WEBVTT 00:00:00.880 --> 00:00:02.735 「我々はがんに対して宣戦布告し 00:00:02.760 --> 00:00:05.360 2015年までに勝利を収めます」 NOTE Paragraph 00:00:06.440 --> 00:00:10.176 これは アメリカ議会と 国立がん研究所が 00:00:10.200 --> 00:00:12.760 ほんの少し前 2003年に 宣言したメッセージです 00:00:13.560 --> 00:00:16.656 皆さんはどうお思いになるか分かりませんが 私はこれには懐疑的です 00:00:16.680 --> 00:00:18.736 我々はいまだ 勝利からほど遠い所にいます 00:00:18.760 --> 00:00:21.400 皆さんも きっとそうお思いでしょう 00:00:21.800 --> 00:00:24.296 我々のがんに対する戦いの 00:00:24.320 --> 00:00:26.456 勝利の目途が立たないのは 00:00:26.480 --> 00:00:28.776 がんを「見る」ことなく 戦いを仕掛けているからだと思います NOTE Paragraph 00:00:28.800 --> 00:00:32.375 まずは私の友人について お話しします 00:00:32.400 --> 00:00:33.616 彼の名前はエフドです 00:00:33.640 --> 00:00:36.776 数年前に 彼は脳の悪性腫瘍と診断されました 00:00:36.800 --> 00:00:38.656 よくあるタイプの脳腫瘍ではなく 00:00:38.680 --> 00:00:41.856 脳腫瘍の中でも 最も恐ろしいタイプだと 診断されたのです 00:00:41.880 --> 00:00:43.096 事実 とても悪性で 00:00:43.120 --> 00:00:45.776 医師達は余命は12カ月しかないと 彼に言い渡しました 00:00:45.800 --> 00:00:49.216 この12カ月の間に 治療法を見つけ出さなければなりません 00:00:49.240 --> 00:00:50.696 治療法が見つからなければ 00:00:50.720 --> 00:00:52.880 彼は死に至ります NOTE Paragraph 00:00:53.800 --> 00:00:55.256 でも 良い知らせもありました 00:00:55.280 --> 00:00:58.216 治療に様々な選択肢があるということです 00:00:58.240 --> 00:00:59.456 一方 悪い知らせは 00:00:59.480 --> 00:01:03.016 それらの治療法が 有効であるかどうかは明らかでなく 00:01:03.040 --> 00:01:05.536 3カ月間試してみないと 分からないということです 00:01:05.560 --> 00:01:07.936 だから そんなに多くの治療法を 試すことができません NOTE Paragraph 00:01:07.960 --> 00:01:11.056 エフドは1つ目の治療を開始し 00:01:11.080 --> 00:01:14.336 開始後 数日経った時 彼と面会すると 00:01:14.360 --> 00:01:17.696 彼はこう言いました 「アダム 効果が出ているようだ 00:01:17.720 --> 00:01:20.536 本当に幸運だよ 何か変化が起きているよ」 NOTE Paragraph 00:01:20.560 --> 00:01:23.016 私は尋ねました 「本当かい?どうしてそう思うんだ?」 NOTE Paragraph 00:01:23.040 --> 00:01:25.256 彼の返事は 「頭の中がとても具合悪く感じるんだ 00:01:25.280 --> 00:01:27.136 何かが起きているってことだから 00:01:27.160 --> 00:01:28.376 効いているに違いないよ」 NOTE Paragraph 00:01:28.400 --> 00:01:32.840 残念ながら 3か月後に 効果がでていないとの知らせを受けました 00:01:33.520 --> 00:01:35.576 エフドは2つ目の治療を 試すことになりました 00:01:35.600 --> 00:01:36.856 同じことが繰り返されました 00:01:36.880 --> 00:01:39.616 「ひどく気分が悪い 何かが効いているに違いない」 00:01:39.640 --> 00:01:42.576 3カ月後 またもや悪い報告を受けました 00:01:42.600 --> 00:01:46.536 3つ目、4つ目の治療を試し 00:01:46.560 --> 00:01:49.080 予告通り エフドは亡くなりました NOTE Paragraph 00:01:49.800 --> 00:01:54.376 誰か身近な人が このような とてつもない苦しみと戦っているとき 00:01:54.400 --> 00:01:56.216 我々はとても感情的になります 00:01:56.240 --> 00:01:58.336 様々なことが頭をよぎります 00:01:58.360 --> 00:01:59.816 私の場合 憤りを感じました 00:01:59.840 --> 00:02:04.536 こんな治療しかできないのか