権力は要求をつきつけないと動かない。 これまでもそうだったし、これからもそうだ。 (フレデリック・ダグラス、米国の奴隷解放運動家) 1968年 こちらアポロ8号。月面から生中継でお届けします。 月の荒涼たる風景には畏敬の念をおぼえる。 そして、地球に残してきたものを思い出す。 ここから見る地球は、無限の闇に浮かぶオアシスのようだ。 おお、あれを見ろ。地球の「日の出」だ。 すばらしい。 カラーで撮影したか? カラーフイルムを寄こせ。はやく、はやく。 おお。これは美しい。 こちらアポロ8号。通信の最後にご挨拶です。 地球上のすべての人に、神の祝福がありますように。 おやすみなさい。美しい地球のみなさん。 私たちは、こんなに美しい地球には、もう住んでいない。 世界は終わってはいないが、 我々が知っていた世界は、もうない。 もしもし、聞こえますか? 緊急事態です。 水位が急激に上がっています。 5フィート(1.5メートル)まできてます。 2階に17人が避難しています。 とにかくここから逃げ出さないと。 救助に向かっています。 (爆発音) もしもし、大丈夫? 聞こえますか? 私たちの地球に劇的なことがおきていることがわかってきました。 今夜は、その一部を見ていきます。 私たちが経験している異常気象は 一種の警告で、 いま世界中でおきています。 私たちは前代未聞の実験に 直面しているのです。 地球1個で、全生命が維持できるかどうかという実験です。 私たちは気候変動に責任があります。 もし対応に失敗すれば 子どもたちの未来を裏切ることになります。 未来がどうなるかは、わかりませんが、 いまの「異常」は、これから「平常」になるかもしれません。 ニューヨークで行われている国連気候変動サミットで 議論が加速しています。 国連事務総長の潘基文が ホストをつとめます。 各国のリーダーと ハイレベルな合意を得たいと思います。 世界の政治的指導者に対し、最優先の課題は 気候変動問題に政治力を割くことだと申し上げたい。 サミットの交渉テーブルで、現実的な合意を得るために 真剣に取り組まねばなりません。 もし「これまで通りやろう」ということになれば、 我々は生きていけません。 死にます。 不連続な未来 ~地球と社会の限界点~ (デモ行進まで100日) (マット・レオナルド、デモ行進の主催者) 今度の9月23日、国連では 歴史的な環境サミットが行われます。 そこでは世界中の国の リーダーや指導者が集まります。 これに対し、私たちは ニューヨークのストリートで、 史上最大の環境アピールのデモ行進をする予定です。 うまくいけば、サミットの議論の流れを変え 気候変動問題に関する大きな動きを 前進させることができるでしょう。 気候変動の限界点(ティッピングポイント)は実に恐ろしい。 でも私たちがお互いに連携していけば 歴史上、最大の運動を起こし、 私たち一人ひとりが 気候変動の限界点を避ける力を 得るでしょう。 世界のリーダーを不作為の園から連れ出し 地球を救う長い旅へと導くのです。 大きな社会運動のすべては 歴史上、街(ストリート)を歩く人びとによってはじまりました。 女性の選挙権、公民権運動、 さらに最近では、 (ケヤ・チャタジー、WWF 再生可能エネルギー局長) 気候問題です。私たちの大きな成功は 人びとが家からでてきて、 ストリートに向かうところからはじまります。 これは過去最大の戦いですね。 (ナオミ・クライン、「気候破壊と資本主義」の著者) 私たちが地球を救う必要があるというわけではありません。 救わなければならないのは、地球と人類と その他の生命が共存するためのシステムなのです。 私たちの時代の最大の戦いですが 本来はだれも活動家になる必要なんて、ないはずです。 合理的な世界であれば、 科学者たちが、地球に最悪の事態が起きていると指摘し、 それを止めるための方法もあるといえば、 (ビル・マッキベン、NPO「350.org」の共同創立者) 政治や経済のシステムは、 それに従って行動していたでしょう。 気候変動問題が 最近の新しい問題であるかのように 言い立てる人がいて、とても頭にきます。 (ナオミ・オレスケス博士、ハーバード大学科学史教授) 気候変動は人類によって引き起こされたという 私たちの理解には、 非常に古くから十分に理解され、確立された 科学理論があります。 そこで私たちはその歴史をわかりやすく解説し、 地球はいま、どのような状態で、 どのようにこうなって、それはどうやれば 変えられるのか、ということを示します。 科学者たちは150年以上前から 二酸化炭素に温室効果があることを知っていました。 最初に気付いたのはフーリエです。 空気の中に何らかのガスがあり、 透明なので太陽の光は通過しますが 光が地面から跳ね返るときに ガスは熱をため込んでしまいます。 (ハイディ・カレン博士、NPO「クライメイトセントラル」 科学主任) これが「温室効果」の仕組みです。 1850年ごろには、ジョン・ティンダルが 二酸化炭素による熱の吸収を測定する 装置をつくりました。 (ジェームス・ハンセン博士、NASAの元局長) そして、空気中の二酸化炭素の濃度が変化すれば 地球全体の熱のバランスに影響があることがわかったのです。 チンダルも同様の研究をおこない、 二酸化炭素が地球全体の温度の 調整機能をもっていることを証明しました。 1800年代の末には、スウェーデンの化学者アレニウスが、 地中の石炭をすべて二酸化炭素にすると どのような影響がでるか、計算しました。 この事実は二十世紀になるまで ほどんと注目されませんでした。 なぜなら、私たちは 化石燃料を燃やすのに忙しかったのです。 1950年代の終わりになって、ようやく 大気中の二酸化炭素の濃度を測定するようになりました。 