0:00:00.580,0:00:02.348 今晩 お話しするのは 0:00:02.348,0:00:04.044 カミングアウトについてです 0:00:04.044,0:00:05.256 いわゆる「カミングアウト」 0:00:05.256,0:00:07.568 ゲイだと打ち明けること[br]ではありません 0:00:07.568,0:00:09.622 誰しも 心に[br]壁を作っています 0:00:09.622,0:00:11.514 その後ろに[br]隠れているのは 0:00:11.514,0:00:13.736 誰かに初めて[br]愛の告白をすることや 0:00:13.736,0:00:15.882 妊娠したこと 0:00:15.882,0:00:18.414 ガンであることを[br]伝えることかもしれません 0:00:18.414,0:00:20.445 他にも 私たちが[br]人生で経験する― 0:00:20.445,0:00:22.711 さまざまな重い話が[br]隠れています 0:00:22.711,0:00:26.381 心の壁の向こうにあるのは[br]重い話です 0:00:26.381,0:00:29.435 抱える問題は[br]本当に さまざまでしょう 0:00:29.435,0:00:31.107 でも 心に[br]押し込めていたものを 0:00:31.107,0:00:34.438 扉を開けて解き放つ経験は[br]誰しも同じです 0:00:34.438,0:00:40.030 怖いですし 嫌ですが[br]しないといけないことです 0:00:40.030,0:00:41.399 数年前 0:00:41.399,0:00:45.170 私は サウス・サイド・[br]ウォールナット・カフェという 0:00:45.170,0:00:47.241 地元の食堂で[br]働いていました 0:00:47.241,0:00:49.956 その食堂で 私は[br]さまざまな段階を経て 0:00:49.956,0:00:53.521 過激派レズビアンに[br]なりました 0:00:53.521,0:00:55.296 脇の処理をせず 0:00:55.296,0:00:58.845 アーニー・ディフランコの[br]言葉を崇めました 0:00:58.845,0:01:01.100 だぶだぶの[br]カーゴパンツで 0:01:01.100,0:01:03.800 頭を剃って[br]すぐのときには 0:01:03.800,0:01:05.327 こんな質問を[br]よくされました 0:01:05.327,0:01:07.410 たいていは[br]小さな子どもからで 0:01:07.410,0:01:12.577 「あのー あなたは男の子?[br]それとも女の子?」 0:01:12.577,0:01:15.249 その場は[br]ぎこちない沈黙に包まれ 0:01:15.249,0:01:17.672 私は いつもより少しだけ固く[br]歯をかみしめ 0:01:17.672,0:01:20.791 コーヒーポットを[br]ここぞとばかりに 強く握りしめました 0:01:20.791,0:01:23.628 父親は あたふたと[br]新聞をめくり 0:01:23.628,0:01:25.946 母親は その子を[br]ダメよという目で見ます 0:01:25.946,0:01:27.650 それでも[br]私は何も言いませんでした 0:01:27.650,0:01:29.886 ただ 心の中で[br]激しい感情が渦巻いていました 0:01:29.886,0:01:31.534 そのうち[br]3~10歳の子どもがいる― 0:01:31.534,0:01:35.562 テーブルへは 戦闘態勢で[br]臨むようになりました 0:01:35.562,0:01:37.008 (笑) 0:01:37.008,0:01:39.256 最悪の気分です 0:01:39.256,0:01:43.104 ですから 次こそは[br]何か言うぞと心に決めたのです 0:01:43.104,0:01:45.472 あの重い会話を[br]すると決めたのです 0:01:45.472,0:01:48.023 何週間も経たないうちに[br]そのときが やってきました 0:01:48.023,0:01:50.795 「あなたは男の子?[br]それとも女の子?」 0:01:50.795,0:01:53.948 あの沈黙が訪れます[br]でも 心の準備はできていました 0:01:53.948,0:01:57.899 私は まさに[br]女性学入門の講義を 0:01:57.899,0:02:00.237 始めんばかりの[br]勢いでした(笑) 0:02:00.237,0:02:02.737 ベティ・フリーダンの言葉も 0:02:02.737,0:02:04.535 グロリア・スタイネムの言葉も 0:02:04.535,0:02:07.833 さらには『ヴァギナ・モノローグス』からの[br]引用も用意していました 0:02:07.833,0:02:11.428 深呼吸をして[br]声の方を見ると 0:02:11.428,0:02:15.807 私を見上げていたのは[br]ピンクのドレスを着た4歳の少女でした 0:02:15.807,0:02:17.852 フェミニストの決闘相手に[br]ふさわしくない 0:02:17.852,0:02:20.412 ただの子どもが[br]知りたがっているだけ 0:02:20.412,0:02:22.783 「あなたは男の子?