25年前 欧州原子核研究機構の科学者達が
ワールドワイドウェブを作りました
それ以来 インターネットは通信したり
仕事をしたり 暮らしを支えるものへと
変容を遂げてきました
Google、Facebook、Twitterなどを
生み出したアイデアは
いろいろな意味で
私たちの生活を変え
多くの恩恵をもたらしてきました
例えば 社会の繋がりが増しました
しかし マイナス面もあります
今日 平均的な人はネット上に大量の
個人情報を掲載しています
また Facebookに投稿したり
Googleで検索したり
eメール(電子メール)を送る毎に
個人情報を追加しているのです
さて 多くの方は
「メール1通くらい
大したことはない」と
思われるかもしれません
しかし 年間の電子メールや
生涯における電子メールと
なるとどうでしょうか
全体としては 様々なことが分かるのです
どこに行ったか 誰に会ったか
何を考えているのかさえ分かります
何より恐ろしいのが
データが永遠に存在することです
あなたの死後にもデータが存在するのです
主としてデータやプライバシーを
コントロールできなくなっています
今年はウェブの25周年に当たりますが
ウェブとは何かを考えることは
私たちにとって とても重要です
本当に考えないといけないのです
私たちはプライバシーを失いましたが
実際に失ったものは
プライバシーという概念そのものです
それについて考えてみると
会場におられる大半の方が
ネットの普及前の生活を覚えておられると思います
しかし今日では 子供のころから
何でもかんでも
ネット上でシェアするよう教えられた
新世代がいます
この世代はデータが個人のものだった
時代を知りません
このままどんどん進んで行くと
20年後には
「プライバシー」という言葉は
我々の考える意味とは
全く別のものになるでしょう
だから このことについて
何ができるのかを
考える時期に来ているのです
そしてなすべきことがあると考えます
今日世界で普及している通信形態の
電子メールを見てみましょう
電子メールが登場するまでは
主に手紙で遣り取りしていましたが
そのプロセスはかなりシンプルでした
まず紙にメッセージを書き
封筒に入れて封をして
切手を貼り 住所を書いて
それから投函したのです
残念なことに今日では
電子メールの送信は
手紙ではなく葉書で送るようなものです
電子メールの送信は
手紙ではなく葉書で送るようなものです
パソコンから送信されて
受信されるまでの間に
これを目にした誰もが読める
という意味で 葉書と同じです
実際に全文が読めるのです
少し前から
このことへの対策は知られており
様々に取り組まれてきました
最も基本的な対策は暗号化で
とてもシンプルなアイデアです
まず パソコンと電子メールサーバー間を
暗号化します
次に サーバー自体もデータを暗号化します
しかし これには問題があります
暗号化キーを
メールサーバーにも置くので
立派な鍵をかけても
その脇にキーが置いてあるわけです
それだけでなく 行政も合法的に
皆さんのデータキーを取得します
これが知らない間に
行われているのです
この問題を解決するのは
原理上は比較的簡単です
全員にキーを持たせ
サーバーには
キーがないようにすれば良いのです
常識的な方法だと思いませんか?
どうして 実現していないのか不思議ですね?
それについて深く考えてみると
今日のインターネットのビジネス・モデルが
プライバシーと全く
両立していないのです
ウェブの人気サイトを見てみると
広告が果たす役割が
大きいことが分かります
実際今年だけでも
広告は1370億ドル稼いでいます
広告を最大限に活用するために
企業は個人のことを知らなければなりません
あなたがどこに住んでいて
何歳で
何が好きで嫌いなのかなど
すべて掴む必要があるのです
そのことについて考えると
この情報を得る最良の方法が
プライバシーの侵害になるのです
企業はプライバシーを守ってくれません
ネット上でプライバシーが欲しいなら
ネットをしないことです
長年 電子メールに関して
PGPが唯一の対策でしたが
とても難しいので
テクノロジーに精通した人しか
使えませんでした
これはメッセージの暗号化と解読の
基本過程を表した図表です
言うまでもなく
これは一般的な対策ではありません
実際 これも問題なのです
なぜなら通信について考えるなら
そもそも 誰かを相手に通信するからです
PGPは使える人には素晴らしいですが
使えない人には操作方法が分からず
非公開での通信は存在しないのです
この問題を解決する必要があります
ネット上でプライバシーが欲しいなら
うまく行く唯一の方法は世界全体が参加すること
それは参加の障壁を下げなけれればなりません
これが技術コミュニティーの主要な挑戦だと思います
私たちがすべきことは
プライバシーをもっと身近にすることです
去年の夏
エドワード・スノーデンの事件が起こり
同僚と私は自分ならどうするかを
話し合いました
当時私たちは
ヨーロッパ合同原子核研究機関(セルン)にある
世界最大級の粒子加速器で
陽子を衝突させていました
全員科学者で
科学的創造性を使って
プロジェクトに洒落た名前を付けました
ProtonMail (陽子メール)
(笑)
今日 多くの新規事業が
カレージや地下室で設立されます
私たちの場合は若干違い
CERNカフェテリアでした
実際 素晴らしい所で
あらゆる食べ物や水があるのです
さらにすごいのは毎日
昼の12時から2時まで無料で
数千人の科学者やエンジニアに会え
基本的に何でも答えてもらえます
こういう環境で仕事を始めました
私たちが実際やりたいことは
皆さんの電子メールを受け取って
このようなものに変換したいのです
もっと重要なのは そんなことが起きていると
わからないようにしたいのです
これをするには
テクノロジーとデザインの組合せを要します
どうやって このようにするのでしょうか?