その機器がこれです。 ハワイのマウナロア山に設置された 世界で最も重要な測定機器です。 1959年の初頭、大気中の二酸化炭素の濃度は 徐々に上昇していることが明らかになりました。 いわゆる「キーリング曲線」です。 「キーリング曲線」は二十世紀の科学における もっとも重要な成果のひとつです。 二酸化炭素の濃度が継続的に上昇していることを 示しています。 産業革命以来、ゆるぎなく、ずっとです。 キーリングは二酸化炭素の上昇を示しただけではなく、 その原因も突き止めました。 大気中の二酸化炭素の 約4分の1は、 人類が最近になって放出したものだと明らかにしたのです。 ちょうど、1年前。大気中の二酸化炭素の濃度は 400ppmを超えました。 産業革命以前は、 280ppmしかありませんでした。 工業化された人間社会は 二酸化炭素の濃度を40%も押し上げたことになります。 (ジャスティン·ギリス、N.Y.タイムズのジャーナリスト) 放っておけば、2倍にも3倍にもなると、 多くの人が恐れています。 私たちは文字通り地中から空中へと 二酸化炭素を汲み出しているのです。 人類の歴史上、絶対になかったスピードでね。 誰もみたことのない領域へ突入しいているんですよ。 いまの地質時代は、 約1万年前から続いているものですが、 気候が安定している時期にあり、 おかげで人類の文明も繁栄しました。 しかしある種の大きな閾値を超え いま、私たちはギリギリの淵にいます。 (ヴァン·ジョーンズ、CNN「クロスファイア」の司会者) 子どもの頃、テレビでは 天気予報の時間は、退屈なものでした。 いまや、ホラー・ショーみたいになり 異常気象が続いています。 それは未来の話ではなく いま、まさに起こっていることなのです。 すべての気候学者が同じ意見です。 地球全体の大気が変化し、 大気の力学も変わりました。 いま、おこっていることはすべて 気候変動の結果なのです。 かつての状態とは異なります。 台風はフィリピンを直撃し 最大風速は秒速87メートルに達しました。 かつての巨大台風、サンディとカトリーナを 合わせたよりも強烈です。 世界中がフィリピン支援に動き出しましたが、 食料や水や建設機械が いま、ようやく、届き始めたという段階です。 100万人が家を捨てて避難し、 残ったものを拾い上げようとしています。 数十万人の群衆が救援センタに殺到し、 食料等を必死に求めています。 死臭がひどいので、住民の多くは顔にカバーをし もっとも被害がひどかったエリアで 家族や親戚を捜しています。 これは地球上でもっとも凶悪だった嵐のひとつです。 大統領閣下、 異常気象によって我が国が巻き込まれている事態は 狂気としかいいようがありません。 (セブ・ヤノ、フィリピン政府 気候問題交渉担当) 超大型台風が、我が街に上陸しました。 残ったのは……廃墟です。とても信じられない。 この喪失感を表す言葉がありません。 気候変動の現実を受け入れようとしない人びとに 私は言いたい。象牙の塔から降りてこい、とね。 そして太平洋の島国へ行くといい。 超大型台風が当たり前になるような未来は、受け入れがたい。 嵐から逃げて、家族を避難させ、、 死者を数えるのが日常になるなんて、絶対に拒否です。 これは解決できる問題なんです。この狂気は止められます。 (デモ行進まで80日) (デモ行進実行委員会、会議場) こんにちは、みんな! 会議の目的はわかっているかな? (エディ・バウティスタ、NPO「ニューヨーク環境正義同盟」 理事) 気候変動問題を訴える世界最大のデモ行進まで、あと80日だ。 重要なことをひとつ覚えておいてほしい。 気候変動は、地球上のすべての人に影響があるが、 そのインパクトは平等に来るわけではない、ということだ。 それぞれの活動班は、有色人種を優先してもらいたい。 残念ながらこれが現実だ。こうするしかない。 温室効果ガスの削減を、国際的に合意させる必要がある。 (トーマス・ガルダーノ、デモ行進主催者) 同時に雇用も創出できる。 私たちの目的は、世界中で化石燃料の利用を減らすことです。 (リー・ジッシー、草の根コーディネーター) そして化石燃料以外の手段が経済的に有益だと示します。 この巨大なデモ行進を先導するのは、 (アルマンド・チャペリカン、ニューヨーク公共政策研究会、プロジェクトコーディネータ) この部屋にいる、みなさんなのです。 環境問題は私たちの時代の唯一最大の問題です。 (クリントン・ミラー牧師、ブラウンメモリアル・バプテスト教会) どこでどのように生きることができるかです。 我々が持っている最も重要なツールは、私たち自身のピープルパワーです。 すでに325の活動グループがあり、毎日増えています。 このうねりを助け、より大きく、より力強いものにするために、 全力を尽くしましょう。 すべての人びとにこの点を理解させることです。 そうすればみんな集まってくるでしょう。 それが私たちの仕事です。 (ニューヨーク市における核軍縮運動) 1982年、国連は、核軍縮に関する特別な組織を作りました。 そして世界中の政府の代表者を ニューヨークの国連に集めました。 街中に私たちの声を響かせなければなりません。 ニューヨーク市の反核デモ行進は、米国史上最大の 政治的デモンストレーションとして成功しました。 それはいまに至るまで、我が国最大の集会だったのです。 たしか、オフィスの中に1台コンピュータがあり、 他には電話だけでした。 そして、これが当時の「メール」ね。 いまじゃ「郵便」と言わないとわからないわね。 これは、ちょっと不便だったけど、 他には方法がないから、 直接、顔を合わせて話すしかないので、いい面もあったわね。 真の平和と、真の正義を手にするまで、 家でおとなしくなんかしてないわ。 