[br]それとも女の子?」 0:02:22.783,0:02:24.428 もう一度[br]深呼吸をして 0:02:24.428,0:02:25.795 そばに しゃがんで[br]言いました 0:02:25.795,0:02:27.917 「ねぇ 困るわよね[br]分かるわ 0:02:27.917,0:02:29.679 髪も短くて[br]男の子みたいだし 0:02:29.679,0:02:31.711 服装も男の子っぽいわね[br]でも 女の子よ 0:02:31.711,0:02:33.678 あなたも ピンクの服を[br]着たい時もあれば 0:02:33.678,0:02:36.334 ゆったりしたパジャマを[br]着たい時だってあるでしょ 0:02:36.334,0:02:40.026 私はね[br]パジャマ好きな女の子なのよ」 0:02:40.026,0:02:42.114 その子は 私の目を[br]まっすぐ見て 0:02:42.114,0:02:43.745 ひるむ様子もなく[br]言ったのです 0:02:43.745,0:02:45.697 「私はお魚さんがついた[br]紫のパジャマが好きよ 0:02:45.697,0:02:47.588 パンケーキを[br]もらえますか?」 0:02:47.588,0:02:50.309 (笑) 0:02:50.309,0:02:53.775 それだけでした[br]「そう 女の子なんだ 0:02:53.775,0:02:56.018 あのパンケーキを[br]お願いね」って 0:02:56.018,0:02:58.500 あれほど軽く[br]重い話をしたのは 0:02:58.500,0:03:00.892 初めてでした 0:03:00.892,0:03:03.554 なぜでしょう?[br]パンケーキの子と私は 0:03:03.554,0:03:06.915 お互いに[br]本心でぶつかり合ったからです 0:03:06.915,0:03:08.691 皆さんも[br]そうだと思いますが 0:03:08.691,0:03:11.028 私も いろんな思いを[br]壁の奥に押し込めてきました 0:03:11.028,0:03:13.642 たいてい 私の壁は[br]虹色をしていましたが 0:03:13.642,0:03:15.666 一歩中に入れば[br]暗闇で 0:03:15.666,0:03:17.834 壁の色も分かりません 0:03:17.834,0:03:21.244 暗闇で 息をひそめて生きることが[br]どんなものか分かるでしょう 0:03:21.244,0:03:24.995 結局 壁の後ろにある世界は[br]同じなのです―あなたのも 0:03:24.995,0:03:27.820 あなたのも[br]一緒です 0:03:27.820,0:03:29.564 もちろん 私の方が[br]あなたよりも 0:03:29.564,0:03:31.895 つらい理由なんて[br]いくらでも あげられます 0:03:31.895,0:03:34.097 でも つらさは[br]相対的なものではありません 0:03:34.097,0:03:36.090 つらいものは[br]つらいんです 0:03:36.090,0:03:40.233 自己破産をしたことを[br]告白する方が 0:03:40.233,0:03:42.472 浮気を告白するより[br]つらいなんて言えますか? 0:03:42.472,0:03:45.059 あの人が[br]打ち明けることの方が 0:03:45.059,0:03:47.928 5歳の子どもに離婚を話すより[br]つらいと言えるでしょうか? 0:03:47.936,0:03:51.275 どちらが つらいかではなく[br]ただ つらいんです 0:03:51.275,0:03:54.813 つらさを他人と比べるのは[br]やめないといけません 0:03:54.813,0:03:57.212 他人と比較して[br]安心したり落胆したりするのでなく 0:03:57.212,0:04:01.275 ただ皆 つらいんだと[br]気持ちを寄せるのです 0:04:01.275,0:04:04.611 長い人生 誰しも [br]心に壁を作ることがあります 0:04:04.611,0:04:06.541 その中にいれば[br]安全と感じるでしょう 0:04:06.541,0:04:09.488 少なくとも[br]扉の向こうよりマシでしょう 0:04:09.488,0:04:11.253 でも 皆さんに[br]お伝えしたいのは 0:04:11.253,0:04:13.378 その壁が[br]何でできていようとも 0:04:13.378,0:04:17.946 そこは 人が[br]生きる場所ではありません 0:04:17.946,0:04:20.106 ありがとう(拍手) 0:04:20.106,0:04:24.334 20年前の自分を[br]思い浮かべてみてください 0:04:24.334,0:04:29.142 当時 私はポニーテールで[br]ストラップレスドレスを着て 0:04:29.142,0:04:31.100 ハイヒールを[br]身に付けていました 0:04:31.100,0:04:32.995 当時は 過激派[br]レズビアンではなく 0:04:32.995,0:04:36.934 