0:00:08.257,0:00:10.267 通りを歩いている人と人同士が 0:00:10.471,0:00:11.732 ぶつかったとします 0:00:12.032,0:00:14.452 普通 大して気にせず[br]そのまま歩き続けるものです 0:00:14.494,0:00:16.549 これが 時に[br]分子にも起こるのです 0:00:16.635,0:00:18.969 ぶつかって跳ね返って[br]それでおしまいです 0:00:19.396,0:00:21.458 でも もし人同士がぶつかって 0:00:21.561,0:00:22.945 その衝突の最中に 0:00:23.097,0:00:24.744 一人の腕が切断されて 0:00:24.875,0:00:27.498 もう一人の人の顔に[br]くっついたとしたら? 0:00:27.999,0:00:29.418 かなり奇妙な話ですよね 0:00:29.775,0:00:31.606 でも 分子同士に起こる— 0:00:31.606,0:00:33.868 様々な反応の中には[br]今みたいなのもあるのです 0:00:34.875,0:00:36.946 2つの分子が結合して1つになったり 0:00:37.100,0:00:39.263 1つの分子が分裂して2つになったり 0:00:39.423,0:00:41.101 分子の一部が入れ替わったり 0:00:41.742,0:00:43.930 こういった変化は「化学反応」といって 0:00:43.942,0:00:45.964 私たちの身の回りで起きていることです 0:00:46.158,0:00:48.210 例えば 花火が爆発したり 0:00:48.225,0:00:49.440 鉄が錆びたり 0:00:49.440,0:00:50.381 牛乳が腐ったり 0:00:50.381,0:00:51.534 人が産まれ 0:00:51.534,0:00:52.436 歳をとって 0:00:52.436,0:00:53.156 死んで 0:00:53.156,0:00:54.329 土に還ったりなどです 0:00:54.954,0:00:57.622 でも 化学反応は[br]デタラメに起こるものではなく 0:00:57.784,0:00:59.537 すべて法則に従っているのです 0:00:59.931,0:01:02.070 まず 分子がぶつかり合う際 0:01:02.110,0:01:03.591 特定の方向を向いていること 0:01:03.849,0:01:05.981 次に 十分な勢いをつけてぶつかること 0:01:06.013,0:01:07.946 つまり十分なエネルギーが必要なのです 0:01:08.377,0:01:09.386 さて 化学反応は 0:01:09.396,0:01:12.028 単に一方向にしか起こらないものだと[br]思っていませんか 0:01:12.676,0:01:13.864 そういう場合もあります 0:01:13.864,0:01:15.995 例えば 燃えたり 爆発したら 0:01:15.995,0:01:17.345 元には戻りません 0:01:18.254,0:01:21.383 でも たいていの化学反応は[br]双方向で起きるのです 0:01:21.383,0:01:23.063 つまり「順方向」と「逆方向」です 0:01:23.648,0:01:25.830 顔に腕がくっついた男の子が 0:01:25.830,0:01:27.511 片腕のない女の子にぶつかって 0:01:27.511,0:01:30.371 腕が元の場所に戻るというのも[br]不可能ではないのです 0:01:30.631,0:01:32.264 では 少しズームアウトしましょう 0:01:32.264,0:01:34.676 例えば 道を歩いている人が千人いて 0:01:34.676,0:01:37.770 全員 手足が正常に[br]くっついている状態だとします 0:01:37.770,0:01:40.035 始めは 衝突が起きるたび 0:01:40.035,0:01:43.671 Aさんの腕がBさんの顔に[br]転移する可能性があります 0:01:44.211,0:01:45.101 だから 最初は 0:01:45.101,0:01:47.629 腕が顔にくっついてしまう人や[br]腕をなくしてしまう人が 0:01:47.629,0:01:49.063 どんどん増えます 0:01:49.363,0:01:51.861 しかし 顔に腕のついた人や[br]腕なしの人の 0:01:51.861,0:01:53.811 数が増えていくにつれ 0:01:53.811,0:01:56.815 こういった人同士が[br]衝突する可能性が増えます 0:01:56.815,0:01:58.756 そんな人同士がぶつかった場合 0:01:58.756,0:01:59.835 なんと 0:01:59.835,0:02:02.644 普通の肢体を持つ人々が[br]再生されるのです 0:02:02.984,0:02:05.811 さて 「順方向」で手足が転移する[br]1秒ごとの数は 0:02:05.811,0:02:08.030 最初は多く[br]だんだん減ります 0:02:08.030,0:02:10.459 そして「逆方向」で手足が転移する[br]1秒ごとの数は 0:02:10.459,0:02:12.708 最初はゼロですが[br]だんだん増えます 0:02:12.878,0:02:14.078 最終的には合流して 0:02:14.238,0:02:15.437 一致します 0:02:15.437,0:02:16.383 こうなったとき 0:02:16.383,0:02:19.707 それぞれの状態の人たちの数の[br]変動が止まります 0:02:19.707,0:02:21.838 引き続きぶつかり合い 手足の転移が 0:02:21.838,0:02:23.221 続いていてもです 0:02:23.953,0:02:26.854 ここで それぞれの状態にある[br]人々の数の比は何でしょうか 0:02:26.854,0:02:28.180 1対1だと思いますよね 0:02:28.180,0:02:29.844 間違いです いや 合っているかも 0:02:29.844,0:02:30.978 場合によります 0:02:30.978,0:02:32.288 50対50かもしれないし 0:02:32.288,0:02:33.502 60対40もありえますし 0:02:33.502,0:02:34.467 15対85だったり 0:02:34.467,0:02:35.510 何でもありです 0:02:35.510,0:02:38.672 私たち科学者は[br]実際に自分の手を汚して— 0:02:38.839,0:02:41.276 とは言え ラボの中なので[br]そんなに汚れませんが— 0:02:41.477,0:02:43.476 実際の分子の割合を割り出さなければ 0:02:43.476,0:02:44.971 いけないわけです 0:02:44.971,0:02:46.589 手足の転移という出来事それぞれは 0:02:46.589,0:02:49.840 当人たちにとっては[br]おおごとですが 0:02:49.840,0:02:50.973 ズームアウトして見れば 0:02:50.973,0:02:53.003 個体数は変わっていませんよね 0:02:53.493,0:02:55.713 これは平衡状態と呼ばれます 0:02:55.713,0:02:58.124 化学反応に限らず 0:02:58.998,0:03:00.288 「遺伝子プール」や 0:03:00.288,0:03:02.487 高速道路の車の流れでも[br]同じパターンが起こります 0:03:02.582,0:03:04.826 9千キロ上空から見れば[br]静止しているようでも 0:03:05.093,0:03:06.665 地上では とんでもないことが 0:03:06.665,0:03:08.125 たくさん起こっていて 0:03:08.125,0:03:10.300 ズームインして見ないと[br]分からないのです