という憤りでした 00:02:04.560 --> 00:02:06.856 詳しく調べてみると こんなことが分かりました 00:02:06.880 --> 00:02:10.336 これが医師がエフドに与え得る 最善の治療だったのみならず また― 00:02:10.360 --> 00:02:14.176 一流の医師が脳腫瘍全般に対して可能な 最善の治療だったのです 00:02:14.200 --> 00:02:17.400 実際のところ がん全般に対して 我々は決め手に欠ける有様です NOTE Paragraph 00:02:18.240 --> 00:02:20.096 私は統計データの1つに注目しました 00:02:20.120 --> 00:02:22.896 皆さんの中にも 見たことがある方が きっといると思います 00:02:22.920 --> 00:02:26.376 ここにお見せしているのは 1930年代以降 00:02:26.400 --> 00:02:28.440 アメリカに住む女性のがん患者で 00:02:28.440 --> 00:02:29.736 実際に亡くなった人の数です 00:02:29.760 --> 00:02:32.936 目立った改善が見られず 相変わらず大きな問題であることが 00:02:32.960 --> 00:02:34.256 お分かりになるでしょう 00:02:34.280 --> 00:02:36.016 でも変化していることもあります 00:02:36.040 --> 00:02:38.576 例えば 肺がんは増加しています 00:02:38.600 --> 00:02:39.800 たばこが原因です 00:02:40.360 --> 00:02:42.856 また 例えば胃がんは 00:02:42.880 --> 00:02:46.216 かつてはがんの中でも最も死亡数が 多いものでしたが 00:02:46.240 --> 00:02:47.680 ほぼ無くなっています 00:02:48.480 --> 00:02:50.536 なぜでしょう? 皆さん ご存知でしょうか? 00:02:50.560 --> 00:02:53.896 なぜ人類は胃がんを 乗り越えられたのか? 00:02:53.920 --> 00:02:58.776 人類が胃がんから救われたのは いったいどんな 00:02:58.800 --> 00:03:02.160 医療技術の大発明が 世界に登場したからでしょうか 00:03:03.240 --> 00:03:07.056 それは新薬の発見や 診断法にあったのでしょうか? 00:03:07.080 --> 00:03:08.376 皆さんはお分かりですね 00:03:08.400 --> 00:03:11.016 それは冷蔵庫を発明して 00:03:11.040 --> 00:03:13.656 腐った肉を食べなくなったことです 00:03:13.680 --> 00:03:15.976 医療の分野において がん研究に関し 00:03:16.000 --> 00:03:17.936 最も役に立った出来事は 00:03:17.960 --> 00:03:20.151 冷蔵庫の発明だったのです NOTE Paragraph 00:03:20.175 --> 00:03:21.376 (笑) NOTE Paragraph 00:03:21.400 --> 00:03:22.656 そういうことなんです 00:03:22.680 --> 00:03:24.096 大した成果を上げていません 00:03:24.120 --> 00:03:26.456 がん研究の進歩や諸々のことを 00:03:26.480 --> 00:03:29.856 過小評価するのは 私の意図ではありません 00:03:29.880 --> 00:03:33.296 ご覧の通り50年あまりの間に 素晴らしいがん研究が行われ 00:03:33.320 --> 00:03:36.736 がんとは何かについて とても重要な発見がありました 00:03:36.760 --> 00:03:38.496 しかしそれにも関わらず 00:03:38.520 --> 00:03:41.092 立ちはだかる壁は厚いのです NOTE Paragraph 00:03:42.920 --> 00:03:46.016 なぜ顕著な成果が出せていないのか その主な理由は 00:03:46.040 --> 00:03:48.040 我々が がんを「見る」ことなく 00:03:48.064 --> 00:03:49.896 戦っているからだと 私は思います 00:03:49.920 --> 00:03:52.136 ここで医療イメージング技術が 役に立ちます 00:03:52.160 --> 00:03:53.840 私の研究分野の出番です NOTE Paragraph 00:03:54.400 --> 00:03:57.136 脳腫瘍患者の診断に使われる 最新技術による画像が 00:03:57.160 --> 00:03:59.656 どのようなものか お見せしましょう 00:03:59.680 --> 00:04:01.856 実際にはほぼ全てのがんにも 適用可能です 00:04:01.880 --> 00:04:03.816 PETスキャン画像を ご覧いただきます 00:04:03.840 --> 00:04:05.080 はい この通り NOTE Paragraph 00:04:05.640 --> 00:04:07.336 これはPET/CTスキャンで 