カフェにいた4歳児に[br]立ち向かう用意もありませんでした 0:04:36.934,0:04:40.623 私は恐怖で凍りつき[br]壁に囲まれた真っ暗闇の中 0:04:40.623,0:04:42.887 隅っこで[br]丸まっていました 0:04:42.887,0:04:45.142 ゲイという手りゅう弾を[br]手に握りしめ 0:04:45.142,0:04:48.774 筋肉をちょっと[br]動かすのでさえ 0:04:48.774,0:04:51.087 今までにないくらい[br]恐ろしく感じていました 0:04:51.087,0:04:53.303 私の家族 友人[br]見ず知らずの他人― 0:04:53.303,0:04:54.745 私は こうした人たちの 0:04:54.745,0:04:56.369 期待に応えるべく[br]生きてきました 0:04:56.369,0:04:59.985 でも 今は自ら[br]世界をひっくり返しています 0:04:59.985,0:05:01.609 わざとです 0:05:01.609,0:05:03.727 長い間 私たちが[br]従ってきた筋書きを 0:05:03.727,0:05:05.954 すべて破り捨てて[br]いるのです 0:05:05.954,0:05:09.597 自分の手にある手りゅう弾を[br]捨てなければ 死んでしまいますから 0:05:09.597,0:05:11.475 手りゅう弾を手放した中で[br]最高だったのが 0:05:11.475,0:05:13.636 姉の結婚式での[br]手りゅう弾トスです 0:05:13.636,0:05:15.546 (笑) 0:05:15.546,0:05:18.241 私がゲイだと知っている方が[br]たくさん集まるのは 0:05:18.241,0:05:21.412 初めてだったので[br]花嫁の付き添いをしながら 0:05:21.412,0:05:23.528 黒いドレスで[br]ヒールを履いたまま 0:05:23.528,0:05:25.333 各テーブルを[br]まわったのです 0:05:25.333,0:05:27.502 ついに 私のことを[br]長年知っている― 0:05:27.502,0:05:30.670 両親の友人たちのテーブルに[br]行きつきました 0:05:30.670,0:05:33.781 世間話のあと[br]ある女性が大声で言いました 0:05:33.781,0:05:36.283 「私は ネイサン・レインが好きよ」と 0:05:36.283,0:05:39.371 すると皆が 親ゲイ派を[br]アピールし出しました 0:05:39.371,0:05:41.218 「ゲイタウンのカストロ通りは[br]行った?」 0:05:41.218,0:05:43.850 「実はサンフランシスコに[br]友だちがいるのよ」 0:05:43.850,0:05:46.385 「行ったことがないけど[br]素晴らしいと聞いたわ」 0:05:46.385,0:05:48.246 「美容師のアントニオは[br]知ってるかしら? 0:05:48.246,0:05:51.395 腕は確かだし[br]彼女の話なんてしないのよ」 0:05:51.395,0:05:53.033 「好きなテレビ番組は? 0:05:53.033,0:05:55.168 私たちは『ふたりは友達?[br]ウィル&グレイス』ね 0:05:55.168,0:05:56.771 誰が好きかって?[br]ジャックよ 0:05:56.771,0:05:58.596 ジャックが[br]お気に入りなの」 0:05:58.596,0:06:01.188 ある女性は 言葉に詰まって[br]困っていましたが 0:06:01.188,0:06:03.676 それでも[br]なんとか応援したいと思い 0:06:03.676,0:06:06.050 私の味方だと[br]伝えようとして 0:06:06.050,0:06:07.930 ようやく[br]出てきた言葉が― 0:06:07.930,0:06:11.276 「ほら 私の夫も[br]時々 ピンクのシャツを着るわよ」 0:06:11.276,0:06:13.839 (笑) 0:06:13.839,0:06:15.918 そのとき 私には[br]2つの選択肢がありました 0:06:15.918,0:06:17.846 手りゅう弾を放り出す誰もが[br]必ず通る道です 0:06:17.846,0:06:21.286 一つは そのまま[br]彼女やゲイ仲間がいるテーブルに戻り 0:06:21.286,0:06:23.185 今の出来事を[br]バカにすることです 0:06:23.185,0:06:25.559 世間知らずで[br]ゲイについて差別・偏見なく 0:06:25.559,0:06:28.468 話すこともできないのか[br]と非難することもできます 0:06:28.477,0:06:31.345 もう一つの選択肢は[br]彼らに共感して 0:06:31.345,0:06:35.062 きっとこれまで体験した中でも[br]大変なことだったに違いない 0:06:35.062,0:06:38.458 この話題を取り上げ[br]会話をすることで 0:06:38.458,0:06:40.827 彼らも心の壁を破ったんだ[br]と理解することです 0:06:40.843,0:06:44.111 もちろん 他人の至らなさを[br]指摘することは簡単ですが 