♪ [音楽] ♪ [アレックス] 今回はもう少し 込み入った話になります。 この授業でお見せするのは 費用が一定の産業が 平坦な供給曲線を 形成するということです。 始めましょう。 費用が一定の産業とは、 費用を増加させることなく 生産量を増加できる産業です。 例えば、鉛筆、カブ、 ドメイン名の登録などは 費用が一定の産業に属します。 鉛筆を例にとりましょう。 鉛筆の生産量を増やそうと思ったら、 鉛筆の生産費用を増やすことなく かなりの量の鉛筆を生産できます。 なぜかって?鉛筆を生産する際 必要なものはなんでしょうか。 木材と黒鉛、 ゴムが必要ですね。 しかし、増産に必要とする木材の量は 世界の木材供給量と比べたら 微々たるものです。 黒鉛にしても、世界の供給量の ほんの一部です。 ゴムにしても、世界の供給量の 一部です。 言い換えると、鉛筆を増産するには、 材料の供給量を、世界全体から見て 気づかないほどの微量を 増やせばいいのです。 鉛筆を増産するといっても、 木材の価格が上昇する わけではないのです。 住宅産業では こうはいきません。 住宅の生産量を増やしたければ、 木材の需要は大幅に増え、 木材の価格は 上昇しかねません。 これは、費用が増加する産業です。 カブはどうでしょうか? 考え方は同じです。 土地や肥料などの 投入の価格を増やすことなく 容易にカブの生産量を 増やすことができます。 土地や肥料の市場に占める カブの生産量は小さすぎて カブの生産を大幅に増産したところで 投入の価格が増える ことはありません。 ドメイン名の登録でも同じです。 インターネットは 大きく拡張しましたが、 今日でもドメイン名登録は $6、7で済んでしまいます。 パソコンをいくつか使うだけで 登録できてしまうからです。 パソコンをもう少し増やせばー それでも、パソコンの総数に 比べれば微々たるものですがー ドメイン名登録の供給量を 容易に増やすことができます。 どういう意味かというと 鉛筆やカブ、ドメイン名登録といった 産業については、 長期的な供給曲線は 平坦になるということです。 図を用いて詳しく見ていきましょう。 この図では、 費用が一定の産業が いかにして需要の増加に 対応するのか、 同時に、費用が一定である 理由についても見ていきます。 二つの図を見比べながら説明します。 左が市場、右が代表企業です。 この産業には企業がいくつもあるので、 その中から一つ選んで 説明していきます。 市場の図から始めましょう。 もう見慣れていますね。 こちらが需要曲線で、 こちらが短期的な供給曲線です。 需要量が供給量と同値である時、 初期の、あるいは短期的な 均衡となります。 実は、これは長期的な 均衡ともなるのです。 理由は後ほど説明します。 今度は代表企業の均衡も 求めていきます。 企業が利潤を最大化している ということは 価格が限界費用と同値になる ということですね。 そして、価格は平均費用とも 同値になります。 なぜなら、企業は 経済利益はゼロ、つまり 正常利潤を得るからです。 というわけで、 市場の初期均衡では 供給量は需要量と同値です。 企業の方では、 価格は限界費用と同値なので、 企業は利潤を最大化できています。 そして価格は、 平均費用と同値なので、 利潤は正常、つまりゼロです。 さて、今度は需要を 増やすとどうなるか 見ていきましょう。 市場の図では 二つのことが起こります。 需要曲線は動くので 価格は上昇し、 新たな均衡点になります。 企業の方では、価格は 限界費用曲線に沿って 増加していきます。 市場から見てみましょう。 この変化は同時に起こります。 まずは市場をみて、 そのあとに 代表企業の変化を見ます。 それではいきましょう。 需要が増加すると、 価格は上昇し、新たな均衡である、 点Bが求められます。 企業の方では、 限界費用曲線に沿って増加するので、 新たな均衡は同じく点Bとなります。 もう一度ご覧ください。 今度は、 代表企業です。 代表企業を見ていくと、 需要が増えると、価格が上昇します。 