00:04:07.360 --> 00:04:09.816 これで見えるものは 00:04:09.840 --> 00:04:13.056 CTスキャンは骨を 可視化することができて 00:04:13.080 --> 00:04:15.480 PETスキャンは腫瘍が どこにあるかを示します 00:04:15.960 --> 00:04:18.176 ここに見えているのは 00:04:18.200 --> 00:04:20.616 糖の分子で 00:04:20.640 --> 00:04:22.456 小さなタグが付されており 00:04:22.480 --> 00:04:24.576 体外へ信号を発信しています 00:04:24.600 --> 00:04:25.896 「僕はここにいるよ」 00:04:25.920 --> 00:04:29.736 何十億という数の糖分子が 患者に注射され 00:04:29.760 --> 00:04:31.456 体中を動き回り 00:04:31.480 --> 00:04:33.560 糖を欲している細胞を 探し出します 00:04:34.320 --> 00:04:36.976 例えば 心臓が 光っています 00:04:37.000 --> 00:04:39.216 それは心臓が大量の糖を 必要としているからです 00:04:39.240 --> 00:04:41.576 膀胱も光っています 00:04:41.600 --> 00:04:44.216 この場合 膀胱は 体から糖を 00:04:44.240 --> 00:04:45.640 排出する役目があるからです 00:04:46.096 --> 00:04:48.096 他にも何カ所から 信号が出ていますが 00:04:48.120 --> 00:04:49.736 実はこれらが腫瘍なのです NOTE Paragraph 00:04:49.760 --> 00:04:51.896 これは実に素晴らしい技術です 00:04:51.920 --> 00:04:55.056 初めて 人々の体内を検査するときに 00:04:55.080 --> 00:04:57.456 顕微鏡で調べるために 細胞を取り出すことなく 00:04:57.480 --> 00:04:59.336 顕微鏡で調べるために 細胞を取り出すことなく 00:04:59.360 --> 00:05:02.376 非侵襲的に 調べることができるようになりました 00:05:02.400 --> 00:05:04.536 こう問いかけます 「がんは転移していないか?」 00:05:04.560 --> 00:05:05.776 「がんはどこに?」 00:05:05.800 --> 00:05:08.296 ご覧の通り PETスキャンは 腫瘍のある場所を 00:05:08.320 --> 00:05:10.600 ホットスポットとして はっきりと示すことができます NOTE Paragraph 00:05:11.480 --> 00:05:14.776 とても奇跡的なことのように思えますが 00:05:14.800 --> 00:05:17.680 残念ながら そうとも言いきれません 00:05:18.320 --> 00:05:20.400 小さなホットスポットが見えますが 00:05:21.240 --> 00:05:24.760 これらの腫瘍の中に いくつがん細胞があると思いますか? 00:05:26.600 --> 00:05:28.936 約1億個のがん細胞が含まれていますが 00:05:28.960 --> 00:05:31.656 これだけ集まって ようやく見えるようになるのです 00:05:31.680 --> 00:05:34.016 この画像で見えている 00:05:34.040 --> 00:05:35.616 これらの一つ一つの小さな点が 00:05:35.640 --> 00:05:39.736 検知されるためには 少なくとも1億個のがん細胞が 00:05:39.760 --> 00:05:41.296 集まっていなければなりません 00:05:41.320 --> 00:05:43.776 大変大きな数に 思えるかも知れませんが 00:05:43.800 --> 00:05:45.480 実際その通りです 00:05:46.640 --> 00:05:48.696 これは事実 悩ましいほどに大きな数です 00:05:48.720 --> 00:05:52.056 がんの治療を 真に効果的なものにするには 00:05:52.080 --> 00:05:55.016 十分に早期に発見する必要があるので 00:05:55.040 --> 00:05:58.176 1千個の細胞からなる腫瘍を検知し さらに理想を言えば― 00:05:58.200 --> 00:06:00.336 わずか数個でも 検知できる必要があります 00:06:00.360 --> 00:06:02.376 だから 解決にほど遠いのは 明らかです NOTE Paragraph 00:06:02.400 --> 00:06:04.656 さてちょっとした実験を行ってみましょう 00:06:04.680 --> 00:06:07.136 皆さんは脳外科医になったと 00:06:07.160 --> 00:06:08.520 想像してみてください 00:06:09.000 --> 00:06:13.016 今 手術室にいて 00:06:13.040 --> 00:06:15.056 目の前に患者さんがいます 