家に帰ったら、次の活動の準備よ。 この時のデモ行進で非常に面白いのは、 その後、600以上の地域グループができ、 それぞれ活動が長く続いた点です。 私にとって、この時のほんとうのパワーは、 これだけのことを作り上げた経験だと思います。 一部の専門家によると、現在進行中の温暖化は 地球規模の温室効果によるものです。 (ナオミ・オレスケス博士、ハーバード大学科学史教授) 科学者はかなり昔から、気候変動がおきるだろうと言っていました。 1988年にNASAのジェームス・ハンセンのチームが 実際に気候変動が起きていることを発表しました。 (ジェームス・ハンセン博士、元NASAゴダード宇宙科学研究所のディレクター) 大気の成分に変化が生じており、 これは人類の活動が原因です。 温室効果の存在は確認され、 気候は、いま、まさに変動しています。 ハンセン博士の証言はニューヨークタイムズ紙の1面に掲載され、 連邦議会で議論され、法律にもなりました。米国エネルギー政策法です。 化石燃料の利用を段階的に減らし、壊滅的な気候変動を避けるためのものです。 この政策を支援するために、IPCCが創設されました IPCCとは、気候に関する政府間パネルです。この年です。 政治的な推進力と、科学的な推進力がありました。 科学的にも強力な証拠もあり、メディアも注目していたのです。 その後、すべてはバラバラになってしまいました。 地球サミットです。12日間、178の国と地域が環境問題を議論します 今日、ここ、リオデジャネイロではじまりました。 先進国と発展途上国の間で論争がおきています。 これまでのところ、すべての合意事項には拘束力がありません。 環境に対して何のアクションを採ることを求めていません。 科学的な警告は強く出ているのですが、 政治的には何ら有効な手がありませんでした。 この状況を打破しようとする政治面での試みは すべて無駄におわりました。 私には、バランスをとる責任があった。 環境問題に適切に対処する一方で アメリカの一般の人びとの雇用の問題もあった。 京都の環境会議ではなんとか合意が形成され、 先進国に対し、温室効果ガスの大幅な削減が要求されました。 (ジャスティン·ギリス、N.Y.タイムズのジャーナリスト) 京都議定書が機能していない最大の理由は、米国が批准しなかったからです。 ブッシュ大統領は、国内に大論争を起こし、 京都議定書を放棄しようと決めました。 京都議定書には先進国の温室効果ガスの排出量に上限が設定されていたからです。 会議の2週間にわたって、米国代表団は、 提案や草案をことごとく拒否したのです。 温室効果ガスの排出の削減について議論することすら拒みました。 議論の場は、コペンハーゲンの環境会議に移りました。 いま、発展途上国は意見をまとめています。 インド、中国を含む135の国と地域が、アフリカ諸国に率いられ、 会議を5時間、ボイコットしたのです。 富める国の二酸化炭素排出抑制の提案が不十分なことへの抗議です。 ハリウッドがシナリオを書いていれば、 ハッピーエンドだったんだろうけどね。 すべての国ができるだけのことをやろうと約束したはずさ。 でも、そんなことは全然起こらなかった。 すべては「なんたる大失敗」ってヤツさ。 コペンハーゲンの最後の10日間、 人びとのフラストレーションが路上で爆発しました。 各国の交渉団が合意できないでいる建物の外では、 2500もの人びとが抗議の声を上げ、会場にインパクトを与えようとしています。 効果なしですよ。 (ビル・マッキベン、NPO「350.org」の共同創立者) 石油産業がとても強くて、この問題から目を背けさせたのです。 (ナオミ・クライン、「ショック・ドクトリン~惨事便乗型資本主義の正体を暴く」の著者) コペンハーゲンで起きたことは、多くの人びとが 「自分たちを救ってくれるリーダーはいないのだ」と自覚したことです。 我々の国リーダーを恐れさせるほど、 私たちは強くなる必要があります。 そうすれば、9月のニューヨークの会議は、正しい方向に進むでしょう。 これが成功すれば、 パリの環境会議は、コペンハーゲンよりも良い結果を生むでしょう。 これらの会議はすべて繋がっているのです。 バラバラではありません。 すべてが絡み合い、パリの戦いに向かっています。 パリの成果は、ニューヨークの9月の活動に大きく左右されます。 これは私たちの生命をかけた戦いなのです。 (IPCC記者会見、ドイツ、ベルリン) 記者会見へようこそ。 IPCCの第3作業部会の成果を報告します。 このグループは気候の変動を緩やかにする方法を検討しています。 (ラジェンドラ・パチャウリ博士、 IPCCのチェアマン) もし、地球の気温の上昇を 2℃以下に留めようとするならば、 かつてないレベルで 国際的な協調が必要です。 このアプローチは 科学者のコミュニティのやり方で、 まず証拠を明らかにし これを政策担当者に示していきます。 私たちは、疑いようのない事実として 気候変動が実際におこっていることを証明しました。 地球の気温は上昇しています。 (ハイディ・カレン博士、「ウェザー・オブ・ザ・フューチャー」の著者) その原因は、 主に化石燃料の燃焼などの人類の活動にあり、 これ以上、気温が上昇することは深刻な脅威となります。 政策立案者側は、「人類による危険な干渉」とは何かを 定義付けしました。 2009年には、世界中の国が 気温の上昇を、産業革命以前の時代と比較して、最大でも2℃以下に収めようという 合意に達しました。 これはつまり、世界中で 温室効果ガスの排出を 数十年の内に完全にゼロにすることを意味しています。 (ジョン·スターマン博士、MITシステムダイナミクスグループのディレクタ) 多くの人が「気温の上昇が2℃以下なら安全」 と思っていますが、 完全な勘違いです。