 00:06:21,040 --> 00:06:25,030 このことは 学校での子供達への教え方や 133 00:06:25,030 --> 00:06:28,490 職場でイノベーションを促すための ヒントになると思いますが 134 00:06:28,520 --> 00:06:31,576 遊びや喜びを このように捉えることはまた 135 00:06:31,600 --> 00:06:35,136 次に来るものが何か察知する 手がかりにもなります 136 00:06:35,160 --> 00:06:37,536 1750年に生きていて 137 00:06:37,560 --> 00:06:41,096 19世紀や20世紀の社会に訪れる 大きな変化が何か 138 00:06:41,120 --> 00:06:43,016 思い描くとしたら どうでしょう? 139 00:06:43,040 --> 00:06:45,096 自動制御機械に コンピューター 140 00:06:45,120 --> 00:06:46,980 人工知能 141 00:06:46,980 --> 00:06:49,186 パリの上流階級を 愉しませていた 142 00:06:49,186 --> 00:06:51,346 プログラム可能な フルート吹き人形は 143 00:06:51,346 --> 00:06:55,380 当時の他の何よりも 大きなヒントだったことでしょう 144 00:06:55,840 --> 00:06:57,820 まじめな用途のない 145 00:06:57,820 --> 00:07:01,136 ただの娯楽にしか見えませんが 146 00:07:01,160 --> 00:07:04,700 それは世界を変える技術革命の 147 00:07:04,700 --> 00:07:06,896 兆しだったのです 148 00:07:06,920 --> 00:07:08,776 人々が最も愉しんでいる場に 149 00:07:08,800 --> 00:07:11,300 未来を見ることができるんです