00:06:15.080 --> 00:06:18.800 あなたの役目は 腫瘍を確実に摘出することです 00:06:19.400 --> 00:06:22.776 患者さんを観察してみると 00:06:22.800 --> 00:06:25.136 頭皮と頭蓋骨は 既に取り除かれており 00:06:25.160 --> 00:06:26.696 あなたは脳を見ています 00:06:26.720 --> 00:06:28.416 この患者について分かることは 00:06:28.440 --> 00:06:31.256 ゴルフボール大の腫瘍が 00:06:31.280 --> 00:06:33.600 脳の右前頭葉に あることです 00:06:34.080 --> 00:06:35.416 目で見える腫瘍はこんな感じです 00:06:35.440 --> 00:06:38.656 じっくり見てみても 残念ながら― 00:06:38.680 --> 00:06:41.776 がん組織も 健康な組織も 同じように見えるので 00:06:41.800 --> 00:06:43.376 区別できません 00:06:43.400 --> 00:06:45.296 そこで親指を中に入れて 00:06:45.320 --> 00:06:47.656 脳を軽く触れてみると 00:06:47.680 --> 00:06:50.096 腫瘍組織の方が 幾分固く ぴんと張っているので 00:06:50.120 --> 00:06:52.736 こんな感じで触っていくと こう言うことが出来ます 00:06:52.760 --> 00:06:54.736 「腫瘍がそこにあるように思える」 00:06:54.760 --> 00:06:57.416 そこでメスを取り出し 腫瘍を少しずつ丁寧に 00:06:57.440 --> 00:06:58.696 切除していきます 00:06:58.720 --> 00:07:00.416 腫瘍をだんだん切除していくと 00:07:00.440 --> 00:07:02.656 あなたは こう言える段階に到達します 00:07:02.680 --> 00:07:04.816 「よし 終わった 全て取り除いたぞ」 00:07:04.840 --> 00:07:06.376 この段階で― 00:07:06.400 --> 00:07:09.096 これは実に野蛮な話と 思ったでしょうが 00:07:09.120 --> 00:07:12.816 さらに 人生で最も困難な 決断を迫られます 00:07:12.840 --> 00:07:14.376 というのは その決断は 00:07:14.400 --> 00:07:17.096 ここで手術を終えて患者を帰すのか つまり― 00:07:17.120 --> 00:07:20.056 もしかしたら目に見えない 腫瘍細胞が残っているかもしれないという 00:07:20.080 --> 00:07:21.936 リスクを取るべきなのか 00:07:21.960 --> 00:07:24.616 いくらか安全な幅を加味して 00:07:24.640 --> 00:07:27.496 通常 2-3 cm程余分に 腫瘍周囲を切除して 00:07:27.520 --> 00:07:29.720 確実に腫瘍を全部 摘出するべきかということです NOTE Paragraph 00:07:31.400 --> 00:07:35.240 これは難しい決断ですが 00:07:35.840 --> 00:07:37.776 残念ながら 脳腫瘍の手術を行う外科医が 00:07:37.800 --> 00:07:41.136 患者を前にして 日々 避けて通ることができない 00:07:41.160 --> 00:07:42.760 決断なのです NOTE Paragraph 00:07:43.320 --> 00:07:46.256 ある日 研究室の同僚との間で こんな会話がありました 00:07:46.280 --> 00:07:48.656 「もっといい方法があるべきだ」 00:07:48.680 --> 00:07:52.096 それは友人に対し 「何かいい方法が あるべきだ」と言う以上の意味です 00:07:52.120 --> 00:07:54.073 まさに良い方法があるべきなのです 00:07:54.097 --> 00:07:55.616 良い方法がないとはひどすぎます NOTE Paragraph 00:07:55.640 --> 00:07:57.296 振り返ってみました 00:07:57.320 --> 00:08:00.296 先ほどお話ししたPETスキャンや 糖のことなどを思い出してください 00:08:00.320 --> 00:08:03.056 我々はこう考えました 「糖分子の代わりに 00:08:03.080 --> 00:08:06.216 金の極小微粒子を使って 00:08:06.240 --> 00:08:09.896 興味ある化学的性質を与えてみよう 00:08:09.920 --> 00:08:12.336 がん細胞が探せるような性質を与えてみよう」 00:08:12.360 --> 00:08:14.456 何十億という数の金の粒子を 00:08:14.480 --> 00:08:16.736 患者に注射し 00:08:16.760 --> 00:08:18.736 体中に行き渡るようにしました 00:08:18.760 --> 00:08:20.736 それはスパイと言ってもよいでしょう 00:08:20.760 --> 00:08:23.576 体の全ての細胞へと移動していって 00:08:23.600 --> 00:08:25.296 細胞の戸をノックして回ります 00:08:25.320 --> 00:08:28.056 「お前はがん細胞か? それとも正常な細胞?」 