「このままよりマシ」という 概算の数字にすぎません。 2℃に収めても、大きな影響は続くでしょう。 気温上昇が1℃程度でも、北極と南極の氷が溶け出します。 2℃となると想像もつきません。 どうなるか、見たくもありませんが、 いずれ世界は経験するでしょうね。 できることすべてをこの瞬間に成し遂げたとしても 我々が期待している以上の良い結果にはならないでしょう。 IPCCのもうひとつの成果は、2℃という目標を 具体的な化石燃料の利用可能量と結びつけたことです。 そして超えてはならない一線として、二酸化炭素排出量1兆トンを 予備量として定めたわけです。 問題は、すでにその予備量を半分以上、使い果たしてしまったことです。 すでに6000億トンに近づいています。 このままのペースで行けば 30年以内に、二酸化炭素の予備量を 使い果たしてしまうでしょう。 政府関係者は気温上昇を2℃以下に抑えようと 同意していますが、 実際に提案されている排出目標を よく吟味して計算すると 結果的に気温は6℃も上昇すると予想されます。 ほとんどの科学者がいうには、 そんなことになれば、狂気の沙汰で、 私たちの現在の文明は維持できないでしょう。 これは現実を直視することを拒否するようなものです。 政府がやりたいと言っていることと、実際にやろうとしていることの間には 非常に大きなギャップがあります。 これは「排出量ギャップ」と呼ばれています。 単純な算数の問題なんですけどね。 私たちは地中の化石燃料の80%を 使わずに残す必要があります。 化石燃料業界は、すべて燃やしたいと思っているでしょうが、 それをやってしまえば6℃上昇は確実です。 不作為の日々ですよ。いつものことです。 日々、破滅に近づいているわけです。 (デモ行進まで58日) (デモ行進実行委員会 ~ ニューヨーク会合) 本番まで、あと2ヶ月です。 この部屋の中の誰もが、 膨大な作業を成し遂げ、いまも成果を出しています。 言葉を尽くし、人びとを動かすのです。 (レスリー・ケイガン、NPO「ピース&ジャスティス」の主催者) いまとなっては、1日1日がとても大切です。 機会を逃せば、もう2度とやってこないのですよ。 たった1日だけのデモ行進ではないのです、 これは気候変動に対する長期間の運動なのです。ここに労力を集中しなければなりません。 (アナンダリー・タン、NPO「気候正義同盟」) 私たちの考えを取り込むことは簡単ではないとは思います。 しかし、私たちは特権や不平等のある社会に生きています。 環境危機について語る際には、まず、この不平等について語らなければなりません。 そうすることで、ムーブメントを強いものにすることができるのです。 ちょっと考えればわかります。 地下に化石燃料が眠る魔法の地層があります。 大昔から複雑なプロセスを経て、 太陽エネルギーを何千年も溜め込んだものです。 (クリス・ヘイズ、MSNBC放送(ニュース専門放送局)の番組ホスト) 人類は偶然それに出くわしました。 たまたま歩いていて、地面をちょっと掘ってみたら 汲み出すだけで、何百万ドルものおカネに化けるものがあったわけです。 現在の私たちの生活のすべてが、これに依存しています。 ただ単に地面に埋まっていただけのものですよ。 その「もの」が、私たちにやさしく話しかけます。 「みんな、ずっと畑で働く必要はないのですよ」 「都会に住んで、クルマを買って、 iPhoneも買って、楽な生活をしてください」と。 魔法みたいですね。でも、やはり落とし穴がありました。 実は、そのツケは、ちゃんと私たちが負っていたのです。 それは大気にたまってしまう二酸化炭素でした。 これはいまも進行中です。 このような状況を経済学の言葉で「負の環境外部性」と言います。 これは「あなたが払ってるおカネは、 化石燃料の燃焼で生じるコストの一部でしかない」ということです。 化石燃料産業の商売とは、結局、このコストを 公共の大気中に放り投げることで成り立っているのです。 (ケヤ・チャタジー、WWF 再生可能エネルギー部、部長) さまざまなインパクトを考えてみましょう。 たとえば海面の上昇、海水の酸性化です。 生態系が破壊されると、人類は食料や水を依存していますので、 非常に高くつく結果になります。 山火事のようなもので、経済的な損失は大きいでしょう。 そのコストは私たちの社会全体にぶちまけられていて、 汚染者は1円も払っていないのです。 巨大な汚染者たちは、 何メガトンもの二酸化炭素をタダで空気中に放り出しています。 タダで環境を汚すことはできません。 普通はゴミを散らかせば罰金ですよ。 この事実が石炭や石油などの化石燃料が 他のエネルギーに対して圧倒的に有利な理由です。 たとえば太陽光発電や風力発電が 本来の有益性を過小評価されています。 (シェルドン上院議員、「気候変動に関するタスクフォース」共同議長) 二酸化炭素放出による環境問題や その背後にある経済的な問題は、 すべて政治的な問題です。 極小数の権力者たちが、特定の利害関係にあり、 政治的な合意の確立に 非常に乱暴な影響を与えてきました。 我々は化石燃料産業のロビィイングに立ち向かいます。 彼らは政権のあらゆる層にアクセスでき さまざま手法でカネをバラまき 恐喝まがいの意見広告などを使って 反対意見を押し込めようとしています。 経済的な依存が大きいからですね。 いま、巨大な排出者は、独占的地位を占めています。 彼らは自分たち自身に莫大な補助金を何度も与えています。 こんな例もあります。 米国国防省は彼らにいくら使っているでしょうか? 民間の石油会社が、中東から商品を運ぶのを 米国国防省は手伝っているのです。 それは米国国防省の予算のほぼ半分です。 