すると企業は限界曲線に沿って 増加していきます。 短期的な需要曲線が 上向きである理由は 産業内の企業は 価格が上昇するとともに 限界費用曲線に沿って 大きくなるからです。 短期的、というのは、 新たな企業が産業に参入する以前 ということです。 つまり、短期的な供給量の増加は 今ある企業による、 価格の上昇に乗じて行われた、 供給量の増加によるもの ということです。 代表企業は当初 経済利益がゼロ、 つまり正常利潤であることを 思い出してください。 需要が増加すると、 正常利潤以上の 利益を出しているのです。 (価格ー平均費用)×数量が 利潤の出し方でしたね。 つまりこの時点の利益は プラス、正常利潤以上です。 この状態にあると、 他の企業も例に倣います。 「あの企業が成功してるんだったら、 我が社もやろうじゃないか」と。 価格が平均費用以上の時に 参入が起きるのでした。 参入にはどのような 影響があるのでしょうか。 二つのことが起こります。 市場の方では、 短期的な供給曲線が 右に移動します。 短期的な供給曲線が 右に移動するので、 価格は減少します。 価格が減少すると、 企業は限界費用曲線に沿って 利潤と共々、正常利潤に 達するまで 減少していきます。 もう二回お見せしましょう。 最初に市場について、 次に代表企業を見ていきましょう。 短期的に起こる利潤は 企業の参入を促します。 企業が参入すると、 短期的な供給曲線は 増加して、 価格は、新たな均衡まで 減少します。ここですね。 こちらの図では利潤がゼロになります。 代表企業の方から 見ていきましょう。 右側が代表企業です。 利潤は参入を促します。 参入によって 価格が押し下げられ、 何が起きるでしょうか。 価格が減少すると、企業は 限界費用曲線に沿って減少します。 これで、長期的には平坦な曲線に なる理由がわかります。 平均費用曲線の最小値である 点Aから始めて、 点Cまでいきます。 ここが点Cです。 ここも平均費用曲線の 最小値です。 つまり、長期的に見ると供給曲線は 平均費用曲線の最小値で 一定なのです。 では、産業費用が一定であるという憶測は どこから来るのでしょうか? ここからきます。 参入によって 産業が拡大する時、 代表企業の費用は上昇しません。 なぜなら、投入市場に比べると、 産業自体はとても小さいからです。 つまり、産業が拡大する時には、 投入価格は 上昇しないのです。 産業が拡大しようと縮小しようと 平均費用曲線は変わりません。 なぜなら、代表企業の費用曲線は 変化せず、経済利益がゼロである 唯一の均衡点は最小値の時、 価格が平均費用と同値の時だからです。 長期的に見ると、価格は常に 平均費用曲線の最小値まで、 経済利益がゼロのところ まで減少します。 点Aと点Cは産業の 長期的な供給曲線に沿っています。 平坦ですね。 新しい情報が色々出てきました。 図を使ってちょっと復習しましょう。 点Aは初期の均衡です。 短期的な需要の増加によって 点Bに移動しました。 企業はプラスの利益を出していました。 プラスの利益によって 新しい企業の参入が促されました。 企業の参入によって 短期的な供給曲線が 右に移動し、価格が減少しました。 価格は長期的な均衡まで 減少しました。 新たな長期的均衡は、 経済利益がゼロの時、 つまり、平均費用曲線が 最小値の時です。 平均費用曲線は動きません。 なぜなら投入価格は 産業が拡張しようが 縮小しようが変わらないからです。 だからこそ、長期的な 供給曲線は平坦なのです。 そんな感じです。 情報量が多かったですね。 費用が増加する産業では 供給曲線が上向きで、 費用が一定の産業では 供給曲線が平坦であることが わかりました。 次回は、費用が減少する産業という 珍しい産業の場合、 一定の範囲において下向きの曲線を 描くことをお見せします。 次の動画でまた会いましょう。 [告知] 自分の知識を 確認したい方は「練習問題」を 次の動画を見たい方は、 「次の動画」をクリックしてください。 ♪ [音楽] ♪