0:00:07.129,0:00:13.469 1845年 アイルランドの広大な畑が[br]菌による病気に襲われ 0:00:13.469,0:00:17.278 主要作物のジャガイモに[br]急速に広がりました 0:00:17.278,0:00:19.261 この被害は甚大でした 0:00:19.261,0:00:21.619 百万人が飢え死にし 0:00:21.619,0:00:25.830 百万人以上がアイルランドから[br]移住することになったのです 0:00:25.830,0:00:31.871 現代では 農薬によって[br]そのような農業災害を防げます 0:00:31.871,0:00:35.640 農薬は人間が作り出した化学物質で[br]昆虫や 0:00:35.640,0:00:37.219 雑草 0:00:37.219,0:00:38.300 菌類 0:00:38.300,0:00:39.072 げっ歯類 0:00:39.072,0:00:40.200 バクテリアといった 0:00:40.200,0:00:42.270 食料供給を脅かすものを抑制します 0:00:42.270,0:00:44.749 農薬は食料生産に[br]不可欠なものになりました 0:00:44.749,0:00:49.090 人口の増加にともない[br]単一栽培によって 0:00:49.090,0:00:51.710 効率的に食料を[br]まかなえるようになりました 0:00:51.710,0:00:57.036 しかし そのために食料は害虫や害獣による[br]広範な攻撃に対し脆弱になりました 0:00:57.036,0:01:00.671 一方で 農薬への依存が大きくなりました 0:01:00.671,0:01:06.500 今では地球全体で毎年[br]200万トン以上の農薬を 0:01:06.500,0:01:09.200 害虫や害獣を防ぐために散布しているのです 0:01:09.200,0:01:12.075 害虫や害獣の中でも[br]とりわけ昆虫との戦いは 0:01:12.075,0:01:15.031 農業の長い歴史に刻まれています 0:01:15.031,0:01:16.911 数千年前の記録によると 0:01:16.911,0:01:21.351 人類は害虫駆除の目的で 0:01:21.351,0:01:23.814 収穫後に穀物の一部を[br]燃やしていました 0:01:23.814,0:01:29.105 古代から他の昆虫を利用していた[br]証拠さえ残されており 0:01:29.105,0:01:34.622 西暦300年 中国では[br]獰猛なアリをオレンジの果樹園で飼育して 0:01:34.622,0:01:39.301 オレンジの木を他の虫から守っていました 0:01:39.301,0:01:41.156 後に大規模農業が広まると 0:01:41.156,0:01:47.132 ヒ素 鉛 銅を撒き始めました 0:01:47.132,0:01:51.011 しかしこれらの物質は[br]人類にとっても有害だったのです 0:01:51.011,0:01:54.370 より安全な生産への要求が高まるにつれて 0:01:54.370,0:01:56.971 より広範囲に害虫を抑制できる 0:01:56.971,0:02:00.222 効果的な化学物質の必要性が高まりました 0:02:00.222,0:02:04.643 化学農薬の時代の始まりでした 0:02:04.643,0:02:08.913 1948年にスイスの化学者[br]パウル・ヘルマン・ミュラーが 0:02:08.913,0:02:12.002 DDTとして知られる[br]ジクロロジフェニルトリクロロエタンを発見し 0:02:12.002,0:02:18.441 ノーベル賞を受賞しました 0:02:18.441,0:02:23.262 この新しい物質は昆虫たちが[br]耐性を獲得する1950年代まで 0:02:23.262,0:02:28.222 多くの昆虫種を抑制する[br]他に類がないほどの効果がありました 0:02:28.222,0:02:33.553 ところが悪いことにDDTは[br]鳥の数を劇的に減少させ 0:02:33.553,0:02:35.372 水源を汚染し 0:02:35.372,0:02:40.573 人類にも長期的な健康被害を[br]もたらすことがわかったのです 0:02:40.573,0:02:44.992 1972年までにアメリカ合衆国での[br]DDT使用は禁止されましたが 0:02:44.992,0:02:48.953 環境への影響が[br]いまだに残っています 0:02:48.953,0:02:52.443 それ以来 科学者たちは[br]DDTに代わる物質を探し続けています 0:02:52.443,0:02:56.493 新しい発明の度に[br]科学者たちは同じ問題に直面しました 0:02:56.493,0:02:58.754 それは 種の急激な進化です 0:02:58.754,0:03:01.344 農薬で害虫や害獣の大多数を駆除しても 0:03:01.344,0:03:05.734 最も抵抗力のある個体が残ります 0:03:05.734,0:03:08.823 生き残った個体は次の世代に 0:03:08.823,0:03:10.644 農薬に耐性のある遺伝子を残します 0:03:10.644,0:03:13.198 それが コロラドハムシのような 0:03:13.198,0:03:15.613 50種類以上の殺虫剤に耐えられる 0:03:15.613,0:03:19.394 スーパーバグを生みだす仕組みです 0:03:19.394,0:03:23.825 他の悪影響は他の虫たちが[br]巻き添えを食ってしまうことです 0:03:23.825,0:03:29.454 害虫を捕食したり花粉を媒介する益虫も 0:03:29.454,0:03:34.314 一緒に農業から排除することで[br]その恩恵を受けられなくなりました 0:03:34.314,0:03:36.364 農薬は年々改良され[br]現在は厳しい安全基準によって 0:03:36.364,0:03:39.305 厳格な安全基準で規制されています 0:03:39.305,0:03:42.923 それでもなお土壌や水源を汚染し 0:03:42.923,0:03:44.305 野生動物に影響を与えます 0:03:44.305,0:03:46.194 そして私たちにも害を与えるのです 0:03:46.194,0:03:50.745 これらのリスクがありながら[br]なぜ使い続けるのでしょう 0:03:50.745,0:03:52.155 農薬は完全ではありませんが 0:03:52.155,0:03:57.165 現時点ではおそらく[br]蚊が媒介する病気は言うまでもなく 0:03:57.165,0:03:59.945 主要な農業災害に対して[br]最善の方法なのです 0:03:59.945,0:04:04.836 科学者たちは今でも[br]食料生産と環境配慮を両立できる 0:04:04.836,0:04:06.976 害虫や害獣の駆除方法を 0:04:06.976,0:04:09.016 探し続けています 0:04:09.016,0:04:12.835 自然は重要なアイデアの源で 0:04:12.835,0:04:17.115 昆虫を遠ざけたりおびき寄せる[br]植物や菌に含まれる化学物質から 0:04:17.115,0:04:20.925 他の虫を穀物のボディーガードにする[br]ことまで様々です 0:04:20.925,0:04:24.885 ドローンのような高度な技術を使った[br]解決策も登場しています 0:04:24.885,0:04:26.936 穀物の上空を飛ぶように[br]プログラムされていて 0:04:26.936,0:04:29.766 センサーやGPSを使って 0:04:29.766,0:04:32.457 より的を絞った散布を行うことで 0:04:32.457,0:04:36.306 環境への影響を限定します 0:04:36.306,0:04:38.837 生物学的な理解と 0:04:38.837,0:04:40.466 環境への意識 0:04:40.466,0:04:42.376 技術革新を合わせることで 0:04:42.376,0:04:46.616 広い視野で考え出された害虫対策が[br]見つかる可能性は高まるでしょう 0:04:46.616,0:04:50.527 化学農薬の安全性について[br]議論が絶えることはありませんが 0:04:50.527,0:04:51.957 その効果によって 0:04:51.957,0:04:54.857 私たちは農業災害を 0:04:54.857,0:04:57.097 過去のものにしているのです