その予算は、シェブロン、シェル、エクソン等が 石油を運ぶのに役だっています。 そのコストを石油会社が負担するようになったら、 天然ガスの価格はいくらになるでしょうね? さらに、彼らはあらゆる税制上の優遇措置を得ています。 抜け穴も含めてね。 彼らは「成長か、死か」というビジネスの基本概念で動きます。 気候変動の対策のために事業を「縮小」する気はありません。 それどころかどんどんスケールアップします。 更に彼らはさまざまな賭けをしています。 天然ガスの強引な採掘や、タール入りのサンドオイルの採掘、 石炭の大量輸出のために山を丸ごと露天掘りするなど、 極端な作業を進めています。 実に厚かましい。 「ならずもの産業」ですよ。 彼らのビジネスが一言一句計画通りに行われたなら、 地球はボロボロになってしまうでしょう。 こういう許されないビジネスがあることが明らかになったのですから、 我々自身がここから抜け出す方法を考えねばなりません。 これが世界中で起こり始めていることなのです。 (セントラルパークの芝生広場) 私はステージの上にいました。 高さは70フィート(約20メートル)といったところでしょう。 海に向かって、見えなくなるまで人びとの列が伸びていました。 (デニス・ヘイズ、アースデイネットワーク会長) 推定で100万人以上です。 1970年4月22日のことです。 草の根活動による動員は アースディの最初の日に2000万人に達し 職場や学校を離れて 街へ繰り出しました。 ニクソン大統領がその様子をテレビで見たとき、 群衆は都市から都市へと国中に広がり 大統領は隣にいた法律顧問に、こうつぶやいたのです。 「あの中には私の支持者(共和党支持者)も多いに違いない」 そして共和党支持者は、大統領に正しい行動を求めていると、 彼は感じたわけです。 米国史上もっとも反環境保護派だったニクソンですら、 大気汚染防止法にサインせねばならないと感じました。 (デニス・ヘイズ、アースデイネットワーク会長、当時) 私たちのこれまでの行動は、 少しばかりの希望につながり、 米国の上院と下院の一部で、 ある程度責任のある行動をとろうという機運が生じました。 3年間で、次々と法律が成立しました。 大気浄化法、水質浄化法、安全飲料水法、 絶滅危惧種保護法、海洋哺乳類保護法、 国家環境政策法、環境教育法、そして 包括的環境対処・補償・責任法などです。 ニューディール政策という例外を除けば アメリカの経済システムが経験した もっとも根本的な再構築だったといえるでしょう。 (デモ行進まで50日) 世界最大の「環境デモ行進」まであと50日だ。 (デモ行進実行委員会、ニューヨーク路上での記者会見) 準備はいいか! (群衆)おおっ! 地球環境の問題だけじゃない、 これはコミュニティの問題だ。 (エディ・バウティスタ、NPO「ニューヨーク環境正義同盟」理事) そして俺たちの健康と、仕事、そして正義の問題だ。 (ラトーニャ・クリスプ、全米運輸労働者組合) 街を動かすのは私たち労働者です。 (群衆)そのとおりだ! 未来は労働者が変えていくのよ! 私たちはコミュニティの一員です。他の何ものでもありません。 (群衆)そうだ! 息をするのも苦しいところに住んでいる人がいます。 (エリザベス・ヤンピエール、NPO「Uprose」の事務局長) 喘息や肺疾患や肺がんによる苦しみは、 環境による人種差別の結果なのです。 気候変動は、あらゆる種類の 社会的不公平を悪化させてきました。 (フレッチャー・ハーパー牧師、NPO「Greenfaith」の事務局長) このような不平等との戦いには長い歴史があります。 強力な環境保護条約が実現するまで、 デモ行進と祈りをやめることはできません。 ムーブメントを起こしましょう、兄弟たちよ! 一緒にやりましょう! 21日のデモ行進に参加して、 国連に我々の声を届けよう。 (群衆の歌:団結した民衆は決して敗れることはない!) (ビル・マッキベン、「Eaarth」の著者) 気候変動を環境問題と捉えるようになったのは 単なる偶然でした。 不平等な社会で、他にもどんなことが起きているか、容易に想像できるでしょう。 気候変動に悪影響の少ない生活をしている人びとは、 化石燃料の恩恵はあまり受けていないのに、 温室効果の悪影響をまっさきに受けてしまう人びとでもあります。 世界でもっとも貧しい人たちは、 すでにとてつもない苦しみの中にあり、 そして時間がダラダラと経つに連れ その苦しみは更に増すでしょう。 気候変動は社会正義の問題です。 (ヴァン・ジョーンズ、NPO「Rebuild The Dream」の共同創設者) 異常気象の災害で 誰が最初に最悪の被害を受けるのでしょう? 低所得の人びとです。多くは有色人種でしょう。 危険な地域から逃げ出せない人たちです。 一度災害にあえば、簡単には立ち直ることができません。 なぜなら、おカネが無く、社会的地位も低い、 政治との結びつきがないからです。 私たちの地域は、不平等な悪影響を受けています。 (ジャネット・トゥーマ、NPO「ニューヨーク環境正義同盟」主催者) 被害者は常に弱者です。先住民族、有色人種、低所得者。 いつでも彼らが負債を背負わされてきました。 他人の政治的事情で生じた危機の犠牲者です。 何百年にもわたり、システマティックな略奪を受けている そんな国が多数あるのです。 これは多くの場合、生態系への負債、気候への負債なのです。 (ナオミ・クライン、「気候破壊と資本主義」の著者) 使い捨て出来る場所や地域があるという発想自体が 人種差別的な考え方だと思います。 こういう「生贄ゾーン」の考え方は、特定の地域や住人をゴミのように扱います。 アメリカの郊外の美しい家に住めば、なかなか気づきません。 私たちは自然から隔離されていますが、 まさに自然の存在にすら気づかないようになっています。 