00:08:28.080 --> 00:08:30.096 正常な細胞なら次へと進みます 00:08:30.120 --> 00:08:32.856 がん細胞なら そこにくっついて 輝いて こう伝えます 00:08:32.880 --> 00:08:34.976 「俺はここにいる 見てくれ」 00:08:35.000 --> 00:08:37.376 すると我が研究室が開発した 特殊なカメラが 00:08:37.400 --> 00:08:38.816 彼らを捉えます 00:08:38.840 --> 00:08:41.775 いったん 見つかれば 脳腫瘍外科医が 00:08:41.799 --> 00:08:45.200 腫瘍だけを切除し 健康な細胞は 触れずに済むことでしょう 00:08:45.720 --> 00:08:48.776 実際試してみると 上手くいきました NOTE Paragraph 00:08:48.800 --> 00:08:50.776 では実例をお見せしましょう 00:08:50.800 --> 00:08:52.576 ここでご覧になっているのは 00:08:52.600 --> 00:08:56.536 マウスの脳の画像です 00:08:56.560 --> 00:08:59.696 このマウスの脳には 前もって小さな腫瘍が 00:08:59.720 --> 00:09:00.976 移植してありました 00:09:01.000 --> 00:09:03.616 腫瘍はマウスの脳で成長し 00:09:03.640 --> 00:09:06.296 そこで医師を呼び こう依頼します 00:09:06.320 --> 00:09:09.136 このマウスを患者と思って 手術してください 00:09:09.160 --> 00:09:11.576 腫瘍だけを少しずつ切除してください 00:09:11.600 --> 00:09:13.376 彼が手術をしている間 00:09:13.400 --> 00:09:16.376 我々は金の粒子の位置を示す 画像を撮り続けます 00:09:16.400 --> 00:09:18.016 まず初めに 00:09:18.040 --> 00:09:20.456 金の粒子をマウスの体内に注射します 00:09:20.480 --> 00:09:23.376 画面左隅を見てください 00:09:23.400 --> 00:09:24.656 下側の画像が 00:09:24.680 --> 00:09:27.176 金の粒子が存在する場所を 表しています 00:09:27.200 --> 00:09:29.256 見事なのは これらの金の粒子が 00:09:29.280 --> 00:09:31.296 腫瘍に到達し 00:09:31.320 --> 00:09:34.976 そこで輝き こう伝えてくれることです 「ここだ ここに腫瘍があるぞ」 NOTE Paragraph 00:09:35.000 --> 00:09:36.376 我々には腫瘍が見られますが 00:09:36.400 --> 00:09:38.536 医師には まだこれを見せていません 00:09:38.560 --> 00:09:41.616 医師にこうお願いします 「腫瘍の切除を開始して下さい」 00:09:41.640 --> 00:09:45.056 医師がまず腫瘍の4分の1を切除し 00:09:45.080 --> 00:09:47.296 この部分がなくなったのが 見て取れます 00:09:47.320 --> 00:09:49.776 次 そのまた次と 4分の1ずつ切除していき 00:09:49.800 --> 00:09:51.536 ついに全てが終了したようです 00:09:51.560 --> 00:09:54.296 この段階で医師が我々のところに来て こう言います 00:09:54.320 --> 00:09:56.576 「よし 終わった 次に何をして欲しいんだい? 00:09:56.600 --> 00:09:58.176 これで終わりにするのか 00:09:58.200 --> 00:10:00.696 少し周りを余分に 切除して欲しいのかい?」 NOTE Paragraph 00:10:00.720 --> 00:10:02.376 我々は「少し待って」と返事します 00:10:02.400 --> 00:10:04.816 そしてこう伝えます 「腫瘍が2か所に残っています 00:10:04.840 --> 00:10:06.840 周りをごっそり切除するのではなく 00:10:06.864 --> 00:10:08.696 この小さな部分だけ切除してください 00:10:08.720 --> 00:10:10.736 これらを切除したら また見てみましょう」 NOTE Paragraph 00:10:10.760 --> 00:10:13.616 医師が切除を終えると 見事なことに 00:10:13.640 --> 00:10:15.656 腫瘍細胞は全てなくなりました 00:10:15.680 --> 00:10:17.056 ここで重要なことは 00:10:17.080 --> 00:10:19.700 