サーバー上でキーを配置しないのは
まず良いアイデアです
だからパソコン上に暗号化キーを作ります
1つではなく 2つキーを作ります
RSA秘密鍵とRSA公開鍵で
両者は数学的に関係づけられた鍵です
複数の人が通信するとき
どのように機能するのか見てみましょう
ボブとアリスは非公開で通信したいと思っています
ここでの課題は
ボブからのメッセージを
サーバー上では読めないようにして
アリスに届けることです
だから ボブがパソコンから
送信する前に暗号化するのです
アリスの公開鍵で暗号化するのがミソです
この暗号化したデータは
サーバーを経由しアリスに送られます
さて アリスの公開鍵を使って
メッセージが暗号化されているので
これを解読できるキーはただ1つ
アリスの秘密鍵なのです
そしてアリスだけがこのキーを持っているのです
私たちはメッセージをサーバーに
読み取られることなく
ボブからアリスに渡すことが出来ました
ここでお見せているのは簡略図です
実際はずっと複雑なもので
多くのソフトを使います
こんな感じです
そして これが主要なデザイン上の課題です
こんな複雑なソフトウェアを
ユーザーが気付かないうちに
使えるようにするには
どうしたらよいでしょう
ProtonMailを使えば
これと似たことができるのです
実際にどのように動くのか見てみましょう
安全に通信したい
ボブとアリスが再び登場します
二人は数分で作成できる
ProtonMailのアカントを作りました
キーの暗号化と生成は
ボブがアカントを作った時に
バックグラウンドで自動的に行います
アカントを作れば
「作成」をクリックするだけで
普段使っているように
電子メールを作成できるのです
彼は自分の文面などを書いたら
「送信」をクリックします
するとこのようになります
暗号学を学ばなくてもいいし
現在使っている電子メールと
何も変わらないのです
ボブは暗号化したメッセージを
送るだけです
お見せしたのは初期のものでしたが
技術を改良していけば
プライバシーは難しくないですし
破壊的でもないことを示しています
ゴールを 広告の収益の最大化から
データの保護に切り替えれば
こういうことも実際のものになります
皆さんはプライバシー保護は
究極の目標なのだと思われることでしょう
しかし広告から来る巨額の収益なしに
これを達成できるのでしょうか?
私は達成できると思っています
なぜなら 世界の人々が
プライバシーの重要性を
真に理解するようになると
すべてが可能になるからです
今年の上旬
ProtonMailのユーザー数が増え
リソース不足に陥りました
この時ユーザー・コミュニティは協力し
500万ドルを寄付しました
共通の目標に向かって
コミュニティが団結すると
こういうことが起こるという好例です
私たちは世界を利用できるのです
現時点で
世界中から25万人がProtonMailに登録しています
プライバシーは
アメリカやヨーロッパだけの問題ではないのです
皆に影響を及ぼすグローバルな問題なのです
注意を払って
推し進めていくべきものです
この問題を解決するために
何をすればいいのでしょうか?
最初にインターネットの
異なるビジネス・モデル-
収入や成長を完全に広告に依存しないモデルを
異なるビジネス・モデル-
収入や成長を完全に広告に依存しないモデルを
サポートする必要があります
プライバシーとデータ管理を優先する
新しいインターネットを構築する必要があります
そしてもっと重要なのは
プライバシーがオプションではなく
デフォルト設定された
インターネットを作ることです
ProtonMailで第一歩を踏み出しましたが
非常に長い道のりの第一歩にすぎません
今日皆さんにお知らせできる
良いニュースは
私たちは独りではないことです
ワクワクします
人々のプライバシーを守る動きや
フリーダム・オンラインは
本格化しつつあります
今日世界には12のプロジェクトがあり
プライバシー向上のために
協働しているのです
これらのプロジェクトは
チャットから音声通信
ファイル記憶装置やネット検索
ブラウジングなどを保護します
これらのプロジェクトは
何十億ドルの広告収入ではなく
自然人-
世界中のあなたと私のような個人により
サポートされているのです
これは本当に重要なことです
なぜなら最終的には
プライバシーは個人に委ねられるからです
私たちは現在それを
保護しなければなりません
オンライン・データは単なる0と1の
集合ではないからです
実際それ以上なのです
私たちの生活や個人の物語
友人や家族など
色々な意味で
希望であり憧れであります
これを共有したい人々だけ
共有するための権利を
保護するために
現在時間をかけて行っているのです
これなくしては
単純に自由な社会を築けないからです
今こそ集団で立ち上がり 言う時なのです
「YES オンライン・プライバシーのある世界に
暮らしたい
YES このビジョンを現実に変えるため
私たちは協働できるのだ」と
ありがとうございました
(拍手)