豊かであればあるほど、問題に気がつかないのです。 でも気づいていないだけで、悪影響は受けています。 科学者たちは声を大にして 地球の平均気温の上昇が 2℃を超えないように求めています。 なぜ、科学者はそんなに心配しているのでしょう? (リッケン・パテル、NPO「Avaaz」の創設者) 2℃以上、気温が上昇したら、 我々の生態系が一種の悪循環に陥ってしまうのです。 気候変動の「限界点」といわれるもので、 ここを過ぎたら、あとのことは制御も予測もできません。 一瞬のうちに破局を迎えるでしょう。 仕掛けワナに引っかかったようなもので、 突然、身の回りのすべての状況が変わってしまうのです。 なれない状況に、どのように向き合えばよいのか、 想像すらつかない、そんな状態です。 これは私たちが扱える 線形的な問題ではありません。 急激に変化する幾何級数的な問題なのです。 人類は、いま、大きな3つの限界点に 直面しています。 ひとつは北極の氷冠です。氷は太陽の光を反射するので、 大気の上昇を多少防止してくれます。 しかし氷が解けると、反射が減り、 大気の温度は上昇します。 これがさらに氷を溶かし、 悪循環によって、気候変動が激しくなります。 2つめは北極のメタンガスです。 普段は何十万トンもツンドラ地帯で凍っています。 温室効果は二酸化炭素の50倍です。 気温が上昇すると、凍ったメタンガスが溶けて気化します。 そうすると温室効果で高まり、 さらに気温が上がります。 そして、さらにメタンガスが溶け出し、 またまた気温が上がり、 どんどん悪くなり、 制御できない悪循環に陥るわけです。 3つ目の限界点は海水の酸性化の問題です。 空気中の二酸化炭素の濃度が上がると、 その一部が海水に溶け込み、海水を酸性にします。 酸性の高い水の中では、プランクトンのような生物の大半が 生命を維持できないでしょう。 プランクトンは食物連鎖を最底辺で支えています。 これが失われれば、海の生態系全体が失われます。 3つの限界点と最悪の悪循環を考えると 夜も眠れないですね。 戻れなくなる前に、その限界点を 超えるんじゃないかってね。 いますぐ手をうっても、気候のような巨大システムには 大きなタイムラグがあります。 過去の行為が原因で起きるはずのことは、 まだ起きていないのです。 私たちはカミソリのように薄い世界に住んでいます。 足下から数キロ下は、 あまりに熱くて、生命には適していません。 数キロ上は、空気が薄くて、呼吸ができません。 干ばつや大嵐が、いまより多少増えるというレベルのことではありません。 生物圏全体の脆弱なバランスを壊滅的に壊してしまうということなのです。 それは我々が愛するモノすべてを破壊するでしょう。 (デモ行進まで37日) いま、集中するべきことは、 とにかく、参加人数を増やすことです。 若い人から、なにか情報はありますか? アルマンドはどう? (アルマンド・チャペリカン、ニューヨーク公共政策研究会、プロジェクトコーディネータ) 話したいことがいくつかあります。 まずは、若い人たちの参加ですが、 「気候正義青年リーダーサミット」を開催し、 今回のデモ行進の参加方法について、 ミーティングを必死にすすめています。 いままで接点のなかった多数の人と 情報を共有し、 新たに情報を共有した人が、さらに別の人に声をかけ、 よい方向に盛り上がっています。 (気候正義青年リーダーサミット ~ ニューヨーク市) 普段、私たちは「楽しむ」ことに関心があります。 それはそれで重要ですが、 そのような関心は中途半端になりがちだし、 実は自分のためにもならないと思います。 何が重要か、優先度を考えなおす必要があります。 環境問題は、 南極の氷が解けるというだけではありません。 私たちが、日々、問題に直面するのです。 スモッグの中で呼吸すれば、 子どもたちは喘息になってしまうでしょう。 これは環境における不正義です。 私たちの力で、押し返さねばなりません。 地球環境問題を本気で一変させる人になりましょう。 私たちのような若い人間ほど、 悪い影響を受けずにすむようになるでしょう。 (ホアキン・ブリトー、NPO「Uprose」主催者) 気候変動問題の正義のために、9月21日はデモ行進を行います。 一緒に来る人は? 大きな声で返事を! (歓声) そう、そのとおりです。 私たちは化石燃料を 地面から抜き出して、焼却炉に放り込んでいます。 そして二酸化炭素を空に放り投げているってわけ。 これが地球を温暖化させています。 良くないことがたくさん起こっています。 熱波、異常気象、洪水、その他、いろいろ。 そう、そのとおりです。もうたくさんです。 しかし、これは私たちが気にすべき問題なのでしょうか? 人生には他にも差し迫った問題がたくさんあります。 ある人は最低賃金を引き上げるために戦っています。 あるいは医療保障の問題に取り組んでいます。 こういう問題はわかりやすい。 空気中の見えないガス分子の話なんて 抽象的すぎるかもしれません。 ひとりの人間の頭にはいる「心配」の量は限られています。 住宅ローン、賃金、育児、いろいろなことをケアしなければ こうやって考えていくと 人は即物的になっていきます。 だから私たちは、環境問題は とてつもない緊急事態だと言いたいのです。 あなたの頭に拳銃を突きつけられた状態だと。 暴走するゾウの群れの前に立つような状態ですよと。 環境変動はいままでの問題とは 完全に異なる種類のリスクです。 長期間にわたって非常に大きなスケールで作用します。 しかも脅威として認識することがきわめて難しい。 もうひとつの懸念事項は、 「シングルアクション・バイアス」と呼んでいるものです。 人間には脅威に対して、 単一の方法で立ち向かおうとする傾向があります。 