0:06:44.111,0:06:46.366 彼らの立場に立ち[br]努力したという事実を 0:06:46.366,0:06:48.658 認めることは[br]実際 本当に難しいことです 0:06:48.658,0:06:53.503 結局 他人に求められるのは[br]努力だけでしょう 0:06:53.503,0:06:55.576 他人と 本気で[br]向き合うなら 0:06:55.576,0:06:59.146 自分をさらけ出さないと[br]いけません 0:06:59.146,0:07:02.545 重い会話は[br]まだ苦手です 0:07:02.545,0:07:04.566 私が付き合った人に[br]聞けば分かります 0:07:04.566,0:07:07.794 でも マシになってはいます[br]私が大事にしているのは 0:07:07.794,0:07:09.431 「パンケーキ少女の3原則」です 0:07:09.431,0:07:13.203 これからお話しすることは[br]ゲイの立場でのことですが 0:07:13.203,0:07:16.379 どんな心の壁を[br]破るのでも 0:07:16.379,0:07:18.338 結局は[br]同じなんです 0:07:18.338,0:07:21.018 第一の原則は[br]ありのままであること 0:07:21.018,0:07:22.732 鎧をかなぐり捨て[br]素の自分になります 0:07:22.732,0:07:24.468 カフェの あの子は[br]丸腰だったのに 0:07:24.468,0:07:26.764 私だけが[br]戦闘態勢だったんです 0:07:26.764,0:07:29.353 誰かに本気で[br]向き合ってほしいなら 0:07:29.353,0:07:32.337 あなたも 血の通った人間だと[br]知ってもらうべきです 0:07:32.337,0:07:35.347 第二の原則は 単刀直入に言うこと[br]絆創膏は一気に剥ぎ取るのです 0:07:35.347,0:07:38.083 ゲイなのであれば[br]はっきり そう言えばいいんです 0:07:38.083,0:07:39.951 親に「ゲイかもしれない」と言えば 0:07:39.951,0:07:41.593 何かの間違いかもと[br]希望を持たせます 0:07:41.593,0:07:44.502 そんな変な期待は[br]させてはいけません 0:07:44.502,0:07:46.455 (笑) 0:07:46.455,0:07:51.062 第三の原則は[br]最も重要なものです― 0:07:51.062,0:07:53.386 (笑) 0:07:53.386,0:07:57.117 申し訳なく[br]思わないことです 0:07:57.117,0:07:59.182 あなたは[br]真実を話しているだけ 0:07:59.182,0:08:03.079 謝る必要なんか[br]ちっともありません 0:08:03.079,0:08:05.501 もしかしたら これで[br]傷つく人もいるかもしれません 0:08:05.501,0:08:08.439 もちろん 自分がしたことは[br]謝るべきです 0:08:08.439,0:08:11.943 でも 自分が悪いと[br]思う必要はありません 0:08:11.943,0:08:14.687 そうですね[br]がっかりする人もいますね 0:08:14.687,0:08:17.447 でも それは彼らの問題で[br]あなたの問題ではありません 0:08:17.447,0:08:19.919 あなたに対する[br]勝手な期待ですから 0:08:19.919,0:08:24.140 彼らの筋書きで[br]あなたのものではありません 0:08:24.140,0:08:25.926 大事な筋書きは[br]ただ一つです 0:08:25.926,0:08:28.642 あなたが書きたい[br]その筋書きだけです 0:08:28.642,0:08:30.485 もしも 自分が[br]心の真っ暗闇にいて 0:08:30.485,0:08:32.705 手りゅう弾を握りしめているのに[br]気づいたら 0:08:32.705,0:08:36.027 皆が経験することだと[br]思ってください 0:08:36.027,0:08:39.205 孤独に感じるかもしれないけれど[br]決して一人ではありません 0:08:39.205,0:08:42.923 つらいでしょうが[br]皆 あなたを必要としています 0:08:42.923,0:08:45.604 どんな壁であれ[br]突き破らないといけません 0:08:45.604,0:08:47.618 皆 心の壁の[br]後ろに隠れて 0:08:47.618,0:08:49.545 鍵穴から[br]外をのぞいています 0:08:49.545,0:08:53.677 誰かが 扉を破るのを待っています[br]だから 勇気を出して踏み出し 0:08:53.677,0:08:56.707 世界に見せつけてください[br]私たちには もっと大きな価値があり 0:08:56.707,0:09:00.099 そして そんな壁の中では[br]誰も 真の意味で 0:09:00.099,0:09:01.839 生きることは[br]できないのだと 0:09:01.839,0:09:05.111 ありがとうございます[br]素敵な夜を (拍手)