腫瘍細胞が患者の脳や マウスの脳から 00:10:19.724 --> 00:10:21.080 完全に除去された ということだけではありません 00:10:21.080 --> 00:10:22.400 完全に除去された ということだけではありません 00:10:23.160 --> 00:10:24.416 もっとも大切なことは 00:10:24.440 --> 00:10:27.336 この手術の過程で 正常な脳をごっそりと切除する― 00:10:27.360 --> 00:10:28.576 必要がないということです 00:10:28.600 --> 00:10:30.776 医師、外科医が 腫瘍を切除するときに 00:10:30.800 --> 00:10:34.696 切除すべき場所を知ることができる そんな世の中を 今では― 00:10:34.720 --> 00:10:36.140 思い浮かべることができます 00:10:36.170 --> 00:10:38.280 もはや親指の勘に頼る必要は ありません NOTE Paragraph 00:10:39.520 --> 00:10:43.456 腫瘍を少しでも取り残してはならない 理由があります 00:10:43.480 --> 00:10:46.336 取り残しがあると それは僅かな数の細胞であったとしても 00:10:46.360 --> 00:10:49.416 成長し 腫瘍は再生してしまいます 00:10:49.440 --> 00:10:51.096 腫瘍が舞い戻ってくるのです 00:10:51.120 --> 00:10:53.056 事実 脳の悪性腫瘍摘出が不成功に終わる 00:10:53.080 --> 00:10:55.296 究極の原因の80から90%は 00:10:55.320 --> 00:10:59.096 切除部のすぐ外側の部分に 00:10:59.120 --> 00:11:01.800 微小な腫瘍が切除されず 残されているためです NOTE Paragraph 00:11:03.440 --> 00:11:05.616 だからこの検査法は とても効果的です 00:11:05.640 --> 00:11:09.936 さて 一番お伝えしたいことは その先にめざすものです 00:11:09.960 --> 00:11:11.616 スタンフォード大の私の研究室では 00:11:11.640 --> 00:11:17.160 学生たちも私も 次にやるべき研究について考えています 00:11:17.600 --> 00:11:20.456 医療イメージングが目指すところは 00:11:20.480 --> 00:11:22.816 人間の体内を検査し 00:11:22.840 --> 00:11:26.280 細胞を個々に区別して見ることです 00:11:27.000 --> 00:11:28.736 これが実現すれば 00:11:28.760 --> 00:11:31.656 1億のがん細胞へと増殖するよりも ずっと早い段階で 00:11:31.680 --> 00:11:35.600 腫瘍を検出することができるので 何らかの対処が可能となります NOTE Paragraph 00:11:36.200 --> 00:11:39.616 個々の細胞を見分けることができれば 00:11:39.640 --> 00:11:41.016 洞察的な疑問を提起できます 00:11:41.040 --> 00:11:43.136 研究室では がん細胞に関する― 00:11:43.160 --> 00:11:46.416 こんな疑問を呈するに至りました 00:11:46.440 --> 00:11:50.216 例えば 我々が施す治療は がん細胞に効果があるのだろうか? 00:11:50.240 --> 00:11:53.696 もし効果がないと分かれば 治療を始めてから3か月も待たずに 00:11:53.720 --> 00:11:55.760 数日で直ちに治療を 中止することができます 00:11:56.480 --> 00:11:58.656 だからエフドのような患者が 00:11:58.680 --> 00:12:03.096 とても厄介な化学療法薬を 効き目がないにもかかわらず 00:12:03.120 --> 00:12:04.376 服用し続けることで 00:12:04.400 --> 00:12:07.296 ひどい副作用に 00:12:07.320 --> 00:12:09.976 苦しめられることがありません NOTE Paragraph 00:12:10.000 --> 00:12:12.936 正直言えば 00:12:12.960 --> 00:12:16.416 がんとの戦いに勝利するには ほど遠いところにいるというのが 00:12:16.440 --> 00:12:17.696 現実です 00:12:17.720 --> 00:12:19.616 しかし 少なくとも 00:12:19.640 --> 00:12:23.776 より優れた医療イメージング技術で がんを「見極める」ことで 00:12:23.800 --> 00:12:25.656 がんと戦うことができるのだと願っています NOTE Paragraph 00:12:25.680 --> 00:12:26.896 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:12:26.920 --> 00:12:29.160 (拍手)