どんなモンスターも一発で倒す「銀の弾丸」を求めてしまいます。 しかし、環境問題に直面したとき、我々は圧倒されてしまいます。 なぜならたくさんのことを実行せねばならないからです。 この25年間、私たちは気候変動について語ってきました。 科学的レポートの質は高くなる一方です。 なぜ、それが人びとを動かさないのでしょう? (ジョージ・マーシャル ~ 「環境を考えない脳の仕組み」の著者) 大多数の人は行動しようとはしません。なぜでしょう? 認知科学者は、私たちの脳の中の 情報処理プロセスをマッピングし 2つの排他的なプロセスが 存在することを発見しました。 ひとつは、合理的で分析的なプロセスで、 情報や、事実、データなどを扱います。 もうひとつは感情的で直感的なプロセスで、 感情や本能、雰囲気などを扱います。 実は我々を行動に駆り立てるのは感情の側なのです。 気候変動問題において難しいのは、 科学的な事実を 人びとの感情を揺さぶるように 橋渡しをする必要がある点です。 人びとは、周囲の人が動かないかぎり、 立ち上がって行動することには消極的です。 したがって多くの人が実際に活動しているところを見せることが 絶対に必要なのです。 それがよいお手本になるはずです。 気候変動問題は、奇妙で、独特な特徴があります。 なぜなら私たち自身が傍観者であるばかりでなく、 地球を温暖化させている共犯者でもあるからです。 この点を認識すれば、我々は道徳的観点から、 行動を起こさざるをえなくなるでしょう。 そのような行動を引き起こす 「限界点」があるはずです。 (デモ行進まで25日) (気候ツアー、マサチューセッツ州 ボストン) 家にこもって、Facebookで「いいね」を押しているだけでは 変革は起きません。 (ヴァネッサ・ルール、NPO「戦う母親の会」 共同ディレクター) あなたや私のような一般の人びとが 参加しなければ、変化は起きないのです。 この問題は世界の指導者にまかせることはできません。 これまでのところ、大した成果はでていないようですから。 私は労働組合の人間だが、 (ジョー・ウエレイン、「持続的社会のための労働者ネットワーク」の創設者) 環境保護派でもある。この2つは矛盾しない。 労働組合運動を、持続可能な未来へとつなぎ、 気候変動問題について正しい態度をとることは、 我々の本来の目的と一致している。 取り組むなら早いほうがいい、手遅れになる前に。 エネルギー源を切り替えるには長い時間がかかります。 木から石炭へ、石炭から石油へ、 だいたい50年から60年かかっています。 石油をやめるのに、いまから50年も待つことはできません。 化石燃料を、「いま」辞めてしまいたいのは、 私たちの生命を守るために どうしても必要なことだからです。 私たちは、ポスト炭素社会の具体像を 提案しなければなりません。 できるだけ魅力的な社会。 雇用の面でも、機会均等の面でも、 健康面でも希望と魅力的にあふれる社会。 とてもエキサイティングでしょうね。 たとえば、風力発電のタービンを作る仕事が たくさんあるでしょう。 家を省エネ型に作り変える仕事もあるでしょう。 太陽光発電パネルの設置も、地域の雇用に貢献します、 なにしろその家に行かなければなりませんからね、 地域の外の人に頼むわけにはいかないわけです。 100%再生可能な経済の実現は、難しいことではありません。 それは経済的にも技術的にも可能なのです。 はるか彼方にあって、長期的に研究しつづけなければ 手に入らない、そういうものではないのです。 そうなんです。いますぐにでも実現できます。 政治的な意思さえ、あれば、ね。 ドイツで起こった変革をみると 再生可能エネルギー部門は 市場にゆだねられているのではなく、 新しいインセンティブが創造されていることがわかります。 そこではイノベーションと創造性の爆発が起きました。 ドイツはいま、世界No.1の太陽光発電国です。 日照時間はアラスカとほぼ同じなのにです。 こんなことは本当にできるのでしょうか? 現在の電力は少数の企業によって 高度に集中制御されています。 その少数の企業が実際には電力以外に、 政治力も制御していることは偶然ではありません。 私たちは地球規模の実験に挑戦します。 人類が過去に経験したことがない困難な挑戦です。 電力と政治、2つの力のコントロールを引き剥がすのです。 文字通り、2つの民主化を成し遂げるということです。 本当の問題は、 残り少ない劣悪な化石燃料を燃やしつづけるべきなのか?ということです。 何らかの制限を設ける必要があるでしょう。 子どもたちに「お菓子は全部食べちゃだめよ」というようにね。 制限を設ける賢明なやりかたは何でしょう? トランス・カナダ社が キーストーンXLという超大型パイプラインを作りたがっています。 130億ドルものシステムで、原油を運ぶものです。 アルバータ州のタールサンドを、テキサスに運んで精製します。 この巨大パイプラインは 大きな論争のまとになりました。 タールサンドは不純物が多く、炭素の含有量が多いのです。 全米から、約2000人の環境活動家が集まり ワシントンDCで2週間の抗議行動を行いました。 この問題は賛成側、反対側、両方にとって 一種のシンボルとなっています。 賛成側は化石燃料の一層の開発を求め、 キーストーンは重要な戦略だと考えているようです。 反対勢力は、気候問題の活動家で、 絶対に負けられない戦いだと考えているようです。 私はネブラスカ州の市民で、この土地の所有者です。 私は地球環境と健康問題に関する諮問委員会のメンバです。 私は福音派のキリスト教徒です。 私は米国輸送労働組合のメンバであることに誇りを持っています。 キーストーン計画の面白いところは 計画を無理矢理にでも実現させようとしたのですが、 かえってそれが逆効果だったことです。 パイプラインが通過する予定だった地域の選挙区は、 次々と反対の意志を表明しています。 今日が行動の日です。メッセージを発信します。 各国の交渉団のメンバに、そして、世界中に届けます。 未来を取り戻すぞ! 化石燃料企業の野望が、 とてつもなく大きな逆効果を生みました。 巨大な反対運動が組織されてしまったのです。 逮捕されるリスクが平気なら、 こちらに並んでいてください。 この問題の道徳的な緊急性を訴えるために 平和的不服従の姿勢を示すのもひとつの方法です。 我々の時代の危機なのですから。 少し前に石油業界の業界誌で、ある記事を読みました。 こう書かれていましたよ、 「もはや平和的にパイプラインを作る方法は無い」とね。 それが正しいことを願っています。 科学者として、私たちは 一種の魅惑と畏敬の念をもち、 このシステム全体を「ホーム」と呼んでいます。 私たちは、この地球の上に住んでいます。 生命を維持する完璧な仕組みです。 人類は幸運ですよ。そう思うと、 この事実を知ってしまったら、どうしますか? 耐え難い、信じがたい憂鬱な事実です。 化石燃料を燃やすことは、 非常にリスクの大きい決断であり、 しかもすぐに認識することが難しい問題でもあります。 気候問題に関する科学的な記事に 半世紀後の世界の予想がありました。 私の子どもが40歳になるころ、何がおきるか。 その記事を読んだとき、 できることはすべて行うことが、私の責任だと思いました。 子どもたちを守るために、です。 アリス・ウォーカーは「抵抗は喜びの秘訣」だと言いました。 喜びかどうかは知りませんが、 秘訣には違いありません。破滅を避ける秘訣です。 私たちが直面している現実は非常に深刻ですが、 落胆しないようにするにはどうすればよいでしょう。 ひとつの方法は、「行動」です。 物事はさまざまな理由で変化します。 いろいろな力学が作用しますが、その本質は 路上をうめつくす一般の人たちなのです。 全員、立ち上がって、一緒に叫びましょう。 「もうたくさんだ!」と 私たちは、過去について多くを教えてもらえません。 特に、社会運動が勝利を収めた歴史についてはね。 過去には、一般大衆が 歴史の大車輪を新しい方向へ導いた時期があるのです。 実際に市民運動のデモ運動に参加したのは アメリカ市民の1%にすぎません。 しかし、彼らは我々の社会を変え、 権力に立ち向かいました。 このデモ行進も、歴史上、最大ではないとしても、 アメリカの自由と尊厳を示す、 非常に大きなうねりになることを望みます。 マーティン・ルーサー・キングは、常にこう言っていました。 これまでの勝利は、安価なものばかりだ。 選挙権などの法的権利の付与は、 雇用や、社会インフラや学校を作ることに比べれば ほとんどコストがかからない。 我々は勝利し、約束の地に到達します。 過去にも大きな勝利はありましたが、 これだけの経済規模で、 気候変動問題に取り組んだ例はありません。 この歴史的瞬間をつくり上げる義務があります。 世界中を巻き込んで、いま、行動を起こすのだと訴えていきます。 このムーブメントが、その名に値するものにするには 多種多様な人びとが連帯することが 最も重要です。 さまざまな立場と背景をもつ人びとが 連帯するからこそ、 強い説得力を持ち、世界を動かすのです。 限界点は近づきつつあります。 ネット上のムーブメントが現実のものになっています。 限界点を突破できれば この問題の解決に向けて大きく前進できるでしょう。 誰も私たちを止めることはできません。 いますぐ行動しましょう。 これは私が選挙で誰に投票するかという問題です。 これは私がどこにカネをかけるかという問題です。 これは私が拡声器に向かって声を限りに叫ぶ問題でもあります。 そして政治を動かすのです。 (デモ行進まで14日) このデモ行進は、チャンスです。 連帯する人びとの巨大なパワーを誇示しましょう。 世界各国の元首が集まっています。 彼らが「アクションが必要だ」というためには、私たちの支持が必要なのです。 正しい場所で、正しいタイミングで、 正しいことをする、ということです。 世界中が見ていますよ! 世論全体を変えるには 大規模な群衆を見せるのが一番の方法です。 デモ行進は、それ自体が目的ではありません。 これは手段にすぎません。心の底から、そう思います。 9月のデモ行進は、ムーブメントをより深めるでしょう。 21日のニューヨークですよね、行きますよ! 直接、集まる以外に手段はありません。 デジタル世代だろうがなんだろうが、リアルに手を携え合うのです。 一人ひとりが、自分でたち、鼓動を感じ、声を上げ、 政治への要求を突きつけます。 求めるものに向かって戦わなければ 得るものは限られています。 9月21日は、なんにせよ、始まりにすぎません。 世界中にチームがあり、 それぞれにデモ行進を計画しています。 リオ、デリー、ベルリン、パリ、そしてロンドン。 世界中の人びとが一同に会します。 気候変動に対向する歴史上最大の集会です。 準備はいいか! 準備はいい? いくぞ! (これを観ているあなたに、お願いがあります) (ムーブメントに参加してください) http://peoplesclimate.org/ (応援のメッセージを送ってください) (そして、この映画をシェアしてください) http://watchdisruption.com/ こういうことが起こった後では、 もう後戻りすることはできません。 善と悪の境界線は、 一人ひとりの心の中に横たわっています。 真の勝利とは、他人の悪に打ち勝つことではありません。 誰の心の中にもある、大きな問題を無視しようとする心の弱さ、 それを乗り越えたところに真の勝利があるのです。